地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
例えどれだけ戦況に与える影響が小さくても。
それでもやらなければなりません。
もはや自殺行為規模の戦力ですが……それでもです。
もはや安全と言える土地などない中。
ドラゴンに見つからないよう、ヒドラは出来るだけ低空飛行で行く。
現地では十チームほどの戦闘部隊と合流できるという。支援戦力も、以前ストームチームで制圧した基地から、砲撃を加えてくれるという事だ。対空クラスター弾も、かなり運び込んできているという。
逆に言うと。
たったの十チームで、敵の巣を落とせ、という事でもある。
これでせめてオメガやストライクフォースライトニングが加わってくれれば話は違うのだけれど。
どちらも現在、居場所がよく分からない。
北米は既に泥沼状態で、総司令部は転々としながらゲリラ戦を行っている。だが遠慮も呵責も必要ないフォーリナーは、各地の基地だけでは無く、人間の文明やその残骸を片っ端から押し潰しているようで、その内北米は更地になるのでは無いかと揶揄されていた。そして、それはおそらく、そう遠い未来ではないし。
事実、フォーリナーには、それをするだけの物量があるのだ。
カーキソンにとってむしろゲリラ戦は十八番だが、それもいつまで続けられるか。
高官の中には行方不明になった者も多く、戦死したかどうかさえ分からない状況が続いていた。
基地に到着。
不自然なくらいに、ダメージがない。
敵が残った戦力を誘い込むためにそうしているのは、明白なくらいだった。機械などでも、壊れやすい部分を故意に作って置くことで、ダメージがあった場合に其処へ集中させることが出来る。
戦況コントロールの一環だろう。
そして、人類には。
そうと分かっていても、相手の掌で踊るしかないというジレンマがある。戦略の恐ろしさは、実に此処にある。
弟と、復帰したばかりのジョンソンと一緒に、チームリーダー達の前に出る。これから、会議を行うのだ。
ざっと見回すが。
あまり有名なチームはいない。
殆どが、どうにかかき集められたという風情のメンバーだ。というよりも、今やEDFは、十チームの攻撃班をかき集めるだけで、精一杯の実力しかないというべきなのだろう。悲しい話だが。
「まず、現状を」
無言で立ち上がったのは、基地指揮官。
東南アジア地区の司令官でもある。少し前に先代の司令官が戦死した。嫌な奴だったが、それなりの能力はある男だったし、最後まで責任を放棄せずに戦い、死んだと言う。馬は合わなかったが、立派な男であったことに違いは無いのだろう。少なくとも、責任放棄は最後までしなかったのだから。
新しい指揮官はまだ若い男で、少し不安になった。
階級も准将だという。
おそらく、ほぼ間違いなく、前大戦の末期に戦闘に加わった義勇兵で。今回の戦いで、泥沼化する戦闘の中、運良く生き延びて。それで准将にまでなったとみるべきだろう。まだ三十前半だと思われるこの男は。
能力で出世したと勘違いしているのか。
それとも何処か壊れてしまっているのか。
異様に明るく振る舞っていた。
「はい! 現状では、敵の巣穴の位置は移動していません! 内部にいる蜂ほか巨大生物の数は、推定でも十万をくだらないと思われます!」
「十万を相手に、この数でやり合うのかよ」
誰かがぼやく。
敵の物量はほぼ無限に等しい。
その状況下で、まともに敵とやり合うことの意味を、此処にいる全員が悟っていた。
幸い今回は、衛星兵器の支援がある。
それに、敵は案外、殆ど巣を空にしているかも知れない。オーストラリアでのストライクフォースライトニングの報告を聞く限り、敵はもう戦力を増やす必要性を感じていないようなのだから。
巣穴周囲のシールドベアラーを、まずは夜陰に乗じて処理。
二十機ほどが確認されている。これらを片付けた後、衛星兵器ノートゥングで砲撃を実施。
巣穴を破壊する。
以上が作戦の骨子だ。
後は細かい部分での調整が必要になる。
巣から出てきた敵は、衛星兵器で一掃する事になっているが、おそらくそれでも数千以上の敵に攻撃を受けるとみて良い。
「基地からは、可能な限りの支援を行います!」
顔を見合わせる指揮官達。
この壊れている准将は、終始嬉しそうで。それに噛みつく人間も出るのではあるまいかと私は思ったけれど。
誰も、其処までの無粋はしなかった。
というよりも、もはや生還を、みな諦めているのかも知れない。ストームチームが作戦に参加していると言っても、他のチームまで守れる訳では無いのだから。
作戦は深夜に行う。
一旦解散。
私は一人、以前ストームチームで落としたこの近辺を見て廻る。基地としてしっかり整備されているが。人員は少ない。
かなり無人化を進めていて。
単純なメンテナンス用のロボットによって、機械類も整備しているようだ。
脱走兵が出ているのかも知れない。
少し調べて見るが、流石にそれはなかった。ただ、兵士達の士気は著しく低いようで、時々ある蜂の襲撃でも、積極的に戦おうとする兵士はあまり多くないそうだ。
無理もない。
責めるのは、酷だろう。
外壁の上から、手をかざして、蜂の巣がある方を見る。
あの巨大な構造物は、流石に此処からは確認できない。敵の姿も、今のところはない。敵の巣を破壊することで、戦況が好転するとしても、ほんのわずかだ。むなしい戦いになりそうである。
不意に、弟が通信を入れてくる。
「姉貴」
「どうした、問題か」
「どうも日高少尉の様子がおかしいな。 頭のネジが飛んだ様子だ。 ふさぎ込んでいたのに、妙に明るくなっている」
「……そうか」
あれだけ、色々目の前であったのだ。
壊れてしまうのも、仕方が無いと言える。そっとしておいてやれと言うと、弟はそうかとだけ応えて、通信を切った。
PTSDは直しようがあるが、変わってしまった人格については流石にどうしようもない。
現時点では、周囲とも以前同様よくやっている。
良き先輩である以上、今は口出しする理由もない。ならば、変わってしまった人格を。冷酷なようだが、利用するしかないだろう。
結局新型ベガルタは間に合わなかったが。
ただ、イプシロンとネグリングは間に合った。
しかもイプシロンは、最新鋭のタイプである。火力は今までのものより更に大きく、自衛用の機銃も強力になっている。ネグリングは前回同様、同時に四十発のミサイルを放ち、一気に敵を制圧できる強力な型式だ。
夕方、出撃。
ヒドラに乗って、現地近くの山林に移動。
敵が移動するルートや、多く潜んでいる箇所に関しては、監視の無人機を使って、基地司令官が調べてくれていた。
ヒドラから出て、他の部隊と連絡を取りながら、少しずつ敵陣への距離を詰めていく。
シールドベアラーは。
いる。
事前の話どおり、シールドベアラーは二十機ほど。護衛の蜂がいるが、数はそれほど多くない。各個撃破していけば、伝令を飛ばされることは無いだろう。
もっとも、以前からの説が、最近裏付けられている。巨大生物は、何かしらの方法で、情報を共有している。
だから斥候を処理していっても。
きっと、敵には気付かれてしまう。
故に作戦は速攻が肝要だ。
一チームごとに、理論上のノルマは二機だが。そう上手くは行かないだろう。山中に点々としているシールドベアラーには、かなり分厚く巨大生物に守られているものもある。更に攻撃チームの中には、蜂を苦手としているウィングダイバーチームもいる。しばし敵状況を観察した後、弟は他チームに通信を入れた。攻撃のプランについて、説明したのだ。
ほどなく、合意が得られる。
弟が、皆に向き直った。
「うちで五機のシールドベアラーを担当する」
「思ったより少ないな」
「ああ。 だから、更に増える可能性がある。 心して欲しい」
まあ、そうなるのが自然だろう。
20時丁度。月が雲に隠れはじめている。そのタイミングで、攻撃を開始する。弟が周囲に指示。
時計を合わせる。
他のチームと連携しての、一斉攻撃が肝要だ。
月が、雲に隠れはじめる。
思ったよりも、雲が薄い。だが、かなり視界は悪くなってきた。全員がスターライトスコープを付ける。
私と矢島のフェンサースーツには、最初からその機能がある。
「攻撃開始」
極めて淡々と、指示が飛んだ。
一斉攻撃が開始される。
全方位から同時に開始された攻撃で、見る間に一機、二機とシールドベアラーが破壊されていく。
悲惨な戦闘が世界中で行われているが。
故に、隊長クラスの人間は、だいたいシールドベアラーとの交戦や破壊くらいは経験している。
舞い上がる蜂。
しかし、少し離れた所に陣取った秀爺と黒沢が、次々即応して叩き落とす。
私も単独で闇夜を進み。
一つ、二つと、シールドベアラーを潰して行く。
半数ほどを処理したところで、状況を確認。残り半分はどれも攻撃しづらい所にあるものばかりだが。
攻撃チームをまとめて、対応して貰う。
だが、そろそろ、敵の巣も、攻撃に反応するころだ。
ビル以上に巨大な球体の彼方此方には穴が開いており、其処から蜂が出入りしている様子が、此処からも見える。とっくに気付いている可能性もあるし、単に夜中で動きが鈍っているのかも知れない。
いずれにしても、もたついている時間はない。
残り五機になったところで、チームの一つから通信が来た。
「此方レンジャー2! 攻撃目標のシールドベアラーが、移動を開始しました! 巣に向かっています!」
「よし、一旦離れてくれ」
弟が、私に短く、頼むとだけ言う。
それだけで充分だ。
ブースターを加速。既に、空には蜂が舞い上がりはじめている。衛星兵器からの攻撃も、既にカウントが開始される中。
ウィングダイバーチームは事前の指示通り、出来るだけ音を殺して低空飛行し、巣の根元に到着していた。
新兵器を設置すると、即座に退避。
ウィングダイバーのジェネレーターを利用して起動する、一種の高威力爆弾。通称エンドオブアースである。
最悪のタイミングで、通信が来る。
「此方三島」
「トラブルか」
「ええ。 ノートゥングの進路に、マザーシップが接近。 一旦退避させるわ」
「エンドオブアースでやるしかなさそうだな」
エンドオブアースは、時間を掛けてゆっくり焼き切っていくタイプの兵器で、衛星からの砲撃のような爆発力が無い。
主に敵の足止めにと開発されたものだが。
意外な破壊力が発揮された例が幾つかあり、今回の作戦で採用されたのだ。既に巣から舞い上がっている蜂の数は、百を軽く超えている。
黒沢も秀爺も、処理できなくなりつつあった。
「レンジャー部隊、エメロードによる攻撃開始! 攻撃チームはそれぞれまとまりながら後退!」
「イエッサ!」
私は、通信を耳に挟みながら、シールドベアラーに追いつく。
ガリア砲を至近から叩き込み、爆破粉砕すると、そのまま撤退に掛かる。
エンドオブアースが起動。
三つ設置されたエンドオブアースが、圧倒的な熱量を、蜂の巣に至近から叩き込みはじめる。
まるで太陽が、蜂の巣の根元に出来たかのようだ。
蜂の巣を構成している土が赤熱していくのが見えた。木材が、瞬時に燃え上がっていくのが分かる。
あれは、予想以上に効果が大きいかも知れない。
今頃、あの球体の内部は、蒸し焼きの筈だ。
一気に飛び出してくる、膨大な数の蜂。
赤熱した敵の巣が、崩落を開始。ノートゥングによる支援砲撃があれば、もっと楽だったろうに。
バック。
弟が叫ぶ。
ジープに乗った味方部隊が、撤退を開始するが、敵の方が早い。谷山のバゼラートから放たれたミサイルが、敵の先頭部隊を襲うが、数が多すぎる。
もう少し下がれば、味方基地からの対空砲撃支援があるのだが。
まだ其処までには距離がある。
私も下がりながら、時々スピアで至近に来た蜂を叩き落とすが。蜂がぶちまけてくる毒液の針が、何度もアーマーを直撃する。
ジープに据え付けられている機関砲が咆哮しているのが見える。
矢島も盾をかざして、味方を守っているが。蜂の数は増える一方。通信に、悲鳴が混じりはじめた。
「もうもたない! 支援砲撃はまだか!」
轟音。
スターライトスコープを通して、蜂の巣が崩落していくのが見えた。根元部分が融解して、重量に耐えられなくなったのだ。
蜂がぼろぼろ落ちていくのが見える。
全て死骸だ。内部から脱出できなかった蜂は、エンドオブアースの熱量に焼かれて、即死したのである。
これは、ノートゥングによる支援砲撃が無理になった事を差し引いても、意外な戦果かも知れない。
敵の増援は断たれた。
私も激しい砲撃に晒されながら、ブースターとスラスターを駆使して、逃げる。左右にステップするように飛びながら、蜂の攻撃をかわしつつ、隙を見てスピアを叩き込む。所定地点まで、もう少し。
ジープの一台が、攻撃に耐えられず、横転。
数人のレンジャーに、見る間に蜂が集る。
私が割って入ると、上空にガトリングをぶっ放す。数発の針が直撃。アーマーが限界値近い。
体の痛みも、酷くなってきている。
融合部が回復する前に、酷使しているからだ。
「もう少しで支援地点だ、下がれ!」
「い、イエッサ! 支援感謝します!」
アサルトとショットガンを中空にばらまきながら、必死にレンジャーチームが下がる。蜂は後から後から来るが、増援そのものは断たれた。見ると、蜂の巣は完全に崩落しかけていて、見るも無惨な姿になっている。これは、上手く利用すれば。アースイーターやもっと大型の兵器を相手に活用が可能かも知れない。
吹っ飛ばされた。
蜂の群れに攻撃されて、ついにアーマーが限界値を超えたのだ。
盾をかざしながら、下がる。
スーツがもつか。
不意に飛び出してきたのは、数人の味方。日高少尉と、矢島。それに原田だ。原田が上空にスタンピートをばらまいて、蜂を牽制。日高少尉が、驚くほど精度が上がった攻撃を空にばらまき、矢島が盾で此方の攻撃を防ぐ。
「急いでください、はじめ特務少佐!」
「ん……」
まさか、此奴らに助けられる日が来るとは。
だが、リソースを割いてまで、成長に助力してきたのだ。この日が来たのは、実に嬉しい事でもある。
わずかな時間を利用して、支援砲撃地点に逃げ込む。
味方基地が、攻撃を開始。
対空クラスター弾で、蜂の群れに特大の火力を叩き付けはじめた。
ここぞとばかりに、味方の全部隊も反撃を開始する。今まで温存していたネグリングも攻撃を開始。敵の数を見る間に減らしていく。
火力の十字砲火を浴びた蜂の群れが、混乱の中、次々に落ちていった。
キャリバンに入ると、アーマーを変える。スーツの状態を確認。まだ戦えるが、問題は私の方だ。
バイタルがアラートを出してきている。
「姉貴、此処はもう大丈夫だ。 ヒドラまで戻って、治療を受けてくれ」
「分かった」
「後は任せておけ」
秀爺の声。
キャリバンから見ると、もう蜂の数は半減している。巣穴の方も、完全崩落が近い。あれならば。
しかし、である。
まだ、これで戦いが終わったわけではないのだ。
カプセルで数時間ほど休む。
医師に散々怒られた後、体のダメージを緩和する薬剤を入れられた。本当は、戦闘続行なんてとんでも無いと言う表情である。
攻撃チームも、負傷者を多く出していた。戦死者も、当然相応の数が出ている。攻撃参加したストーム以外の二百二十名余の中で、戦死は十二名。負傷者は五十三名。
この六十五名を除いて、チームを七つに再編成する。
崩れ落ちた敵巣穴には、今の時点で敵の気配はない。
しかし、事前に聞かされている。
あれは氷山の一角だ。
巨大生物は、元々地底に巣穴を作る生物である。あれは蜂としての性質が表に出ただけで、実際は本体とも言える場所は、地下にある。
事実、偵察に出てくれた谷山が、上空から測定した結果。
東京巣穴ほどでは無いが、それに近い規模のものが、地下にある事が分かっている。
しかも、地下に入れば、出てくるのは蜂だけではないだろう。
蟻も凶蟲も、歓迎してくるはずだ。
かといって、巣穴を放置していれば、すぐにでも再建されるだろう。
マンパワーを出来るだけ消耗せず。
巣穴の奧にいる、女王を撃滅しなければならないのだ。
今まで、どの巣穴攻略作戦でも。二千名以上の人員が投入されている。今回はその十分の一以下。
それで攻略しなければならないのだ。
もはや、EDFにはそれだけの残存戦力しかいないのである。
「此方三島」
三島が通信を入れてくる。
どうやら、マザーシップが距離を取ったらしい。ノートゥングを、巣穴の上空へ移動させているそうだ。
空軍がいれば、ありったけのバンカーバスターをうち込ませるところだが。
今や世界中の何処でも、空軍は壊滅状態。
第五艦隊にいる支援部隊も、ここまで来るのはリスクが大きすぎる。地上部隊だけで、やらなければならないのである。
ウィングダイバーチームが戻ってくる。
エンドオブアースの除去が完了した。予想通り、確かに巣穴のあった地点には、巨大な内部空洞があるという。
中には膨大な敵の反応。
ただ入り口付近には、敵の姿はないのだとか。
先ほどのエンドオブアースの熱量を喰らって、泡を食って奧へ逃げ込んだのか。
或いは。
元々、この巣穴には、それほどの戦力を残していないか。
ドラゴンの巣を確認してきたストライクフォースライトニングが言うように、敵はもう巨大生物の繁殖の必要性を認めていない。
ならば、こんな巣は、戦略上の誘引地点としてしか見ていない。
おびき寄せられたあげく。
兵力を消耗するために攻撃しなければならないEDFの苦境を思うと、歯がゆくさえなってくる。
「全員、巣から離れて。 これよりノートゥングからの、戦略砲撃を行います」
「総員巣から離れろ!」
さて、これでどれだけ敵の巣の中にいる巨大生物を削れるか。
空の彼方から降り注いだ光の柱が、地面を融解させ、爆裂させる。
安全距離からぼんやりと、私はそれを見つめていた。