地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
ヒドラに乗って、東京基地に戻る寸前のことだった。
小原博士からの通信が来る。
恐怖と興奮で、声が上擦っていた。おそらく全EDF部隊に対しての通信だとみて良いだろう。
受信できたのは、奇蹟に近い。
途中、様々な通信設備を経由して、ストームチームの所に届いたのだろう。しかし、通信そのものは、かなり途切れがちだった。
「見つけたぞ、間違いない。 ブレインだ」
本命とされていた場所に。
どうやら、本当にブレインが存在していたらしい。勿論その周辺には、膨大な敵戦力がいるはずだ。
無事で済むとは、とても思えなかった。
「データを送る。 まずは画像」
バイザーに、彼方此方破損しているデータが来る。
それは鉄の巨塔とでも言うべき存在だった。
アースイーターと連結することが前提となっている事が分かる、六角形の構造。見たところ、武装はついていないが。
しかしこの装甲の厚さはどうか。
おそらく、この巨体には、身を守るための装備は無い。だからこそに、とことんまで分厚く装甲を纏うことで、攻撃に対処するのだろう。そしてアースイーターと連結することで、攻撃もこなせるというわけだ。
高さはおそらく二百メートルから三百メートル。
これほどの巨体がどうして今まで見つからなかったのか。或いは上空からだと、アースイーターと区別が付きにくいのかもしれない。
「続いて位置。 三島博士、ログの解析を進めてくれ。 逃げられた場合、居場所の特定が容易になる」
通信で、不特定多数に話しているというのに。
小原博士の言葉は、どこか不思議だった。
この時。
死を覚悟しているのだろうと、私は察知していたが。それはすぐに、現実のものとなった。
爆発音。
「敵が来る。 発見されるのは時間の問題だと分かっていたが、どうやら逃げ切れそうにない」
再び爆発。
通信が、途切れ途切れになる。
此処と小原博士の場所は、それこそ数百キロ以上離れている。救援など、出来る筈もない。
「通信を切って。 特殊部隊と連携して、潜伏を考えてください」
「彼らはもういない」
「何……」
「実は、ブレインのいる場所に到達するために、囮になってくれたのだ。 此処には、私一人で潜入した」
そうか、それでか。
慣れないシープを運転して、敵に見つかることも覚悟して。
特殊部隊は、どうして小原を一人で行かせてしまったのか。目を離した隙に、勝手に行ってしまったのだろうか。
弟に言われるまでも無く、すぐに本部に照会する。
同行した特殊部隊のデータを見て愕然とした。殆どが普通の兵士ばかりの、名ばかりの特殊部隊ではないか。しかも兵士達の経歴を見る限り、訓練もろくにこなしていない。兵士のするべき事や、民間人を守るべき心構えも、身につけていないのは確実だ。彼らは、小原博士が無理に出て行ったとき、右往左往しか出来なかったのだろう。
通信を入れて、連絡を取る。
彼らは案の定、敵との交戦で手一杯。必死に逃げているようだが、小原博士を助けるどころか、身を守るので精一杯の様子だ。
小原博士も恐らくは。
彼らは囮以上にはならないと悟り、こんな行動に出たのだろう。
弟に手短に状況を伝える。
弟は、舌打ちすると、壁に拳を叩き付けた。
小原の通信が入る。
明らかに声に、致命傷を受けたとしか思えないノイズが混じっていた。
「嵐姉弟はいるか」
「此処にいる」
「頼むぞ。 必ずブレインを破壊してくれ。 奴らが戦略的な用件を満たす条件が、まだ具体的な数値が分からない以上、全人類が奴隷化されて、戦闘のためだけに生かされる可能性が高い。 そんな未来は、まっぴらごめんだ。 ブレインを破壊すれば、必ず奴らは撤退する」
そんな保証は無い。
実際、ブレインが来る前から、フォーリナーは活動を続けていたのだ。アースイーターを倒したところで、奴らが帰還する保証など、ない。
しかし、敢えて否定しない。
何となく分かった。
小原は、今までの事を、ずっと気に病んでいた。自分の無能のせいで、多くのEDF戦士を死なせてしまった。
いつか必ず、贖罪をしたいと思っていたのだろう。
命を賭けて戦い。
敵から逃げなかったという点で。
彼も、立派なEDFの戦士だ。
大きなノイズが走り、通信が途切れた。
踏みつぶされたか、食い殺されたか。
どちらにしても、以降、小原博士からの通信は、入る事がなかった。断末魔も、死の寸前の悲鳴も。
聞こえることはなかった。
大阪基地に到着。
一度大阪基地に寄ったのは、緊急救援依頼を受けたからだ。無数の蜂を含む、大規模な巨大生物の群れに攻撃を受けている。
大阪基地が、このままでは全滅する。
そう、悲鳴混じりの通信は告げていた。
大阪基地は、地下に大規模シェルターを抱えていて、今は近隣の住民もかなりの数を受け入れている。
此処を失陥することは、許されないのだ。
だから、本部に指示を仰ぎ。無理矢理救援に向かったのである。
状況は決して良くない。
しかし、それでもやらなければならない。
無理に敵中に突入し、着陸。
辺りは地獄絵図だ。乱戦の中、外壁を乗り越えた巨大生物が次々侵入してきている。基地の彼方此方には、炎上し喰い破られた攻撃機やヘリの残骸。交戦はまだ続いているが、もう保ちそうにない。
戦場に飛び込む。
最初に飛び出したのは、谷山が操作するギガンテス。更に、ベガルタAXが続く。ベガルタのコンバットバーナーで、敵を鎧柚一触に薙ぎ払う。黒蟻や赤蟻なら、これで一気に蹴散らすことが出来る。
ただし、相手の数が適正なら、だ。
少なくとも、突入路は確保。
後ろから続いた弟とジョンソンが、フュージョンブラスターで敵を焼き払う。
交戦中の味方を庇いながら、ギガンテスから飛び出した谷山が、電磁プリズンを展開。空には無数の蜂が舞っていて、明らかに黒蟻や赤蟻を避けながら、針の投射をして来ている。
巨大生物同士は、共食いは当然のこと、同士討ちもしないのだ。
味方は、九州での戦いでの負傷が癒えていない。
だが、それでも、戦意は滾るようだった。
さっき目が覚めたばかりのナナコが、敵の密集地点に、スティングレイのロケット砲弾を直撃させる。
瞬時に十体以上の黒蟻が消し飛んだのを見て、私は口笛を吹き。
ハンマーを振りかぶって。敵中に突入した。
少し遅れて、矢島がついてくる。
フェンサースーツの機能向上もあるのだろう。此奴も最近は、少しずつ機動戦の技量が向上してきている。
「ストームチームが来たぞ!」
「敵を押し返せ!」
追い込まれていた味方の兵士達も、気力を取り戻す。
巨大生物たちは、外壁を越えて次から次へと来るが。私は弟に通信を入れながら、跳躍。外壁の上に上がると、ハンマーで次から次へと来る敵を、水際で叩き続ける。勿論蜂の攻撃も集中するが。
その蜂に、ベガルタからのミサイルが集中的に襲いかかった。
中空に衝撃波が走り。
蜂の群れが、瞬時に消し飛ぶ。
勿論全てが落ちるわけでは無いが、上空からの圧力が、これで一気に減る。外壁を死守しろ。弟が指示。
涼川と原田も、外壁の上にきた。
外壁の内部にいる敵は、弟とジョンソン、ナナコが掃討戦を敢行。上空に蜂へは、エミリーと三川が、ミラージュでの火力投射。
更に荒れ狂う鬼神と化したベガルタAXが、多数の傷を負いながらも、手当たり次第に巨大生物を踏み砕き、焼き払う。
形勢不利とみたのか、敵が一旦引き始める。
いや、外壁の外には、まだわんさかと敵が群れている。あれと合流して、再び総攻撃に出るのは間違いない。
気になるのは、ヘクトルやディロイ、攻撃機がいない事だ。
ドラゴンも今の時点ではいない。
敵が引き始めたチャンスを生かして、基地内の敵を掃討。
最後に出てきたネグリングが、ミサイルを乱射開始。蜂の群れを、集中攻撃する。蜂はほんの少しでも、減らしておかないと行けない。
城壁の上に、香坂夫妻が上がって来た。
ハーキュリーを手にしている秀爺が、ほのかの観測支援で射撃開始。
少し遅れて上がって来た黒沢も。ハーキュリーを手に、射撃を開始した。
私は高高度強襲ミサイルに切り替えると、敵の群れにミサイルの雨を降らせる。弟にオンリー回線で通信を送りながら、促した。
「敵は混乱から立ち直っていない。 今のうちに体勢を立て直せ」
「基地司令官が戦死した。 迎撃に出ていた部隊も、壊滅状態だ。 今、生きている最高位の軍人を探している」
「急げ」
敵は圧倒的な数で、基地を包囲している。
涼川が原田と一緒にスタンピートからグレネードを敵陣に叩き込んでいるが、それでも数が多すぎて、目に見えるほどは削れないのだ。
とにかく、今は蜂を集中的に狙う。
そうすれば、バゼラートが出られる。
外壁上に上がって来た谷山が、ありったけのセントリーガンを設置していく。基地の人間が出してくれたものだそうだ。
基地の要塞砲や迎撃火器は、あらかた駄目。
しばらくは、基地の人間と一緒に、凌ぐしかない。
どうにか持ちこたえている極東でさえこれだ。陥落した地区は、一体どのような思いで、民間人が耐えているのか。
忸怩たる思いもある。
だが、今は。
手元にある破滅から、皆を守らなければならない。
弟から通信。
他には聞かせられない状況だ。
「指揮系統の再編成を進めているが、おそらく四チーム程度しか生き延びていないな」
確か、大阪基地には前に、ストームにいた奴がいるはずだが。
話を聞くが。彼は東南アジア戦線に出向いて今では行方が知れないと言う。舌打ち。彼奴がいれば、此処まで敵に好き勝手はさせなかったものを。
「本部の増援は、期待出来そうにないな」
「シェルターを封印して、大阪基地を放棄するしかない。 この人数では、もはやどうしようもない」
「本部に指示を仰いでくれるか。 どうやら、敵がまた攻勢に出るつもりのようでな」
「分かった。 俺もすぐに其方に向かう」
敵が体勢を立て直し、一丸になって向かってくる。
此方もありったけのグレネードをばらまいて応戦した後、私と矢島が、外壁から飛び降りる。
そして膨大な火力で迎撃してくる敵に。
ハンマーを振りかざして、突進した。
自分でも、どうやって加速しているのか、よく分からない。
それほど、私の動きは、キレが上がっていた。
矢島も、私ほどでは無いにしても。かなり動けるようになっていた。
敵の突進速度を私が鈍らせ、その上に大火力のグレネードをばらまく。外壁の上では、フュージョンブラスターが待ち構えている。一気に敵を焼き払い、寄せ付けない。
大阪基地は。
ストームチームが入った事で、難攻不落とまではいかなくても。
簡単に落とせる場所では無くなった。
六時間ほどの戦いで、四回敵を迎撃。その度に撃退はしたが、そろそろ限界が見え始めていた。
本部からは、増援を送る余裕は無いと連絡が来ている。
そればかりか、ブレインを撃破するための作戦を準備しているから、其方に参加するべく、移動しろとさえ言ってきていた。
大阪基地はどうする。
日高司令は、敵の攻撃が一段落した状態で、撤退しろと、中々言い出さなかった。
或いは、日高司令も。絶望的すぎる戦況に、心を折られかけているのかもしれない。
現時点で、大きな被害を出したものの、まだまだ大阪基地を充分に蹂躙できる敵の群れが、基地の外で攻撃のタイミングをうかがっている。
基地で生き残っていた最高位士官。
幸島中佐が、戦況を見ていた弟と私に、敬礼してきた。
「嵐特務大佐、嵐特務中佐」
「どうした」
「我々大阪基地の生き残りは、市民とともにシェルターに籠もります。 合計九十七名がシェルターに籠もれば、簡単には陥落しません」
口をつぐんだ弟に。
まだ若い幸島は、破顔した。
「ストームチームは本当によく助けてくれました。 大阪基地は、増援がなければ、あのまま全滅していたでしょう。 混乱を立て直す暇さえもなく、です。 貴方たちは、私達に考える時間をくれた。 それだけで充分です」
「……必ずフォーリナーを地球からたたき出す。 それまで、希望を捨てずに、地下で耐えてくれるか。 無茶だけはするな」
「約束します」
弟の言葉に、幸島は敬礼。
私達も、敬礼を返した。
大阪基地の残存戦力が、シェルターに全ビークルごと潜る。入り口を念入りに封鎖。これで、ジェノサイド砲の直撃でも受けない限り、破られることはない筈だ。しかも大阪基地のシェルターは、東京基地ほどではないにしても、かなりの大深度。ジェノサイド砲で入り口を破られても、簡単に全滅はしないだろう。
それを見届けてから、ヒドラに。
そのまま上昇。蜂の群れもかなりいたが、ヒドラには構う気が無い様子だった。
東へ向かう。
命を賭けて小原が見つけてくれたブレインを、叩くために。
九州、大阪と、連続しての死闘。全員が、座るとそのまま落ちてしまうほどに疲れ果てていた。
弟が、本部に経緯を伝える。
日高司令は、すまないと言った。
そしてもう一度、時間をおいてから、血を吐くように付け加える。
「私が無能で、本当に済まない」
戦いが更に過酷さを増していく。
人類の希望は刻一刻と失われていく中。
ただ、敵の圧力だけが、圧倒的に強くなって行くのだった。
(続)
小原博士の命がけの行動で、ついにブレインを発見することに成功。
希望は更に失われていく中。
まるで誘蛾灯のように、その情報にすがらざるをえない状況が訪れます。