地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
少しだけ眠っていた私は。
弟にコールを鳴らされて、カプセルから這い出した。
ここ数日で、大小二十二回の戦闘に参加。多くの敵を葬ったが、その分味方が負傷もした。
少しは休めるかと思ったのだが。
そうもいかないらしい。
カプセルの外で、おぼつかない指先で、フェンサースーツを着込むと。今度は、弟が直接通信を入れてきた。
「姉貴、すまんな」
「お前こそ、寝ているのか」
「大丈夫だ。 ある程度要領よくやっている」
「そうか」
寮を出る。
まだ真夜中だ。
昔は、夜を知らない街として、東京は世界最大のメトロポリスとしての威容を世界中に見せつけていたが。
しかし、今は。
東京どころか、もはやメトロポリスそのものが世界にない。
東京地下のシェルターには、人が増える一方。更に拡張するという話さえ出てきているほどだ。
少し前とは、地上と地下の生活者が逆転してしまっている。そして地上を制圧したフォーリナーは。
更に、戦いを求めている。
エレベーターに乗って、地下へ。
会議室に出向くと。最初に見えたのは、やつれきった小原博士だった。
「きたか、はじめ特務中佐」
「!」
そうか、ついに正式任命か。
これで私は准将待遇の特務中佐。准将が二人いる特殊部隊なんて聞いたこともないけれど、それが事実である。
弟も、そうなると特務大佐か。
これはますます、戦いが終わった後の地位が危ない。英雄が一瞬で座を奪われて、粛正される例なんて、歴史上枚挙に暇がないのだから。
デスピナ艦長と、親城准将。他にも見知った顔が幾つかあるけれど、それくらいだ。既に本部とは通信が取れなくなっているし、欧州も然り。
会議に参加している人数は、ぐっと減っていた。
「それでは、さっそく会議を始める。 小原博士、説明を」
「はい。 どうやら、ログの解析の結果、ブレインがいる場所を数カ所にまで絞り込めた模様です。 これから探査に向かいます」
おおと、周囲から声が上がる。
小原博士は数日ろくに寝ていない様子で、それが大変痛々しかったが。ついに成果を上げたのだ。
すぐに護衛の部隊が編成される。
どうやら現時点で、ブレインは極東にいるらしい。
幾つかある候補地点のそれぞれ一角に大きなクレーターがあるのだが、其処に潜んでいる可能性が高いそうだ。
他にも何カ所かに候補がある。
近い所から順番に廻る予定だと、小原博士は言った。
「これはおそらく、必死の隠密任務となる。 敵にとっては、戦闘経験を積むための交戦は大歓迎の筈だが、ブレインを叩かれることは死活問題だ。 だから狙いが察知されたら、きっと激しい攻撃を受けるだろう」
しかしそれでもやらなければならないと、小原博士は周囲を見回した。
この男は無能だと言われていて、事実その通りの部分もあるが。少なくとも、EDFの一員として、勇気と責任感だけは欠かしていなかった。
「我々が護衛につきましょうか」
「いや、君達は敵の注意を引きつける意味でも、別にやって欲しい事がある」
そう言って、日高司令が出してきたのは、映像。
九州のものだ。
福岡基地には、今九州からの敗残兵が全て集結している。近隣地方の戦力は皆大阪基地に逃れたのだけれども。それが故に、敗残兵は決して多くない。
今、その福岡基地が。
波状攻撃を受けている。
敵は福岡基地の戦力をある程度削って、自立的な行動が出来なくする目的があるのだろう。勿論、戦闘経験を積む意図もあるはずだ。
「敵はドラゴンが五隊から七隊。 福岡の長沼少将は必死に防戦しているが、そろそろ限界だと連絡が来ている。 其処で君達には、支援に向かって欲しい」
「分かりました。 すぐにでも」
「長沼少将と君達には、浅からぬ因縁がある事は分かっている。 だが、九州を失陥することは、今大きな損失になる」
失陥か。
実際には、もう極東でさえ、福岡、大阪、東京、それに旭川の四基地しかまともに機能していない。
しかも外に出て兵力を展開できるのは、東京基地のみ。
地下で必死に第三世代戦闘クローンを生産しているが、それでも一日に何百人も作れるわけではないし。
連日の戦闘で消耗していく人員の方が、遙かに多いのが実情だ。
弟は不満の色も顔に出さず、黙々と作戦に従った。
実際問題、以前出た情報。
敵を蓄積戦闘経験で満足させるか、首魁を叩くか。
その両方を、満たすための行動でもある。
ヒドラに歩きながら、全員に招集。ベガルタAXも、既に戦える準備は整っている。他のビークル類も、既に揃っている。
問題は相手がドラゴンという事だが。
それも、基地の防空能力と連携すれば、どうにかなるはずだ。
そう、現地に到着するまでは、私も思っていた。
複雑な経路を経て、ヒドラで九州に到着した頃には、早朝。そして、基地のヘリポートに着陸。
ヒドラを地下格納庫へ移動させながら、基地を見回して愕然とした。
まるで焼け野原だ。
防空兵器類は全滅状態。ビークルも、無事なものは殆どいない。彼方此方に焼け焦げたビークルの残骸。
ドラゴンの死骸も散らばっている。
これさえ片付けられないほど、戦況が悪いというのか。
「これは、まずいな」
一応外壁は生きているし、人員の反応もある。ヒドラの着陸に迅速に対応できたのがその証拠だ。
しかし、この有様は。
すぐに地下のヒドラから、ビークル類を全発進。
谷山が、応急措置として、電磁プリズンを展開した。すぐに地下の倉庫にアクセスし、在庫を調べるが、つながらないと谷山が嘆く。
電力設備は生きているけれど。
外壁は半壊状態で、赤蟻や黒蟻が、いつ侵入してきてもおかしくない。
外壁に上がってみる。
セントリーガンの残骸が点々としている。要塞砲は破壊されていて、もはや機能を残していなかった。
弟が、舌打ち。
滅多に無い事だ。
「どうした」
「長沼少将が通信に出ない」
「こっちです!」
手を振っている筅。
見ると、通信設備がやられている。しかも、である。
妙な物質が、付着している。
これは通信妨害を引き起こすものか。ドラゴンがこんなものを吐いて、通信を阻害したのだろうか。
少なくとも、今まで必ず通信できていた、バイザーのネットワークが潰されているのは事実である。
今、地上にいるメンバー同士では通信が出来ているが。
地下に逃げ込んでいる基地要員とは、連絡が取れない。生きているのは、間違いないのだと思うが。
「復旧はさせられるか」
「やってみます」
「ちょっといいか」
通信に割り込んでくる声。
秀爺だ。
言われるまま、私は外壁にまた上がる。一角で、双眼鏡を構えていた秀爺が、顎をしゃくった。
フェンサースーツの視覚情報を調整。
そして、思わず呻く。
地平の向こうで、ドラゴンが此方をじっと見ている。首を伸ばして、地面に張り付いたまま。
数は数百。
おそらく、福岡基地を攻撃し続けていた集団だ。
今の時点で、周囲にアースイーターはいないが。あの数が押し寄せてきたら、防ぎきれるかは分からない。
ジープが外壁下に来た。
乗っているのは、長沼と、数名のレンジャーだ。バイザーのネットワークがやられていて、地下に避難しているメンバーと、地上で通信が出来ないのは、知っていたのだろう。
弟と白々しく敬礼をかわす。
ようやく、通信に長沼が入ってくる。
「遅かったな、ストームチーム。 連日派手に活躍していると言うことでは無いか。 それに特務中佐から大佐に昇進するそうだな」
「いえ、先ほど昇進しました」
「ふん……」
相変わらず、心が狭い言動だ。
生きている設備などを確認。
現時点で、百八十名ほどの人員が、地下に籠もって戦いを続けている。病院も生きているし、地下シェルターの備蓄は充分だという。
問題は士気だ。
この様子だと、再三ドラゴンに猛攻を受けたのだろう。その度に死者も出し、やがて地下に籠もらざるを得なくなった。
地下に蓄えられている兵器類について、確認。
弾薬類はある。
ビークルについても、キャリバンはまだ七両生きている。ギガンテスも最新型が一両。ベガルタも、ファイアナイトがいる。
ネグリングとイプシロンは在庫無し。
敵に集中的に狙われて、速攻で破壊されてしまったのだとか。
軽く話してみて、よく分かった。
ドラゴンは戦力を削ぐためだけに攻撃をしてきている。この基地を陥落させる気は無く、適当に痛めつけながら、戦闘経験を積むことだけが目的なのだろう。非常に残虐な行動だが、しかし敵にしてみれば、理にかなっている。
「分かりました。 ドラゴンはどうにか此方で追い払います」
「あの数を、君達だけでか」
「支援をお願いいたします。 一チームか二チーム。 ありったけのビークルとともに、出して貰えますか。 後防御兵器として、電磁プリズンは提供できますか」
「何とかやってみる。 しかし、兵は一チームしか出さないぞ」
敵の攻撃を受けたときに、守りきる事さえ出来なくなる。
そう、口惜しそうに長沼は言った。
前だったら、きっと。
自分たちだけでどうにか出来るとか、お前達などいらないだとか、そんな事をいったのだろう。
しかし今は、もはや見栄を張る余裕さえ無いのが実情だ。
長沼は弟を嫌い抜いているし。
弟も、長沼には一線を引いて接している。
だが。
相性が良い奴だけを仲間と呼んで、そいつとだけ「友情」を築いていれば、何でも解決できるような世界は、此処では無い。
相性が悪い奴とも。憎い奴とでさえも。
共同戦線を張っていかなければ、どうにもならない。それが現状なのだ。
私が咳払いすると、長沼は此方を見る。
私も今や准将待遇。
少将である長沼も、私を無碍には扱えない。
「よろしいですか、長沼少将」
「何かね、嵐特務中佐」
「弟も嵐なので、はじめで構いません。 おそらく敵は、このまま戦力を削るためだけに、波状攻撃を続けてきます。 地下に引きこもれば、何かしらの引っ張り出すための攻撃に切り替えてくるでしょう。 たとえば、近場のシェルターに攻撃を加えるとか」
「な……」
青ざめる長沼。
もう一度咳払いすると、私は言う。
「増援二部隊をお願いします。 出来れば三部隊。 その代わり、敵を追い払って見せます」
「……」
長沼は、彼方此方に視線を移した。
福岡基地の惨状はあまりにも度が過ぎている。このままでは、ドラゴンの群れになぶり殺しにされるだけだ。
やがて長沼は。
屈辱に顔を歪ませながら、言った。
「分かった。 ただし、私も出る」
現状で確認されるドラゴンは五部隊。
しかし、更に増援が加わる可能性も、決して低くは無い。ビークル類は地下に逃げ込めるようにしているが、それも敵の攻撃の苛烈さを考えると、どこまで通用するかどうか。
作戦は簡単。
敵を引きずり込んで叩く。以上だ。
まず、ネグリングで、伏せている敵にミサイルを放つ。
十発のミサイルが敵に向けて飛び、途中でそれぞれが分裂。一斉に敵に襲いかかるのが見えた。
まだかろうじて生きている基地のレーダー機能で、敵の被害を確認。
確かにごっそり減るが。
同時に、全ての敵が舞い上がり。一斉に基地へと向かってきた。
ネグリングの第二射までに、確実に基地に到着される。池口に、ネグリングを地下に引っ込めさせる。
以降は、キャリバンを操縦して貰う。
代わりに、ベガルタAXのミサイルポットから、直上へ無数のミサイルが発射された。レンジャー部隊も一斉にエメロードからミサイルを発射。私も、高高度強襲ミサイルを全火力解放。
多数のミサイルが、弾幕を作る。
しかし、ドラゴンが、それを突破。
基地の上空に、躍り出ていた。
火球の雨が、隕石のように降り注ぐ中。
弟が。声を張り上げた。
「よし、来たぞ! 攻撃開始!」
基地の外壁内側に張り付いていたレンジャー達が、一斉に上空へショットガンの弾をばらまく。
ショットガンと言っても、これはバッファロー型と呼ばれる大口径大威力のもので、しかも最新鋭のタイプだ。最新鋭型は九州基地にも十丁しかおいていなかった。これを中心に、広範囲に弾をばらまくタイプの重火器で、基地の上空に攻めこんできたドラゴンを、一斉に十字砲火にて薙ぎ払う。
火力を解放しようとしたドラゴンが、十字砲火に焼かれ、ばたばたと落ちてくる。
しかし、敵もそれで黙るほど柔ではない。
すぐに体制を整えると、反撃を開始。
火力の滝を、基地の内部に降らせてきた。
外壁上に残っていたセントリーガンも。
かろうじてまだ無事だった構造物も。
悉くが、焼き払われ、潰されていく。反撃の砲火を浴びながら、ドラゴンは確実に数を減らしていくが。
戦意は衰えない。
死ぬ事など、全く怖れていないのだ。
今回ストームチームのレンジャーは、ライサンダーでは無く、全員がハーキュリーを持って出撃している。ライサンダーに比べて連射速度が高く、ドラゴンにはこれで充分だったからだ。だがそれが裏目に出た。
火力が足りていない。
ジョンソンが呻く。
ドラゴンは短期間で進化している。ハーキュリーを浴びても、落ちてこない個体が出てきているのだ。
しかも、十字砲火から踏みとどまると、確実に一カ所ずつ攻撃を集中してきている。構造物がほとんどやられてしまっているのも痛い。
電磁プリズンが消耗しきったら。
後は、一方的な展開になる。
筅が、出撃した。ベガルタAXが威容を見せると、必死の射撃戦をしている兵士達が歓声を上げる。
ミサイルポットから放たれたミサイルが、ドラゴンを次々爆破撃墜。更にリボルバーカノンが、群れを薙ぎ払う。
ドラゴンが攻撃を集中してくるが、少しくらいなら平気。
以前、電磁プリズンごとベガルタファイアロードを沈黙させた、一斉火力放出にも、耐え抜いてみせる。
だが、それでも限界がある。
「可能な限り敵を落とせ」
ベガルタAXに火力が集中している今が好機だ。
弟が叫び。皆が気迫を奮い立たせる。
凄まじい殴り合いの末、ドラゴンの群れが、ついに撤退開始。どうにか、第一波は凌いだ。
敵は半減したが。
味方の戦力消耗も大きい。
弟が辺りを見回り、損害を確認。死者は思ったほど多くは無い。だが、基地内の遮蔽物はほぼやられてしまっている。それにこれでは、先ほどと同じ手は二度と使えないだろう。高速で学習しているドラゴン共だ。しかも、情報を全個体で共有している可能性が高いのである。
弟の指示で、ベガルタAXがヒドラに運び込まれる。
スタッフに、弟が叫ぶ。
「アーマーの張り替えを急げ。 すぐに出撃する」
「イエッサ!」
敵が半減している今が好機だ。
敵は一旦撤退した後、近くの街の残骸に降り立ち、翼を休めている。
半減した敵だけれど。
増援は放っておけばすぐにでも現れる筈だ。今、叩いておかなければ。全てが無駄になってしまう。
先ほど選抜したレンジャーの三チームにも、出撃準備をして貰う。死者と負傷者は出したが、それでもかなりの数が健在だ。
長沼は青ざめたまま無言。
弟の判断が正しいことを、理解しているからだろう。そして恐らくは、弟を一とする、ストームチームの凄まじい戦いぶりを久々に目の当たりにしたから、というのもあるだろう。
一時間で、出撃準備を整える。
今回はビークル類も全て出す。ただしドラゴン相手に相性が悪いヘリは、ヒドラの中で静かにしていて貰う。
谷山にはギガンテスを操作して貰い、指揮車両となって貰う予定だ。
基地にある健在なキャリバンは全て出す。
他ビークル類も、レンジャーチームに分散して渡す。少しでも、兵士達の生存率を上げるためだ。
福岡基地の地下にも、工場はある。
物資そのものは、転送装置が生きているため、補給は出来る。
ならば、今は出し惜しみをする場合ではない。
出撃。移動しながら、レンジャー部隊にはエメロードからミサイルを乱射して貰う。ネグリングからも、ミサイルを連続投射。
休憩していたドラゴンが、舞い上がる。
先に半減させてやったが。
やはり、どこからか増援が加わっている。予想よりも、二割から三割、数が増えているのが見て取れた。
それでも、今度は此方が攻勢に出る番だ。
まだかろうじて生きている基地の防衛火力も支援に廻させる。
電磁プリズンを展開。
数少ない残りの電磁プリズンは、もう焼き付きそうだが。最後まで、頑張って貰う。
ドラゴンが、火力の網を突破し、突入してきた。
そして目の前で、不意に左右に分かれる。そして旋回しながら、機動戦を仕掛けてきた。一瞬慌てるレンジャー達を尻目に、一部隊は基地に突入。
上空から、火力を集中しはじめる。
長沼が叫ぶ。
「地下シェルターを叩くつもりだ!」
百体以上のドラゴンが、火力を集中したとき。駆逐艦を一撃で大破にまで追い込む。それは今まで、何度も目撃されている戦術だ。
何度も攻撃を浴びせられたら、基地の装甲だって貫通される。そうなれば、病院や負傷者、逃げ込んできている民間人が、鏖殺。
救う術はない。
「エメロード部隊、基地上空へ攻撃。 敵の火力を削れ」
「貴様!」
「戻ってもどうにもなりません。 それよりも、上空へ集中してください!」
食ってかかる長沼に、弟がぴしゃりと言った。
電磁プリズンが、崩壊する。
同時に、ドラゴン共が殺到してきた。
もはや戦いは大混乱の内にある。
だが、ゆえに、一気に決着を付けられる状況が到来したとも言える。弟は冷静に迎撃を指示。
噛みついてくるドラゴンを、優先的に撃破。
噛みつかれた兵士を無理に助けに行くのでは無く。噛みついたドラゴンが、一瞬動きを止める隙に、狙撃を集中。
舞い上がっても慌てない。
ドラゴンは舞い上がってから、移動するまでにまた一瞬空中で停止する。其処を打ち抜けば良い。
落ちてきた兵士を、キャリバンから飛び出した救護要員が救出して廻るが。
それさえ、ドラゴンは容赦なく狙ってくる。
しかし、ある一点で、味方の火力が、敵を上回った。後は殲滅へと移行。基地上空へ回り込んでいた敵へ、火力を向け。やがて、全てのドラゴンを撃墜完了した。
どうにか勝つことはできた。
だが味方の被害も甚大。
すぐにキャリバンを基地に戻す。地下への入り口は激しくやられていて、装甲板は大穴が空き、拉げていた。
ベガルタも使って、どうにか装甲板を動かすが。
内部から、煙が派手に立ち上る。
「すぐに状態を確認しろ!」
長沼がヒステリックに叫び、兵士達が飛び込んで行く。
私も消火装置を片手に続いた。
内部は灼熱地獄。
隔壁もかなりやられていた。床には大穴が開いている。ドラゴンの炎が、かなり奧まで貫通していたことは明白だ。
人間が逃げ込んでいるブロックや、病院設備は。
確認するが、かなりの被害が出ている。隔壁を貫通した炎が、内部に飛び込んだのだ。負傷者が出ている。死者だけは、出ていないが。設備が彼方此方、やられている。それだけではない。
「発電設備がやられています!」
「復旧急げ!」
「工場のラインも、一部が停止状態! 非常用電源に切り替わっていますが、機器そのものにも損傷が」
どうにか敵は撃退できたが。
しかしドラゴンどもは、既に基地をどう潰せば良いか、学習している。今回の敵部隊は、全滅することを前提として、此方に損害を与えることだけを念頭に動いていたとみるべきだろう。
長沼が、拳を壁に叩き付ける。
「復旧用の機材が足りない。 まだ生きているサテライト基地の工場から取り寄せる事は出来るが、時間がない」
「時間は我々でどうにかします」
「ちっ……」
今回、敵を追い払う事が出来たのも、ストームチームの助力あってのこと。
そして、今回の勝利で。九州を放棄して、大阪基地へ脱出するという選択肢も生じた。これ以上は、抗戦は不可能と判断する事も出来る。
しかしそうなると、可能な限り民間人を救助しなければならない。
東京基地のヒドラも、全てが無事なわけではない。
作戦のたびに傷つくこともあるし、撃墜される機もある。九州からピストン輸送で、どれだけ人員を運び込めるか。
顔を真っ赤にして考えていた長沼は。
吐き捨てた。
「踏みとどまる」
「分かりました。 それならば、復旧の時間を稼ぎます」
「……そうしてくれ」
それ以降、長沼は、此方を見なかった。
嫌い抜いているストームチームに頼り切らなければ、生き残ることさえ出来ない。彼のように、プライドが先に生きているような人間にとっては、何よりの屈辱の筈だ。
弟はそれを理解している。
私も、それが分かっているから、何も言わない。
確かに長沼は弟を嫌い抜いているし、弟だって長沼を良く想っていない。しかし、それでも協調してやっていかなければ。
戦いには、負けるのだ。
ヒドラ内の機材でビークル類を補修する。
敵の襲撃が、これで終わるとは思えない。恐らくは、もう一回以上、敵の部隊による攻撃がある筈だ。
それはわざわざ口に出さなくても。
私も、弟も分かっていた。