地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
世界中の戦況が、悪くなっていることが、肌で分かる。
特にオーストラリアは、半分以上がアースイーターに覆われて、もはや手出し不可能な状況。
今更、どんな兵器を使ったところで、状況をひっくり返す事は不可能だ。前大戦の末期、核が使われたけれど。四足さえ斃す事が出来なかったのだ。アースイーターを、どうして核程度で沈めることが出来ようか。
「はじめ特務少佐」
「何だ」
声を掛けられたので、顔を上げる。
ストームのメンバーでは無い。まだ若い男性兵士だ。何処かで見覚えがあると思ったら。思い出した。
親城准将の息子だ。
ただし血がつながった息子では無い。
親城准将も、第三世代のクローンを養子として引き取っている。その養子である。ただ戦争開始前に配備されたクローンなので、成人男性の姿をしているが。
「父がお呼びです」
「分かった。 すぐに行く」
親城准将は、確か何度かの戦いで、彼方此方の戦地を点々としているはず。確か最近、東南アジアから戻ってきたはずだ。
いつも悲惨な戦場で頑張っているが。残念ながら、兵士達の評判は、あまり良くない。個人としては親父殿として慕われているけれど。
指揮能力に関しては、正直それほどでもないのだ。
もっとも、EDFの上級指揮官には、本職の軍人では無かった者も多い。
これは前大戦を生き抜いた兵士達が、多く上級指揮官になっているからだ。彼らは個人の戦闘については習熟しているし、粘り強い戦いも出来る。しかし、上級指揮官は、それとは全く戦い方が違ってくる。
故に、EDFは、二律背反に今も悩まされている。
歴戦の指揮官達を冷遇も出来ない。
専門職をいきなり彼らの上に配置するのも、難しい。
かといって、専門的な能力を持つ指揮官がいなければ、軍としての機能はしづらい。苦労が絶えないだろうなと、私は内心で同情していた。
弟にも声が掛かっていたらしく、途中で顔を合わせることになった。
東京基地は、若干閑散としている。
ビークル類はあらかた出払っているし、前線で活躍し続けたプロテウスも、最近は基地から出ていない。
それに何より。
戦死者が、確実に増えているのだ。
横目に見たのは、短縮訓練を受けている兵士達。中には、多く第三世代の戦闘クローンが混ざっている。
大人と子供が一緒に訓練しているように見えるけれど。
身体能力で、戦闘向けクローンが上なので、非常にちぐはぐな光景に見えていた。これでは、訓練担当もやりづらいだろう。
親城は、ヘリポートにいた。
ズタズタに傷ついたバゼラートが、牽引車両に運ばれて行く。ストームに配備されたパワードでは無い。
何処かの戦場で、蜂にでもやられたのだろう。
「良く来てくれた」
プライベートでは敬語を使ってくる親城だが、今日は周囲に人がいるから、硬い口調だ。敬礼をして、応じる。
軽く歩きながら、話す。
「今度、オーストラリアのアースイーターへの攻撃作戦が計画されている」
「!」
なるほど。
それを掴んだから、わざわざ教えてくれたのか。
周囲は騒がしく、おそらく聞き取られてはいないが。肘を小突いて、通信をオンリーモードにする。バイザーで、以降は会話する。
「上手く行くと思いますか?」
「正直、かなり厳しいでしょうね」
弟は素直にそう言う。
私も同意見だ。
そもそもオーストラリアに展開しているアースイーターは、地球に今いるものでは最大規模。大陸の半分を覆うほどの代物だ。
多少の部隊を投入しても、返り討ちにされるのは目に見えている。
しかし、である。
オーストラリアの敵巣穴を叩かないと、致命的な事態が来る可能性が高い。
実は私が、少し前に、上層部にこの件を具申した。
カーキソンは聞いているか不安だったが。
恐らくは、意見を聞いていた。
そう言うことなのだろう。
だが、攻撃をしたところで、成功するとはとても思えないのも事実だ。親城も、それを心配しているのだろう。
「極東からも、かなりの戦力が派遣されます」
「いや、自殺行為でしょう。 アースイーターに対する、有効な作戦を編みだしてからでないと」
「同意です。 其処で、我々による、岐阜に展開しているアースイーターの攻撃作戦を提案しようと思っています」
今、東海地方に展開しているアースイーターは、岐阜を中心としている。確かに其処を撃滅できれば。
大きな前進になる筈だ。
作戦が上手く行くかは分からないが。
アースイーターとは戦って、少しでもデータを集めなければならないのである。
「敵を撃墜した後、残骸をスカウトの回収班で調査すれば良いのですが、それも時間を稼がないと難しい。 ストームチームでやるしか無いでしょう」
「厳しい……」
私は素直な感想を漏らす。
はっきりいって、どのチームがやっても、現状アースイーターを撃滅するのは不可能だろう。物量が違う上に、敵は戦略として、奪った土地を維持することを決めている節がある。多少の攻撃をしたところで、際限なくお代わりが来るだけだ。それに強力な艦載機が、迎撃に現れる。
勿論輸送船も、黙ってはいないだろう。
「無理ですか」
「姉貴、やろう」
「……」
弟にそう言われてしまうと、他に手立ても無い以上、反論も出来ない。
頷くと、親城は通信を切った。この様子だと、他の将官クラスには、既に同意が取れているとみて良い。
親城は年齢もあって、彼らのまとめ役もしている。
ストームリーダーである弟と違って、反発もされていない。おそらく作戦案は、通ることだろう。
親城と別れて、一旦寮に戻る。
いつまで休めるか分からない。無言で、ベットで膝を抱えていると、何もかもがむなしくなってきた。
勝ち目が無い戦い。
絶対的な戦略的不利。
覆しようが無い劣勢。
都合良く敵を皆殺しに出来る兵器なんて存在し得ない。例えEDFがマザーシップ級の兵器を手にしていても、この戦いには勝ちようが無い。
弟がハンバーグを作って持ってきたので、食べる。
「姉貴、体は大丈夫か」
「あいにくだが、以前と違って著しく健康だ。 お前こそ、老化が加速したりはしていないか」
「一応、今のところは大丈夫だ」
向かい合って、テーブルについて食事にする。
しばらく、無言で過ごす。
弟が、やがて先に口を開いた。
「姉貴の中にいる奴は、何ていっているんだ」
「アースイーターについてか」
「そうだ」
「彼奴もな、万能じゃあ無い。 それに地球にあまりにもテクノロジーを落としすぎると、条約違反となる可能性がある。 そもそもかなりの危険を冒して地球に潜り込んで、テクノロジーの供与をしている状況だ。 現状容認派……としては、動きづらいところもあるのだろう」
どうにも、彼奴の正体については、掴みづらい。
記憶の大半は理解したが、どうもその部分については、ブロックが掛かっているようなのだ。
まだ彼奴は、隠している事がある。
いや、フォーリナーについては、隠し事はしていないだろう。彼奴自身のことで、分からない事が、幾つかあるくらいだ。
連絡が来る。
どうやらやっとグレイプの代替機が来た。前と同じRZだ。
性能は言う事も無い機体である。後は、苛烈を極める戦況に、いつまで耐えられるかどうか。
そして、同時に通信が来る。
山梨の北部に、敵が陣地を作っている。レタリウスが確認されており、一刻も早い駆除をしてほしいと。
確かに、制空権が怪しくなっている現状、レタリウスが陣地を構築したら、面倒な事態が到来する。
見逃すわけには行かなかった。
ハンバーグの残りをさっと食べ終えると、二人揃って寮を出る。
ヒドラはもう準備されていた。おろしたてのグレイプもいる。
慌てて新人達は戻ってきたが。一番最初にヒドラに来ていたのが、柊というのは笑えない。
此奴の嗅覚は化け物並みか。
従軍記者としての地位も確保しているし、追い出すわけにも行かない。とにかく、面倒な奴に見込まれたものだった。
ベガルタを一瞥。
一応処置は終わっている。今回の戦いでも、活躍はして貰いたいところだが。問題は三川だ。
レタリウスがいると聞いて、さっと青ざめる。
PTSDがぶり返す可能性もある。今回は最後衛で頑張って貰うしか無いだろう。本人が望んでも、前線に出すのは好ましい事では無い。
レンジャー4も、今回は作戦に同行する。
それだけ、本部が今回の作戦を、重視していると言う事だ。
ヒドラで現地まで時間もそう掛からない。
現地は起伏が多い山地で、レタリウスは十五体が確認されている。幸い、まだそれほど強固な陣地は張っていない。
問題は蜂が敵にいることだ。
おそらくアースイーターの支配地域から、此方に出てきたものだろう。山の斜面に張り付いて、容赦なく周囲を警戒している。
敵の攻略不可能な基地として。
アースイーターは、この場にいなくても、その存在感を見せつけてくる。
全員が展開。
まずは谷底にいる二匹を処理しなければならない。敵は既に巣を張っており、簡単には攻撃できない。
だから、やる事は一つだ。
「私が囮になる」
アーマーを対レタリウス用のものに切り替えると、前に出る。
そして、谷に、躊躇無く飛び込んだ。
かなりの数の黒蟻がいる。これも報告を受けていたものとは、別の部隊だろう。アースイーターの支配地域から来た連中だ。
四方八方からの攻撃を受けながらも、私は黙々と。
己の任務を、こなし続けた。
際限なく現れる敵の増援を削り続けて、結局夕方近くまで、攻略には時間が掛かってしまった。
レタリウスは全て駆除したが、ある程度時間を稼いだと判断したのだろう。蜂も黒蟻も、戦線を離脱。
アースイーターの方へと引き上げていく。
追撃できないのが口惜しい。アースイーターを下手に刺激すると、艦載機やディロイがお出迎えだ。彼奴らの戦闘力は、片手間にどうにかできる代物では無い。はっきりいって、今のアースイーターは、巨大生物の巣と同様の機能を持っている。そして、巨大生物の巣と違い、高い自衛能力と、何より制空権を握っている。
アースイーターに、より高い高度からの空爆は、何度も試みられている。
しかしその全てが失敗。
アースイーターの上部は、圧倒的な耐久精度を誇っているのだ。戦術核並みの火力を持つ兵器も当然試されたが、勿論無傷。
テンペストによる集中射撃も、同様の結果を招いていた。
拡大し、世界中の何処にでも現れ、どれだけ壊しても再生する巨大生物の巣。その危険性が、改めて確認される事態となっていた。
疲労感に包まれたまま、戻る。
おそらく敵の四足も、間もなく動き始める筈だ。武装も強化しているだろうし、青ヘクトルも搭載しているに違いない。
前と同じようには行かない。
そして、その時は。
すぐに来た。
「静岡に四足歩行要塞が上陸! マザーシップが投下したものと思われます! 元々いた四足歩行要塞が、ヘクトルを従え北上を開始!」
来た。
四足の移動速度から考えて、山梨の防衛ラインに接触するのは明日。撃退するなら、即座に準備を整えなければならない。
しかもアースイーターが睨みを利かせている現状、あまり多くの兵は割けない。
山梨の防衛ラインに、ヒドラは着陸。
極東の司令部が、慌てて連絡を入れてきた。
日高司令は、かなり焦っているようだった。
「ストームチーム、迎撃作戦のために兵力を集める。 可能な限り、撃破を試みて欲しい」
「空軍は支援に来られそうですか」
「それが……」
岐阜、北陸、いずれのアースイーターからも、多数の蜂が出現。近場にあるEDFの基地に猛攻を加えているという。
ファイターはその全てが、対策に出払っている。
詰まるところ、陸上部隊と。海軍のテンペストによる支援だけで、四足を撃滅しなければならない、という事だ。
しかも、敵の装甲が相当に強化されているのは、既にスカウトが確認済み。
グラインドバスターも、通用はしないだろう。
つまり、肉弾攻撃を仕掛けて、倒すしかないと言う事だ。
山梨の防衛ラインに集まっている戦力を一瞥。
やるなら。
この戦力を、活用するしか無い。
此処に立てこもっても、四足の火力には対抗できない。それならば、全軍で出撃し、撃破を試みるのみである。
弟と軽く話す。
すぐに合意は得られた。増援はレンジャー4個部隊程度しか来られない。此処にいる戦力も、以前とは比較にならないほど少ない。集結は続けているが、それでもだ。昔日とは、戦況が根本的に違うのである。
撃破するなら、短期決戦しかない。
幸いフェンサー部隊がいる。また、先ほど連絡したところ、海軍の二個艦隊が、支援攻撃を約束もしてくれている。
この火力を利用し、短時間で敵を潰す。
グラインドバスターが通じない以上、方法は一つだ。至近から掃射砲を全て潰し、下部のハッチに大威力攻撃を叩き込む。
かなり難しいが。
しかし、出来なくはない。弟も私も、前大戦では成功させている。
作戦は決まった。
日高司令に許可を取った後、山梨の防衛ラインの兵士達を集める。彼らは一様に、緊張していた。
「今回は、四足を正面から迎撃する。 貴官らには、敵の主力になるヘクトル部隊を引きつけて貰いたい」
幸い、まだ幾らかのギガンテス戦車がある。
長距離戦で敵の部隊を引きはがすのであれば、無理なく出来るだろう。
問題は、これが。
単なる時間稼ぎだと、わかりきっていること。
私の推測通り、敵はオーストラリアのアンノウン繁殖に全力投球しているとみて良い。そのため、世界中で嫌がらせの攻撃を仕掛け続けている。
しかもその攻撃は、放置すれば致命傷につながりかねない。
あまりにもタチが悪い戦略だ。
敵の物量も、無限ではない。
そういって皆を励ましてきたが、その理屈も揺らぎつつある。アースイーターの登場によって、もはや敵の物量は、事実上の無限と化したからだ。
いつまで戦えるのか。
分からない。
「敵との接近戦は、ストームが行う。 必ず敵を撃破する」
「イエッサ!」
後は、直衛として敵が繰り出してくるヘクトルと、飛行ドローンさえどうにか出来れば、勝機はある。
しかし、勝った所で、敵には大したダメージは無い。
それに比べて、此方は。負ければ、もう後が無い状態なのだ。
支援の部隊が来る。
その一つは、親城准将が率いている精鋭だった。これはいい。
作戦を弟が説明した後、敬礼する。
「親城准将。 陽動部隊の指揮を頼みます」
「引き受けた。 ストームは安心して、敵四足との戦闘に集中して欲しい」
指揮能力は兎も角、部下達からの人望厚い親城だ。おそらく、此処にいる兵士達も、みな最後まで逃げずに戦い抜くだろう。
綱渡りの戦いだが。
どうにか、向こうは見えた。
しかし、渡りきっても。延々と綱が続いている恐怖に、変わりは無いのだった。
真相を知っていても。
敵の狙いが分かっていても。
どうにもならない、この現実。
私は皆と離れて物陰に行くと、バリケードに、拳を一発くれた。そうでもしないと、絶望は晴れなかった。
かろうじて、皆が小さな希望にすがっているのが、見ていて痛々しくてならない。
まだまだ、地獄はその片鱗さえ見せていない。