地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
それは、フォーリナーという存在の恐ろしさ。そして相手の事情。それを同時に知ると言う事になります。
ドラゴンが次から次へと来る。
上空からの火力投射を行った後、地上へ舞い降りてきて、食い殺しに。いちいち撃退しながらも、確実に進む。
敵の堅陣を突破した後も、損害は小さくなかったが。
五部隊目のドラゴンが現れてからは、流石に味方の疲弊が、酷くなり始めていた。
あと少しなのだけれど。
その少しが、届かない。
私は、最前線でずっと戦い。ドラゴンを蹴散らし続けてはいるが、味方の数が、見る間に目減りしているのが分かった。
「ストームリーダー!」
親城准将が叫ぶ。
そろそろ限界だというのだろう。
分かっている。
私も機動戦でスピアを放ち、次々敵を串刺しにしながら、それでも味方が食いちぎられるのを止めきれない。
ナナコもジョンソンも、フュージョンブラスターを振り回して、次々ドラゴンを焼き払っているし。
日高中尉は、異常なほど向上したエイミングをフルに活用して、次々ドラゴンをハーキュリーで叩き落としている。
ウィングダイバー隊は、上空へミラージュをひたすらに連射。
ドラゴンを足止めさえできればいい。
キルカウントが一番高いのは、多分秀爺だろう。空を舞うドラゴンを一射確殺していく手腕は、凄まじいを通りこして魔的でさえあった。
弟は前線で、味方を守り敵を倒し、鬼神の活躍を続けているが。
これだけの精鋭英雄が揃ってもなお。
敵の力は、その上を行っているのだ。
既に電磁プリズンは使い切り、ガードポストも限界をとっくに越えている。キャリバンはどれも傷ついていて。中は負傷者ですし詰めだ。
「どうやら、見えてきたらしい! もう一歩だ!」
「本当ですな」
「どのみち、ブレインを倒さなければ、生きては帰れない! 踏ん張れ!」
弟が声を張り上げた。
私も、それらしいものを視認。
クレーターの中に、何かいる。ディロイ二機。青ヘクトル四機。それに、周囲には、攻撃機多数。
あれは、間違いない。
あの塔のような姿は。最後に、小原が送ってきた通信にあった。
「間違いない。 彼奴がブレインだ!」
「一旦戦況を立て直す! 周囲に群れているドラゴンを殲滅後、少し下がって隊形を組み直すぞ!」
弟の指示で、味方が俄然精気を取り戻した。
ドラゴンの群れも、何度嬲っても立て直してくる此方に、流石に鼻白んだのか。何より、一射確殺してくる秀爺の狙撃に辟易したのか。下がりはじめた。
体勢を立て直すべく、合流。
涼川と原田も追いついてきた。二人とも満身創痍。ジープは、動いている方が不思議なくらい傷ついていた。
戦死者は十六名。
小原博士の護衛部隊を加えても、百十七名しかいなかった攻撃班で、この損害である。既に撤退を考えなければならない状況だが。
後方の敵は追撃を断念しており、なおかつ前にいるのは、戦乱の首魁であるブレインだ。此処で引く選択肢は、ない。
戦闘可能な人員を、弟が見繕う。
ストームチームは、全員が戦闘に参加する。涼川と原田は流石に負傷が酷いので、補助に廻るが。
谷山はギガンテスで、支援を中心に。
ベガルタは四機のうち、二機が疲弊が酷いので、敵の奇襲部隊を警戒して残す。勿論、筅が使うAXは、攻撃の主力となるので、先頭に立って貰う。武器の補給に関しては、連れてきていた補給車から、どうにかすませることが出来た。
負傷者は、キャリバンで休んで貰う。
こうして、どうにか戦えそうな人員が、三十七名残った。
戦死者が一割を超えている時点で、このような状態になるのは自明の理。一割死ぬというのは、そう言うことなのだ。
ブレインは、大きい。
確かに、鉄の塔というのが相応しいサイズだ。その周辺にいるディロイとヘクトルは、どうにか先に処理してしまわなければならない。
親城准将は、支援部隊の指揮を執って貰う。
負傷者も多いし、熟練者の冷静な指揮が必要だ。ただでさえ、いつ奇襲されてもおかしくないのだから。
まずは、攻撃機から始末する。
幸い周囲にアースイーターはいない。ならば、増援がぼろぼろわき出す恐れもない。集中攻撃で、叩くだけだ。
まず、砲兵隊が、対空クラスター弾を発射。
同時にネグリングから、一斉にミサイルを投射する。攻撃機が見る間に爆裂していくが。妙だと私は思った。
ブレインは、当然此方の肉薄に気付いている筈。
どうしてこの程度の護衛しか侍らせていない。奴はアースイーターどころか、全ての兵器を統括し、巨大生物共さえ自在に操作できるはず。
此方に迫る攻撃機を、ハーキュリーで叩き落としていく。
近距離での射撃戦になると、最近図抜けているのは日高中尉だ。キルカウントが凄まじく、ベテラン勢なみの数値をたたき出す。ジョンソンやエミリーの数値を超えることはざらだ。
ヘクトルが動き出すのが見えた。
ディロイも。
それを想定していたから、攻撃機を先に叩いたのだ。既に火力の雨を浴びて半減している攻撃機は、味方部隊に任せる。
攻撃の主体を、ディロイとヘクトルに移行。
私が矢島と一緒に、ヘクトルの一機に突入。青ヘクトルだが、巨大生物の支援がない一機だけなら、どうにでもなる。
幸い、味方の火力が、今回出し惜しみ無しなのが大きい。
ヘクトルは見る間に傷ついていく。ダメージを受けている装甲に、ガリア砲を連続して叩き込む。
向こうもガトリングで応戦してくるが、手数が此方の方が多い。
一機が爆裂。
二機目も、私がゼロ距離からガリア砲を叩き込んで、仕留めた。残り二機は、傷つきながらも、味方の遠距離砲火に反応。其方に向かう。
クレーターの底から、ディロイがプラズマ砲を放ってきている。
あれが面倒だ。
しかもクレーターの底に、今気付いたが、未起動のシールドベアラーがいる。アレがシールドを展開すると、かなり大変なことになる。
攻撃機は既に四半減。
ヘクトルも、もう戦闘力を残していない。
ならば、ディロイをさっさと叩くのが吉だろう。
「援護してくれ。 ディロイを集中攻撃する」
「分かった。 秀爺、支援を頼めるか」
「任せろ」
弟にオンリー回線をつなぐ。
そうすると、弟は香坂夫妻にも回線をつないだ。この辺りは、同意が取れているし。何より、香坂夫妻は、家族に一番近い間柄だ。
イプシロンが前進。
クレーターの縁から、底を覗き込む。
私と矢島も、クレーターの縁に陣取ると。反動を抑えるため、スーツの踵から、杭を地面に打ち込んだ。
機能としてある、固定砲台化。
使う事は滅多にないが。今回はその使うときだ。
ディロイに対して、長距離から精密射撃を浴びせる。イプシロンの射撃と同時に、だ。矢島の射撃も命中。
ベガルタの遠距離射撃が、残ったヘクトルを沈めるのが、視界の隅に見えた。
ディロイは反応。
足が長い新型だ。かなり頑強で、今の集中攻撃でも仕留めきれなかった。もう一機は、通常型ディロイだが。早めに仕留めないと、更に被害が出る可能性が高い。
それに、シールドベアラーが、今の攻撃に反応。
シールドを展開して、ディロイを守りに掛かる。精密射撃で叩くのは、厳しいか。弟に通信を入れる。
「敵がシールドベアラーを繰り出した」
「クレーターの底に突入するつもりか」
「そうだ。 全員で突入するのは望ましくない。 私と矢島、香坂夫妻だけで突入する」
「気をつけろ」
分かっている。
だが、ディロイの火力を考える限り、放置する方が危険だ。秀爺に声を掛けると、イプシロンとともに突入開始。
一気にクレーターの壁を滑り降り、ディロイに迫る。
ディロイがプラズマ弾を連射してくるが、左右にスラスターを駆使して回避。スキーでもするように、滑る。
シールドを抜けた。
ガリア砲を、ぶっ放す。
ディロイの円盤に直撃。距離が近いから、さっきより更にダメージが大きい。煙を吹き始めるディロイの円盤。
しかし、足からレーザーを放ってくる。
元々、先ほどまでの戦いで、相当に消耗している状況だ。それこそ、一瞬で勝負を付けないと、アーマーが溶ける。
レーザーで激しく消耗しながら、ディスラプターを起動。
矢島と一緒に、円盤に熱量の地獄を叩き付ける。
もがくようにディロイが暴れるが、ほどなく熱量に屈した。円盤が融解し、爆裂。瓦礫が降り注いでくる。
もう一機のディロイは、イプシロンと仁義なき殴り合いの最中。
其処に、横からガリア砲を連続して叩き込んでやる。
私がガリア砲をうち込んで、装甲を拉げさせた所に。
レーザーで視界が遮られているだろうに、秀爺がレールガンの弾丸を直撃させた。相変わらず非常識な腕前である。
流石に、これにはディロイもひとたまりもない。
崩壊するディロイの円盤。
矢島が、シールドベアラーに執拗にスピアを叩き込み。逃げる前に、破壊した。
「よし、此方はクリア。 其方は」
「此方も、今片付いた」
これで、残るは。
クレーターの底から、百メートルほどの高さに浮かんでいる、ブレインだけだ。
見上げる。
間近で見ると、あまりの巨大さに、呆れてしまう。高さはおそらく、三百五十メートルから八十メートルという所。
巨大な鉄の塔という風情の姿。
ただし円柱では無く六角形。これはアースイーターと連結するためだろう。
そして上部には、冠状の構造物がある。
「クレーターから一旦脱出を。 其処では、ジェノサイド砲を喰らった場合、全滅してしまう」
「分かった。 秀爺、行けるか」
「問題ない」
イプシロンと一緒に、クレーターの縁を上がる。
かなり傾斜が険しいが、元々ブースターとスラスターがあるフェンサースーツには問題ない。
イプシロンも、悪路での運用が想定されている機種だ。
この程度の坂なら、踏破は可能だ。ただしかなり難しい。直線的に抜けるのではなく、傾斜を緩やかにするため、斜めに登らないといけない。
脱出まで、五分ほど。
一旦クレーターの外に出ると。弟が、本部に通信を入れていた。
「ブレインに到達。 護衛の部隊を排除完了」
「よし、よし……!」
日高司令が、声を上擦らせている。
無理もない。
勝ち目がゼロと判断されていたこの戦い。誰もが、内心では絶望していたのだ。それが、小原博士の命を賭けた行動で、敵の首魁を特定でき。そしてストームチームの実力で、その懐にまで飛び込むことが出来たのだ。
「破壊できれば言うことは無いが、データも出来るだけ取って欲しい。 もし破壊できなかったとき、次につなげるためだ。 あらゆる兵器を叩き込み、そのデータを詳細に記録してくれ」
「イエッサ」
弟は通信を切ると、準備を整えた皆に告げた。
総員攻撃開始。
遠距離武器に切り替え、あの鉄の巨塔を、徹底的に叩き潰せ。
誰にも、躊躇う理由なんてない。
レンジャーはスナイパーライフルで。ウィングダイバーはMONSTERで。フェンサーはガリア砲で。
弟が、それぞれ狙う箇所を指示。
上から下まで、まんべんなく攻撃の対象に含める。
砲兵隊もスタンバイ。
合図と同時に、一斉攻撃を開始。
無数の弾丸とミサイルが発射され、ブレインに襲いかかる。一瞬おいて。炸裂する、光と炎の花。
轟音が此処まで届いたときには。
ブレインの周囲は、破壊に埋め尽くされていた。
第一射、完了。
バイザーに映り込んだままのブレイン。状況を解析中と、戦術士官が通信を入れてくる。嫌な予感がする。
「ブレインにダメージ無し」
「装甲が厚いとは考えられていたが、これほどか」
「第二射準備」
弟が指示を出す。
ブレインはゆっくり回転し続けている。攻撃を続けていけば、いずれダメージが通る場所も、発見できるはず。
楽観では無い。
あのマザーシップでさえ、弱点はあるのだ。
見た感じ武装を有していないブレインといえど、同じ事。それに地下の彼奴の記憶をたどる限り。
地球人の武器で傷つけられないような兵器は、条約の関係で持ち込めないはずだ。
第二射の攻撃が、ブレインの全体を覆う。
弟が目を細めた。
「姉貴、見ろ」
弟が言うまま、視線を移す。
上部。ブレインの冠状構造の所に、一部亀裂が出来ている。もしもダメージが通るなら、彼処か。
兵士達が、絶望する前に、弟が声を張り上げた。
「ブレインの弱点は、おそらく上部構造体だ。 全員、狙いを付けろ」
「随分狙いにくいところだな、オイ」
苛立ちを込めて、涼川が言う。
私だってそれは分かっている。上部の冠状の構造は、そり返しのようになっている。見たところ、全てに打撃が通るわけでも無さそうだし。何度も射撃を浴びせて、状態を見ていくしかない。
第三射。
今度は。ブレインの上半分に射撃が集中。
不意に、その瞬間。
私の周囲の景色が、切り替わった。
宇宙空間のように、何も無い黒の世界。
星の海。
私はフェンサースーツではなく。その下に着込んでいる軍服のまま。上も下も分からない空間に、立ち尽くしていた。
何だこれは。
他の皆も、この幻覚を見ているのか。
誰もいない。
声を掛けるが、反応がない。いや、むしろこれは。
「解析完了。 リンク接続」
不意に、頭の中に直接声が響く。
これは、何の声だ。
まさか。
顔を上げると、おそらくその予想は当たった。目の前に、不可思議極まりない物体が浮かんでいたのである。
中心に光の塊があり、それに無数の線が延びている。いや、それは触手というか、流れというか。
なにやらよく分からない、形容しようがない存在だ。
だが、正体は。即座に理解する事が出来た。
此奴こそが。
「貴様が、ブレインだな」
「反応確認。 いかにも私がブレインです」
「無人機械の分際で、私だと」
「簡易の自我が与えられています。 それに、人類とは一度、きちんと話をしておきたかったのです」
声には怒りも、揶揄もない。
ただ、興味だけがあるのが分かった。
此奴は、接触してきた軍部隊を。ただ、コミュニケーションを取る相手とだけ見ている。いや、まさかとは思うが。
「楽しんでいただけていますか」
「何……?」
「あなた方の文明は、あなた方が巨大生物と呼ぶ進化促進生体から確認しています。 あなた方の文明は、殺戮と生殖、集団内での利権確保のみで構成されている。 特に殺戮と生殖の割合がとても強い」
直球で来る。
やはり、そう言う理解でいたのか。
地下の彼奴の意識が流れ込んできてから、何となく分かってはいた。此奴らが、地球人を選んだのは、銀河系で調査した知性体の中でももっとも獰猛で排他的だから。だが、それだけが理由では無かったという事だ。
つまり此奴らは。
地球人が合意の上で。この戦いを楽しんでいると考えている。
なるほど、それなら全てのつじつまが合う。
前から、うすうす危惧はしていたのだ。
此奴らは、地球人と同意の上で、肉体を新しく創造するために戦っていると考えているのではないかと。
「貴方の思考からは、静かな拒絶を感じます。 これからも良き関係を築いていきたいと考えているのですが」
「大きな誤解がある」
「ほう?」
「地球人は、貴様らの到来を喜んでいない」
黙り込む光の塊。
これは、予想外の反応だと言わんばかりだ。
「それは表層意識の話でしょう」
「表層意識、だと?」
「地球人の文明に、こういう思想があります。 宇宙人が攻めてくれば、人類は団結することが出来るのに、と。 事実我々が攻めこむのが確実になる前は、あなた方は敵を求めて、血で血を洗う殺し合いを続けていた。 それこそ、住処としているこの星が、破壊され尽くされるのを前提とした兵器さえ開発して。 それが、我々が到来したことで、あなた方は無駄を堂々と間引き、なおかつ団結してようやく知的生命体の文明らしくなることもできた」
知的生命体の文明か。
銀河系全域にまで拡がった、最古の宇宙種族。フォリナからみれば、確かに地球人類の文明など、稚拙も稚拙、それこそ幼児の書いた落書きに等しいものなのだろう。そして此奴らは、地球人類の文明を、最大限尊重している。
戦いを好み、他者から略奪し、弱者を蹂躙し、欲望を押しつける。
それにある程度合った形で、合意の上で自分たちの新しい未来を作ろうとしている。
呆れた話だが。はっきりわかった。
フォリナの現状打開派は。
地球人よりも、遙かに紳士的で。
それが故に、今の絶望的状況が、到来しているという事だ。
「ましてや、あなた方は自分たちの基準でだけ相手の全存在を認識するような文明の持ち主だ。 このままでは、この星よりろくに領を広げる事さえ出来ずに、滅びてしまったでしょうに。 我等の到来を歓迎していないというのは、理解できない事です」
「お前は正しいと私も思う」
「ならば何故?」
「人類とは、面倒な生き物なんだ」
やはり、相手は理解できない。
ただ、少しずつ、分かってきたことがある。
「ふむ、なるほど。 人類に矛盾が多いことは、文明を吸収解析するうちに、私も理解はしていました。 この件については、結論は出ないかと思いますので、保留しましょう」
「勝手な奴だな」
「時間が余りありませんので。 今も、銀河の秩序を保っているフォリナは、衰退に向かっているのです。 新しい肉体の到着を待っている民は、20兆に達しています」
勝手な奴だと、もう一度私は思ったけれど。
しかしこれは好機だ。
ブレインと直接対話することで、此奴らの弱点も見いだせる可能性が高い。上手くすれば、この場でお帰り願える可能性もある。
「丁度貴方に声を掛けたのは、提案があるからです」
「何だ」
「貴方と弟。 ストームリーダーとあなた方が呼んでいる存在は、明らかに異文明の手が加わった強化生命体ですね。 明らかに地球人類のスペックを超越している様子からも明らかです」
まあ、ばれていて当然か。
それで、どうだというのか。
「あまりに存在がいびつで、片や老化が通常の倍。 片や一切成長できない。 そればかりか、子孫を残す事も出来ない」
「ああ、その通りだが、それがどうかしたか」
「此方に来ませんか? 勿論、地球人類と戦えなどとは言いません。 地球人類とは、これからも良き関係を構築したいからです。 あなた方に改良を施して、子孫を残せるように調整しましょう。 望むならば、可能な限りの長寿処置も施しましょう」
やはり、そう来たか。
子孫が残せないのは、私と弟の、共通した悲しみの一つ。私達は作られたとき、邪魔な要素は一切排除された節があるけれど。多分これに関しては、技術力の不足か、或いは無理矢理作り上げられた生命か。
そのどちらかが理由だろう。
「見返りは求めません。 どうですか」
「断る」
「ほう? 貴方に損は無い取引だと考えたのですが」
「皆を裏切る事は出来ない」
例え、この後。
ほぼ確実に英雄の座を追われ。迫害の後、孤独に死ぬとしてもですか。
そう、容赦なく、ブレインは追い打ちを掛けてくる。
確かにその通りだ。
戦いに勝った後の事を考える。勿論勝てる可能性は極小だが。負けたときには死ぬだけだから関係無い。私も弟も、戦闘奴隷にされるくらいなら、戦って戦って戦い抜いて、死ぬ事を選ぶ。
それで、勝った後。
私と弟は。ほぼ確実に粛正されるだろう。
危険すぎるからだ。
地球人類は、自分たちこそ万物の霊長だと、古くから考えている。だから自分たちの基準を世界最高のものだと錯覚しているし、それに基づいて敵を殺戮することをなんら躊躇うことがない。
フォーリナーを首尾良く地球からたたき出したら、どうなるか。
邪魔者は、排除されるだけだ。
事実、前回の大戦が終わった後。またフォーリナーが攻めてくるのは確実と言われているにも関わらず。
私は閑職に追い込まれ。
弟に到っては、事実上軟禁も同然の扱いを受けていた。
かといって、フォーリナーの次に、地球人類と戦うのも、あまりぞっとする事ではない。ストームチームの皆と殺し合うなんて、嫌だ。
それにしてもブレインの奴。
地球人を、存外に良く知っているじゃないか。
だからこそ、戦いは苛烈で、容赦なく。
そして一片の希望も無い代物になっているのだろう。
「なるほど、残念です。 また次に会うときには、気が変わっていると良いのですが」
「私と弟など、お前から見れば塵芥も同然だろう。 何をそんなにこだわっている」
「いいえ。 私達の新しい肉体の進化には、あなた方姉弟の凄まじい戦いぶりが、大きく影響しています。 データを見る度に、感動していますよ」
我に返る。
クレーターの縁に立っていた。
第三射攻撃を浴びたブレインが、煙を上げている。
周囲が、此方に気付いている様子は無い。弟と、オンリー回線をつないだ。
「お前の所には来たか」
「何の話だ」
「そうか。 ブレインから、お前と一緒に人類を裏切らないかって勧誘を受けた。 断ったがな」
「……今は、戦闘を続行しよう」
頷く。
弟は分かっている筈だ。その提案が、私と弟にとって、一笑に付せないという事が。
奴が言っていたことは、事実だ。
地球人類が、戦いが終わった後。我々姉弟に感謝などする筈がない。ほぼ確実に、邪魔者はもういらないとばかりに、排除に掛かってくるはずだ。
それに私にも、弟にも、生殖能力がない。
子孫を作る事は出来ないし。
何より、戦いが終わった後は。何も出来ることなど、ないのだ。
奴らは、その状態に、意味を作ってやろうと言ってきた。
それを断るのは。正直、私も苦労した。
勿論、提案に乗ることはなかっただろう。だけれど、笑い飛ばしたり、はねのけたり出来る話では無かった。
論理的に考えて見れば。
私にも弟にも。提案に乗る方が、利があるのだから。
ブレインのダメージを、ほのかが計測している。やはり上部構造体に、亀裂が入っている様子だ。
しかし、冠状構造の全てが脆いわけではないらしい。
攻撃でびくともしない地点も多い。
ほのかが、通信を入れてくる。
「なるほどね。 冠状の構造の下部。 少し色が違う地点に、攻撃が通っているようだわ」
「つまりそれが、脆い場所と言う事か」
「おそらく放熱のための構造でしょう。 スーパーコンピューターのようだから、内部に籠もった熱を排出しなければならないのは、自明の理でしょうね」
「よし、第四射準備!」
ほのかが指定してきた地点に、狙いを付ける。
しかし、である。
次の瞬間。レーダーが真っ赤に染まる。時間切れらしい。
空から、アースイーターが降り注いでくる。そして、ブレインと連結を開始した。舌打ちして、弟がまずはアースイーターの排除を指示。コアを叩き、ハッチを潰す。幸い、まだまだ火力は充分にある。
相手の体勢が整う前に、アースイーターを一気に叩く。
コアへの集中攻撃で、周囲のアースイーターが爆散。粉々になりながら、クレーターの中に落ちていく。
しかし、次から次へと、アースイーターが降りてくる。
砲台も多数ついているのが見えた。
一瞬の隙を突いて、砲撃するしかない。
ライサンダーを構えていた秀爺が、イプシロンに歩き出す。それにほのかが続いた。
「行くぞ」
「はい」
視線を一瞬だけ送られる。
意味は、分かった。
弟もだ。
弱点は分かった。それならば、最大火力のイプシロンのレールガンで、集中狙撃を浴びせればいい。
親城准将が来る。
アースイーターを見つめて、彼は声を出来るだけ抑えながら言った。周囲も聞いているから、敬語では無い。
「敵の大部隊が迫っている。 数は三千を超えている」
「三千……抑えきれる数ではありませんね」
「できるだけ急げ。 無理なら残念ながら、脱出を」
「分かりました」
私は弟と頷く。
狙うは、ブレインの側にいるアースイーターの連結を実行しているコア。息を合わせて、ストームチームの全員で、斉射。
爆裂。
一瞬だけ、空が見える。
絶え間なく降り注いでくるアースイーターの隙間。
それを見逃すほど、秀爺はスナイパーとしての腕を、鈍らせていない。
射撃。
動きに癖があるレールガンの弾が。
まるで吸い込まれるように。
さきほど、ほのかが指定してきた位置に。着弾していた。
ブレインの冠状構造に、露骨に分かるほどの亀裂が入るのが見えた。同時に、ぴたりとアースイーターの動きが止まる。
「ブレイン、中破した模様!」
「やった!」
戦術士官の声さえ、上擦る。
調子が良い臆病者のオペレーターも、それに乗っかったようだった。だが。私は舌打ちする。
声が聞こえたからだ。
「ふむ、此処で破壊されるわけにはいきませんね。 まだデータが充分に集まりきっていない」
「待て。 戦いなら、今此処で、いくらでもしてやる」
「あなた方は確かに魅力的な素材ですが、他にも戦術データを取りたい存在はいるのです」
ブレインが、浮き上がる。
そして、空へと見る間に消えていく。
射線は、アースイーターに、全て遮られていた。
心底から悔しそうに、日高司令が嘆いた。
「逃がしたか……」
「だが、収穫はありました。 相手の弱点と、それに。 彼奴はおそらく、戦いがもっとも見られる場所に現れると考えて良いでしょう」
「何……どういうことか」
「後で説明します」
弟が、声を張り上げる。
撤退。
アースイーターと三千を超える巨大生物を同時に相手など出来ない。包囲を敷かれる前に。さっさと撤退する。
キャリバンとベガルタを先頭に。ストームチームが最後尾になり、撤退。
アースイーターは逃げる此方には興味が無い様子だ。巨大生物も、途中まで形式的には追撃してきたが。それだけだった。
ドラゴンが現れていたら、もう戦力が三分の一になっている現状、逃げ切れなかったかも知れない。
私は理解していた。
ブレインは、わざと此方を逃がした。
データを取る。
ただ、それだけのために、である。
敵の手のひらの上にいることを今更ながらに思い出して。私は、あまり良い気分にはなれなかった。