地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋   作:dwwyakata@2024

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フォーリナーの。

真実の話です。


3、星渡るもの

天の川銀河。

 

地球人類が生息する太陽系も含まれる銀河である。恒星だけでも億を遙かに超える数が存在し、その中には生物が発生する条件を整えた星も多々あった。それらには、当然のように多数の知的生命体が発生して。その一部が、宇宙へと進出した。

 

光速の壁を突破する事に成功した一握りの種族は、やがて銀河系全域に拡がり。偉大な文明を築いた。

 

彼らの名は、本来は発音できないのだが。地球風に調整していえば、フォリナ。

 

彼らの言葉で、土より生まれしものを意味した。

 

そう、フォーリナーという呼び方は。彼らの本来の名前に似た、当て字だったのである。反発した英語圏では、ラベジャーという呼び方が用いられたという経緯も、少し面白くある。

 

「フォリナの原型となった生物は、地球における昆虫類によく似た、キチン質に近い物質で外骨格を作った存在だった。 地球の昆虫とは違い、肺呼吸を行うように進化したことで、彼らは巨大化に成功。 高い知識と文明を得るまでに繁栄したが、人類と違って一億年近く掛けて文明にまで辿り着いたようだ。 文明に辿り着いてからは、進化は著しく早かったようだが」

 

黙々と、説明を続けていく私。

 

途方も無い話だが。

 

フォーリナーの技術を考えると、あながち笑い飛ばすことは出来ない。

 

やがて、彼らは宇宙に進出。天の川銀河で、最初に超高速航行を実現した種族となった。フォリナの国家は各地の種族と友好条約を締結。銀河系全域に拡がる、巨大な星間連合体の盟主となった。

 

繁栄は長い間続いた。

 

彼らは理知的な種族であり、多くの異星人と問題なく友好関係を作り上げることに成功していった。

 

だからこそ、多くの星でフォリナの到来は歓迎されたし。

 

彼らの技術援助で、宇宙に出る事が出来た種族も、多数あったのだ。

 

だが、どのような種族でも。

 

繁栄には、限界が訪れる。

 

「フォリナは古い種族だ。 文明を作り上げてから、およそ七億年ものあいだ継続して繁栄を続けたが。 それによって、種族そのものの生命力に、限界を迎えてしまった」

 

どのような生物でも。

 

生物である以上、存在には限界がある。

 

単純な形状の生物ならばそれでもいい。

 

しかし、彼らはあまりにも、複雑な形状を保ってしまった。

 

故に、限界が来る。

 

地球の生物でいう遺伝子に近いもので彼らは体を形作っていた。ウルトラテクノロジーによる調整を加え続けて、状況に応じて様々な種類へと自らを変化させ。あらゆる環境に適応してきたが。

 

それでも、限界はあったのだ。

 

何しろ七億年。

 

地球でも、三十億年以上元の形状を保っている超原始的な細菌などは存在しているが。流石に高度な知的文明を持つ生物となると、そうもいかなくなってくる。

 

気がつくと、彼らは。

 

種としての斜陽を迎えた、老いた種族となっていた。

 

既に天の川銀河におけるフォリナの重要性は、誰もが認めるところとなっていた。平和主義者である彼らも、滅びを全員が受け入れられるわけでは無かった。彼らは主に、二つの派閥に別れることとなった。

 

まず一つが、現状容認派、とでも言うべき存在。

 

現状容認派は、種としての寿命が来たことを認め、素直に後続の知的生命体に、保有している知識と文明を譲渡し、静かに滅びを待とうという種族。

 

彼らは元々繁栄を謳歌した種族なのだから、後続に席を譲るべきだという主張の元、緩やかで静かな滅びを、自然のまま望んだ。

 

もう一つは。

 

現状打開派。

 

現状打開派は主に巨大な機械化文明によって自らの意識と文明を保存。種そのものを若返らせて、捲土重来を測ろう、という派閥だった。

 

そしてこの後者は。

 

巨大なマスターコンピュータに、種そのものの若返りを図らせる方法を、計測させたのである。

 

「種そのものの若返り、だと」

 

「そうだ。 そして彼らが考えた方法が。 一度原始的な状態にまで種族の肉体を戻し、より強靱に進化を促進させ。 新しく作られた肉体へ、現在の知能を移植する、というものだった」

 

「まさか……」

 

さすがは科学者と言うべきか。

 

小原はもう気付いたようだった。

 

話を続けていく。

 

二つの派閥は戦争さえ起こさなかったけれど。現状容認派の反発に対して、種としての繁栄を望む現状打開派は研究を促進。

 

フォリナの統治による安定を望む多くの種族も、それに協力した。事実フォリナが消滅したら、天の川銀河は平穏を失い、カオスに陥ることが確実だったからである。それだけ、完璧な技術と成熟した知的文明を持ったフォリナは、宇宙全域にとって重要な存在だった、という事だ。

 

やがて転機が訪れる。

 

数百億に達する恒星系をチェックした結果、現状打開派の、恒星系より更に大きいコンピュータが、ある結論を出したのである。

 

「若々しい肉体を作り上げることは簡単だ。 しかし、より強靱に進化させるには、元からあるデータ内でのコントロールでは駄目だ。 実験も兼ねて、同等に近い戦闘力を持つ種族と相争わせ、別種の良さを取り込んで進化させる必要がある」

 

そう。

 

それこそが。

 

「そうして、我等は選ばれた。 天の川銀河でも辺境にあるこの地球第三惑星に生息する、一種危険隔離知性体、地球人類が」

 

「一種危険隔離知性体? どういう意味かね」

 

「天の川銀河には、独善的で他の種族を害することを何ら厭わず、攻撃を行い絶滅させることも辞さない知性生物を、危険隔離知性体と呼称する慣例があり、優れた技術を持つ星間文明監視艦隊が監視を行っている。 我等地球人類はその中でも特に危険な第一種として、彼らには警戒されているのだ」

 

「何だと……」

 

流石に全員が絶句する。通信の向こうにいても、青ざめている様子が、ありありと理解できた。

 

咳払いすると、私は続けた。

 

「巨大生物が高い知性を持つのは当たり前だ。 彼らは極限まで原始に戻された、フォリナの原型となった生物なのだから。 そしてフォーリナーが地球に来たのは、彼らを地球人類を争わせ、強靱に進化させるためだ。 最高の知性を乗せるに相応しい、強い肉体の持ち主として」

 

「ならば、何故奴らは、我々に過剰な攻撃を行おうとする!」

 

カーキソンが吼える。

 

彼には言う事が山ほどあるだろう。

 

北米は前大戦で文字通り壊滅した。国土の大半は焼き払われ、住民の半数以上も巨大生物に殺された。

 

マザーシップの手によってニューヨークは消滅。

 

世界最強を誇った北米の軍も、EDFと同じように、敵の手によって全滅寸前にまで追い込まれたのである。

 

「思い出して欲しい。 最初フォーリナーは、巨大生物を投下するだけだった。 機械兵器群が戦闘に加わったのは、どうしてだっただろうか」

 

「……ひょっとして、状況のコントロールのためか」

 

小原が指摘する。

 

その通りだ。

 

現状打開派。正確には、現状打開派のマスターコンピュータが地球に派遣してきた完全機械化された小規模状況コントロール艦隊は。当初、巨大生物と地球人類の戦いを、高みの見物だけするつもりだった、らしい。

 

地下の彼奴の話によると、そうだ。

 

しかし、地球人類には、イレギュラーが加わっていた。

 

他でもない。地下の彼奴である。

 

彼が五十年以上掛けて地球の足並みを揃えさせ。「最低限の」技術を地球人類に与えていたことが、巨大生物にとって徒となった。

 

地球人類は大きな損害を出しながらも、ストーム1をはじめとする精鋭の活躍によって、投下される巨大生物に進化促進以上の、大きな打撃を与えていったのだ。

 

混乱から立ち直った現状打開派の端末。すなわちマザーシップは、状況に介入することを決意した。

 

「現状打開派は、一旦地球人類の組織的な抵抗力を奪い、過剰な戦闘力を持つ個体を撃滅して、巨大生物と人間が互角の殺し合いを行う環境に、地球を置こうとしたらしい。 その結果の、マザーシップによる各地の大規模攻撃が行われた」

 

「なんという……」

 

「だが、巨大生物は各地にネストを作成し、地球人類との戦闘で蓄えた戦闘経験反映による進化をはじめた。 状況をコントロール出来なくなったものの、それで一次攻撃は成功したと判断したのだろう。 端末が潰されたこともあり、一度現状打開派は地球でのコントロール掌握を断念。 一度、距離を取って、進化を見守る事にした」

 

そして七年と少しが過ぎた。

 

進化が充分に行われたと判断した現状打開派は、前回よりも大規模な艦隊をもって、地球に戻ってきた。

 

目的は、新種に巨大生物を進化させること。

 

そして、その新種を、収穫することだ。

 

巨大生物を殺しすぎる地球人類に対しても、ある程度のダメージを与え、今度こそ状況のコントロールを行う事も、目的としているのだろう。

 

故に今回。

 

彼らは最初から、機械兵器群を投入。

 

EDFに対して、本気での戦略的掣肘を行う事を、厭わなくなったのだ。

 

「一つ、質問があります」

 

筅が発言する。

 

そうそうたる面子の中で、最初に発言したのは、少し勇気がいることだ。カーキソンは黙っている。

 

発言を許可するという意味だと、私は取った。

 

「何だ、筅軍曹」

 

「そ、その。 地下の人というのは……何者なのですか」

 

「現状容認派の一人、だろうか」

 

「その通りだ、小原博士」

 

大きなため息が聞こえた。

 

現状容認派のフォリナには、この件を良しとしない者がいたのだ。如何に第一種危険隔離知性体といえども、これでは戦闘を目的とした家畜にするようなもの。知性体に対して行う行為では無い。

 

そう判断した一派は。

 

地球に代表である、地下の彼奴を送り込んだ。

 

それがロズウェル事件と、昔は呼ばれた出来事につながった。

 

米国政府に接触した地下の彼は、状況を説明。各国の首脳部に、このままでは地球人類は戦闘目的の家畜にされるという事実を伝えた。

 

そして本来は禁止されている、未開惑星への文化介入を行ったのである。

 

「そういうことか。 それで、大規模な介入は出来なかったのか」

 

「どういうことかね、小原博士」

 

状況が理解し切れていないらしい日高司令が聞くと、小原は少し悩んだ上で、分かり易く話し始める。

 

既に、何が起きて、このようなことになっているのか。小原は理解しているようだった。

 

「今までの状態から鑑みるに、我々は天の川銀河を支配している高度知性体から見れば、地球で言う特定動物のようなものだ。 ライオンか虎のように、ある程度の知能を持つ危険な存在だと言えば分かりやすいだろうか。 だから、力を削ぐための一定駆除は認められる。 しかし、虎やライオンに、強力な文明による産物を与え、人間に抵抗する力を与える事は、認められるだろうか」

 

「確かに……」

 

小原の説明は分かり易い。

 

事実、その通りだ。

 

一方で、現状打開派による攻撃も、過剰になりつつある。状況のコントロール以上の攻撃だと判断された場合。

 

地球に来ているような、調査とコントロールを目的とした小規模部隊では無く。

 

本当に戦闘を目的とした強力な宇宙艦隊が、彼らを捕縛するために現れるだろう。

 

「結論から言えば、地球人類は絶滅させられることは無い」

 

「……嬉しすぎて涙が出る結論だな」

 

カーキソンの声はキレそうだった。

 

分かる。大いに分かる。

 

宇宙に冠たる文明から、お前達はライオンと同じような危険生物だから。自分たちの絶滅を回避するための、戦闘相手になっていろ。

 

そう言われて、納得できるだろうか。

 

もっとも、地下の彼奴による介入が無ければ、地球人類は同胞同士で、延々と無意味極まりない殺し合いを続けていたことだろう。

 

これが、フォーリナーが地球に攻めこんできた理由。

 

そして、今戦いが続いている、理由だ。

 

 

 

通信を切る。

 

北京基地で、これからの戦闘に備えなければならないという現実は変わらない。この戦いに勝つ方法は、事実上無い事も、明らかだ。

 

戦っても、勝てない。

 

敵が地球を征服する方法なんて、それこそいくらでもある。

 

最悪の場合、惑星破壊兵器を用いて、地球を木っ端みじんに消し飛ばしてしまえばいいのだから。

 

地球人類は、勝てないのだ。

 

だから、私は事実を伝えるべきでは無いと思ったし。

 

それに、トチ狂った奴が、侵略者の片割れとして、私を狙うことだって考えられた。それだって、出来れば嫌だった。

 

地球人を殺すのは、あまり良い気分はしない。

 

私も弟も。地球人に戦闘用の生物兵器として作られたも同然だけれど。香坂夫妻のように、それでも受け入れてくれた人達だっているのだ。疎遠な孫達の代わりだとしても、である。

 

筅が来る。

 

ベガルタに乗っているときは、自信も見せるようになったけれど。

 

流石に今回の話はショックだったのだろう。

 

「その、はじめ特務少佐」

 

「すぐに次の任務は来る。 今のうちに、気持ちの整理をしておけ」

 

「……はい」

 

肩を落として、休みに行く筅。

 

止めるつもりは無い。

 

もしも、この戦いが終わるときが来るとしたら。それは、可能性が一つしか無い。だが、今の時点では。

 

頭を振って、自分も休憩するべく、カプセルのある所へ向かう。派手にやられている北京基地だが、半地下の休憩スペースは無事だ。階段を下りて、長い通路を行く。電力が安定していないので、明かりは

 

途中、涼川が待っていた。廊下に背中を預けた涼川は。足を止めた私に、言う。

 

「言ったんだな、あのこと」

 

「ああ。 おそらく状況のコントロールのために、これからフォーリナーは今までの比では無い攻撃を加えてくるはずだ。 通信途絶したハワイ基地は、その先駆けのように思えてならない」

 

「上等じゃねーか。 勝ち目があるかないかなんて、戦う理由にはならねーんだよ」

 

「そうだな。 だが、お前のように考えられる人間は、そう多くは無いんだ」

 

カプセルで休むというと、涼川は何も言わず、私を見送った。

 

結局、休めたのはほんの三時間。

 

すぐに叩き起こされる。

 

カプセルにきた通信は、無慈悲極まりないものだった。

 

「スカウトが、巨大生物の巣らしきものを確認。 攻撃経路を確保するため、北京近郊にいる敵の輸送船の撃滅をお願いします」

 

「……」

 

返事を待たず、戦術士官からの連絡は切れる。各地で甚大な被害を出しつつも、どうやらEDFは、敵の巣に対する大規模攻撃をもくろんでいるらしい。

 

きっとそのもくろみは上手く行かない。

 

だが、それでも。

 

最善を目指すために、ストームは動かなければならなかった。

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