地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋   作:dwwyakata@2024

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フォーリナーの巨大生物対策として編成されたウィングダイバーチーム。

攻撃ヘリと歩兵の中間どころの役割を持つ、大火力による掃討ユニットです。

現在まで確認されている巨大生物相手なら、優位を取れる筈だったのですが。

それも、初日から想定が崩れる事になります。


3、膠着と罠

ようやく、EDF東京支部が重い腰を上げた。

 

司令部を動かすのだ。

 

EDFの支部は、幾つか移動式のものがある。艦隊旗艦でもある要塞空母デスピナもその一つ。

 

そして東京支部もそうだ。

 

プレハブの建物が左右に開き、隠蔽されていたそれが姿を見せる。

 

全高実に二十メートルオーバー。

 

多数の火器を備えた、まさに名前の通りの歩く要塞。その名前は、プロテウス。

 

これこそが、機動戦を用いて、マザーシップを落とした東京支部に与えられている切り札にて。

 

移動式の司令部でもある。

 

本来プロテウスは、機甲師団をまとめるために作り上げられたものなのだ。

 

故にその対地攻撃能力は圧倒的。試運転に参加したとき、私はその火力を目の前で見せつけられることになった。

 

しかもこのプロテウスは、移動支部としての機能を持つカスタムタイプ。文字通りの、切り札である。

 

そして支部が本当の意味で動くのだ。

 

基地にある戦力の大半が稼働を開始する。

 

投入できる全レンジャー部隊。機甲部隊。更に稼働したばかりのフェンサー部隊も、全て。

 

「これより、全力で巨大生物の尖兵を叩き潰す!」

 

「EDF! EDF!」

 

圧倒的な巨体の威容を見た兵士達が、歓喜の声を上げる。

 

これなら勝てる。

 

相手が蟻でも関係無い。プロテウスの威圧感は、まさにいにしえの神々のものだ。装備している兵器も、尋常ならざる破壊力を、それぞれが秘めている。

 

EDF東京支部が動き出したのは、他でもない。

 

東京の西全域が、蟻の手に落ちつつある事。

 

到着したウィングダイバー隊が活躍していること。

 

そして、その一部が、正体不明の敵に遭遇し、かなりの被害を受けていること、だ。此処で蟻に手こずったままでは、EDFの勝利を疑う者も出てくる。

 

全戦力を前線に投入。

 

東京西に現れた蟻を、今日中に殲滅する。

 

そう、日高は宣言した。

 

その一方で、私は。グレイプに乗り、戦地へと向かっている。

 

メンテナンスはほんのわずかにしか出来なかった。ガトリング砲に関しては、まだ使えるけれど。

 

アーマーはかなり厳しい。

 

上空を飛んでいるヘリは、谷山が操縦している。途中で香坂夫妻とジョンソンも拾った。

 

グレイプもヘリも満員状態だ。

 

戦地で展開することになる。これまで、ストームから戦死者を出していないことだけは、僥倖かも知れない。

 

「それで、通信から敵の正体は、分かったのか」

 

「分からん。 ただ、敵は此方の主力を、敢えて引き込もうとしていたようにしか思えない」

 

私の問いに、弟が応える。

 

現在、幾つかのウィングダイバーチームが通信途絶。すぐに戦地に向かって、救助しろと日高から指示が来ている。

 

蟻の動きは、どうなのだろう。

 

此方の戦力を探るだけ探ったから、後は良いと引っ込むか、それとも。

 

通信が入ってきた。

 

勝っている方のウィングダイバー隊だ。

 

蟻の支配地域に乱入した彼女たちは、巨大生物が飛べないという特性を突き、中空から大火力での強襲を仕掛けている。

 

「狩りの始まりだ! 巨大生物共を根絶やしにしろ!」

 

「アタック!」

 

実戦経験が無くても。

 

力の差は一方的だ。

 

うちに来た三川の様な、新兵ではない。今来ている部隊は、それぞれが精鋭と言って良い者達。

 

蟻の殲滅はレンジャー部隊との緊密な連携の末、かなり高速で進んでいる様子だ。

 

しかし、である。

 

東京の西の果て。

 

其処に陣取っている蟻を撃破に向かったウィングダイバー7の12名が、消息を不意に絶っている。4名は後方に下がって、此方の支援を待っている状況だ。

 

グレイプが急ぐ。

 

全域での攻勢が強まっている状況だ。路自体は、すんなり通ることが出来た。

 

しかし。

 

「ストームリーダー! ブルートの遠距離カメラが映像を捕らえた! これは、厄介だぞ……!」

 

谷山からの通信。

 

声には、戦慄が含まれていた。

 

その辺りは、高層ビルが建ち並ぶ、西東京の中心地だ。中心だけに元々駐在していたEDFの部隊もおり、市民の避難そのものは完了していた。だから、精鋭ウィングダイバー隊による強襲で、一気に奪回をする、予定だったのだが。

 

其処は今。

 

世にもおぞましい光景が広がる、魔境と化していた。

 

広がっているのは、糸。

 

しかも、ビルの間を渡るようにして、分厚く禍々しい銀の光が、縦横に走っているのである。

 

それだけではない。

 

巨大な巣。

 

誰もが見た事がある。蜘蛛の巣。ただし、桁外れに巨大すぎて、とても信じる事が出来ない様なサイズのものが、ビル街を我が物に蹂躙しているのだ。

 

そして、蜘蛛の巣には。

 

足を広げて、巣の王を気取る、巨大な蜘蛛がいた。

 

「凶蟲ではないな……」

 

呟く。

 

蜘蛛の巨大生物は、いわゆるハエトリグモに近い習性を持っている。武器として糸は用いるけれど、巣は張らない。

 

このタイプの蜘蛛はハシリグモと一般的に言われる。形態的には、いわゆる徘徊性捕食者。プレデターと呼ばれるタイプだ。

 

しかしながら、巣を張る蜘蛛は違う。

 

待ち伏せを主体として行う。見ると、ハエトリグモよりは、日本でも多く見られるジョロウグモによく似ていた。

 

「見てください!」

 

筅が声に悲痛を含ませる。

 

巣には既に変わり果てたウィングダイバー隊のメンバーがつり下げられていた。糸玉にされてしまっている。

 

蜘蛛はあの状態にしてから、消化液を注入する。

 

そして食べやすい状況になってから、獲物として食すのだ。

 

あの蜘蛛、どう見ても凶蟲と同じか、それ以上のサイズがある。あんなものに毒液を注射されて、生きているとは思えない。

 

上空のブルートが、不意に回避行動を取る。

 

銀糸が空を、一閃していた。

 

巣に陣取る蜘蛛が、糸を吐いたのだ。

 

「冗談じゃない。 一キロは離れている相手を、ああも正確に」

 

ビル街には、続々とあの巨大グモが這い上がりはじめている。

 

あれが一斉に巣を張ったら。

 

この近辺は、完全に巨大生物の手に落ちる。制空権さえ危ういかも知れない。今の攻撃精度、尋常では無い。

 

がつんと、もの凄い音がした。

 

グレイプが糸に捕らえられたのだと分かった。

 

「全員降車! 筅、残って綱引きをしろ」

 

「む、無理です! もの凄いパワーで!」

 

グレイプの射程外から、蜘蛛の一匹が糸を放ってきたのだ。

 

しかも、MBTより軽いとは言え、金属の塊である歩兵戦闘車を引っ張るほどのパワー。あの蜘蛛、生半可な相手では無い。

 

まさか、初日から。

 

これほどのアンノウンと遭遇する事になるとは。

 

すぐに秀爺がライサンダーを構える。観測手であるほのかが、警告の言葉を飛ばした。

 

「三川さん!」

 

「えっ!? ひいっ!」

 

悲鳴を上げる三川が、別方向から飛んできた糸に捕らえられる。途方もない粘着性、それにピンポイントでのコントロール。そして凄まじい勢いで、引っ張られた。

 

宙に浮く三川。

 

即応した弟と秀爺が、同時にスナイパーライフルを発射。弟が手にしているのは汎用式としては傑作の名も高いMMF100。秀爺はライサンダー。

 

同時にぶっ放された狙撃弾が、遠くにいる蜘蛛の頭と腹を直撃。

 

だが、死なない。

 

大量の鮮血がぶちまけられているけれど、蜘蛛はまだ糸を引っ張っている。

 

私が跳躍し、ガトリングの弾を糸にぶち込む。

 

分厚い糸束が、それでも打ち抜けない。

 

秀爺が装填作業を続行。

 

新兵達もおのおの撃っているが、何しろ一キロ以上の距離だ。当たるはずがない。

 

「12,4,5,7,9」

 

ほのかのカウントが始まる。

 

冷静に次弾を装填した秀爺が、また弟と一緒にぶっ放す。

 

今度こそ、体に大穴を開けた蜘蛛の化け物が、巣から落ちていった。

 

それと同時に、地面に叩き付けられる三川。アーマーの負荷を超えて、完全に意識を失ってしまっている。

 

右。

 

私が三川を抱え、飛び退く。

 

他の巣の蜘蛛共も、此方を狙っている。今も一瞬遅れていれば、三川ごと私も、蜘蛛の放った糸に捕らえられるところだった。

 

スラスターを噴かし、全速力で退避。また糸が飛んでくる。右。左。左。ジグザグに地面を蹴り、スラスターを全開に噴かし飛ぶ。

 

ビルの影に飛び込んだ瞬間。

 

一瞬前まで自分がいた地点を、糸が抉っていた。

 

この狙撃、秀爺ほどでは無いにしても、尋常では無い。

 

「ストームチーム、どうした!」

 

「日高司令、味方を寄越さないように。 二次遭難になります」

 

「何だと」

 

「敵は巣を張るタイプの蜘蛛とよく似たアンノウン! 一キロ以上の精密射撃能力を持ち、タフさも黒蟻の比ではありません。 敵の手に落ちた地域には、この強力なアンノウンが出現し、陣を張っている可能性が高い!」

 

グレイプを引っ張っていた一匹の顔面を、秀爺が吹き飛ばす。

 

グレイプが凄まじいバックをして、ようやく止まった。味方を轢き殺しそうにさえなる。運転席が、エアバッグに包まれているのが見えた。筅はこの様子では、失神してしまっているだろう。エアバッグに衝突したショックからでは無く、恐怖からだ。

 

グレイプには幸い、皆のために武器を積んできてある。

 

グレイプから飛び出してきた黒沢も。ヘリから降りてきたジョンソンも、すぐにスナイパーライフルをめいめい手に取った。エミリーは長距離火器に切り替え、狙撃の体勢に入る。

 

まごついている他の新人には、私が檄を飛ばした。

 

「長距離武器を取り出せ! 敵に射撃を加え続けろ! 牽制になる!」

 

谷山のブルートが、また狙い撃ちにされる。

 

あれではいつかは、糸に捕らえられる。グレイプを引っ張るほどのパワーだ。ヘリでは危ない。

 

「谷山、一旦死角に隠れろ、其処では狙い撃ちにされる!」

 

弟は冷静にスティングレイを構えると、巣に向けてぶち込みはじめた。巣が揺れる。つまり、ロケットランチャーの直撃を受けても、壊れないのだ。

 

蜘蛛の巣は巨大化させると、ジェット機を受け止められるほどの強度を持つ。昔から蜘蛛の糸が生体素材としては異色の強度として注目されてきた理由だ。だが、これはそれにしても、度が過ぎている。

 

巣が、ようやく壊れ、だらりと垂れる。

 

ぶら下がっていた糸玉も、地面に落ちた。

 

しかし、である。

 

蜘蛛の巣の防衛網に守られていた黒蟻が、どっと姿を見せる。それも、五十や六十では無い。

 

ブルートから降りて着地したのは、涼川。

 

目には、獰猛な光が宿っていた。吐き捨てた噛み煙草を踏みにじると、涼川は既に充填が終わっているスタンピートを構えた。

 

「蜘蛛共は、頼むぞ。 あたしが彼奴らを叩く」

 

「秀爺、ジョンソン」

 

「ああ」

 

「イエッサ」

 

私は三川をグレイプに押し込むと、前線に打って出た。

 

支援のため、涼川が中空に向けて、スタンピートをぶっ放した。

 

スタンピート。これほど涼川にあった火器は無いだろう。単独歩兵で面制圧を、というコンセプトで造り出されたこの火器は。同時に多数のグレネード弾を放出することで、眼前を火の海に変える。

 

グレネードの火力はいずれも高く、周囲十メートルを木っ端みじんにする。当然のことながら扱いは極めて難しく、一部の精鋭にしか携帯が許されない兵器だ。

 

蟻共が、突如出現した原初の殺戮に吹き飛ばされ、悲鳴を上げて粉みじんになる中。

 

炎を全身に映えさせながら、涼川がスタンピートを。装填が終わっているもう一つを、中空にぶっ放した。

 

「ヒャッハア! ブッ飛べやぁ!」

 

二次爆発。

 

蟻たちが、炎に撒かれて逃げ惑う。

 

その中を、私は強行突破した。

 

無論目的は一つ。

 

弟が剥がした巣から、落ちた味方の救出だ。

 

生きている可能性は高くない。

 

だが、それでも、試す価値はあった。

 

至近、糸が来る。地面にスピアを叩き込んで、上に。ガトリングをぶちこんで、蟻の群れを牽制しながら、走る。

 

味方の支援砲撃が、後ろから来るが。

 

蜘蛛が飛ばしてくる糸の数も凄まじい。対抗戦術が出来るまで、無闇に相手にするべきではない。

 

一つ目。

 

糸玉を見つけた。

 

感触からして、中に生きた人間がいるとは思えない。だが、抱えて一旦戻る。

 

また突撃。

 

蟻が、壁を作って迎え撃ちに来るが。涼川が乱射するロケットランチャーの爆風に吹き飛ばされて、壁の間に隙間が出来る。

 

熱と、酸。

 

真正面から、糸。

 

スピアを真正面にぶち込んで、無理矢理糸を吹っ飛ばし、回避。

 

まだ、11人、残っているのだ。

 

 

 

撤退を開始。

 

目を覚ました筅に操縦させ、グレイプを下げ。支援を待っていたウィングダイバー4名と合流。

 

後は、蜘蛛の攻撃範囲外まで下がり、谷山のブルートとグレイプに分乗して帰還した。

 

捕らえられていた12人のウィングダイバー隊だが。

 

糸玉にされていた者達は、既に見るも無惨な状態になっていた。糸を剥がせば、原型を伴わない死骸が出てくるのが、明らかだった。いや、死骸とさえ、認識できないかも知れない。

 

しかし、朗報もある。

 

糸玉にされていた者の中には、生存者もいたのだ。四名だけに過ぎなかったが。

 

四名はまだ糸玉にされて噛まれていなかったのだろう。一人は新兵で、まだ年若かったから、余計に助かって良かった。皆気を失っていたが、命に別状は無かった。

 

グレイプの窓から、夕日を見る。

 

既にフェンサースーツの耐久値は限界。限界まで戦うというデータ取得は出来たが。このスーツは高価なものなのだ。今回のように、あまり無茶ばかりは出来ないだろう。

 

既に陽は落ち始めている。

 

東京支部の司令部であるプロテウスと、麾下の全戦力が出てきたことで、奪われた地域の半分は奪回に成功。

 

夜になったからか敵も動きを止め、膠着状態になった。

 

しかし、初日だけで、精鋭のウィングダイバー17名を含む、210名が戦死。その中には、私が眼前で救えなかった者達も、多く含まれていたのである。

 

全世界では、十二カ所の巨大生物同時活性化により、合計二千五百以上の死者を出した。これはEDF関係者だけの数字。民間人の死者は、その二倍を超える模様だ。

 

初日だけで、これだ。

 

まったく、嫌になってくる。

 

これに対し、EDFは予備役の招集と、短縮プログラムでの新兵訓練を発表。総力戦に備える体勢を見せていた。

 

ほのかが、泣き続けている三川に、優しく声を掛けている。蜘蛛の糸に捕らえられたとき、ぞっとするほど冷たかったのだという。アレに包まれて溶かされてしまった仲間のことを思うと、何も考えられないと、三川は泣いていた。

 

無理もない。

 

せめられもしない。

 

PTSDは、歴戦の猛者でさえ掛かるのだ。ましてや新人が、いきなり緒戦でこれだけの戦いを経験すれば。どうなってもおかしくは無い。

 

通信が入ってくる。

 

恐らくは、EDFと提携しているメディアのものだ。

 

「EDFの公式発表です。 世界中十二カ所で、突如巨大生物が出現。 彼らは滅びていなかったのです。 フォーリナーの関与を疑われますが、EDFは機密に抵触するとしてコメントを拒否。 また、巨大生物の中には、7年前までには姿を確認できなかった、アンノウンの姿もあると言う事です」

 

日高から先ほど通信があった。ウィングダイバー隊の生き残りを救出したことに対する礼と。それと分かっている情報の提示。あのアンノウンは、レタリウスと呼称するそうだ。

 

古代の闘技場で、網を用いて戦う者をそう称したとか。

 

日本だけでは無い。

 

他の国でも、レタリウスは出現。大きな被害を出しているという。

 

あれは危険だ。

 

谷山は回避できていたが、ヘリにとっては天敵に等しい相手である。ヘリより動きが遅いウィングダイバーにとっては、どうしようもない相手だと言えるだろう。

 

確かに、飛翔できないタイプの巨大生物にとって、ウィングダイバーは天敵と言っても良い。

 

しかし、まさか初日で、その優位が破られることになるとは。

 

「現時点で、以下の地域に関しては、立ち入りが禁止されています」

 

放送で挙げられた地域の中には、東京だけでは無い。

 

北部旧中国、北米の旧ニューヨーク。欧州の旧ベルリン。いずれも、大都市ばかりである。

 

このうちニューヨークは放棄された後、再建の目処が立っていなかった場所だ。当然の話で、マザーシップのジェノサイドキャノンによって、文字通りのクレーターと化していたのだから。

 

弟宛に通信が来る。

 

日高からだ。

 

「嵐特務少佐」

 

「はい」

 

「疲れている所すまんな。 帰投後基地に出頭して欲しい。 レタリウスについての情報をまとめるのと、明日以降の作戦行動に関してのブリーフィングを行いたいのだ」

 

「イエッサ」

 

現在、東京支部の司令部は、基地から西側にかなり離れている。

 

プロテウスがそうだからだ。

 

ただし、プロテウスも一定の戦果を上げたという事で、一旦帰投するという。おそらく基地に戻る時間は、巨体故に鈍足なプロテウスの事もあるから、ほぼ同時刻になるだろう。

 

一定の戦果、か。

 

今日中に東京の敵を駆逐すると出撃時には息巻いていたのに。

 

一定の戦果を上げたから帰投し、動きを止めるというのも。悲しい話だ。

 

勿論、今回の成果は、八年前に、最初に巨大生物と交戦したときに比べれば、全くというほどマシだ。

 

あの時は酸を浴びせかけられて瞬時に溶けてしまう戦車や兵士。

 

それに効きもしないアサルトライフルを持たされて、前線で逃げないことを強要され、なすすべ無く蟻の餌にされてしまった兵士など。

 

それこそ、地獄絵図が私の前に顕現していた。

 

今回は少なくとも、強化されていたとはいえ、巨大生物相手にまともな勝負が出来たし。制圧された地域も、半分は奪い返したのだ。

 

ふと気付くと。

 

黒沢以外の新兵は、皆眠っていた。

 

筅に到っては、分厚いヘルメットを外して、丸くなって眠っている。

 

クローンは、培養槽の中で寝ていたときの名残か、丸くなって眠ることが多い。かくいう私も、昔はそうだったから知っている。

 

グレイプを運転しているジョンソンが、不意に声を掛けてきた。

 

「今回も、勝利が見えない戦いが続きそうだな、特務大尉」

 

「ああ。 前と同じだ」

 

「あの蜘蛛どもの陣地に、明日以降も特攻かまさないといけないって訳か。 ぞっとしないぜ」

 

グレイプが止まる。

 

基地に着いたのだ。

 

既にブルートは到着していた。

 

一旦此処で解散となる。とはいっても、敵が動きを見せれば、即座にまた再招集である。兵士達は、こういうときのために用意されている宿舎に。

 

普通に眠るのでは無い。

 

EDFでは、睡眠によるより効率の良い体力回復を図るために、カプセル式の睡眠装置を導入している。これに入る事で、普通の睡眠より大幅な体力回復を行う事が出来るのだ。ただし、昔ながらのベッドで休みたいという兵士もいるし。彼らのために、普通のベッドも用意されている。

 

もっとも、戦況が悪くなったら、皆地べたで雑魚寝だ。

 

今は、好条件で休めるだけ休んでおけばいい。

 

宿舎に向かう、皆を見送る。

 

誰にも言われず、私は残った。ジョンソンもである。

 

私と弟は。それに通常階級で一番上のジョンソンは。

 

日高に呼び出されたとおり、これから司令部とのブリーフィングだ。倒したレタリウスについての情報も、提示しなければならない。

 

可能ならば、有効な戦術も開発したいけれど。

 

まだ情報が少なすぎる。

 

ジョンソンが言うとおり。今回も、恐らくは地獄絵図になる事だろう。そして、ストームチームの中からも、生きて帰ることが出来ない兵士が出る筈だ。

 

それは弟かも知れないし、私かも知れない。

 

今日は、たまたま生き残れただけだ。

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