地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋   作:dwwyakata@2024

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1、機獣軍団

かつて異国からの艦隊が到来もした、一大港湾地帯。

 

しかし其処は既に廃墟となり。

 

うち捨てられた倉庫群の間に、数機のディロイが鎮座している。上空にいるのは、新型輸送船。

 

双眼鏡を覗いていたほのかが、いつも通りのんびりといった。

 

「おかしいわねえ」

 

「どうした」

 

「ディロイの足が短いの。 ひょっとすると、輸送船では運べるディロイに限界があるのかも知れないわ」

 

私はフェンサースーツの調整をして、遠くを確認。

 

ちょっとみた感触ではさっぱり分からないのだけれど。ほのかがそういうのならば、そうなのだろう。

 

優れた視力と観察力を持つほのかは。

 

最強のスナイパーを支える、最強の観測手だ。

 

彼女の言葉には、千金の重みがある。

 

現時点で確認される敵戦力は、ディロイ6、大型輸送船が3。大型輸送船は、すぐに撃破してしまった方が良いだろう。

 

ただ、確実に空間転移を駆使してくる。

 

最初にビーコン弾を撃ち込まなければならないが。

 

その後、確実に反応するディロイを、手前から潰して行く。

 

もしも、足が短いタイプとなると。

 

ダウングレード版かも知れない。

 

強力な装甲を持つディロイは厄介な相手だが。ダウングレード版なら、多少は与しやすい可能性もあった。

 

過大な期待は禁物だが。

 

弟が、先行した部隊に指示を出している。一旦後退して、ストームと合流。

 

その後は、敵を一機ずつ集中攻撃。

 

まあ、基本的な作戦だ。

 

ましてや、敵がこれから増援を投入してくるのは確実なのである。

 

「筅軍曹」

 

「はいっ」

 

「ベガルタバスターロード改め、試作ベガルタAXの性能試験をしておきたい。 まずは遠距離攻撃からだ」

 

攻撃指示を、弟が筅に指定。

 

筅がベガルタを一歩前に出す。機動力は若干ファイアロードより劣るか。しかし、動きそのものは軽やかで。

 

前大戦で、歩く棺桶と評されていた、ベガルタM1とは比較にもならない。

 

あれは本当に、火力だけはあったが。操縦が極めて難しく、殆ど扱える代物ではなかった。

 

ベガルタに装備されている砲が狙いを定める。

 

発射。

 

一斉に、ディロイが反応する。その内の一機が、円盤状部分から盛大に煙を上げ、大きく傾いだ。

 

事前にほのかが言っていた通りだ。

 

かなり足が短い。

 

それに、装甲も甘いようだ。ベガルタが装備している最新鋭砲とはいえ、彼処までのダメージを与えられたのが、その証拠である。

 

「戦闘開始。 手前のディロイから、順番に撃破する。 フェンサー部隊はシールドを構えて、敵のプラズマ砲とレーザーから味方を守れ」

 

その間に、ストームチームと、レンジャーチーム二つ、ウィングダイバーチームで敵を葬る。

 

一機目のディロイが、更にベガルタの砲撃を浴び、爆散。

 

なかなかの火力だ。

 

流石にコスト度外視で作成された試作機というだけのことはある。ディロイの一機が、プラズマ砲を発射。

 

「回避しますか」

 

「いや、直撃を受けろ。 耐久試験をしておこう」

 

「イエッサ!」

 

筅はその場に留まり、味方の盾となって、敢えてディロイのプラズマ砲を直撃させる。

 

しかし、煙が晴れると。

 

ベガルタは、多少アーマーを削られながらも、殆ど無傷のまま、其処に立っていた。

 

喚声が上がる。

 

これは予想以上の性能だ。

 

ひょっとすると、行けるかも知れない。

 

私はガリア砲をぶっ放し、一機ずつ集中攻撃を浴びせていく。ライサンダーの弾が集中し、煙を上げはじめた一機が。

 

まず、私のガリア砲によって、消し飛んだ。

 

これで二機。

 

戦況は、必ずしも不利では無い。

 

少しずつ、味方は前進を開始する。

 

 

 

「筅軍曹、調子は」

 

「問題ありません!」

 

ベガルタM3AXをもらって、私は、出来るだけ上擦った声を抑えるように、努力しなければならなかった。

 

凄い機体だ。

 

装備している武器を、順番に試すように、言われた。

 

ストームリーダーは、これだけ戦況が悪化しても冷静だ。きっとだからこそ、このような末期戦でも、心を壊さずに、指揮を続けていけるのだろう。

 

ベガルタのコックピッドで、私は表示され続ける無数の情報に目を通し続ける。この機体、性能は凄いけれど、あまりにもピーキーだ。一秒ごとに飛び込んでくる情報と操作要求が、多すぎる。

 

今まで培った経験と。

 

ベガルタ乗りとして磨いてきた力を、フルに動員しなければ、これは動かせないし。如何に絶望的な戦況で、多くのEDF戦士が鬼籍に入ったからと言っても、私なんかが扱って良いという事にはならない。

 

「筅軍曹、次の攻撃目標を指定する」

 

「イエッサ!」

 

ストームリーダーの言うまま、次の敵をロックオン。

 

基本ベガルタは、左右対称に武器を持つ。多くの場合コンバットバーナーを両手に、砲を肩に。

 

しかしこの機体の場合は、両手両肩、全てに違う武器を搭載している。

 

コンバットバーナーとリボルバーカノンを両手に。打ち上げ式のミサイルに、そして大威力大口径の主砲を両肩に。

 

つまり、それだけテクニカルに戦う事を要求されるのだ。

 

足が短いディロイが、レーザーとプラズマ弾を撃ち込みながら、近づいてくる。味方の猛攻で一機ずつ潰されているけれど。敵は盾を構えてスクラムを組んでいるフェンサー部隊や、倉庫に隠れて狙撃戦を仕掛けているレンジャー部隊には興味が無い様子。ひたすら、ストームチームを狙ってきている。

 

私は、盾にならなければならない。

 

プラズマ弾が飛んできたので、機体で受け止める。

 

衝撃が来る。

 

頑丈だったファイアロードよりも、更に強力。

 

余裕を持って受け止めると、肩の主砲を発射。傷ついていたとはいえ、ディロイの円盤を貫通、爆破炎上させた。

 

砕けて瓦礫になるディロイ。

 

喚声が上がる。

 

「おっしゃあ! すげえなオイ!」

 

「上手く行きすぎる」

 

喜んでいた涼川さんに、ストームリーダーが釘を刺した。

 

確かに、私もそう思う。

 

足が短いディロイは性能が微妙で、決して味方部隊でも倒せない相手ではない。もはや東京基地で息をひそめているEDF極東の戦力だけれど。このベガルタが量産されれば、或いは。

 

物資だけはある。

 

まだ生きている基地と工場に、この設計図を送る事が出来れば。

 

数が減っても、ディロイは旺盛な攻撃意欲を捨てない。

 

機械なのだ。

 

恐怖も絶望もないのだろう。

 

プラズマ弾を喰らって、倉庫に隠れていたレンジャーが吹っ飛ぶのが見えた。負傷者が、キャリバンに運ばれて行く。

 

最近は日高少尉はもうキャリバンを操作していない。

 

この間頭のネジが飛んでから、明らかに戦闘能力が格段に向上して、むしろ前線で敵を倒すことが多くなった。キルカウントが凄まじいので、その方が却って被害が減るのだ。前は、怪我したら、日高少尉が必ず飛んできてくれた。それがとても頼もしかった。

 

主砲をうち込む。

 

巨大な薬莢を排出しながら、直撃を確認。

 

またディロイが一機沈む。

 

敵新型輸送船が、不意に消える。何処かへ移動したのでは無く、逃げたのだと、ビーコンの反応から分かったけれど。

 

しかし、嫌な予感がする。

 

「残りを急いで片付ける! 全員、火力を集中!」

 

「イエッサ!」

 

ストームリーダーが叫ぶ。

 

きっと、同じように、嫌な予感を感じたのだろう。

 

フェンサー部隊も攻撃に転じ、ハンドキャノンを雨霰と残ったディロイに浴びせる。最近はやっと味方フェンサーも、ある程度機動戦が出来るようになってきた。フェンサースーツの技術が、向上したのだ。

 

彼らを支援するべく、私はどんどんベガルタを前に出す。

 

敵がレーザーを至近からうち込んでくると、味方が一気に倒されてしまう可能性が大きい。

 

リボルバーカノンを乱射しながら、敵に接近。

 

相手も、此方を危険な存在と認識。

 

レーザーを此方に集中してくる。

 

アーマーが削られていくけれど。味方が死ぬよりずっとマシ。主砲を叩き込んで、ついに最後の一機を黙らせる。

 

薬莢が排出される音を聞きながら、私はため息をついた。

 

これで、一段落か。

 

「筅軍曹、一旦ヒドラに戻り、補給を受けろ」

 

「イエッサ! 直ちに!」

 

高機動ベガルタの完成形だったファイアロードほどでは無いけれど、このAXも高い機動力を持つ。

 

ブースターを吹かし、もはや廃墟となっている港湾地区を飛び越えていくと。

 

レンジャー部隊やフェンサー部隊が、喚声を挙げながら手を振っているのが見えた。勝利に貢献して、味方を守る事が出来たのだ。

 

目を細めて、感謝を素直に受け取ることにする。

 

ヒドラに到着。

 

中に滑り込ませると、すぐにコックピットから出た。

 

「補給を急いでください。 アーマーの張り替えも」

 

「味方は勝ったと聞きましたが」

 

「きっとあれは、おびき寄せるための餌です。 あまりにも弱すぎました」

 

「分かりました。 即座に」

 

少し前に、スタッフに加わってくれたカトリーヌちゃんが、パワードスーツを使って、力仕事をこなしているのが見えた。

 

彼女は器用で、スタッフに教えられながら、見る間に技量を伸ばしている。

 

もう、皆もその努力と頑張りを認めて、カトリーヌちゃんを邪魔者扱いはしていない様子だ。

 

少しだけ、カプセルで仮眠を取ることにする。

 

バイザーに通信が入った。

 

ストームリーダーからだ。

 

「可能な限りすぐに戻ってこい。 新手が来る可能性が極めて高い」

 

「分かりました。 カプセルから、出来るだけ急いで出ます」

 

「悪いな」

 

味方の損害は軽微。

 

だが、もたついていると。

 

きっと、それは過去の話になる。

 

十五分だけカプセルで休んだ後、すぐにベガルタの所に戻る。

 

分厚いアーマーも補充完了。

 

武器類の再装填も完了していた。

 

壊れていないのだから、メンテナンスがすぐ終わるのは当然か。私はすぐにコックピットに乗り込むと、出る。

 

フラグを振って、整備長が出撃を周囲に知らせる。

 

さっとスタッフが散る。

 

整備スタッフもアーマーを付けるのが普通だけれど、それでも何をしても死なないというわけではない。

 

ベガルタに踏まれたら、大けがではすまないのだ。それほど大型では無い戦闘マシンとはいえ、である。

 

移動しながら、弾薬の状況、燃料の状況、いずれをも確認。

 

味方は後退しながら、油断なく敵の襲撃を警戒している様子だ。そして、港湾地区から撤退を完了しようとした瞬間。

 

奴らが来た。

 

空に、無数の六角形が姿を見せる。

 

アースイーターだ。

 

「来たな……!」

 

ジョンソン大佐が、皆に警告する意味もあるのだろう。

 

敢えて口に出して、そう言った。

 

アースイーターの輸送能力は、輸送船とは比較にもならない。以前出撃が報告されていた、足が長い強力なディロイも投下してくるはずだ。そしてストームチームは、敵と可能な限り激しく戦うようにと指示されている。

 

ある程度、戦っていかなければならない。

 

ストームリーダーが、逃げ腰になる味方チームを叱咤。

 

ストームチームはアースイーターとも戦い慣れているけれど。味方チームは、そうでは無い。

 

「レンジャーチーム、フェンサーチームは、アースイーターに攻撃を開始! コアをまず狙い、その後は砲台を叩け」

 

「し、しかし」

 

「此処で少しでも敵をたたけば、他地域の味方がそれだけ有利になる! コアはつぶせるし、砲台は見かけよりずっと脆い! 艦載機やディロイは此方に任せろ!」

 

前線に急ぐ。

 

艦載機やディロイが、すぐに出撃し始めた様子だ。青ヘクトルも、投下されている様子である。

 

相手は戦闘経験を欲しがっている。

 

そのうち、ドラゴンが姿を見せるかも知れない。

 

急がないと、味方が大勢死ぬ。

 

敵の一部が見えた。上空に展開しているアースイーターの砲台が、さっそくレーザーを放ちはじめている。

 

リボルバーカノンを連射して、見える範囲の砲台を、片っ端から落としていく。

 

勿論反撃が来る。

 

可能な限り無視。

 

まずは前線に出て、味方の支援だ。移動中、駄賃に叩いていける砲台は叩くけれど。前線に辿り着くのが最優先。

 

味方が見えてきた。

 

ディロイも。

 

ハッチを既に香坂夫妻と黒沢軍曹が破壊したようだけれど。それでも既に三機のディロイと、七機の青ヘクトルがいる。

 

味方は上空のアースイーターに掛かりっきり。

 

味方に渡されている武器の威力も、青ヘクトルが現れたころより遙かに改善しているけれど。

 

それでも、敵が強い事に代わりは無い。

 

爆裂、味方が吹っ飛ぶ。

 

悲鳴を上げながら飛んでいく味方が、地面でバウンドするのが見えた。

 

最前線に飛び込む。

 

青ヘクトルが、今ガトリングを放とうとしていた。其処に割り込むと、主砲を至近から叩き込む。

 

一撃で、装甲が拉げる。

 

其処へおそらく、はじめ特務少佐の放ったガリア砲弾が直撃。青ヘクトルが、爆沈炎上した。

 

だが、敵も此方に、火力を集中してくる。

 

ブースターを吹かし、上空に。

 

出来るだけ注意を引くためだ。リボルバーカノンを乱射乱射乱射。青ヘクトルが、見る間に消耗していく。しかし、此方のアーマーも、六体の青ヘクトルと、更にディロイ三機を相手にしていれば、もたない。

 

戦術士官から通信が来る。

 

「スカウトより通信! ドラゴンの一部隊が出現! 此方に向かっています!」

 

「接敵までの時間は」

 

「およそ三十分ほどです」

 

「充分だ」

 

ストームリーダーの淡々とした受け答えが、本当に心強い。

 

敵の懐に飛び込む。

 

既にはじめ特務少佐やストームリーダーの猛撃を浴びてダメージを受けていた青ヘクトルに、コンバットバーナーの火力を叩き込む。リボルバーカノンを、至近から浴びせる。下手なダンスを激しく舞う青ヘクトルを。

 

文字通り、紙くずのように引き裂く。

 

膝から腰砕けになる青ヘクトルは無視。次に、主砲を叩き込む。

 

爆発さえ盾にしながら、移動。敵に近づく。

 

殴り合いをするため。

 

そうすることで、可能な限り、みんなの被害を減らすのだ。

 

みんなはいう。

 

筅はベガルタに乗ると、性格が変わる。

 

それは、理解している。でも、それ以上に私は。みんなを守るために、戦いたい。そしてみんなを守るというのは。

 

敵を殺すと言う事なのだ。

 

火力を集中して、敵を片っ端から薙ぎ払う。

 

谷山さんが電磁プリズンを展開。更に多数のセントリーガンを配置して、レンジャーとフェンサーが拠点にする場所を構築。

 

キャリバンや他ビークルもその中に逃げ込むと、敵への火力投射に集中。

 

既に敵は半減。

 

はじめ特務少佐も、私と同じように最前線に出ては、ディロイを次々に叩き潰していた。最後のディロイが、集中攻撃を受けて沈む。香坂夫妻の、イプシロンからの射撃がとどめになった。

 

砕けて落ちていく円盤。

 

最後の青ヘクトルは盾を持っているタイプだったけれど。

 

私はアーマーの残りを横目に、突入。

 

タックルを浴びせて、揺るがせると。

 

至近から、主砲を叩き込み、爆破した。

 

「筅軍曹、損害は」

 

「コンバットバーナーとリボルバーカノンはまだ半分ほど残っています」

 

「よし、密集隊形を維持したまま後退。 間もなくドラゴンと接触する。 此奴らを叩いてから、味方基地へ帰還するぞ」

 

キャリバンがヒドラに戻っていくのが見えた。

 

負傷者で一杯なのだろう。

 

ストームチームだって、全員が無事だとは思えない。

 

アースイーターは、まだ健在。かなり砲台を叩き、ハッチは全て潰しているけれど、それでも断続的に味方に攻撃がある。

 

タンクデサンドした味方が撤退開始。

 

私は最後尾に残って、アースイーターの砲台を叩きながら下がる。程なく、レーダーが真っ赤に染まった。

 

ドラゴンだ。

 

見た感じ、三部隊はいる。

 

奴らは今や、どんな機械兵器よりも、EDFの戦士達に怖れられている。だが、ストームリーダーの声が、彼らを落ち着かせる。

 

「よし、建物の影に隠れて、まずは火力投射を乗り切れ。 その後、空に攻撃を、アサルトかショットガンで撒け。 飛行中のドラゴンは、弾が当たりさえすれば怯む。 最初の一撃さえ耐え抜けば、勝機はあるぞ」

 

「イエッサ!」

 

谷山さんが、電磁プリズンを張り直す。

 

更に強力に。

 

きっと、今まで温存していた全ての分だろう。私もその内側に入ると、急速接近する敵の反応を見て、生唾を飲み込む。

 

ドラゴンが、ついに空に姿を見せる。

 

接近してくる奴らは、終焉の使者そのものだ。

 

火球の雨が降り注ぐ。

 

分厚く張られた電磁プリズンが、見る間に消耗していくのが分かった。私は充分に敵を引きつけると、ミサイルを発射。数匹を撃墜。更に近づいてくる敵に向けて、リボルバーカノンを乱射。

 

何匹かは落とすけれど。

 

それが何だと言わんばかりに、敵が突入してきた。

 

電磁プリズンが、三百匹分のドラゴンの火球を浴びて、崩壊。

 

味方も反撃を開始するけれど。

 

見る間に被害が増えていく。

 

ストームリーダーの冷静な指揮がなければ、一瞬で全滅してしまったかも知れない。私はドラゴンの火球を散々浴びながらも、最前線でコンバットバーナーとリボルバーカノンを駆使。

 

敵を片端から、撃墜し続けた。

 

 

 

戦いは、夕刻まで続いた。

 

ヒドラまで撤退。味方の死者も相応の数に上った。私はベガルタで最後尾を守りつつ、撤退。結局、ヒドラに乗ったのは、最後だった。

 

東京基地へ急ぐ。

 

他のチームを乗せたヒドラも、急いでいた。

 

もはや絶対防空圏がない現状。何処にいても、安全では無い。

 

東京基地の地下病院だって、ジェノサイド砲を喰らえば危ないかもしれないのだ。敵地に等しい場所で、のんびりはしていられない。

 

日高少尉は、今回の戦いで二十七匹のドラゴンを撃墜。キルカウントは、今回の戦場限定で、ジョンソンさんを超えた。

 

結局ドラゴンは七部隊が出現。

 

二百ほどを失った後、これで充分といわんばかりに撤退していった。

 

味方ビークル類も酷く傷ついている。

 

ただし、ネグリングは無事だ。

 

池口さんが、非常に冷静に立ち回って、ドラゴンの集中攻撃を避けたのである。

 

ただ、負傷者も多い。

 

ナナコちゃんはかなり酷い火傷を受けていて、今診察を受けたあと、カプセルで休んでいる。エミリーさんはドラゴンに噛まれた。三川さんも。

 

二人とも、即座にその場でストームリーダーが救出したけれど。

 

プラズマジェネレーターはかみ砕かれてしまって、すぐに戦場を離脱した。今も、カプセルで休んでいる様子だ。

 

ドラゴンは、ウィングダイバーには相性が悪すぎる。二人は味方の支援を受けながら良く戦っていたけれど、ドラゴンだけは現時点ではどうにもならない。早急に戦術を練らないと危険だろう

 

コックピットから降りると、ハンガーの隅にあるベンチに移動。そこでぼんやりと、天井を見上げた。

 

脳を使いすぎて、鼻血が出そうだ。

 

膨大な情報を処理しなければならない。

 

それを集中力で無理矢理こなしていたから、反動が凄まじい。チョコを口に入れるけれど、それでも足りていない。

 

気付くと、肩に手を置かれていた。

 

はじめ特務少佐だ。

 

「カプセルで休め」

 

「は、はい」

 

「見事な活躍だった。 次も頼めるか」

 

「出来るだけ、やってみます」

 

みんなは守れたけれど。

 

しかし、初陣のAXにも、かなり無理をさせてしまった。特に最後のドラゴン戦では、アーマーがかなり危険な所までいった。

 

言われるまま、カプセルに入る。

 

フェンサースーツを解除すると、はじめ特務少佐も、隣のカプセルに入った。

 

フェンサースーツを脱ぐと、はじめ特務少佐は思いの外小さい。

 

私と同年代にさえ思えてくる。

 

でも、以前話は聞かされた。この人は、年を取ることが出来ない特異体質なのだと。ストームリーダーは逆に、倍の速度で年を取っていく体質。

 

そして、二人とも。

 

子供を作る事が出来ない体なのだ。

 

はじめ特務少佐の方は、遺伝子情報を解析して、第三世代の戦闘クローンに反映されている。ナナコちゃんがはじめ特務少佐にどことなく似ているのは、それが理由だ。いつも鬼神のように戦って、みんなの被害を私よりずっと減らしてくれているはじめ特務少佐だけれど。

 

人としても生物としてもいびつで。

 

今後も、人並みの幸せなんて、得られそうにない。

 

私だって、それは同じだけれど。

 

何だか可哀想に思える事も、時々あった。

 

気がつくと、基地に着いていた。

 

カプセルから出ると、まずは医師に診察を受ける。敵と直接戦ったわけではないのだけれど、医師は渋い顔をした。

 

「脳への負担が極めて大きいようだね。 今後、できるだけ連続戦闘は避けなさい」

 

「はい」

 

「生返事はしないように。 新型ベガルタは確かに圧倒的に凄い機体のようだけれど、それだけ負担も大きい。 下手な使い方をすると、廃人になるよ」

 

きっと、それは脅しでは無い。

 

でも、私は。

 

みんなを守れるなら、それも仕方が無いと思った。

 

その後、地下の研究施設に呼ばれる。一緒に来てくれたはじめ特務少佐は、既にフェンサースーツを着直していた。

 

大深度地下で、軽くミーティングをする。

 

データを見て、白衣の研究者達は、皆喜んでくれているようだった。

 

「新型ベガルタのデータは、かなりとる事が出来たな。 このデータで新型のバスターロードと、ファイアロードのバージョンアップが出来る」

 

「すぐに取りかかってくれ。 できれば、数機を戦場に投入したい」

 

「此奴が百機もいれば戦況を一機にひっくり返せるのだが、現状ではそれも望めないな」

 

私は、何も喋ることが出来なかった。

 

ただ、時々意見を求められては、しどろもどろに応えるだけだった。

 

ようやくミーティングから解放されて、地上に出ると。

 

空は曇っていて、いつ雨が降ってもおかしく無さそうだ。

 

いつ、次の戦いが来てもおかしくない。

 

私は、シミュレーションで訓練する同期達を横目に。与えられている寮で、寝ることにした。

 

少尉の辞任を受けたのは、その日の夕方。

 

まったく自覚はないけれど。

 

とうとうこれで、私も下士官になったらしかった。

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