地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋   作:dwwyakata@2024

89 / 120
飛行型の巣の地上部分の撃破は完了。

しかし本番はこれから。

地下に敵の本丸は存在しているのです。


3、修羅の穴

ノートゥングの砲撃で、大穴が開いた。

 

日高少尉が、舌なめずりして、うきうきしながら敵の様子を見ている。穴の奧にいたらしい敵は、今の時点では出てこない。

 

基地から持ってきた重機で、エレベーターを設置。一番下まで降りてから、通信装置をうち込んで、敵の居場所を測定。

 

女王を倒すのが、作戦の目的だと言う事だった。

 

日高少尉は、少しおかしくなってしまった。

 

相変わらず私には優しい。

 

だけれど、敵を殺すとき。以前は憂いがあったのに。今では、嬉々としている。何だか人が変わったようだ。

 

「ナナコちゃん」

 

顔を上げると、池口さんだ。

 

ネグリングは地底に持って行けない。その代わり、移動基地として、一種のブルドーザーを使う。

 

そのブルドーザーを操縦するという。

 

以前の地底攻略戦でも見かけた、天井も壁も這い回れる奴だ。

 

もっとも戦闘能力はないし、ごっつい見かけと裏腹に耐久力も高くない。敵の罠に掛かると、崩落もする。

 

命がけの操縦。

 

いつもと同じだ。

 

「おけがは大丈夫?」

 

「私は問題ありません」

 

「何だか悲しそうだね」

 

小首を捻る。

 

一応悲しいという気持ちはあるけれど。今、それを感じていたのだろうか。

 

そうかも知れない。

 

日高少尉が変わってしまったことは、確かにずっと心に引っかかっている。とても優しい人なのに。

 

何だか今は、心に鬼が住んでいるようだから。

 

「作戦は、決まりましたか?」

 

「うん。 兵力も足りないし、一丸になって潜って、女王をやっつけるんだって」

 

エレベーターの設置が終わったという声が聞こえる。

 

物資だけは、ある。

 

だから、設置も早かった。

 

すぐに皆と合流。

 

ストームリーダーは相変わらず仏頂面で、愛想の一つも無い。以前香坂夫妻の所に食事に誘われたときは、笑顔で談笑もしていたけれど。戦場では、感情を見せないようにしているのかも知れなかった。

 

「今までに無く厳しい任務だ。 心して欲しい。 内部にはエレベータを使って、キャリバンも下ろす。 流石にヒドラは不可能だが、ピストン輸送で、基地にあるキャリバンは全て地下に下ろす予定だ」

 

作戦は、簡単。

 

コンクリで床壁を固めながら、全員一丸となって、地下に降りていく。

 

途中にいる敵は全て排除。

 

女王を倒したら、脱出。

 

後は巣穴の状況を確認後、通信装置を設置。それを頼りにノートゥングから戦略砲撃をうち込み続ける。

 

時間は掛かるが。

 

これで、巣穴の内部にいる巨大生物は、殲滅できる。

 

実際に内部状況を確認しないと、ノートゥングでの砲撃で、敵が残る可能性が小さくないのだ。

 

無人の偵察機などを入れる手もあるけれど。

 

やはり内部は、電波遮断が酷く、奧までいけないという。

 

キャリバンと、指揮車両代わりの重機を中心に陣形を組んで、奧へ。

 

最深部では、女王に遭遇する可能性が高い。東京基地から逃れ、蜂を産みだした奴だ。非常に危険な生物だと、通信に入ってきた小原博士は、繰り返し強調していた。

 

確かに、そうだろう。

 

でも、ドラゴンが世界中で暴れている今。きっとフォーリナーにとっては、その危険な生物さえ、捨て駒。

 

可能な限り敵を減らすために、捨て駒にも食いつかなければならない今の状況。私には、好ましいとは思えなかった。

 

でも、かといって。

 

他に手があるかと言われれば、いいえとしか応えられない。

 

少しでも有利な地点で敵をたたいて、戦力差を削るしかないのである。

 

七機のキャリバンが来た。

 

私に声が掛かる。ストームリーダーと、はじめ特務少佐と。ジョンソン大佐と、それに何人かのレンジャーの人と一緒に、キャリバンを護衛しながら地下へ降りていく。

 

辺りは一度溶けて冷え固まった、黒い土で、不気味だ。

 

最深部まで降りると、クレーター上にえぐれていた。

 

プラズマ化した土が、爆発した跡。

 

辺りに点々としているのは、吹き飛んだ巨大生物の亡骸。もう原型も残っていない。油断なく銃を構えるストームリーダー。

 

索敵を開始する、他のレンジャー。

 

通信装置が埋め込まれる。

 

「現時点で、敵影無し」

 

「よし、味方戦力を投入。 急げ」

 

エレベーターが上がっていく。

 

一度に、キャリバン一両と、十名ほどしか運んでこれないから、ピストン輸送が必要だ。時間は掛かるけれど、仕方が無い。

 

以前の攻略作戦で、巣穴の内部を測量する技術は、格段に進歩した。

 

東京巣穴での戦いでは、苦しい思いをした記憶ばかりだけれど。無駄では無かったのだと思うと、ほっとする。

 

でも、作戦自体が無駄な可能性が高いと思うと、それはそれで悲しいけれど。

 

続々と周囲に部隊が展開。

 

既に地面はコンクリが敷設されて、下からの奇襲については、警戒が必要なくなっていた。

 

空を見上げれば、星空が見える。

 

いつの間にか、曇りだった空は、快晴になっていた。

 

「ストームチーム、これを見てください」

 

レンジャーの一人が来る。

 

先ほどの戦いで、ジープが横転して。はじめ特務少佐に助けられた人だ。

 

バイザーに通信されてきたデータを見る。

 

驚いたのは、巣穴の構造が、蟻のものとは完全に違っている、ということ。内部は何というか、階層構造とでもいうべき状況になっている。

 

「巣穴の構造そのものは、シンプル極まりないな」

 

「だけれど、これだと要所要所で、大規模な敵と交戦が強いられますね。 分断も難しい」

 

主に三層の大空間が縦につながっていて。

 

それらを突破しないと、最深部にはたどり着けない構造だ。

 

敵の数は、幸い一万五千ほど。

 

いや、幸いと言うべきなのか、これは。

 

「明らかに陽動です。 もう敵は、此処を繁殖場として、活用してさえいないでしょう」

 

断言するレンジャー。

 

撤退するべきだと、顔には書かれている。

 

しかし、一万五千の敵を閉じ込め、殲滅する好機でもあるのだ。更に、此処さえ潰せば。東南アジアの一カ所に集めている戦力と物資を、極東なり欧州なり、まだ戦闘が継続できている地域に、集める事も出来る。

 

だから、やらなければならない。

 

「アースイーターの中枢については、研究が進められている。 それを叩くためにも、今は少しでも敵味方の戦力差を埋めなければならない。 皆、苦しいとは思うが、力を貸して欲しい」

 

先ほどの戦いでも、数え切れないほどの蜂を倒したストームリーダーにそう言われ、頭を下げられてしまうと、レンジャー達も何も言えない。

 

間もなく、戦力が揃う。

 

四方八方からの襲撃を避けるために、コンクリ弾で通路が塞がれる。一カ所だけ残した通路から、順番に下へ降りていく。

 

壁を床を天井を、コンクリ弾で塗装しながら。

 

攻略には三日はかかる。

 

巣穴の規模から考えて、それが最低限の数値だ。キャリバンがあるのは、ある意味有り難い。

 

通信装置をうち込みながら、深部へ。

 

予想されていたデータと、ほぼ提示されたものは間違いない。

 

小原博士は無能だという声もあるらしっけれど。

 

こういう実務能力を見ると、決してそうは言えないのだろうと、私は思った。

 

レーダーの赤点が近づいてくる。

 

不意に、通路の向こうから、蜂が姿を見せる。しかし、この通路だ。飛び回ることは難しい。

 

私が即応して、アサルトで叩き落とす。

 

次から次へ来るけれど。

 

やはり蜂は動きが鈍い。穴の中では、本来の性能が発揮できないのだ。勿論時々反撃はしてくるけれど。巣穴の中では、自由に飛び回れない。

 

これなら、一方的にたたきつぶせる。

 

「前衛は私だけで大丈夫です。 戦力を温存してください」

 

「油断だけはするな」

 

「イエッサ」

 

後方で、コンクリの敷設が行われる中。

 

私は腰だめして、アサルトで敵を叩き落としていく。蜂は天井も床も歩いて迫ってくるが、数が増えても同じ事。

 

アサルトの弾倉を取り替えて、次のものに。

 

銃身が熱くなってきたので、別のアサルトに。

 

物資だけは、気にしなくても大丈夫。黙々と、敵を排除していく。

 

味方の支援射撃が加わった。

 

日高少尉だ。

 

「少し押し込むよ」

 

やはり、側で見ると、違和感が大きい。日高少尉は、明らかに戦いを楽しんでいるし、強くなったことを喜んでいる。

 

この間死にそうなほどの酷い怪我をして。

 

それで頭をうったのかも知れない。

 

戦いをしているうちに、人が変わってしまう場合があると、私は聞いているけれど。日高少尉は、きっとその実例なのだろう。

 

前方の敵を排除完了。

 

かなりの数を、被害なく仕留めた。蜂は毒針も放ってきたけれど、一発も貰っていない。でも、こんな楽な戦いばかりでは済まないはずだ。

 

舗装したコンクリ床を、キャリバンが来る。

 

悪路もものともしない要塞救急車だ。奥の方は通れるだけの広さが足りるか不安だけれど、それでも今の時点では、指揮車両として充分機能している。

 

涼川中佐が来る。

 

「うぃーっす。 あたしに交代だ。 お前達は、後ろの警戒」

 

「分かりました」

 

「原田ぁ。 持ってきたか?」

 

「はい、今」

 

原田さんが背負っているのは、何だかよく分からない銃火器だ。ひょっとして、此処からの戦いで、活躍するものだろうか。

 

少し下がって、護衛任務に戻る。

 

前方で時々戦闘音がするけれど。

 

今の時点で、味方は苦戦していない。

 

隣を歩いている日高少尉が、言う。

 

「何だかね、戦いが楽しくなって来ちゃったよ」

 

「そう、ですか」

 

「ナナコちゃんは戦い好き?」

 

「あまり好きではありません」

 

昔は、好きも嫌いもなかったのだけれど。今は、そうはっきり言える。おかしくなってしまった日高少尉を見てからは、なおさらだ。

 

残念と、日高少尉は笑顔で言う。

 

きっと日高少尉が、私を嫌うことはないとは思うけれど。ただ、目の奧に狂気があることは、どうしても否定出来なかった。

 

そろそろ、大きな空間に出るころだ。

 

不意に、前から大きな爆発音。

 

どうやら、敵の反撃が始まったらしかった。

 

 

 

日高少尉と前に出ると、其処は崖のようになっていた。

 

前には空洞があって、無数の凶蟲が群れている。何という数だろうと、愕然とする。一万五千の敵というと、巣穴では確かに多くは無いけれど。このような空間にひしめかれると、その威容に圧倒される。

 

「敵にロケットランチャーをうち込み、下がりながら敵を撃滅! 通路に引き込んで戦え!」

 

「イエッサ!」

 

部隊が下がりはじめる。

 

後方に部隊から通信。やはりコンクリの一部に、攻撃があると言う。酸を盛大に浴びせているようだとも。

 

私が、指摘する。

 

「このままでは、前後が塞がれます」

 

「ウィングダイバー部隊」

 

「はい」

 

ウィングダイバーの隊長が、通信に出る。

 

彼女たちが戻る。ひょっとして、敵が作った突破口に、さっき巣穴を崩したエンドオブアースを仕掛けるつもりか。

 

確かに効果的な戦術だとは思うけれど。

 

しかし、帰路は大丈夫なのだろうか。

 

不安になる私だけれど。

 

凶蟲がもの凄い数、ひしめくようにして迫ってくる。蜂と違って、凶蟲や蟻にとっては、こういう場所での戦闘こそが十八番だ。迫ってくる勢いが違う。フュージョンブラスターで焼き払いはじめるけれど、きりが無い。

 

負傷者も出始める。

 

糸まみれになったレンジャーを引っ張って、キャリバンに押し込む。

 

ヒドラからついてきてくれていた救急スタッフが、内部で治療をしてくれている。任せて、戦場に。

 

日高少尉が、満面の笑みを浮かべながら、敵を殺し続けている。

 

何だか、戦闘そのものに喜びを感じる、古代の戦士みたいだ。

 

「ナナコちゃん、手を貸して!」

 

池口さんが叫んでいる。

 

後ろの方からだ。

 

どうやら、キャリバンが擱座したらしい。コンクリで固めているはずなのに、どうしてだろう。

 

嫌な予感がする。

 

後方から、ウィングダイバーが戻ってくる。

 

エンドオブアースで、出てくる敵が瞬時に焼き払われていることを喜んでいたけれど。これで、後ろは塞がれてしまった。

 

それに、である。

 

不意に、キャリバンが沈み込む。

 

皆が動揺する中、私はキャリバンの側面ドアを開けて。中の人員を引っ張り出して、脱出させた。

 

池口さんの操縦している重機が、キャリバンを掴んで、引っ張り上げるけれど。

 

其処には、大穴が出来ていた。

 

当然のように顔を出す凶蟲。周囲がパニックになる中、私はアサルトを叩き込む。どういうことだ。

 

「ひょっとして敵は、コンクリを短時間で破る方法を手に入れたのか!?」

 

「迎撃だ! 散らばるなよ! 迷子になったら死ぬぞ!」

 

怒号が、地底にこだまする中。

 

乱戦が続く。

 

前からは敵の大軍団。そして側面から、強襲を仕掛けてきた敵。後方はエンドオブアースで塞いでいるとしても。危地に違いない。

 

飛び出してきた黒沢さんが、コンクリ弾を穴に連続して叩き込み、塞ぐ。

 

しかし、今度は壁の横が崩れて、巨大生物が姿を見せる。膨大な酸がキャリバンに浴びせられた。

 

射撃を集中して浴びせ、追い払う。

 

これは、まずいかも知れない。

 

「前方の敵、増える一方です!」

 

「また側面から急襲! このままでは、全滅します!」

 

悲鳴と恐怖が、周囲にはこだましていたけれど。

 

その中で、笑いながら戦っている日高少尉は。いつもの優しい彼女ではなく。鬼が宿っているかのようだった。

 

飛び出したエミリーさんと三川さんが、前方にサンダースナイパーを乱射。

 

密集していた凶蟲の大群が、一気に焼き払われる。更に、はじめ特務少佐が、ブースターをふかして、突っ込んでいった。

 

「前方突破! 隊列を乱さず、敵が現れたら即応しろ!」

 

私はその場に留まって、迫る敵をたたき続ける。

 

戦死者も、負傷者も。

 

見る間に増えていった。

 

 

 

広い空間に出る。

 

広間の真ん中で、足を縮めて死んでいるのは、蜘蛛王だ。巨体の彼方此方には、凄惨な傷があった。

 

突入したはじめ特務少佐とストームリーダーが、猛攻を加えて打ち倒したのである。蜘蛛王は二体。流石の二人も、真正面から相手にするのは厳しかっただろう。原田さんと涼川中佐が支援攻撃して、ジョンソン大佐も零式レーザーで撃っていた。糸を放射しようとする度に香坂夫妻が先手を打ち、動きも封じていた。

 

連携での、集中攻撃での撃破である。

 

通路は一旦放棄。

 

見張りとして私と、日高少尉が立つ。他の人達は一度通路に降りて、円陣をキャリバンで組み、負傷者の救助に当たっていた。

 

敵の第一陣は撃滅したけれど。

 

あと二つ、大規模な敵部隊が下に控えている筈だ。

 

日高少尉は上機嫌。

 

「楽しかったねー!」

 

「同意できません」

 

「そう?」

 

気を悪くした様子も無い。

 

ただ、日高少尉が完全におかしくなっていることは、周りの人達も気付いているようで。池口さんは悲しそうにしているし。三川さんは、出来るだけ会話を避けているようだった。

 

「怪我はしなかった?」

 

「アーマーに守られて無事です」

 

「私はちょっと怪我しちゃった」

 

にこにこのまま、日高少尉が、包帯を巻かれた左手を見せてくれる。

 

応急処置だけだ。こういう場所だから。

 

しかし、戦闘力が落ちた様子は無い。

 

おかしくなってから、日高少尉は確実に強くなった。今なら、私とも互角以上に戦えるかも知れない。

 

でも、その分、色々なものをなくしてしまった。

 

ストームリーダーから通信。

 

数時間休憩してから、進軍するという。

 

大広間には、多数の通信装置が撒かれている。下の広間には、推定三千から四千の巨大生物がいるとかで、次の戦いも、激戦になる事は避けられない。

 

死者は先ほどの戦いで、十人以上出た。

 

負傷者の中でも、重傷者は、先ほどはじめ特務少佐が護衛についたキャリバンで、地上に戻した。

 

代わりに、基地から増援を連れてきたけれど。

 

彼らは各地から集められた精鋭では無いし、見るからに能力も低い。ただし、武装の新しいものを持ってきてくれた事だけは僥倖か。

 

ストームチームと、各チームのリーダーが集められる。

 

私は一番外側で、話だけを聞いていた。

 

谷山さんが提案。

 

「馬鹿正直に戦っていたら、女王の所に辿り着く前に、力尽きるのが関の山です」

 

「何か名案があるのか」

 

「次の広間に通じているこの路ですが、途中に爆弾を仕掛けます。 あとセントリーガンも」

 

敵に仕掛けて、ただ逃げる。セントリーガンで敵の追撃速度を鈍らせる。

 

攻撃部隊が逃げ込み終えたら、爆弾を起爆。

 

密閉空間と言う事もある。

 

敵は瞬時に全滅。

 

楽して勝つことができる。

 

問題は、そんなに簡単にいくとは思えないことだ。

 

先ほども、コンクリの壁が、いとも簡単に破られた。あれはどういう仕組みだったのか考えないと、多分退路を塞がれる。

 

それを、私ではなくて、はじめ特務少佐が指摘する。

 

黒沢さんが挙手。

 

「それはおそらくですが、この巣の材質の問題かと思われます」

 

「材質?」

 

黒沢さんが、データを見せてくる。

 

私も、みんなも、それに集中した。データは巣の壁や床を覆っている、鱗状の土の塊。それに、敵にコンクリで固めた床が破られたときのデータだ。

 

「少し調べて見ましたが、敵は酸を掛けてきたわけでは無く、無理矢理穴を作ってきたように見えました。 この巣はおそらく、強酸を含んだ物質が、大量に含まれているのだと思われます」

 

「つまり、強アルカリのコンクリが中和されていると」

 

「見かけ通りの強度は維持できていない、とみるべきでしょう」

 

そうなると、より分厚くコンクリを敷く必要がある。

 

逆に言えば、それで対策は可能だ。問題は、敵がその時間を、恐らくは許してはくれないことだろう。

 

「爆破作戦については、私が行きます。 ナナコ君、護衛についてくれ」

 

「分かりました」

 

「奇襲はどう防ぐ」

 

「何、敵が側面に廻る暇も作らなければ問題なし。 先ほど運び込まれた、これを使用します」

 

ぽんと谷山さんが叩いたのは、バイク。

 

サイドカー付きの、とても早そうな奴だ。護衛用の機銃もついている。

 

他に有効な作戦もない。

 

少し悩んだあと、ストームリーダーは許可をくれた。

 

「あーあ、楽しそうだなあ」

 

「お前、ネジが良い感じで外れてきたな」

 

涼川中佐まで、日高少尉に呆れていた。

 

だけれど、多分同類だろう涼川中佐は、何処か楽しそうでもあった。

 

 

 

爆弾を敷設して。

 

セントリーガンをおいてまわって。

 

そして通路の最深部。

 

奧にはたくさんの黒蟻と凶蟲。数は予想通り、数千はくだらないと見て良いだろう。リムペットガンを、谷山さんが取り出す。

 

此方が指定したタイミングで爆破できる強力な火器だ。

 

「ナナコ君は、随分短い間に人間らしくなったね」

 

爆弾を設置終えると、谷山さんはいう。

 

小首をかしげた私に、自覚はないかも知れないけれどと、付け加えた。

 

「谷山さんは、今の日高少尉をどう思われますか」

 

「良くない傾向だねえ。 何だか、涼川君を見ているようだよ」

 

「涼川中佐ですか?」

 

「あの子もね、前大戦の最初の頃は、怖がって泣いてたり、痛い痛いって苦しんでたり、本当に大変な中戦っていたんだよ。 戦闘特性が高かったから生き残れたけれど。 で、いつの間にか、壊れていたのさ。 あの子は元々、ちょっと眉毛が太い、何処にでもいる可愛い女の子だったんだよ」

 

リムペットガンによる、攻撃準備完了。

 

起爆。

 

広間にいる巨大生物が、一斉に消し飛ぶ。

 

バイクを起動。敵が追ってくるのを横目に、撤退を開始。凄まじい勢いで追撃してくる敵を、セントリーガンが薙ぎ払う。

 

「君は逆に、どんどん人間らしくなってきているね」

 

「でも、それは」

 

「良い事だよ。 戦争が終わったら、どうなるか考えてごらん。 僕や涼川君みたいな戦闘でしか居場所がない人間が、この七年どういう扱いを受けていたと思う。 君ははじめ特務少佐と違ってこれから成長もするみたいだし、人生を謳歌することを考えなきゃあだめだよ」

 

バイクが一気に加速。

 

どんな悪路もものともしない。サイドカーから時々後ろを確認するけれど、黒蟻も凶蟲も、凄まじい速度で追いかけてくる。

 

酸が飛んでくる。

 

アーマーで防ぎきれるけれど、冷や冷やする。

 

バイクが、破損してもおかしくは無いのだ。

 

一気に、通路を抜ける。

 

バイクが、中空に飛んだ。

 

少し落ち始めて。爆弾の爆風が、突き抜ける位置よりバイクが低くなってから。谷山さんは、爆弾を起動させた。

 

ごっと、凄い音。

 

少し遅れて、もの凄い数の巨大生物の死骸が、辺りに降り注いだ。

 

凄惨な光景。

 

前はなんとも思わなかったのに。むしろ今は、酷い景色だと思った。

 

焼け焦げた通路から、追撃を掛けてくる巨大生物を、長時間かけて排除。広い空間で、狭い通路から出てくる敵を迎撃するという地の利があるのが大きい。被害は殆どでない。十字砲火を集中して、敵を確実に仕留めていく。

 

先ほどは通路を四方八方から抜いて攻撃してきた巨大生物だが。

 

流石に自分たちで作った構造物の中枢部分を破壊するのは嫌なのか、或いは別の理由からか。

 

立体的に攻撃はしてこない。

 

彼方此方にある別の通路は、コンクリで塞いで、見張りの人間がついている。

 

時々其方も敵が突破しに来るが、その度に対応。少人数で、効率の良い撃破を続けていく。

 

戦っていて、流石だと思う。

 

ストームリーダーは強いだけでなくて、指揮能力も高い。だけれども、だからみんなから怖がられている。

 

この人が裏切ったら、人類は滅亡確定なんて噂があるらしいけれど。

 

私には、こんなに人間のために尽くしてくれている人に、どうしてそんな酷い噂を流せるのか、どうしても理解できない。

 

敵の攻撃が止む。

 

ストームリーダーとはじめ特務少佐を先頭に。突撃開始。

 

通路の途中にいる敵を排除しながら、焼け焦げた通路を抜ける。きゃっきゃっと黄色い声。

 

日高少尉だ。

 

凄まじいキルカウントを、先ほどからたたき出している。

 

勿論ストームリーダーや他ベテラン勢には及ばないけれど。今日殺した数で言えば、明らかに私より上だ。

 

アサルトで確実に蜂を排除しながら、奧へ。

 

通路を抜けて、広間に出る。

 

広間にいた敵は、殆どいなくなっていた。それでも、通路の前後左右に張り付いて、迎撃に出てくる。

 

はじめ特務少佐が突入。

 

ブースターを吹かし、盾をかざして一気に突破すると、振り返りざまにガトリングを放ち、通路の左右に張り付いていた敵を打ち抜く。

 

それを見届けてから、ストームリーダーが先頭に突入。

 

周囲の敵を、一気に片付けていった。

 

ストームリーダーが、アサルトを乱射しながら、はじめ特務少佐と会話している。もう、広間にいる敵はまばらだ。

 

「やはり此処の敵は時間稼ぎだけが目的だな」

 

「戦力も、敵が予想する範囲内で割かれているはずだ。 それに此処を落としても、EDFは東南アジア地区に貼り付けていた戦力を、撤退せざるを得ない。 敵には戦略的に見て得しかない」

 

「わかりきっていても、腹が立つことだ」

 

蜂も、この狭い中では、その全戦力を発揮できない。

 

間もなく、敵は沈黙した。

 

ストームリーダーが指示して、全兵力が、この広間に集まる。蜂の巣にある、格子状の構造が一角にある。

 

卵や蛹があったら、全て破壊しなければならないけれど。

 

調査すると、やはりもぬけの殻。

 

幼虫どころか、蛹の欠片すら残されていない。

 

「事前に運び出したな」

 

忌々しげに、はじめ特務少佐が言う。

 

その間に、他のチームは偵察実施。奧へ通じている路を確認して。不要なものは、コンクリで塞いでしまう。

 

自分たちが来た道については、見張りを立てる。

 

ストームチームでなくても、この状況下。簡単には突破出来ない。だから、少数の見張りがいれば、大丈夫だ。

 

「下に強力な熱源反応! おそらく、女王です」

 

レンジャーの一人が、顔を上げる。

 

つまり、この下を排除すれば、このおぞましい戦いも終わる。いっそ床を抜いたらどうだろうと私は思ったけれど。

 

ストームリーダーは、思ったよりも、正攻法を指示した。

 

妙なトリックを駆使するよりも、まっとうな戦術を用いるのが、一番勝ちやすい。それは私も分かっている。

 

谷山さんが、私に頷く。

 

私は、自分から、ストームリーダーに言う。

 

「私が谷山中佐と偵察に向かいます」

 

「よし。 その間に、全員アーマーの切り替えと、弾倉の確認。 敵は明らかに捨て石だが、侮ると死ぬぞ。 全員、気を引き締めろ」

 

「イエッサ!」

 

戦力は更に目減りしたけれど。戦死者はぐっと少ない。

 

ひょっとすると、この少人数で。

 

本当に、蜂の巣を落とせるかも知れなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。