地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋   作:dwwyakata@2024

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アルゴとの戦闘で大きなダメージを受けたストームチーム。

多くの負傷者を出し、それでも。

敵は待ってはくれません。

次の戦場に行かなければならないのです。


1、無限連鎖の山

目を覚ますと、ベッドだった。

 

あの爆発で、死ななかったのか。とことん運が良いというか、悪いというか。隣のベッドには、弟が寝ていた。

 

弟は、もう意識を戻していたが。

 

左腕がない。

 

これは、再移植だろう。今だと二日くらいで馴染むが、その間は激痛に苛まれることになる。

 

私も人の事は言えない。

 

少しずつ体を動かして分かったが、左足のふくらはぎがごっそりなくなっている。これも、補填しなければ戦えない。

 

「筅と日高少尉、矢島はカプセル行きだ。 急速医療で、復帰させるそうだ」

 

「うちから死者は」

 

「出なかった。 ただし、ジョンソンがまだ意識を取り戻していない。 二十メートルも吹っ飛ばされて、剥き出しになっていた鉄骨に串刺しになったからな」

 

それは、普通だったら即死だ。

 

EDFはフォーリナーの技術を取り入れて、多くの力を得た。今の時代、死にさえしなければ、だいたい体は元に戻る。

 

だが。

 

アルゴとの戦いで、ストームチームは半壊した。

 

一週間以上は、まともに戦えないだろう。

 

「無事な奴は」

 

「今動けるのは、三川と香坂夫妻、原田と涼川だけだな」

 

「他は皆、我々と似たような感じか」

 

「そうだ」

 

池口はネグリングから脱出できず、半分押し潰された状態で救助された。酷い痛みに苦しんで、病室でうんうん唸っているそうだ。

 

少しずつ、話を聞く。

 

アルゴを撃墜したものの、多数の攻撃機との勝負を挑まされた東京基地の戦力は半減以下。既に、大規模攻撃作戦を実行できる人員が残っていないという。

 

欧州でも似たような戦いがあった。

 

ノルマンディーから、四機の四足を含む大軍が上陸したのである。因縁の土地から上陸してきた敵に対し、欧州支部はオメガチームを主力に戦った。どうにか敵を撃滅を果たしたが、味方も壊滅。

 

幾つかの基地を既に放棄して、守に徹しているそうだ。

 

医師に呼ばれたので、手術室に出向く。

 

何度もやっている、クローンした体のパーツを、接合する手術だ。手術そのものはそれほど時間が掛からないのだが、問題はその後。馴染むまで、とにかく痛いのである。

 

気がついていなかったが、左耳も半分ほど。右手二の腕も、かなりの肉が持って行かれていた。

 

あの爆発に巻き込まれたのだ。

 

その程度で済めば僥倖だっただろう。

 

麻酔を使って、手術をして。そして気がつけば、手術終わり。それからはしばらく、地獄の痛みを味わうことになる。

 

バイザーを付けて、地下病院を歩く。

 

カプセルに入れられている三人はまだ意識が戻らないらしいし、面会しても仕方が無い。涼川の所に行ったら、奴は笑いながら言うのだった。

 

左足を、吹っ飛ばされたと。

 

既に手術は終えているそうだが、笑いながら足が痛くて仕方が無いと涼川は言う。これはひょっとして。涼川も、既に精神の均衡を崩しはじめている。元々涼川は頭のネジが外れがちの所があったが。

 

それでも、少し様子がおかしいなと、私は思った。

 

病院を出る。

 

雨が降っていた。それも、かなりの大雨である。

 

日高司令から通信が来る。

 

「手術を終えたと聞いた。 苦しいとは思うのだが、可能な限り早く、ストームリーダーと一緒に、会議に出て欲しい」

 

「また何か、問題が?」

 

「神奈川県近郊の山地にあるシェルターに、敵が攻撃を集中してきている。 六機のシールドベアラーで周辺を固め、多くの巨大生物が、シェルターの周囲を掘り進んでいるようだ」

 

罠だな。

 

私は即座に判断。

 

或いは、アルゴとの戦いで、どれだけの戦力を東京基地が残しているか、見るための攻撃だろう。

 

シェルターはもつ。

 

そう冷然と突き放すべきかも知れない。

 

しかし問題があると、日高司令が言う。

 

「敵がかなり露骨な攻撃をしていて、しかもシェルター側が、その状況を知っているのだ」

 

「つまり、内部で暴動なりカルトなりの凶行が起きかねないと」

 

「その通りだ」

 

呻く。

 

カルトが内部を制圧し、隔壁を解放。全滅してしまったシェルターのことが、脳裏に浮かぶ。

 

そして巨大生物は、露骨な攻撃を陽動としているが。

 

しかし、陽動だからと言って、愚かな行動に出た人類を、見逃したりはしないだろう。

 

その上、今攻撃を受けているシェルターは、八万人の収容人数に対して、十九万人を収容してしまっているという。

 

以前はEDFの制圧圏内にあったのだが。

 

この間のアルゴとの戦闘で、防衛線を下げざるを得ず。救助の手を伸ばすことも出来ず。結果、このような事態になったのだとか。

 

しかも、である。

 

フォーリナーは、此方の通信が届いているか届いていないかの状況を、把握しているとしか思えない。

 

なおかつ、ギリギリ救援部隊を出せるシェルターを、わざわざ狙ってきているとしか考えられない。

 

指摘すると、日高司令は、分かっていると、押し殺した声で言った。

 

「君達が壊滅状態に陥ってから、何度かの攻撃があってな。 いずれもが、このような、勢力圏外ぎりぎりの地点でのものだった。 それらでは、大きな損害を出しながら、別のチームが対処した。 私も無能だが、これがフォーリナーによる陽動作戦だと言う事くらいはわかる。 しかし、それだからこそ、ストームチーム健在を示すことは、大きな意味があると思う」

 

今の状態で、健在、か。

 

いずれにしても、命令には逆らえない。病院に戻ると、弟を連れ出す。医師には怖い顔で、まだ筅や日高少尉、矢島は戦いには出せないと言われた。ジョンソンも、今回は戦いに出せない。

 

少ない戦力で、やりくりするしかない。

 

今後は更に制約が増える事を思うと、うんざりしてしまうが。他に、もはや手段はなかった。

 

 

 

神奈川北部にある山地に、ストームチームが専用機で到着。

 

幸い、好き勝手なことをしている巨大生物の中に、ドラゴンはいない。ヘクトルや攻撃機などの、機械化戦力も見受けられなかった。

 

ただ、事前情報通り、シールドベアラーが六機。

 

奴らに守られながら、赤蟻、黒蟻、凶蟲が相当数、見せつけるように、シェルター入り口に攻撃を続行している。

 

なだれ込まれたら、シェルターは全滅だ。

 

中にいるEDFの部隊は、一チームだけ。それも、PTSDなどの治療中であったり、年老いて身体能力が低下して、前線から外れている者達などで編成されている部隊なのである。

 

今回は、流石に戦力低下しているストームチームにだけ任せるのは忍びないと思ったのだろう。

 

フェンサーチーム三つ、ウィングダイバーチーム1つが参戦している。

 

敵の編成から考えて、これならばどうにかなる。

 

しかし、敵はわざわざどうにかなる戦力で、此方の出方をうかがっているとも言える。おそらく欧州でも、今頃同じような事が行われているだろう。

 

北米では、少し前に、更に大胆な攻撃を、敵が仕掛けてきた。

 

既に半ば放棄されていた総司令部の上空に、マザーシップが到来したのである。しかもジェノサイド砲を総司令部にうち込んだあげく、四足歩行要塞まで投下してきた。もはや抵抗する能力もない総司令部は、これで陥落した。

 

前大戦と違って、消滅したわけでは無い。ただ、これが戦いの区切りになった。

 

カーキソン元帥は、総司令部の機能を、既に別に移している。今回の陥落は、想定済みの結果で、基地に残っていたのは、無人の迎撃システムだけだった。とはいっても、EDF最大の拠点が落ちたのは事実。

 

北米はこれから、前大戦と同じ、長いゲリラ戦に徹するしかない状況が来た。極東も、その状態に、近くなりつつある。

 

後方を見る。

 

ビークル類はいない。

 

前回の戦い、アルゴとの死闘の中で、ストームチームに渡されていたビークルは、大半がやられてしまった。

 

残っているのは、バゼラートとブルートのヘリ二機だけ。

 

キャリバンとグレイプは、なんとか支給して貰った。

 

しかしネグリングとイプシロンは、まだ間に合っていない。東京基地の工場はフル回転しているが、それでも、である。

 

人数が減ったチームの再統合が進んでおり、その過程で放出されるビークルもあるが。しかし、残っているビークルは旧型ばかりで、最前線に投入するのは、厳しい代物だ。

 

ベガルタの最新型と一緒に、キャリバンとグレイプ、ネグリングとイプシロンは渡して貰う予定だが。

 

それもいつになる事か。

 

敵は既にかなり地面を掘り進んでおり、その周辺にシールドベアラーが。まずはシールドベアラーをできる限り短時間で潰し、それ以降に巨大生物を排除することになる。かといって、六機を同時攻撃しても、味方の戦力が手薄になる。各個撃破の好餌になるだけだ。

 

そこで、まず私と弟が、敵に突入する。

 

シールドベアラーをなんとしても、私達で撃破。

 

その後、おびき出された敵を、本隊にて迎撃、壊滅させる。

 

毎度の無茶な作戦だが、今回は敵に空軍がいない。少なくとも、今の時点では、である。それならば、或いは。

 

「攻撃開始!」

 

弟が、声を張り上げる。

 

ちなみに私も弟も、肉を移植した後遺症で、まだ全身が酷く痛む。筅、矢島、日高少尉は、まだベットに移された状態で、前線復帰は無理とも言われている。幸い、敵の攻撃は間隔が開き始めている。

 

戦況のコントロールに成功したと判断しているのだとすれば。

 

敵が次に何をしてくるかも、見当がつくのだが。

 

無言で、私は突貫。

 

ブースターを全力でふかす。少しいつもよりも、加速がいい。これは三島が、データをスーツにフィードバックしてくれたか。

 

無言のまま、黒蟻どもが守っているシールドベアラーに突貫。

 

振りかぶったハンマーを、フルスイングで叩き付ける。

 

横っ腹を殴り飛ばされたシールドベアラーが傾き、さらなるスピアの一撃を受けて、大破炎上。

 

シールドが消える。

 

後方は任せる。

 

いつもより更に機嫌が悪い涼川が、原田と一緒に大火力での攻撃を開始している。手伝う必要はない。

 

更にもう一機へ。

 

赤蟻がスクラムを組んで防ごうとするが、跳躍。

 

上空から、躍りかかるようにして、シールドベアラーに特攻。黒蟻が酸を飛ばしてくるが、気にしない。

 

アーマーを多少削られてもいい。

 

今は、シールドベアラーを、一瞬でも早く潰すこと。それに、攻撃を貰ってみて分かったが、これはアーマーの性能が、少し上がっているか。

 

ハンマーで、地面を吹っ飛ばして、巨大生物どもを蹴散らし。

 

更に返す刀で、今の一撃でぐらついているシールドベアラーに、至近からガリア砲を叩き込んでやる。

 

これで、二機目。

 

弟も、フュージョンブラスターで敵を薙ぎ払いながら、特攻を続けている。既に一機のシールドベアラーを撃破。もう一機を潰しに向かっている様子だ。

 

私も、無理矢理敵の群れを突破。三機目に向かう。

 

ノルマはそれぞれ三機。

 

本当は満身創痍だけれど、フォーリナーにストームチーム健在を見せつけるには、これくらいで丁度良いだろう。

 

三機目のシールドベアラー視認。

 

周囲に、凶蟲が分厚く壁を作っている。後方は涼川が大火力で薙ぎ払っていて、混乱状態。乱戦になっているようだが、構っている余裕は無い。

 

飛んでくる無数の蜘蛛糸を強引に突破。

 

流石に前より若干良いアーマーといえど、かなりの消耗。突入しながら、ハンマーを振るい、敵を右に左に蹴散らすが。

 

そろそろ限界だと、警告音が鳴り続けている。

 

体の痛みも、倍加したようだった。

 

シールドに飛び込む。

 

至近から、ガリア砲をぶっ放し、シールドベアラーを撃破。辺りにスピアを叩き込みながら、包囲網を突破。上空にブースターをふかして上がり、敵の様子を確認。

 

弟も、三機目のシールドベアラーを撃破。

 

これで、敵は丸裸になった。

 

味方は。

 

予定通り、進んでいる。

 

盾を揃えて前進したフェンサーが敵の攻撃を防ぎながら、その後ろからストームチームが攻撃。

 

ウィングダイバーは敵を攪乱しながら、ヒットアンドアウェイ。

 

昔で言うと、ファランクスを思わせる状況だ。味方のフェンサー部隊も、武装こそ不揃いだが、耐久力にものを言わせて、敵を押し返している。

 

敵の数さえ、狂っていなければ。

 

EDFは戦えるのだ。

 

ほどなく、敵が撤退を開始。アースイーターがかなり近い事もあり、追撃する余裕は無い。敵に引っ張り出された感触だが、どうにも他に手がなかったのだ。

 

被害も最小限に抑えることが出来た。

 

見回すと、敵の被害が予想外に小さい。シールドベアラーを潰された後、撤退をはじめるのも早かったが。

 

それ以上に、そもそも戦うつもりが無かったとしか思えない。

 

ストームチームは健在だ。

 

見せつけてやったが。それも相手はどう取っているか。ならばさらなる大戦力を投入すると考えるか、或いは。

 

シェルターの周囲を、速乾性コンクリートで補強しているスカウトを横目に、ヒドラに戻る。

 

今回は比較的楽な戦いだったが。

 

それでも、原田が軽い手傷を受けていた。大火力で敵を薙ぎ払っている間に接近してきた黒蟻に、酸を浴びたのである。その場でサブウェポンのアサルトで打ち倒したが、酸でのダメージは深刻で、アーマーを抜かれていた。

 

既に手当を受けており、酸の除去も済んでいるが。今日は安静にさせろと、医師には言われている。

 

スーツのメンテナンスを技術者達に任せる。

 

ヒドラの操縦スタッフに混じって、カトリーヌが働いている。どうやら筋力補助用の部分パワードスーツを着けて、力仕事も手伝っている様子だ。フェンサースーツを例に出すまでもなく、この手のパワードスーツは、とっくに実用化されている。

 

勿論一種の下働きだが。

 

カトリーヌは、文句一つ言っていない。元々本人が希望してはじめたことだ。それに、今は民間協力者でさえありがたい状況。

 

人間が死にすぎて、手が足りないのだ。

 

既にEDFの人員は三万を切っているという噂もある。ドラゴンが現れた日に戦力の八割が失われたが、それ以降も大規模な攻撃が続き、戦闘要員はすり減らされる一方なのだ。戦場に投入されている第三世代の強化クローンも、とても数が足りない。熟練兵が一人死ぬと、それだけ戦線が後退するのである。

 

幸い、強化クローンの登場によって、ド素人に武器だけ持たせて地獄の戦場に送り込むような、前大戦末期の惨状は減った。

 

しかし戦況が悲惨なことに代わりは無い。

 

このままでは、各地の基地の側にあるシェルター内にいる非戦闘員を無理矢理徴用して、兵隊に仕立てて、巨大生物と戦わせる日が来る。

 

それも、あまり遠くない未来に、だ。

 

後の処理はスカウトに任せて、一旦ヒドラに戻る。しばらくゆっくりしていると、次の作戦司令が来た。

 

「苦しい戦いが続いているところすまない。 いよいよ、東南アジアの巨大生物の巣に、攻撃を仕掛ける」

 

まだそんな事をいっているのか。

 

一瞬そう言い返し掛けたが。しかしながら、蜂の被害が深刻である現状、巣を破壊しておく事は決して損では無い。

 

それに東南アジア地区に集結させている戦力を、他に分散させることで、多少は戦況の改善も期待出来る。

 

今、EDFは死に体だが。

 

それでも、まだ勝利への執念を捨てていない。その事だけは、立派だと私も思う。

 

通信は私だけでは無く、弟にも行っている。

 

「衛星兵器による直接攻撃を行うべきでしょう」

 

「敵の巣穴の周囲にシールドベアラーが多数確認されている。 これを排除しない限り、大威力の砲撃は効果が薄い」

 

位置を考える限り、第五艦隊からの支援砲撃は期待出来ないとみて良い。

 

かといって、砲兵隊をそこまで内陸に行かせることは、今の状況では文字通り自殺行為だ。ドラゴンに捕捉され、瞬く間に丸焼きにされてしまうだろう。

 

つまり、少数精鋭での特攻を仕掛け。

 

シールドベアラーを排除。

 

その後、衛星兵器で大威力砲撃を実施し、敵の巣穴を爆砕する。以上が作戦の骨子となるわけだ。

 

出来ないとは言わないが。

 

問題は、巣から確実に現れる蜂の排除である。

 

実際に現物を見た私から言わせると、あの様子では軽く数千の蜂が周囲にいるはず。巣の中には、更に多くがいると見て良いだろう。

 

しかも蜂は巡航速度だけではなく巡航距離も凄まじく、太平洋を平気で超える。もたついていると、周囲にいる蜂がわんさか集まってくる。

 

ビークル類について確認。

 

支給を約束されていたベガルタについては、現在工場で最終調整中だという。このベガルタはドラゴンの群れを一機で相手にすることを想定している仕様のため、頑強でありながらかなりデリケートでもある。

 

幾つかの不具合が現時点で見つかっており、改善し次第戦場に投入するそうだ。

 

イプシロンについては、まもなく最新鋭のものが支給される。

 

ただこれは、東京基地の守りについていた機体。今までの戦闘で使用者が鬼籍に入ったため、ストームチームに廻ってきたものだ。

 

ネグリングも同じく、東京基地の防衛戦力。

 

いずれも、有効活用して欲しいと、念を押された。

 

東京基地に到着。

 

案の定、もう少しで入り口を破られるところだったと、シェルターは相当にごねているそうだ。

 

人員を避難させる余裕はあまりないと告げているが、それなら自分たちで勝手に逃げると言い出しているそうで、手に負えないらしい。

 

だが、シェルター内の人員過密を考えると、彼らの怒りもよく分かる。

 

とにかく、ヒドラで過剰人員の輸送をはじめることに決めたそうだが。敵はいったい、いつまでまってくれるものか。

 

日高司令には、作戦開始には、重傷者の復帰が絶対条件だと、弟が告げ。

 

それは入れられた。

 

矢島は少し前に目を覚ました。筅も。

 

しかし強化クローンではなく、普通の人間である日高少尉は。まだ、目を覚まさない。

 

 

 

夢を見た。

 

あまり有能では無いと、揶揄される父。

 

コネを使って成り上がったという噂は、いつでも聞いていた。戦争が始まる前、まだ小学生だった私は。

 

もうその頃には、うっすらと父に反発を覚えていた気がする。

 

EDFとかいうよく分からない部隊に入って、忙しい忙しいと母を放置して。家庭を顧みず、仕事に逃げた。

 

やがて戦争が始まって、更に揶揄は酷くなった。

 

本部は敵と通じている。

 

日高司令は、敵の手先だ。

 

実際に聞いた噂話である。私は、どうしてだろう。それを聞いても、内心ではそうかも知れないとさえ考えていた。

 

EDFに入って、父の仕事ぶりを見て。

 

やはり、噂は事実無根ではなかったのだと知った。ストームチームに入ってからは、なおさら父の軍人としての無能さが、肌で分かるようになった。勇敢で、前線で常に戦っているが、指揮官としては有能とは言いがたい。

 

だが、その事で。

 

ストームチームの仲間達が、私を責めることは無かった。

 

ストームリーダーは渋くて格好いいおじさんだけれど。私を、むしろ良く褒めてくれた。お前がみんなをまとめてくれるから、戦いやすい。

 

はじめ特務少佐は、普段はずっとフェンサースーツを着込んでいて、中身があんなにちっちゃいとは思わなかった。実際に香坂夫妻に呼ばれて、食事を一緒にしてみると。あまり考えを口にはしないけれど。芯が通っていて、強くて。それでも完璧では無くて、色々悩んだり苦しんでいたりする人なのだとも分かった。

 

ジョンソンさんは、とても野心的。

 

いずれ自分の部隊を持ちたい。その時には、お前を副司令官にしてやる。そう言われた。訓練の時だ。

 

私は平々凡々な軍人。

 

狙撃もあんまり上手じゃないし、格闘技なんて出来ない。運転はちょっとは出来るけれど、逆に言えば軍人じゃなくても、それくらいは出来る。

 

みんなの中心になるって事が、それだけ評価されるのは、どうしてなのかよく分からない。

 

父が、そうであったのだと。

 

最近は気付いて。

 

そして内心嫌っていた父に自分がそっくりだと言う事にも、今更気付いて。

 

私は、どこかで、うんざりしていたのかも知れない。

 

戦いが酷くなっていく一方の中。死んでいく友達も、多くなった。同期の誰が死んだって連絡が、毎日来る。葬式なんて、する暇も無い。

 

仲間だって、散々傷つく。

 

優しくても可愛くても、敵は容赦なんてしてくれない。だって、敵だって必死なのだから。滅びたくなくて、こんな無茶をしているから。だからこそ手なんて抜けないし、此方に同情している余裕だってないんだろう。

 

目を開けると。

 

病院のベッドに寝かされていた。

 

今までの浮遊感は何だろう。まさか噂に聞く回復用の培養槽に入れられていたのか。あれは要人などを急速回復させるために使うと聞いていたけれど。

 

少しずつ、頭が働き始める。

 

何のことは無い。

 

もう、使う人が殆ど死んでしまって、私のような役立たずにも使える機会が廻ってきた。それだけだ。

 

身を起こそうとして、失敗。

 

三回目で、やっと体を起こすことが出来た。

 

看護師がすぐに飛んできて、状況を聞かされる。筅ちゃんや矢島君も同じように酷い怪我をしたらしいのだけれど、もう目覚めているとか。

 

貴方が最後ですよ。

 

そう言われた。

 

父は当然見舞いに来なかったという。通信で時々声を聞いたけれど。無理もないなと思った。疲れが全身に溜まっているのがよく分かる声だったし、何より私を特別扱いなんて出来ないだろう。

 

黒沢君が来る。

 

にこりと笑みを向けるけれど、黒沢君は表情一つ変えない。相変わらず無愛想なままだ。香坂夫妻に鍛えられて、ぐんぐん軍人としては立派になっているようだけれど、人間としては相変わらず寡黙で、殆ど周囲と交流もしない。

 

「もう回復は終わったようですね」

 

「アルゴはやっつけたの?」

 

「どうにか。 あの戦いで味方のビークル類は全滅状態。 しかも、これから東南アジアに、蜂の巣を叩きに行く予定です」

 

珍しく、黒沢君が良く喋る。

 

そういえば、大けがをする前。ナナコちゃんが酷い怪我をしたり。周り中が酷い事になったりしていて。

 

私は随分泣いていたような気がするけれど。

 

今はどうしてだろう。

 

妙に、体がすっきりしていた。頭の方もクリアになっている。

 

「検査をした後、すぐに出て貰います。 敵の攻撃がいつあるか分からない状態で、東南アジア地区に大戦力をいつまでも貼り付けられない、ということですので」

 

「大丈夫、歩けるよ」

 

ベッドから降りる。

 

やはりそうだ。体が慣れてきているからだろうか。軽く感じる。

 

さっきは体を起こすのにも苦労したけれど。

 

それはエンジンが掛かっていなかったからだろう。ギアが入ってきた今は。前よりも、体を動かせるほどだ。

 

矢島君と原田君が待っていた。

 

一緒に訓練場に行って、シミュレーションをする。そして、驚かれた。

 

「あれ、少尉、こんなに強かったですか!?」

 

最初の戦いが終わった後、驚かれる。

 

今回の敵の殲滅率は、私が四割強。大威力火器を持っていた原田君より上だった。コツを掴んだみたいだと応えて、もう一セット。

 

今度は難易度を上げる。

 

何度か戦って見るが、やっぱり体が軽い。ビークルをシミュレーションで操作もしてみたけれど。

 

非常に軽やかに動かせる。

 

矢島君が挙手する。

 

「ナナコを連れてきて、難易度インフェルノやってみましょう。 今回なら、勝てるかも知れません」

 

「ん、いいけど」

 

不思議だ。

 

あれほど内心嫌だったのに。

 

戦いが、嫌ではなくなっていた。

 

それでやっと私は気付いた。

 

心が壊れてきているのだと。

 

何かされたとか、埋め込まれたとか、そういうのではないだろう。

 

人間は負荷が続くと、全体を守るために、何処かを壊すのだと聞いている。私の場合は、戦いに関する倫理観がそうだったのだろう。

 

いずれにしても、今後生き残るためには、良いことだ。

 

それからも何とかシミュレーションをした。驚くほど、冷静に戦闘で立ち回る事が出来た。至近に敵が来ても平気。即応できる。

 

誰かが襲われそうになっても、対応は冷静に行える。そして皮肉な事に、冷静に対応することで、却って被害を減らすことが出来るのだった。

 

シミュレーションが終わって。

 

にこにこしている私を見て、原田君と矢島君が困惑しているのが分かった。

 

でも、彼らをこれでもっと守る事が出来ると思うと。

 

先輩として誇らしいし。

 

もっともっとがんばれるとも思った。

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