地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
ストームチームはただちに現地に向かうことになります。
それが希望であれ絶望であれ。
確かめなければならないのです。生きている者が。
序、竜の壁
小原博士が最後の通信を入れてきた場所は、東京基地に戻ると、すでに特定されていた。
岐阜の中心部。
幾つかの街があったそこは、今はクレーターによって抉られ。周囲にアースイーターが展開し。
そのクレーターの中に、ブレインは潜んでいた。
どうしてそんな場所にブレインが来ているかはよく分からないけれど。
分かっているのは、ブレインを叩く事が、人類が生き延びることにつながる、という事だ。
奴隷化され、戦うためだけに生かされるのか。
それとも、アースイーターを叩き潰し、人類が地球上における覇権を回復するのか。それだけが、この戦いの用件だった。
すぐに攻撃部隊が編成される。
本部は、ストームチームを支援するべく、可能な限りの部隊を出した。殆どは、碌な訓練も受けていない強化クローンの戦士だけれど。彼らだけでも、いないよりはマシだ。一応の身体能力はあるし、武器の使い方も分かる。
逆に言えば。
もう、守りにつかせる部隊以外には。
そのような人員しか出せないという事も示していた。
大阪基地に続いて、東京基地がいつ陥落してもおかしくは無い。
今の時点で、第五艦隊と連携して、なんとか敵を撃退し続けてはいるけれど。いつまでそれももつか。
第五艦隊には、各地の戦いから逃れてきた敗残兵が合流はしているが。
それでも、兵力はとてもではないが。充分などとはいえなかった。
既に放棄された岐阜基地へ到着。
幾つかあったサテライト基地の一つで、規模はそれほどではないけれど。ヒドラ三機に分乗してきた、ストームチームと、レンジャーチーム三つ、フェンサーチーム一つ、ウィングダイバーチーム一つが、拠点にするには充分だ。
この百名弱の人員で。
ブレインを守る強固な壁を崩し。
なおかつ、ブレインに肉薄しなければならない。
私がヒドラを出ると。
先に到着していたヒドラに乗っていたレンジャー部隊の隊長を任されている、親城准将が此方に来るところだった。
結局、階級的に、並んでしまった。
何だか馬鹿な話である。親城准将は軽く周囲の状況を、一緒に歩きながら説明。兵士達の訓練があまりにも足りていなくて、死にに行かせるようなものだと、彼は嘆いていた。
「敵の姿は」
「既に確認されています」
バイザーに、データを転送してくる。
それによると、黒蟻と赤蟻、それに凶蟲がかなり強固な防壁を構築している。数は二千を超えている。
前回、小原博士が囮にした部隊も、命からがら岐阜の基地跡地に逃れてきていて。
彼らに情報を確認したので、精度は高いという。
親城は、相変わらず私と弟には態度が丁寧だ。ただし、他に人がいない空間に限るのだが。
「で、そいつらは」
「私が指揮下に入れて面倒を見ます」
「……それしかないか」
確かに、他に方法もない。
ろくでもない戦力で敵との苦闘を続けた親城准将は信頼出来る。少なくとも、簡単に戦いを投げ出すようなことは無い。
敵の後方には、ドラゴンがかなりの数控えている事も分かっている。
このままもたついていたら、合流されることになるだろう。
速攻をかけるしかない。
或いは、味方を囮にして、ストームチームだけで突入するという作戦もあるが。しかし、小原博士がこれを使った後だ。
当然敵は対策をしていると見て良いだろう。
いずれにしても、敵は、此方が攻撃を準備していることは掴んでいるはず。一刻も早く動いた方が良い。
弟が来た。
ジョンソンも交えて、軽く話をする事にする。
作戦の概要はそう難しいものではない。
敵の配置から考えて、正面から攻撃をするしかない。最初に凶蟲に対して攻撃を仕掛けて、後は下がりながら対処。
基地の近くまで引きずり込んだ後は、セントリーガンと味方の十字砲火で、敵を排除する。
問題は敵の数だ。
出来れば空爆を依頼したいくらいなのだが。
ドラゴンが来る事がほぼ確実な上、第五艦隊の戦力は可能な限り温存したい。この程度の敵は、自力で処理したい所だった。
幾つか打ち合わせをした後、出撃する。
なお、合流した小原博士の護衛部隊も、味方に加わって貰う。
先頭に立つのはベガルタAX。これに、本部が出してくれた虎の子のファイアナイト三機が加わる。
新兵ばかりの部隊だが。
指揮官と、流石にこのベガルタを操作する人員だけはベテランだ。
これに加えて、ネグリングが二機。
どちらも池口が使っている最新型よりは型式が落ちるけれど、相応の火力投射が出来る。
問題はドラゴンが現れた場合。
この、ほぼ確実にドラゴンが現れる事が。今回の課題だ。
山中に布陣している敵が見えてきた。
此方を視認しているのに、動こうとしない。戦闘開始の合図があるまで、攻撃を控えているのだろう。
ならば、一気に叩かせて貰う。
「ネグリング部隊、攻撃開始!」
最後尾についているネグリング部隊に指示が飛ぶ。
ミサイルが一斉に撃ち放たれ、敵部隊へと襲いかかった。私は矢島と一緒に最前衛にいて、火力投射を見守る。
まずまずの状況。
最初の一撃で、布陣していた凶蟲の群れに、ほぼ完璧にミサイルの群れが直撃。更に此処へ、最前衛の少し後ろにいる涼川と原田が、スタンピートを連続して叩き込んだ。
吹っ飛ぶ凶蟲の残骸。
足や胴体の欠片が、此方まで飛んでくる。
当然、敵も黙っていない。
即座に反撃を開始。
膨大な蜘蛛糸を放ち。跳躍しながら、此方へと迫ってくる。
すぐに味方は後退開始。
後退しながら、敵に火力を投射。制圧射撃を続けた。他の巨大生物が、確実に側面と後ろに回り込んでくるからだ。
案の定、左翼にいた谷山が、連絡を入れてくる。
「赤蟻の群れが移動開始。 これは後方に回り込んでくるつもりですねえ」
「足止めは」
「問題なし」
左翼方面で、巨大な爆発が巻き起こる。
事前に谷山が仕掛けておいた爆弾が、一斉に爆発したのである。赤蟻の群れを瞬時に全滅させるほどのものではないが、敵の足止めをするには充分。
更に、右翼方面から回り込んできていた黒蟻も、動きが止まる。
此方は、筅がしかけておいたセントリーガンの陣地に引っかかったのだ。勿論長時間は足止めできないが、少しでも動きが止まれば充分。
反転。
一斉反撃開始。
ベガルタを先頭に、凶蟲の群れへと突入する。可能な限り短時間で此奴らを殲滅しないと、勝機そのものが失せるのだ。
ベガルタAXは、膨大な蜘蛛糸をくらいながらも、自らが盾にもなって突入。コンバットバーナーとリボルバーカノンで、敵を薙ぎ払っていく。ファイアナイトはそれに続き、敵の群れに火力の滝を降らせた。
新兵達は。
親城准将が、よく統率している。
彼らの名前をきちんと覚えて、呼びながら細かく指示を出している様子だ。良く出来た指揮官である。
赤蟻が、爆炎を突破して、姿を見せる。
早い。
無理矢理に突破してきたのもあるだろう。何より赤蟻が、相当に強靱になってきている事もある。
凶蟲に猛攻を加える此方に、側面から強襲を仕掛けてくる赤蟻。
だがそこには、フュージョンブラスターを装備したジョンソンとナナコが待ち構えていた。
爆弾の火力で傷ついた赤蟻の群れを、圧倒的な熱量が迎え撃つ。
勿論二人で全ては食い止めきれないが。
時間はこれで稼げる。
凶蟲の群れが、撤退を開始。
全軍が雪崩を打って赤蟻の群れへと、今度は集中攻撃を開始した。
しかし敵も、容易に各個撃破は許してくれない。
迂回した黒蟻の群れが、凶蟲と合流。今度は真正面から、連携しての猛撃に転じたのである。
ベガルタ四機でかろうじて支えながら、赤蟻の群れへの攻撃を続行。
噛みつかれ、振り回される味方兵士を、私がスピアを赤蟻に叩き込んで救助。吹っ飛ばされた彼は、味方によって、キャリバンに運び込まれていた。
敵の消耗はかなり早いが。
それでも、戦っている敵は、全体の六割ほど。
残りは防御陣地の構築を実行して、全く身動きしない。
此方の別働隊を気にしているのか。
消耗したところで、集中攻撃を掛けてくるつもりなのか。
理由は分からないが。全軍を一度に投入してこないのは、好機だ。敵の戦闘中の部隊をまず壊滅させた後、各個撃破すれば良い。
だが。戦いが続くうちに、妙なことに気付く。
敵は丁度赤蟻と、黒蟻凶蟲の二部隊に別れて、交互に攻撃をしてくる。これは或いは、古い時代の歩兵戦のやり方か。
しかも、消耗している敵味方をじっとうかがうように。
最初から動かなかった四割は、その場に留まっているのだ。
これは、或いは。
ひょっとして、ブレインが間近で、人類と巨大生物の戦闘を観察しているのか。それが故に、わざと戦いを長引くように仕向けている。
ハンマーで群がる赤蟻を吹き飛ばしながら、私は弟に通信を入れる。
真横から組み付いてきた赤蟻を、盾ではじき返し。そいつが、矢島の振るったハンマーで吹っ飛ばされるのを、横目で見ながら、今の考えを伝えた。
「もしそうだとすると、かなりまずいぞ」
「ああ。 その場合、奴は余裕を持って此方を観察し、必要がなくなったら、この場を離れるか、全滅させるべくドラゴンを投入してくるだろう」
「やはり、親城准将に囮を担当して貰うか」
「いや、それはまずい」
というのも、敵の四割が何があっても対応できるよう、じっと待っている。
更に、ドラゴンがほぼ確実に近場に潜んでいる。
もしも囮作戦を使った場合。
ストームチームは、膨大なドラゴンを相手にしなければなるし。囮も、絶え間ない攻撃に揉み潰されていくだろう。
どちらも全滅する結果しかない。
「何か、裏を掻く手は思いつかないか」
「ないな。 此方に余剰戦力があるなら話は別だが」
不意に、敵の圧力が強くなる。
此方が相談していることを見抜かれたか。
お前達は、ただ戦っていればいい。
戦い、戦い続けて。
我等の未来の糧となれ。
そう言われている気がして、苛立ちが募る。一旦通信を切ると、押し寄せてくる赤蟻の群れに集中。
ハンマーを振るって少しでも相手の足を止め。
後は、味方の集中射撃に任せる。
赤蟻が引くと、今度は逆側から、凶蟲と黒蟻の集団が集中攻撃を仕掛けてくる。黒蟻が囮になって、凶蟲が陣の真ん中に飛び込んでくるのは非常に厄介だ。ビークルを直接狙われる。
事実、池口が上手に立ち回っているネグリングは兎も角。他二機のネグリングはかなり糸を浴びて、制圧火力の投射が出来なくなりつつあった。
「一度後退するべきでは」
「此処を抜けなきゃ、敵の頭にご対面とはいかないんだろ?」
「し、しかし」
「びびんな! てめー、気合いを入れろ!」
原田が、涼川に叱咤されている。
まあ、頭のネジが完全に飛んでいる涼川と、まともで常識的な原田では、物事に対する認識が違って当然か。
不意に黒蟻と凶蟲が下がり。
今度は赤蟻が攻勢に転じる。
いつの間にか。
戦況は、敵のコントロール下に落ちつつある。まずいなと私は思ったけれど、逆転の手立てが見つからない。
此処で、敵の反転攻撃を逆手に取って、逆に強襲を仕掛けるのも手の一つなのだが。しかし、敵には控えている主力と、何より高みの見物をほぼ確実にしているドラゴンがいる。どう対処したものか。
原田が、通信を入れてくる。
「すみません、はじめ特務中佐。 あの、思いついた事があります」
「妙案か?」
「は、はい。 危険ですけれど」
話を聞く。
確かに、面白い案だ。涼川も納得していると聞く。たしかに左右から往復びんたを浴び続け、消耗するだけの戦いは。
涼川が一番好まないだろう。
弟が、話に割り込んできた。
「良いだろう。 次の攻勢のタイミングで仕掛ける」
「イエッサ!」
生唾を飲み込む。
不機嫌な涼川中佐。それに前にいる無数の赤蟻。どちらも怖い。だけれども、状況を打開するには、他に手は無い。
「原田ぁ」
「はい、涼川中佐」
「外したらブッ殺すからな」
分かっている。
爆発物の扱いについては、この人に散々仕込まれて、ある程度は慣れてきたけれど。それでもシミュレーションでは時々誤爆する。
ナナコや日高中尉が加わってくれたシミュレーションでは、この間なんと難易度インフェルノを初攻略。生き延びたのは日高中尉だけだったけれど。勝ったのは初めてだったので、本当に嬉しかった。
ジープの上で、スタンピートを構える。
既に装填が終わっているものが二つ。涼川中佐が外すことはあり得ない。もうすぐ大佐に昇進するらしい彼女は。ジープを自動操縦に切り替えると、獣のような目で、敵の動きを見ていた。
彼女ほどの使い手になると。
ある程度、戦況が読めるらしい。
今、赤蟻が後退して、黒蟻が攻撃に出てきている。
カウントダウンをし始める涼川中佐。
生唾を飲み込む。
カウントがゼロになった瞬間、戦況が代わった。
黒蟻が引き始め、赤蟻が反転迎撃を開始しようとした瞬間。ありったけの火力を、赤蟻の群れの鼻面に、自分と涼川中佐のスタンピートで、叩き込んだのだ。
それも、四つのスタンピートから、立て続けに、である。
凄まじい火力で爆裂が連鎖。
広域制圧兵器のスタンピートが、四連射である。しかも、敵陣の真正面。流石に赤蟻も、正面を火力の壁に覆われて、身動きが取れなくなる。
その瞬間だった。
「チャージ!」
ストームリーダーが、声を張り上げる。
全員が一丸となって、前方で壁を作っていた敵の残り四割に、突入開始。動きが止まった赤蟻は、出遅れる。
更に、下がりかけていた黒蟻と凶蟲も、である。
遅れたら、敵に食いつかれる。
最前衛に、ベガルタが躍り出る。残った火力を、悉く敵陣に叩き付ける。自分はジープの上で、必死にスタンピートの装填。やはり涼川中佐ほど上手にはやれない。ジープは微速後退。
これから、最後尾で。
敵の鼻面を叩き続けなければならないのだ。
味方の主力が、敵と接触。
あたるを幸いに叩きはじめる。
敵は思いも寄らない大規模攻勢に混乱したが、それも一瞬。半数近くが構築していた強力な陣を生かして、迎撃に掛かってくる。
しかし、その時。
敵陣を横殴りに、爆撃が貫いた。
ここぞというタイミングまで温存していた、クラスター弾。砲兵隊による支援射撃だ。今回、少数の砲兵が、ヒドラに乗って来てくれていたのである。吹っ飛ぶ敵の群れの中を、強引に突破。
遅れたり、脱落したりしそうになる兵士を、キャリバンに押し込む味方を支援。
ついに、敵陣を抜けた。
後方から追いすがってくる敵に、スタンピートからのグレネードを雨霰と見舞う。連鎖する爆裂の前に、流石の巨大生物も足を止める。
砲兵隊が合流してきた。
孤立している状態では、ドラゴンに襲われたらひとたまりもない。ネグリングは後方に向けて、火力投射を続行。
一機が既に満身創痍で、そろそろ休ませないと危ない。
しかし、補修の知識がある兵士は、殆どいなかった。
目的地は、後五キロほど。
不意に、通信に割り込んでくる緊迫した声。
「ドラゴンだ!」
「やはり来たな」
坂の下から追いすがってくる敵を、可能な限り足止めしろと、ストームリーダーから直々に言われる。
これから味方は、ドラゴンとの戦いに手一杯になる。多くの戦死者も出す事になるだろう。
「焦るな。 普通の兵士より、ずっと早くやれてる」
低く沈んだ声の涼川中佐が、自分の倍くらいの速さで、スタンピートの装填を済ませている。
そして発射。
敵の群れが消し飛ぶ。
恐れを知らず、坂を上がってくる敵を、ジープで翻弄。
味方の主力部隊には近づけさせない。
ふと、近くに大岩を見つけた。根元を、スティングレイで爆破。
転がりはじめた大岩が、巨大生物を巻き込みながら、土砂崩れを起こす。舌なめずりした涼川中佐は。混乱する敵に火力の雨を浴びせながら、言った。
「良くやった。 お前、成長してきたな」
「あ、ありがとうございます」
「もうちっとで、一人前だ。 励めよ」
またもう一発、涼川中佐がスタンピートを叩き込む。敵の足止めで精一杯。二千ともなると、真正面からやり合うことを考えてしまうと、その瞬間に死ぬ。
涼川中佐は、文字通り一騎当千の怪物的兵士だけれど。
それでも、出来ない事は出来ないと割り切っている雰囲気がある。
だから、無茶はしない。
自分たちにとっての後方、陣にとっての前方で、ドラゴンとの死闘が続いている。此方には、今の時点ではドラゴンは来ない。
地の利を生かして、必死に時間を稼ぐ。
ただ、それだけを、こなし続けた。