地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
それでも全ての人類の戦力を絞り尽くすまでフォーリナーの攻撃は止まりません。
ストームチームはその中でも善戦はしています。善戦出来ているだけです。
事実、精神の均衡を崩している者も出始めています。
序、極秘作戦
東京基地に戻るやいなや、私だけが日高司令に呼ばれた。娘がおかしくなっている事について聞かれるのかと思ったのだが。内容は違っていた。
連れて行かれたのは、東京基地の地下司令部。
其処で日高司令は待っていた。
「良く来てくれたな、嵐はじめ特務少佐。 いや、間もなく中佐だな」
「恐縮ですが、特務中佐と言えば准将待遇。 本当に良いのですね」
「ああ、構わない。 今、東京基地の幹部として活動している人間は、全員が賛成している事だ」
そうはいうが、これが敗戦確定したからの大盤振る舞いである事は、誰に言われなくても分かる。
もう、皆自棄になっているのだ。
護衛の人員も少ない。
地下のあまり電力が足りていなさそうなエレベーターを使って、降りる。行く先は、大深度に作られている、研究設備だ。
現在、東京基地は、地下シェルターと構造を接続するべく、急ピッチで動いている。戦闘人員以外の全員が、作業をしていると言っても良い。
地下シェルターの最深部には、強化クローンの製造装置が運び込まれ、戦力補充のため、フル回転で稼働している。
地下へ移動した医療設備も、けが人を可能な限りの速度で、現状復帰させるべく必死だ。
今や東京基地は。
地上よりも地下の方が、賑やかになっている。
かっての地下鉄や構造物も、全て利用されている。各地のシェルターからの人員輸送も続けられていて、今や極東だけではなく。人類にとって最後の砦に、東京基地はなりつつあった。
そんな地下の一角に、研究設備がある。作られている事は知っていたが、足を踏み入れるのは初めてだ。
無能を揶揄されるEDF上層部だが、一方科学陣の能力を疑う者はいない。事実、私と融合した地下の彼奴の助力があったとはいえ、それを形にした能力は高い。小原博士のように、必ずしも有能とは言いがたい人材もいるけれど。実務をしている科学者達は、皆優秀だ。
研究施設は、かなり広い。
実際のデスクスペースはこじんまりしているようなのだけれど、奧の兵器研究スペースは、逆にだだっぴろい。
奧に鎮座しているのが、噂に聞くベガルタM3の最終形態、バスターロードだろう。ドラゴンの群れを単独で相手に出来るコンセプトだという。此処で最終試験が上手く行けば、筅が使う事になる。
その後、設計図を各地に輸送し、反撃の鏑矢となる予定だが。
その日が来るか、それについては全く分からない。
白衣の研究士官に敬礼しながら、日高司令について歩く。案内されたのは、研究施設の奥の奥。
其処は照明が薄暗く保たれていて。
そして、小原博士と、三島が待っていた。
「小原博士、例のものを」
「此方です」
小原が出してきたのは、立体映像投射装置。
なるほど、例のものというのは、データか。
映像が、浮かび上がる。
それはあまり趣味が良いとは言えない代物だった。
頭部である。
黒蟻、赤蟻。凶蟲。レタリウス。蜂。ドラゴン。
今までEDFが血を吐きながら倒してきた巨大生物たちの頭部を、立体的に分析し。なおかつ、縦に割った断面図。
蟻たちの頭部に関しては、神経節が表示されているが。
知ってはいるのだが、やはり本来の昆虫のものよりもずっと大きくて。脳と言われれば、そうだと納得してしまいそうなほど。
また、ドラゴンに関しては。
かなり大きな脳が、頭の中に詰まっている。
これに関しては、蜥蜴に似ていることもある。別に不思議では無い。頭蓋骨に守られた脳は、かなり容積も大きい。
更に、それぞれの巨大生物ごとに、複数種類が並べられている。
「これが、どうかしましたか」
「うむ。 以前から仮説が上がっていたが、巨大生物はそれぞれが緊密な連携を取るために、何かしらのネットワークを構築している。 色々な説があったが、やはりオカルト的なものではなく、科学的な何かが、それに影響している。 そして巨大生物同士が絶対に共食いをしないことや、フォーリナーの兵器との緊密な連携をする事から考えても、確実に奴らには知性もある」
其処で、頭部を徹底的に分析したという。
なるほど。
その結果が出た、と言う訳か。
そしておそらく今回呼ばれたのは。むしろ私よりも、地下の彼奴の助力が必要になる、という事なのだろう。
「神経のこの部分。 どうやら、ある種の電磁波を出しているようなのです。 その帯域は、ある一定のパターンで変化し続けていて、暗号も同然。 故に今までは、どうしてもキャッチ出来ませんでした」
「キャッチ出来たのですか」
「出来たには出来たが」
分析結果が表示される。
それは波のように動いていて、ゆったりと変化し続けてもいる。なるほど、呼ばれた訳だ。
暗号解読をしてほしい、という事なのだろう。
二重の暗号。
それも、変動パターンはキャッチ出来ても、此方が察知したと分かれば、確実にパターンを変えてくるはずだ。
奴らの脳には、それが出来る能力が備わっている。
もっとも、特別に凄いというわけではないだろう。
人間の脳も、各種の感覚器官が捕らえた情報を、高速で分析して、様々に変換しているのだから。
意図せずに本能的にやっている、ということだ。
地下の彼奴の意識とリンクする。
呼び出すのに苦労したが。出して見ると、奴はしばらく暗号の波を見てから、理解したようだった。
「ふむ……」
「何か分かりそうか」
「分かるも何も」
奴らはこう言っている。
おそらく、情報網を察知された。切り替えるべし。
以降は、ダミーを流す。
小原博士が、大きく嘆息する。
以前察知された情報でこれだ。今は更に別種のやり方で、情報をやりとりしているに違いがない。
やはり此処でも、フォーリナーは一枚上手を行っている。
こういった情報戦などで、此方に尻尾を掴ませる気は無い、ということだ。よくあるSF映画などで、人類の英知が醜いエイリアンを撃退するが。星の海を渡って来ている超文明の持ち主が、それくらい対策していないはずもない。
「だが、今回はこれで、敵に迫る事は出来た。 今の分析結果を、調査班に廻しておく」
「無益だと思うが」
「今までのデータも出す。 何か有益な情報はないか」
見せられる波形。
ざっと見てみるが、いずれもが、作戦行動時の内容ばかり。後退。前進。攻撃開始。撤退。そんなものばかりだ。
いずれにしても、役に立つ情報はなかった。
無言で三川が、データを切り替える。
これはと聞くまでもない。
ドラゴンの頭部。
しかもこの様子だと、ごく最近に殺したものだろう。スカウトが回収してくるのも、命がけだった筈だ。
「ドラゴンについてですが」
三島が、話を切り替える。
小原博士が説明しないという事は。此奴の独自研究、という事だろう。専門は兵器開発の筈だが。
或いは、他のチームがまとめた情報からなのか。
それとも、もう専門がどうのと言っていられないほど、忙しいのかも知れない。確かに最近は、殆ど此奴はちょっかいを出しに来ない。
「おそらく、情報を並列で共有しています。 戦闘経験値を蓄積するのが目的なのでしょう」
「ウィルスの類は無駄だぞ」
並列化したデータに、バグやウィルスを流し込んで、一網打尽。SF映画などである手段だが。
そんなものは、ドラゴンの頭脳のフィルターで弾かれておしまいだ。
見かけは原始的な生物でも。
強力なアーマーで武装し。王水に近い凶悪な酸を放出し。
重火器に等しい火力を実現する。
そんな生物に、人間の常識なんぞ通用しない。見かけよりも、遙かに優れた技術が搭載された存在なのだ。
まあ、当然だろう。
フォリナの現状打開派にとっては、未来を切り開くための肉体なのだから。それくらいのスペックは搭載していて当然である。
「いえ、蓄積した情報を取り出せれば、或いは此奴らが必要なデータを得られたかどうかと言う判断が可能かと思います」
「……なるほど」
「どうでしょう。 この死体を見る限り、現状はどれほどですか」
地下の彼奴は、じっとドラゴンの脳を観察しているが。
しかし、奴も結論は出せなかった。
流石に、脳の状態を見ただけで、蓄積している情報量を把握するのは、厳しいという事なのだろう。
首を横に振る私を見て。
流石に、三島は。
いや、日高司令も、肩を落としていた。
「流石にそう容易には行かんか」
「この脳は、ニューロンとは別の仕組みで、情報を蓄積して分析に役立てているようなのです。 その仕組みだけでも分かりませんか」
「無理です」
「……」
残念そうに、小原博士が肩を落とした。
だが、幾つか前進したこともある。一気に核心に迫る事が出来なくても、これで我慢してもらうほかない。
地上に出るまでの間。
日高司令は無言だった。
地上に出てから、通信がある。
戦術士官からだ。
「欧州司令部との連絡が途絶しました。 もはやあちらでの戦況が、どうなっているか全く分からない状況です」
「陥落したか」
「いえ、周辺の状況を見る限り、アースイーターによる電波妨害の可能性が高いかと思われます」
「本当だろうか」
明言は、戦術士官でさえ避けた。
私は嘆息すると、久方ぶりの寮に戻る。弟は黙々と豚カツを揚げていた。物資だけは豊富にあるから、気にしなくて良い。
「姉貴、何かあったか」
「欧州の件以外は、研究が進展していないと言う事を目撃しただけだ」
「そうか。 そうだろうな」
ブレインの足跡については、かなりの所まで迫っているようだが。実際にそれを目撃し、捕捉するまでは、どうにも言えない状況だ。
ドラゴンの知識蓄積に関しては、今までの地球での戦闘経験が蓄積されていくだけでも、相当なものになるはずだ。
しかし、それも後どれだけ耐えれば良いのか。
地下の彼奴でさえ、これについては分からない様子だし。私としても、どう応えて良いものか。
「出来たぞ」
「食べてもいいか」
「ああ」
弟との間では、殆ど会話は必要ない。
黙々と、ただ情報をやりとりするだけ。
机につくと、ナプキンを付ける。二人でいるときだけは、残っている習慣だ。昔、一人だけ、まともな教官がいた。その人は、嵐姉弟に、人間らしい思考をあげたいと考えたようで、こういうことをさせた。
殆どあの人に教えられた習慣は、二人の中でさえ残っていないけれど。戦乱の中で命を落としたあの人のためにも。二人でいるときは、こういう行動をしているのだ。
豚カツは温かくて良く出来ていた。最初の頃はあまり美味しくなかったのだが。今食べている豚カツは、お店のものほどではないにしても、そこそこ美味しい。
黙々と豚カツを食べ終えると、寮の奧にあるカプセルで休む事にする。弟は、皆の訓練を付けに行くつもりの様子だ。
思い詰めている奴も多い。
日高少尉が壊れてからというものの、皆の気鬱は増すばかりのようだ。黒沢は平然としているが、それも内心ではどう思っているか。
しばらく、無心に休む。
少しでも、傷を回復させなければならない。
心の負担も、軽減しなくてはならない。
目が覚めて、カプセルから出ると、即座に通信が来た。或いは、休みを終えるのを、待っていたか。
次の任務だ。
わかりきっていたが。過酷な内容である。
神奈川の瓦礫と化した港湾地帯に、敵輸送船が出現。新型輸送船である。しかも、ディロイを多数投下しているというのだ。
ヘクトルでは無くディロイ。
しかもそれが多数と来たか。
勿論内容は分かりきっている。
「このままだと東京基地が直接脅かされる。 すぐに撃破してもらいたい」
「イエッサ」
弟に通信を入れる。
そうすると、一つだけ朗報があった。
「姉貴、ベガルタの新型がようやく配備されたぞ」
「バスターロードか」
「そうだ。 最終調整が終わって、とうとう実戦投入だ」
今回のバスターロードは、ドラゴンの群れと戦う事を主眼に置いて設計されている。ディロイの群れが相手だとしても、ひけは取らない、筈だ。
流石に相手がディロイの群れと言うこともあって、今回は幾つかのチームも支援として配置される。
だがそれでも兵力が足りないのが、目に見えていた。
ベガルタがどれだけやれるか。
前評判通りに活躍できるのか。
それとも。
ヒドラに向かう。途中で涼川と合流。どうも調子が良くないエミリーと一緒に、軽くジープでドライブして気を紛らわせていたらしい。
幸い物資だけは余っているので、偵察という名目なら、こういうことも許されている。息抜きをしている兵士は、他にもいる。私も、あまり目くじらを立てようとは思わない。涼川のジープの後部座席に乗る。側には、威圧的な銃座が、空を向いて配置されていた。
「やっと新型のベガルタが来たって?」
「耳が早いな。 そうだ」
「でも敵はディロイの群れなんだろ? 輸送船がディロイまで運べるって言うのは、ぞっとしねえよなあ」
「そう、だな」
勿論作戦には、輸送船の撃墜も含まれている。
ドラゴンが現れる可能性も高い。奴らへどんどん蓄積されている戦闘経験は、そのままフォーリナー。いや、フォリナ現状打開派にとっては、未来の希望になるからだ。多少ドラゴンを削られたとしても、そのこと自体にかわりはない。
ヘリポートで、みなと合流。
日高少尉は、非常に嬉しそうだった。敵がディロイの群れと聞いて、なおさらの様子である。
まもなく中尉に昇進することが確定のこの娘は。
もう、取り返しがつかない所で、壊れてしまっていた。
点呼を取った後、ヒドラの中に。
バスターロードは、あった。
壊れてしまったファイアロードの代わりに。
大きさはそれほど変わらない。
しかし装備している兵器のものものしさが、以前とは比較にならないほどだ。一つ、当初の報告とは違っている事もある。
配備しに来た士官が、説明してくれる。
「これは高性能の試作機で、これで実戦経験を取った後に、ダウングレード版として量産するのがバスターロードとなります。 バスターロードそのものは、多少機動力を落とし、対ドラゴン戦をも含めた、ベガルタ最強の重火力型になる予定です」
「そうなると、此奴はなんと呼べばいい」
「コードナンバーはAXです」
「ふむ……」
AXか。
近距離戦でのコンバットバーナーだけでは無い。遠距離戦を含めた兵器を、合計四種類も装備している。
これで機動力と防御力を維持しているのだから、如何に強力な試作機として作られたか、と言う話だ。
そういえば地下の兵器実験場で見たものとも、少し形状が違っている。
あれはダウングレード版として落とし込んだバスターロードか。
早速士官が、筅にマニュアルを渡している。
覚えが良い筅は、すぐに内容を飲み込んで行っている様子だ。
「少しは戦力差が埋まりそうだな」
隣に来た弟が、ほんの少しだけ嬉しそうにしていた。