地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋   作:dwwyakata@2024

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4、トラウマ

札幌基地で、また任務を受ける。

 

今度の戦場は北陸だ。

 

北陸の中心である新潟基地のすぐ横に、敵が侵攻を開始。青ヘクトルを含む集団で、苦戦中だという。

 

幸い、ベガルタの整備は完了。

 

グレイプも、どうにか整備班が間に合わせてくれた。

 

北海道基地も大変な状況だが。二カ所、アースイーターが陣取っていることで、東海地方と北陸の苦労は並大抵では無い。

 

すぐに支援を行わないと、かなり危ないのは、理屈として分かる。

 

ヒドラで移動。

 

移動している間、弟が、正式に言う。

 

「これから、新人達の内、何名かはベテランと出来るだけ行動を共にして貰う。 それぞれが、かなり腕を上げてきたからだ。 皆が完全に独り立ちしたと判断した時点で、新人を更に入れて、チームを拡張する」

 

戦況は、更に厳しくなる。

 

それ故の処置だと、弟は締めた。

 

黒沢は香坂夫妻。矢島は私。筅は谷山。三川はエミリー。原田は涼川。そしてジョンソンの下に、日高少尉がつく。

 

ナナコは元々能力が高いので大丈夫。現状、新人達の中では戦闘力だけを見れば間違いなくトップだ。

 

池口はというと、多少性格にムラがあるが、マイペースなので問題なし。ネグリングを操作する技量についても問題を感じないので、そのままで大丈夫だろう。必要な場合は、弟が直接面倒を見る。

 

新人を入れると聞いて、挙手したのは黒沢だ。

 

「やはり戦闘特化の第三世代クローンですか?」

 

「まだ何とも言えない。 戦況がこれから更に悪くなっていくのは、皆も肌で感じていると思う。 或いは壊滅した部隊の敗残兵を引き取るかも知れないし、完全に新規で入隊した兵かも知れない。 いずれにしても、あまり大人数は入らないだろう」

 

弟はそうすらすら応える。

 

ジョンソンは黙り込んでいる。一度ジョンソンは秀爺を見たが、それだけだ。秀爺も、口を挟まなかった。

 

今回は弟が具体案を提示しているから、かも知れない。

 

反対意見は。

 

弟が皆を見回すが、誰も何も言わない。

 

元々、ストームはオメガは兎も角、支援要員なども考えるとストライクフォースライトニングよりも更に少人数のチームだ。少数精鋭と言えば聞こえは良いが、実際には扱いがそれだけ腫れ物、という事である。

 

反逆したら人類滅亡確定とさえ言われる弟に、それだけカーキソンは警戒しているのである。

 

後方支援の人員も、更に増やす予定だと、弟は付け加える。

 

これについては、専用機のヒドラを配置する予定になっていると言う。

 

今まで、戦況に応じて、様々なヒドラを用いてきた。だが、確かに専用機があれば、それだけ動きやすくもなる。

 

反対意見は、結局出なかった。

 

戦場に到着。

 

一旦新潟基地のヘリポートに着地。

 

其処でビークル類を下ろして、司令官に会う。此処の司令官は、精悍な顔立ちの少将で、弟の事にも敵意を剥き出しにはしていなかった。九州基地では司令官の長沼少将が弟と犬猿の仲で、随分やりづらかった事を思うと、有り難い。

 

外壁に向けて歩きながら、軽くブリーフィングをする。

 

そして、外壁から外を見て、呻いた。

 

既にかなりの数の青ヘクトルが来ている。その背後の、既に敵に制圧されている無人都市には、レタリウスが巣を張り始めているでは無いか。

 

青ヘクトルの大半は盾を持っていて、それで要塞砲を防いでいるらしい。基地司令官は、アレを見てどう思うかと聞いてくる。

 

「堅固ですね」

 

「青ヘクトルは、我々で引き受けます。 後方のレタリウスの駆逐を、お願いします」

 

階級が下の弟に、そう下手に出ながら、司令官は言う。

 

今までも、空爆などはしているが。青ヘクトルが邪魔をして、どうにも上手く行かなかったのだという。

 

幸い、敵が今まで繰り出してきていた飛行ドローンと攻撃機は、今までの戦闘で、対空砲火に重点を置いて追い払ったという。

 

つまり、敵の高空戦力については、警戒しなくても良いと言うことだ。

 

ビークルを見て廻っていた谷山が、挙手する。

 

「あの最新鋭ブルートを借りても良いですか」

 

そう言って谷山が指さしたのは。

 

おそらく新潟基地に配属されたばかりだろう重制圧戦闘ヘリコプター、HU04ブルートSA9。

 

強力なドーントレス重機関砲を装備した、浮かぶ要塞である。

 

操縦は谷山がして、筅が銃座を管理すれば問題ないという事だろう。

 

「あれは……」

 

「谷山は世界最強のヘリパイロットです。 確実な成果を上げられます」

 

「……分かりました。 良いでしょう」

 

少し残念そうに、基地司令官は肩を落とした。

 

おそらく基地の主力兵器として、期待していたものなのだろう。それを援軍として来てくれた、名高いストームとは言え。いきなり使われるのは、あまり気分が良くない、ということか。

 

作戦については簡単。

 

要塞砲で青ヘクトルを引きつけている間に、レタリウスを駆逐。

 

それだけだ。

 

問題があるとすれば、三川か。

 

三川は案の定、青ざめている。PTSDになった原因であるレタリウスとの交戦。医師は出来るだけ避けた方が良いと言っている。

 

以前にも、何度か遭遇戦ではあった。

 

しかし今回は、多数のレタリウスと、真正面からやり合うことになる。不安そうに一瞥するエミリー。

 

だが、三川は、首を横に振って、言った。

 

やりますと。

 

 

 

要塞から出て、移動。

 

今回は棚卸しされたばかりのRZに不具合が見つかったため、貸し出された旧型のグレイプを指揮車両とする。ただしキャリバンが、その前衛について、盾になる。

 

修復は終わっているので、大丈夫だ。

 

問題は青ヘクトルが、此方に殺到してきた場合。

 

挟撃を避けるためにも、スカウトの二個部隊を、アースイーター近辺に派遣して貰っている。

 

彼らによる連絡を定時で受けながら、挟撃を避けるために、速攻でレタリウスを片付ける。出来れば返す刀で、青ヘクトルも全滅させる。

 

作戦は、既に決まっている。

 

しかし、である。

 

敵の背後に回り込んでみて、状況が予想よりも遙かに悪い事が分かった。

 

ディロイがいるのだ。

 

要塞の死角に、上手に入っている。どうやってここまで来たのかはよく分からないけれど、とにかくいる以上、対処しなければならない。

 

レタリウスはおよそ三十。今、せっせと巣を張っている状態。レタリウスだけなら、速攻を仕掛ければ、すぐにでも焼き払える。

 

しかしまさか随伴歩兵に、こんな強力な機体を用意してくるとは。

 

幸い、他の巨大生物は見かけない。

 

しかし、この町の地下部分や、死角に潜んでいる可能性も、否定出来なかった。

 

その上現在、支援できる艦隊は海上にいない。

 

「一旦作戦を中止しますか?」

 

黒沢が聞いてくるが、拒否。

 

やるなら、瞬殺で勝負を決めるほか無い。

 

「速攻だ。 私が彼奴を潰す。 その間、皆でレタリウスを徹底的に駆除」

 

私は前に出ると、ディスラプターの状態を確認。

 

可能な限り速攻で近寄って、ディスラプターを叩き込めば、ディロイといえどもひとたまりもない。

 

速攻で敵を倒しきれるか。倒されるか。

 

その勝負だ。

 

問題は、私が特攻して、ディスラプターを叩き込んで、ディロイを倒した後。ほぼ間違いなく、レタリウスによる集中攻撃を浴びる。一瞬でレタリウスも全滅させなければ、私は糸玉にされて死ぬ。

 

エミリーが、心配そうに見ているのは、私と三川両方。

 

三川は平気そうにしているが。

 

しかし、分かる。無理をしているのが。

 

動けないのなら、まだ良い。

 

フレンドリファイアをしてしまったら、間違いなく三川はもう立ち直れなくなるだろうし、この戦いそのものも負ける。

 

だが、弟は。

 

開戦に踏み切った。

 

全員が配置についているのを確認後、私は敵の配置を見て、遮蔽物を利用しながら、ディロイへ近づいていく。

 

弟が、オンリー回線で通信を入れてきた。

 

「姉貴、頼むぞ」

 

「ああ。 レタリウスの集中攻撃を浴びるとかなり危ない。 其方でも、しっかり敵の駆除をしてくれよ」

 

「ディロイのいる位置へ、狙撃を出来るレタリウスについては、既に割り出しが完了している。 姉貴がディロイを倒した瞬間に、全部つぶせる」

 

そうか、流石だ。

 

だがおそらく、問題はその先になるだろう。

 

レタリウスも反撃してくるのだ。

 

既に敵の巣が張られている位置もある。敵が黙ってやられてくれると考えるほど、弟も私も、頭の中が花畑では無い。

 

ディロイの至近にまで到達。

 

ディスラプターの火力は、ディロイに使い切ってしまう。使い切れば、補充はできなくなる。

 

後は盾を構えて、全力で後退。以降はガリア砲で支援をする事になる。

 

この時のために、ディスラプターは一双を準備してきた。二倍の火力で、敵を瞬殺するためだ。

 

ディロイはどうも休憩時は、地面に伏せているようだ。円盤が地面にくっつき、まるで蜘蛛が座り込んでいるかのようにみえる。

 

近くで見ると、円盤には複雑な機構も付いている。

 

前面にあるのは主砲だろうか。プラズマ弾を撃ち込んでくる例が今まで何度かあった。ヘクトルの保有している長距離砲と、これ自体は同じ機構のようだけれど。ただし円盤の内部に格納しているだけあって、火力はヘクトルが持ち歩いているものよりも、数段大きいようだが。

 

或いは、反重力は、発生させるときある程度のエネルギーを消耗するのかも知れない。

 

私にはよく分からない。

 

ディロイの折りたたまれている足には、強烈なレーザー兵器を発生させると見える、球体状の機構が多数ついている。

 

バイザーでこれらを至近で確認するのは、恐らくは初めてだ。

 

三島辺りに渡して、解析させれば。

 

或いは、弱点が見えるかも知れない。

 

「よし、射程距離に入った」

 

「カウントに入るぞ」

 

「任せろ」

 

弟が、10から徐々にカウントを減らしていく。

 

ディロイは動かない。

 

或いは此奴は、索敵能力があまり高くない機体なのかも知れない。だが、それでも。カウントがゼロになり、私が飛び出すと、畳んでいた足を一気に伸ばそうとした。

 

させない。

 

ディスラプターの火力を全力で展開。

 

瞬時に、圧倒的な熱量を、ディロイ円盤に叩き込んでいた。灼熱を浴びせられながら、踊るように廻るディロイ。足がねじれて、凄まじい格好である。断末魔なのか、足からレーザーを大量に浴びせかけてくる。アーマーが、見る間に削られていく。

 

爆発。

 

ディロイの円盤が熱量に負け、融解。

 

足も砕けて、ばらばらと降り注いで来た。

 

アーマーは全損。

 

そればかりか、フェンサースーツも、レッドにまでダメージが行っていた。スーツは熱を逃がしきれず、内部は灼熱。

 

普通の人間だったら、即死だったかも知れない。

 

パージして、熱量を逃がす。

 

全身がほてるように熱い。トランク大にまで圧縮されたフェンサースーツが、高熱危険とアラートを出していた。これはもう、着ることは出来ないだろう。

 

つまり、生身で。

 

此処から逃れなければならない。

 

既に戦闘は開始されている。此処を狙えるレタリウスは、全滅したようだが。だが敵は、まだ多数が残っているのだ。

 

最低限の護身用に準備してきた武器さえ無い。

 

素手で、此処から脱出する必要があるのだ。

 

軍服の上からアーマーを付けているが、レタリウスの糸にやられたらアウトである。弟が、通信を入れてくる。バイザーだけは無事だが、これでは敵の大まかな位置しか分からない。

 

「姉貴、無事か」

 

「アーマーが全損、スーツもやられた。 今、素手でいる」

 

「まずいな」

 

弟によると、レタリウスが複雑に動き始めているという。

 

安全な脱出経路は、今の時点で確保できないという事だった。既に激しい戦いが始まっていて、青ヘクトルも、新潟基地と交戦を開始している。それによる流れ弾が、飛んでくるかも知れない。

 

「今、脱出経路を確保する。 出来るだけ動くな」

 

「分かった。 任せる」

 

瓦礫の影に隠れる。

 

今の状態では、黒蟻一匹倒せない。

 

トランク状のフェンサースーツは自己修復モードに入ったが、当分使う事は無理だろう。ダメージが酷すぎて、ブースターもスラスターも使い物にならない。ガリア砲も、使えるかどうか。

 

勿論盾も役に立たないだろう。

 

周囲は、意外に静かだ。

 

大火力火器がたまに炸裂する音がするが、それ以外は狙撃戦に徹しているから、だろう。身を潜めて、静かに展開の推移を待つ。

 

怖くないと言えば、嘘だ。

 

だけれど、これでも散々悲惨な戦況を経験してきた。恐怖は制御できる。身を伏せて、じっと待つ内に。

 

最悪の事態が来た。

 

レタリウスだ。

 

瓦礫の向こう側にいる。巣を破壊されて、逃れたのか。或いは、狙撃のための移動をしているのか。

 

いずれにしても、至近距離。

 

声を出すだけで、見つかる。

 

息を殺して、待つ。

 

相手も、同じように、気配を出来るだけ消して移動しているようだが。

 

不意に、レタリウスが動く。

 

瓦礫の上に上がると、糸を吐く。狙いは、私じゃ無い。誰かを狙っての攻撃だが。外れた。

 

反撃が来る。

 

おそらく秀爺だろう。ライサンダーの狙撃一発で、レタリウスが大きくのけぞる。

 

そしてもう一撃。

 

誰かが放ったハーキュリーの弾丸が、レタリウスに着弾。

 

血をばらまきながら、レタリウスが吹っ飛び、地面に力なく倒れた。

 

呼吸を整える。

 

通信が入った。

 

「よし、退路を確保した。 姉貴、戻ってきてくれ」

 

「今のは」

 

「三川が囮になった」

 

そうか。そうだったのか。

 

私はトランクをひっつかむと、態勢を低くして走る。周囲ではまだ戦いが続いている。この機を逃したら、逃げる事さえ出来なくなる可能性が高い。

 

瓦礫の影を経由しながら、逃れる。

 

至近。

 

蜘蛛糸が着弾。

 

レタリウスがまだ潜んでいたか。かろうじて直撃は避けたが、冷や汗が出る。瓦礫に潜んで、やり過ごす。相手は飛び出す瞬間を、狙ってきているはずだ。迂闊に動く事が出来ない。

 

せっかく脱出経路が確保できたと思ったのに。流石に其処までは甘くないか。

 

不意に飛び出してきたのは、キャリバンである。

 

蜘蛛糸が飛んでくるが、流石にキャリバンの分厚い装甲は貫けない。盾になって蜘蛛糸を防ぐと、反対側の扉を開ける。日高だ。

 

「はじめ特務少佐、急いでください!」

 

キャリバンに飛び込む。

 

強烈な吸着力を持つ蜘蛛糸を、無理矢理引きはがすようにして、キャリバンが発進。それで気付く。

 

レタリウス攻略時に使う、蜘蛛糸を弾くタイプのアーマーを張っているのか。

 

何度か帰路で蜘蛛糸の射撃を浴びるが、キャリバンは耐え抜く。

 

本陣に逃げ込んだとき、やっとほっとできた。

 

既に狙撃により、レタリウスも大半が片付いていたが。まだ戦闘は散発的に続いている。レタリウスを片付けても、まだ青ヘクトルが残っている。フェンサースーツの替えが欲しいと、周囲を探す。

 

こっちに駆け寄ってきたのは、三川だ。

 

「はじめ特務少佐、無事でしたか!?」

 

「ああ。 どうにかな」

 

よく勇気を絞ったものだ。

 

或いは、これで。ようやく三川は、レタリウスに対するPTSDを、克服できたのかも知れない。

 

ほどなく、レタリウスの掃討が完了。

 

まだ新潟基地と交戦中の青ヘクトルがいる。これを背後から奇襲して、殲滅すれば、戦いは終わりだ。

 

 

 

青ヘクトルは既に要塞砲で打撃を受けていたこともあり、背後からの奇襲を仕掛けて、どうにか撃滅することが出来た。

 

新潟基地の損害はそれなりに大きい。

 

つまり、青ヘクトルは。EDF基地とまともにやり合えるほどの戦闘力があると言う事だ。

 

基地内部に戻ってみると、破壊された砲台が幾つか、煙を上げていた。死者も出ていた様子だ。

 

建物も、幾つか瓦礫になっている。

 

担架に乗せられた負傷者が、運ばれて行く。殺気だった医療関係者が、怒号を張り上げていた。

 

替えのフェンサースーツに着替えていた私も、手伝う。

 

崩された建物に潰された生存者の救助に当たる。重機も動いているが、やはりこういうときにものをいうのは、最終的には人力になる部分がある。幸い、センサーという便利なものもある。

 

何人かの負傷者を救助。

 

医療チームに引き渡す。今は、死にさえしなければ、大体は助けることも出来るから、それだけが救いか。

 

救助作業が一段落。

 

損害を見て廻っていた弟が、此方に来た。

 

「姉貴、具合はどうだ」

 

「私は問題ない。 しかしこれでは、身動きが取れないな」

 

「全くだ」

 

アースイーターが出現してから、フォーリナーの戦略の悪辣さに、磨きが掛かっている。しかも、奴らの最終目的は、下手をするともう達成されてしまっている可能性も高いかもしれない。

 

後は、戦況をコントロールすることだけが目的。

 

不安要素だけを取り除くための、余技。

 

今の戦況は、その結果、造り出された可能性も高い。

 

「近々中国にある敵巣穴を攻撃する作戦が決まったと、先ほど三島から連絡があった」

 

「彼奴からか?」

 

「衛星兵器を試すそうだ」

 

大げさな話だが、しかし地中の相手に、どれだけの効果があるものか。巣の周囲に展開している随伴戦力は、一機に殲滅できるだろうが。

 

ただ、スカウトが、妙な報告をしてきているという。

 

巨大生物の巣が、ビルほどもある構造物になっているというのだ。

 

そういえば、中国の巣にいる巨大生物は、蜂によく似ている。蜂の巣になっているのかもしれない。

 

日高司令から通信。

 

東京基地に戻るようにと言う指示が来た。

 

負傷者の救助もほぼ完了したし、もうこれ以上此処にいても仕方が無い。物資も足りなくなっていた所だ。さっさと戻る事にする。

 

ヒドラに乗ると、三川が少しだけ、機嫌がよさそうにしていた。

 

PTSDを克服できたからだろう。

 

良いことだ。

 

三川は今まで、爆弾を抱えていたも同じだった。しかし土壇場で勇気を振り絞ることで、どうにかそれを克服することが出来たのだ。

 

勿論荒療治であり、失敗する可能性も高かったが。

 

しかし、三川自身が技量を上げ。

 

レタリウスが放った糸を回避できるほどにまで力を付けて。歴戦を重ねて、ついに此処まで上り詰めた。

 

それは努力の賜であり。

 

とても尊い事だと、私も思うのだ。

 

ヒドラはまっすぐ東京基地に戻るのでは無く、若干東側に迂回して、空路を行くことになる。アースイーターの支配地域を避けるためだ。

 

もはやアースイーターは。

 

出現したら、手の打ちようが無い存在に、なりつつあった。

 

 

 

東京基地に戻った後、弟と一緒に、幹部会議に出る。

 

ボイスオンリーの参加者が多くなっている。アースイーターの出現によって、通信妨害が酷くなっているためだ。

 

そして、幹部からも、欠ける者が出始めていた。

 

少し前に、EDF海軍の第十二艦隊が壊滅した。アースイーターが直上に出現し、逃げ切れなかったのだ。

 

指揮官をしていたシャウット少将は戦死。

 

剛胆な男だった。旗艦と運命をともにした事がカーキソンの口から直接皆に伝えられると、嘆息が漏れた。

 

少将以上の戦死者が出ることは、もはや規定の未来だった。

 

各地で基地が陥落しているのだ。

 

既に准将も六名戦死している。これから高級士官も、次々に戦死していくことになるだろう。

 

第十二艦隊の残存戦力は、第八艦隊に合流。

 

以降は、遊撃作戦を行う事になる。

 

海路も、次々寸断されている。

 

スエズ運河も少し前に、アースイーターに制圧された。パナマ運河はまだ無事だが、それもいつまでもつか。

 

「これ以上、敵の好き勝手にはさせられん。 効果的に戦力を削ぐためにも、中国地区の敵巣穴を叩く」

 

カーキソンはそう声を張り上げるが。

 

此処にいる全員が分かっている。

 

それは敵の想定内の行動だと。

 

戦力を削ぐために、わざわざ見せびらかすように、巣穴を露出させているのだ。大軍が集結したところで、アースイーターにでも襲われたら、もはや手の打ちようも無くなる。しかし、それでもやらざるを得ない。

 

各地で四足が出現し、暴れ回っている報告もある。

 

南米では、二機の四足が連携して各地で攻撃を繰り返しており、多大な被害が出ていた。一機はストライクフォースライトニングが倒したが、もう一機はリオデジャネイロに居座り、青ヘクトル多数を従え、我が物顔に振る舞っている。

 

しかも四足は護衛として蜂を多数従えており、飛行ドローンや攻撃機も四足の周囲に展開。

 

少数精鋭での接近肉弾攻撃も、難しくなってきていた。

 

カーキソンが不機嫌そうに、小原博士に話を振る。

 

「小原博士。 アースイーターの解析は」

 

「現在回収した残骸から、解析を進めています。 幾つか分かってきたことがあります」

 

小原博士は、目の下に大きな隈を作っていた。連日徹夜で研究を進めているのだろう。無能と揶揄されることも多い小原だけれど、兵士達がこの姿を見たら、口をつぐむことは間違いない。

 

無能だとしても。決して無為に日々は過ごしていないのだ。

 

「どうもアースイータは、単位ごとの戦力として独立している様子です。 少なくとも、より大きな単位に、小さな単位から通信を送っている様子はありません」

 

「つまり、どういうことだ」

 

「ウイルスなどで一網打尽にすることは不可能だと言う事です」

 

また、コアブロックを破壊することで、小単位をまとめて破壊することも出来るが、破壊できるのは周囲数ブロックのみ。

 

他のアースイーターには何ら悪影響も出ない。

 

もしも、アースイーターを倒すのであれば、無限とも言える物量の攻撃に耐えながら、倒し続けるしか、現状では手立てが無い。

 

「上位単位に何かしらの手段で攻撃は出来ないのか」

 

「今、解析中です。 そもそも一種のクラウド化をしているのか、何かしらの主体的な統率者が存在するのかも、よく分からない状態です」

 

「おのれ……」

 

カーキソンが眉間に皺を寄せて、拳をデスクに叩き付けた。

 

日高司令が、咳払いをする。

 

「小原博士、解析を進めてくれ。 小原博士のチーム以外のEDF科学班は、兵器の強化に専念して欲しい。 敵の上位兵器の解析も進めて、それに通じる武器を作り上げるのが急務だ。 現状では、敵の新型に対して、著しく大きな被害を出してしまう」

 

「分かりました。 可能な限り急ぎます」

 

会議が終わる。

 

今の時点では、有効打も無い。悪い報告ばかりが上がってくる。

 

この東京基地も、いつまで無事でいられるかどうか。

 

近隣のシェルターでも、不安の声が上がっているらしい。フォーリナーが降伏を受け入れてくれるなら、そうしたいという者達まで出始めているようだ。

 

そんな事を受け入れてくれる相手なら、どれだけ楽か。

 

相手にしてみれば、此方は猛獣も同じ。

 

戦闘用奴隷以外の用途は見いださないだろうし、数も徹底的にコントロールされるはず。つまり家畜と変わりない。

 

地下の彼奴は。

 

そんな状況に人類が置かれるのを、良しとしなかったから、手を貸してくれた。それなのに、その助力を無碍にするのか。

 

弟が来た。

 

「姉貴、良くない知らせがある」

 

「またか。 もう良い知らせの方が少ないな」

 

「そういうな。 どうやら海上にて、マザーシップとは違う敵の大型飛行兵器が確認されたらしい。 ほんのわずかな時間だけ確認されたようだが、油断できない新型だと考えて間違いないだろう」

 

もはや何でもありか。

 

オーストラリアはまだ陥落を免れているが、それも時間の問題。

 

EDFに残された時間は少ない。

 

「今のうちに休んでおいてくれ」

 

「姉貴はどうする」

 

「原田や矢島のトレーニングにつきあう」

 

地下の彼奴と融合してから、やはり体調は不自然なほどにいい。というよりも、私はおそらく、もう。

 

人間ではなくなっているのだろう。

 

元々人間かと言われれば、かなり怪しいところがあった。だが、最近の体調を考えると、なおさらである。

 

この状態の私より、更に戦闘力が上なのだから、弟には恐れ入るばかりだが。

 

少なくとも体力については、今は私の方がありそうだ。

 

「無理はするな」

 

「お互いにな」

 

ひらひらと手を振ると、私はトレーニングルームに向かう。

 

もう新人と呼べない部下達を、少しでも鍛えるために。生存率を上げるための、ささやかなあがきだ。

 

 

 

(続)




各地での激戦で疲弊しながらも、それでも必死に戦うストームチーム。
新人達も成長はするものの、疲弊の方がより大きいです。

戦いはじりじりと、明確な劣勢に傾き始めています。

人類は最後の一滴まで、絞り取られようとしています。
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