地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋   作:dwwyakata@2024

78 / 120
各地が、今まで以上の速度で蹂躙されます。

生きた戦闘機が、十万攻めてくるのです。

どうすれば対応できるというのか……


2、終わりの始まり

浜松基地の周囲に展開している部隊を、救出して廻る。

 

ドラゴンの数は増える一方。しかもその巣穴は、攻撃する手段が存在しないという状況だ。

 

しかもドラゴンは百匹一群で行動し、油断もしない。

 

人間を見かけると、分隊に別れることもなく。全力で撃滅するために向かってくる。例え少数が相手でも、だ。

 

火球の雨霰を受けている部隊を確認。

 

急いで上空に弾幕を張る。ネグリングはもうずっと稼働しっぱなしで、このままだといつ壊れてもおかしくない。

 

それ以上に、ミサイルの在庫が、いつまで保つか。

 

弾薬庫から転送できるといっても。

 

生産している工場が、いつまでも無事だという保証など、どこにもない。それに関してはアサルトやスナイパーライフルでも同じだ。

 

「ちょっと試してみるぜ!」

 

涼川が、DNG9を空中に放り投げる。

 

爆裂。

 

衝撃波で、二三匹のドラゴンが落ちてくるが、それだけだ。衝撃波は空を舞う生物には天敵と言って良いのだけれど。

 

ドラゴンはそれに対しても、ある程度以上の耐久力を有しているようだった。

 

キャリバンが突っ込み、負傷者を救助。

 

追いすがってくるドラゴンの炎が、容赦なくキャリバンの装甲を削り取っていく。要塞と呼ばれるキャリバンも、この火力の前には形無しだ。

 

弾幕を張りながら後退するが、相手の動きの方が明らかに早い。

 

遭遇したら、撃滅するしかない。

 

ドラゴンに噛みつかれ、何処かに運ばれて行くレンジャー。即応してドラゴンを撃ちおとす。

 

落ちてきたドラゴンの口から、兵士を助け出すが。

 

意識がない。キャリバンはもう満員だ。一緒に来ているグレイプに、軽傷者を移すしかない。

 

「こちらレンジャー17! 隊員の大半がやられた! 急いでくれ!」

 

レンジャー17から、悲痛な声。

 

思うに、ここ数日の敵の猛攻は、この最終攻撃に備えたものだったのだろう。兵力を分散させ、効率よくドラゴンの餌食にするため。そのため、各地でフォーリナーは猛攻を仕掛けてきた。

 

勿論、対応できなかったら、その場で叩き潰してしまうつもりだったのも、間違いない。

 

レンジャー17は、橋の欄干の下に逃げ込んで戦っていたが。

 

左右からドラゴンが代わる代わる攻撃を仕掛けてきており、とても逃げる余裕は無い。乱入し、アサルトを浴びせてドラゴンを落とす。

 

重傷者ばかりのレンジャー17を救助して、空から降ってくる火球にアーマーを抉り取られるように削られながら、どうにか敵を撃滅。

 

もう、どこの部隊も壊滅状態だ。レンジャー17は、泣き言を言う余裕も無く、ストームに合流した。生きている隊員も、戦闘力はほぼ残していない。

 

一度ならず、ドラゴンに噛みつかれて、空に運ばれそうにもなった。私が相当に敵を引きつけているから、これでも被害は減っている方だが。それがなければ、もうストームは全滅していただろう。

 

「桐川航空基地が、攻撃を受けている!」

 

悲痛な通信が入った。

 

極東最大の航空基地、桐川。多数のファイターと、強固な防衛網に守られていた筈なのに。ドラゴンの猛攻には、対処しきれなかったのか。無理もない。飛行ドローンなどとは訳が違う相手だ。

 

「キャリバンを浜松基地へ! 代わりを急いで前線に届けろ」

 

「イエッサ!」

 

日高少尉が、全力で浜松基地へキャリバンを飛ばす。

 

グレイプRZの方も負傷者で満杯だが。しばらく我慢していくしかない。

 

彼方此方の作戦に従事していたレンジャーチームを回収していく。中には無事だった部隊もあったが。

 

広範囲に散らばっているドラゴンが、無差別に攻撃をしてきており。

 

機甲師団や砲兵隊さえ、餌食になっているようだった。

 

「此方桐川航空基地! バゼラート部隊全滅! 滑走路をやられ、ファイターも飛び立てない!」

 

「砲撃支援は!」

 

「此方砲兵隊! 敵の攻撃が凄まじく、とてもではないが支援どころではない! 身を守ることさえ厳しい! これでは、まるで爆撃だ! これは本当に、生き物による攻撃なのか!?」

 

爆音。

 

悲鳴。

 

桐川航空基地の指揮官である相沢少将が、通信を入れてきた。それも、無差別通信で、平文である。

 

「メーデー! メーデー! もはや対策がない! 生存も撤退も不可能だ! この司令ビルにも、巨大生物が大挙して押しかけてきている! 静岡の戦線から現れた黒蟻や赤蟻だ!」

 

「此方司令部。 装備は放棄しろ! 命だけはどうあってもつなげ!」

 

「此方、ポーターズ!」

 

今度は輸送部隊だ。

 

ヒドラを使って輸送を行う部隊で、ストームも時々世話になっている。彼らも、どうやらドラゴンの苛烈な攻撃に晒されているらしい。

 

耐久力でいえば折り紙付きのヒドラだが。

 

炎上していると、彼らは呻いていた。

 

ポーターズの隊員が、怒りの声を上げる。ドラゴンは必ずしも人間を喰らうばかりではないようだ。

 

戦力を削ぐために、ただ燃やす。

 

そんな、動物ではあり得ない事もしているという。

 

「とかげども、許さない! 許さないぞ!」

 

絶望の声と、爆裂の音が、重なった。

 

遠すぎて、救援に行くことさえ出来ない。このストームチームでさえ、手近な人間さえ、助けることが出来ない状態なのだ。どうして、桐川にいる部隊を救援できよう。

 

「此方ホエール!」

 

浮かぶ要塞も、怒濤の猛攻に晒されていた。

 

直衛のファイターを全て失い、墜落しつつあるそうだ。もはや打つ手立てがないと言う言葉とともに、通信が途切れた。

 

生き延びた部隊とともに、浜松基地へ急ぐ。

 

此処はまだ無事だが。

 

それもすぐに過去形となった。

 

「ドラゴンの群れが来ます! 数は三百を超えています!」

 

「対空砲火準備! 谷山、電磁プリズンは」

 

「展開しますが、長くは保ちませんよ!」

 

「浜松基地にどうあっても逃げ込め。 その後は、籠城し、状況を見ながら東京基地へ脱出する!」

 

 

 

浜松基地に逃げ込むことには成功。

 

通信を開くと、悲鳴だけが聞こえてくる。

 

桐川航空基地の相沢少将は戦死。

 

数百のドラゴンによる一斉砲撃を浴び、ビルごと吹き飛ばされた。最後まで撤退の指示をしていたという。

 

当然桐川航空基地は通信途絶。

 

かろうじて脱出に成功した一部の部隊だけが、状況を伝えてきていた。

 

浜松基地は対空火力を全力で展開し、迫り来るドラゴンの群れを迎え撃っているが、それもいつまでも保ちそうにはない。

 

あまり頑丈とは言えない外壁の上に出る。

 

弟が、ずっとライサンダーを振り回し、戦い続けていた。

 

「姉貴、戦況は」

 

「バイザーで聞いていないのか」

 

「ああ、それどころではなくてな」

 

此奴がそれなのだ。他の部隊は、どのような苦境にいることか。

 

対空砲火は、榴弾に切り替えてある。一発でも当たれば、ある程度は怯ませることが出来る。頑強でも、装甲そのものは脆いのである。とはいっても、前大戦のヘクトル程度の防御は備えているが。

 

止まったところを、ガリア砲で吹き飛ばす。

 

私も、対空防御に切り替える。

 

ガトリングの弾をばらまき、敵を牽制しながら、当たった瞬間にガリア砲で狙撃。

 

しかし、ドラゴンの飛翔速度は尋常では無い。

 

一匹や二匹落としたところで、百匹一隊の群れが相手となると、どうにもならない。

 

火球が降り注ぐ。

 

側に来た矢島が盾を展開。新型の、小型の電磁プリズンを展開できるものだ。ただし強度はさほど高くない。

 

火球を防ぎきると、盾は壊れてしまった。

 

「敵の新手が来るようです」

 

「それだけ他の味方が楽になる」

 

弟は、それだけ、絶望している矢島に言った。

 

私も頷くと、黙々と戦い続ける。他の戦場での戦況は、地獄そのものだ。

 

元々敵に苦戦していた南米では、ドラゴンの襲来によって、わずか半日で半分の基地を喪失。

 

インドは既に陥落。

 

基地の全てがドラゴンに蹂躙された。

 

ロシア、アフリカにもドラゴンは既に飛来。各地の空軍が対応しているが、とても勝てる相手ではないと報告が来ている。

 

蜂もあっという間に世界中に拡散したが、ドラゴンの汚染はそれ以上だ。

 

前大戦の対空戦をみるかのようだと、私はぼやく。

 

圧倒的数で迫る飛行ドローンに、なすすべなく落とされていくEJ24を思わせる。あの時と同じだ。

 

ファイターに叶わなくても、数では圧倒的なドラゴンの前に。味方の空軍が、瞬く間に壊滅していく。

 

これは、おそらく。

 

浜松基地も保たない。

 

各地に展開している部隊に、基地にまとまった後は、地下に戦場を移すように日高司令が連絡している。

 

だが、敵はドラゴンだけでは無い。

 

地下での戦闘を十八番にしている巨大生物も、一斉に各地で反転攻勢に出た。ただでさえアースイーターによる打撃が大きかったところにこれだ。もともとマザーシップ攻略戦での被害から立ち直れてもいなかったし、もはやなすすべがない。

 

また、撤退中の部隊から通信が来る。

 

救助を要請してくる部隊は、殆どが半壊状態だった。陥落した基地から逃げてきた部隊もいるようだ。

 

すぐに基地を出撃。

 

救助した戦力も含めて、他の部隊全てに浜松を任せるけれど。耐え抜けるか、不安しかない。

 

ベガルタが上空に榴弾砲をばらまく。

 

効果は薄いが、装甲が厚いベガルタだ。牽制にはなる。ビルの合間に隠れていたレンジャーチームを、キャリバンに収納。

 

今度は浜松基地から連絡が来た。

 

「敵は高空兵器を集中攻撃している! ヒドラは格納庫に隠したが、攻撃機はのきなみ全滅だ!」

 

「駆けつけるまで守り抜いて欲しい!」

 

「何処までやれるか分からない!」

 

留守居を任せている大佐は、悲鳴同然の声を上げた。

 

やはり三隊から四隊のドラゴン、つまり四百匹弱が、浜松基地を襲っているようだ。そして、救援要請はひっきりなしに着続けている。

 

ストームは彼方此方を走り周りながら。

 

必死にドラゴンの群れを撃退し。

 

半壊以下の戦力になっている味方を、救援し続けた。

 

一度浜松基地に戻る。

 

既に負傷者で満杯。集ってきているドラゴン共を、対空砲火と協力して追い払う。追い払う過程でも、少なからず被害が出た。

 

カプセルを使って、交代で休む。

 

東京基地も、敵の攻撃を受けている様子だ。四波に渡る攻撃を受け、撃退したものの、大きな被害を出したという事だった。

 

「もはや、サテライト基地は何処も戦力を維持できない。 オートでの迎撃モードに兵器を設定し、全員各地区の主要基地へと移って欲しい」

 

日高司令が、事実上の敗北宣言を出したのが、その日の夕方。

 

推定で、現在十万を超えるドラゴンが、全世界に展開しているという。インドに続いて中東、中央アジアもドラゴンの攻撃を受けているという事だった。勿論、対策など取りようも無い。

 

かろうじて敵の巣に備えた戦力が集まっていた東南アジアと、北米、欧州は持ちこたえているが。

 

アフリカと中東は、早々に機動防御を放棄。

 

基地の地下に潜っての籠城戦に切り替えた。

 

ここぞとばかりに全世界に巨大生物が蔓延を開始。今まで持ちこたえていた前線を蹂躙し、避難ができそうな場所を悉く埋め尽くしていく。山岳地帯も密林も、数日の内に巨大生物たちの楽園と化した。

 

ドラゴンが一旦行動を停止したとき。

 

既にEDFは戦力の八十%を喪失。

 

大規模作戦を実施する力は、過去のものとなった。

 

特にドラゴンとまともにやり合ってしまった空軍は、ほぼ継戦能力を喪失していた。

 

 

 

九州地区、関西地区、東北地区、北海道地区。いずれの主要基地も、ドラゴンの攻撃で大打撃を受け。サテライト基地は全て放棄。いずれも巨大生物に対するオートでの迎撃能力だけを残した。

 

脱出できそうにない戦力は、各地のシェルターに逃げ込むか、基地の地下へと避難。地上部分を切り離して、以降は閉鎖空間での徹底抗戦に移行する事と決まった。

 

カーキソンは世界中に通信を入れる。

 

必ず、ドラゴンとアースイーターを撃滅する。

 

現在有効な作戦を開発中。

 

だから諦めずに、各人戦い抜いて欲しい。

 

しかしその通信は、ボイスオンリーのもの。各地での通信妨害があまりにも酷すぎて、とてもではないが、映像を流せないのだ。

 

東海地区は、一旦浜松基地に集結してから、極東の中心である東京基地へと合流することに決まった。

 

山梨の戦線に残った戦力と合流してから、である。

 

浜松基地に集結した戦力を、無事だったヒドラに乗せて、極東基地へピストン輸送。案の定、山梨戦線も壊滅的な打撃を受けており、四足からの攻撃にかろうじて耐えている状況だ。だからヒドラも、ただでさえ低空飛行せざるを得ず。その上複雑な空路を行かなければならないため、移動速度がどうしても額面通りの数値を維持できない。

 

山梨戦線を、放棄する必要があるかも知れない。

 

しかしその場合、四足をどうにかして屠らなければならない。東京基地がアウトレンジからの一方的な砲撃を喰らうことになる。

 

第一陣は、上手く東京基地に送り届けられた。

 

順番に、負傷者から行かせる。その間、無事だったビークル類をかき集める。私と弟、それにジョンソンは、殆ど寝る暇も無かった。散発的にあるドラゴンの攻撃を撃退しながら、カプセルで一時間寝られれば良い方。

 

そして起きれば、必ず地獄のような連絡が待っている。

 

47時間ほどぶっ通しで働いて、一時間だけ寝た私は。

 

カプセルから這い出すと、さっそく弟に凶報を聞かされる。

 

「海軍も壊滅状態だそうだ。 現在、幾つかの艦隊が集結して、戦力の再編成をしているとか」

 

「……小原博士はどうしている」

 

「例のアースイーターの調査の件か」

 

「そうだ」

 

敵は、条約に沿った兵器しか使えない。

 

もし本気で人類を滅ぼすつもりなら、それこそ地球ごと破壊してしまえばいいのだから。故に、敵の兵器には必ず隙がある。隙が無い強力な兵器など動員してしまえば、流石にフォリナの現状容認派も黙っていないだろうし、現状打開派だって条約違反を見て眉をひそめるだろう。

 

アースイーターは鉄壁の要塞だが。

 

同時に、敵を倒すための急所でもある。

 

「東京基地で、不眠不休の研究を続けてくれていると言うことだが、進捗は分からないな」

 

「有能なEDFの科学陣がいてもか」

 

「落ち着け、姉貴」

 

「……分かっていても、どうにも出来なかった。 戦略で此方を上回る相手には、一矢も報いられないのか」

 

カプセルに拳を叩き付ける。地下の彼奴は、この状況が来る事をきっと分かっていた。それでも、どうにも出来なかった。むしろ彼奴は良くやってくれたし、恨むのは筋違いだ。もしも彼奴が来なかったら、前大戦の時点で、人類は戦闘用奴隷だったのだから。

 

手が痛い。

 

この程度の痛みはすぐに治るけれど、口を引き結んで、黙り込む。カプセルに罪は無いし、馬鹿な事をしたと私は思った。感情の赴くまま動くと、結果として良くない事だけを引き起こす。分かっている筈なのに。どうしても進歩がない。

 

東京基地から通信。

 

浜松基地の全戦力を引き連れて、正式に撤退しろとあった。

 

同時に九州も関西に。

 

北海道も東北に。

 

それぞれ兵力を集約し、反撃作戦に備えるとある。

 

問題は、その途上だ。

 

現在、山梨戦線に、敵のかなり規模が大きい部隊が迫ってきている。ディロイを含む強力な戦力だ。

 

これを叩かないと。

 

ヒドラが抜けるための路さえ作れない。

 

空軍も砲兵隊も既に身動きが取れない状態で、ヒドラは護衛無しで飛ばすしかない状況。排除しなければならないのである。

 

無事な全ビークルを動員。

 

後はヒドラに負傷者を乗せて、山梨戦線に合流して貰う。

 

ビークルでいわゆるコンボイを組んで移動。

 

ベガルタの補修も満足に出来ていない現状だ。途中、何度となく黒蟻や凶蟲の群れと遭遇。

 

私や弟が先頭に立って、撃破して進む。

 

味方部隊は逃げ腰だ。

 

逃げても何処にも行きようがない事は分かっているから、逃走する兵士だけは出ないけれど。

 

弾幕を張るのも、上手く行かない。

 

涼川が、腰が引けた味方を見て、舌打ちしていた。

 

「どうにもなんねえなあ。 前の大戦も末期はこんなだったか?」

 

「末期は逃げ場がない民間人から隊員を募ったり、ろくに訓練もしないで戦場に出したりしていたな」

 

「だとすると、訓練だけしているだけ今回のがましか」

 

涼川がケラケラ笑う。

 

発狂しているようにも見えるが。此奴は前から、普段からこの通りだ。今更驚くことは何も無い。

 

コンテナを何両か積んでいるが、その中には貴重な医薬品や食糧もある。

 

各地のシェルターには、守りを固めて待てとしか言えない。もはや脱出は不可能だからだ。

 

旧式のビークルや、身動きが取れなくなっている老病の隊員もいる。

 

彼らはシェルターに残していく。

 

これからの戦いは、地獄だ。もはや、足手まといになる可能性がある隊員は、連れて行けないのだ。

 

半日で、十二回の襲撃。

 

そのたびにストームが先頭に立ち。頼りない味方の迎撃弾幕を横目に、迫る敵を退けた。

 

ドラゴンはどうにかいなかったが、この過程で相当なアーマーとビークルを喪失。特にグレイプなどの輸送能力があるビークルの半数を失ったのが、非常に痛い。グレイプRZは無事だが、キャリバンと一緒に救急車と半ば化している。

 

幸い、医療経験がある民間協力者が残ってくれていたので、キャリバンの中で手当を担当して貰う。

 

ドラゴンの襲撃が無い事だけは幸運だったが。

 

山梨の戦線に合流したら、それも過去のものとなるだろう。迫っているディロイを含む戦力には、ドラゴンも合流しているという報告があったからだ。

 

どうにか山梨戦線と合流。

 

指揮をしていた老准将は、既に東京基地へ移った後だった。

 

代わりに、中国地区の北京基地から一緒に引き上げてきた、エッケマルク中将が、高笑いを浮かべながら出迎えてくる。

 

「流石ストームチームだ。 敗残兵をきちんと脱落者なく連れてきてくれたな!」

 

エッケマルクは松葉杖を突いていて、なおかつ膝を固定して吊っている。負傷から立ち直っていないのだ。

 

愛騎であるプロテウスもいる。

 

これだけは幸運だ。補修は完全では無い様子だが、これからの敵撃退作戦で、大きな力になる。

 

コンボイはそのまま、東京基地へ行かせる。

 

此処からなら、東京基地の支援もある。どうにかストームが守らなくても、撤退を完遂できるだろう。

 

エッケマルクは弟に任せて、ジョンソンと一緒に山梨戦線を見て廻る。

 

ギガンテスはそれなりの数がいるが、ひっきりなしに迫ってくる敵の軍勢に対抗するために必要だ。敵迎撃作戦には持ち出せないだろう。

 

プロテウスと、後連れて行けて、数部隊程度か。

 

それでドラゴンとまたやり合わなければならないと思うと。乾いた笑いが漏れてくる。

 

見下ろした先には、青ヘクトルがかなりいる。

 

盾を持った機体を見かけたので、ガリア砲を叩き込む。数発うち込んで、盾を避け着弾させて、撃滅。

 

これで、少しは味方がやりやすくなるはずだ。もっとも、今の青ヘクトルは、激戦で傷ついていたようだったが。

 

「やるな。 流石だ」

 

「多少倒しても、大勢に影響は無いさ」

 

「そうかも知れないが、味方の被害は減る」

 

ジョンソンがハーキュリーを取り出すと、手頃な青ヘクトルを狙撃。私もガリア砲で合わせて狙撃する。

 

数回、狙撃して。

 

そのうち二回ピンホールショットが決まる。

 

アウトレンジからの攻撃だから、敵には何も出来ない。爆裂する青ヘクトルを一瞥すると、次に狙いを定めた。

 

シールドベアラーはまだ出てきていない。

 

だから、敵の部隊を、少しでも削っておいた方が良いだろう。

 

その後は、しばらく無心で敵をたたく。

 

青ヘクトルは少なくとも、視界にいる奴は全て打ち抜いておいた。他のヘクトルは、元からいる隊員達に任せておいても平気だろう。

 

昔のMBTならともかく、ギガンテスなら充分以上に戦い抜けるはずだ。

 

弟が来る。

 

難しい顔をしていた。

 

「我々で、四足を撃破する。 更に、山梨戦線に来ている敵を撃退する」

 

「両方とも、我々でやるのか」

 

「そうだ」

 

弟はすまなそうにしているが。私も、それ以上を追求する気にはなれなかった。確かにどちらもやらなければ、そもそもこれ以降の戦闘が成立しないのである。反撃どころではなくなる。

 

味方の状況は。

 

ストームのメンバーは、激烈な戦闘で、全員が大なり小なり負傷している。更にこれから、最低でもドラゴン三隊を含む敵と交戦しなければならないかと思うと、ため息が漏れてくる。

 

「プロテウスが支援してくれるが、それだけだ。 空軍はもはや継戦能力を喪失し、此方にはこられそうにない」

 

「ディロイ対策が問題だが」

 

そのディロイだが。

 

三機以上が確認されているという。どうもドラゴン一隊ごとに、一機が護衛についているようなのだ。

 

ただでさえディロイは高い戦闘力を持っているのに、あれが三体同時。

 

さて、どうしたものだろうか。

 

やるしかないことは分かっている。しかし、この戦力差は。

 

不意に、ジョンソンが挙手して、話を切り替える。

 

「ストームリーダー。 一つ約束して欲しい」

 

「何だ」

 

「この戦いは悲惨極まりないものになるだろう。 だが、アースイーターを落として、なお生き延びたら。 俺を独立部隊の長になるように、働きかけてくれ」

 

まだそんな事をいっているのか。

 

しかし、モチベーションを保つのは重要だ。ジョンソンにしてみれば、それが人生の目的なのだから、なおさらだろう。

 

弟は分かったと言った。即答だった。

 

文句を言おうとする私に目配せする弟。それを見て、弟の意思を悟った私は、黙ることにした。

 

ひょっとして、一番今狂気に足首を掴まれているのは、他ならぬジョンソンかも知れない。

 

果てしなく続く戦い。

 

出口が見えない末期戦。

 

誰が、彼を責めることが出来ようか。

 

ギガンテスが、南部から来るヘクトル部隊に射撃開始。ネグリング部隊も、それに併せて攻撃を開始する。

 

南からの敵は、まず近づけなければ、それでいい。

 

問題は、接近しつつある、敵の本隊。ドラゴンを含む部隊だ。此方は、ストームで対処しなければならない。

 

結局、レンジャー三チームが協力してくれることとなったが。

 

それ以上は支援に出られそうに無い。

 

整列した彼らを見て、私は思わず呻いていた。装備も劣悪だが、それ以上に。ストームと同じか、それより酷い負傷をしているのだ。

 

「これより、ドラゴン三百匹と戦う。 敵にはディロイもいる」

 

エッケマルクが言うが、誰も泣き言を漏らさない。

 

もう恐怖が麻痺してしまっているのは、確実だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。