地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋   作:dwwyakata@2024

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ブレインとの接触は、情報と絶望を同時にもたらしました。

フォーリナーとの戦いは。

文字通り相手が満足するまで終わらない、ということです。


2、強襲と強襲

基地にまで到着。

 

急いで負傷者を、ヒドラ内部の設備に移して治療。しかしそれでも手が足りないので、ヒドラに積み込んだキャリバンの中でも治療を続けなければならないほどだった。すぐに編隊を組んだまま、無人となっている基地を離れる。

 

巨大生物が気を変えて、いつ襲ってくるか分からないから、である。

 

いや、正確にはブレインが、か。

 

複雑な経路で帰還するので、東京基地までは六時間も掛かった。行きよりも更に複雑な経路を通る必要があり、途中で二度も変えたからである。

 

速度を落として、低空で行かなければならない場所もあった。

 

ドラゴンがそれだけ活発に動き回っていて。

 

彼方此方の空を、我が物顔に占拠しているという理由もある。

 

敵は戦況のコントロールに、完全に成功。

 

此方は、敵が意図している範囲内でしか、もう動けないのかも知れない。しかし、それでもだ。

 

まだまだ諦めるわけにはいかない。

 

ブレインは、ほぼ確実に、データが取れる地点に現れる。

 

それに、打撃も通る。

 

何よりブレインは精密機器だ。

 

攻撃を受けている間に、思わぬ損害になる可能性も高い。あのおしゃべりな鉄の塔は、興味がとても強いようだった。

 

科学陣の技術を上手く使えば、おびき出すことも出来る可能性が高かった。

 

東京基地に到着。

 

此処でさえ、安心は出来ない現状だ。すぐにヒドラは地下の格納庫に移され、其処から病院に、けが人が搬送される。

 

手足を失っている者も多い。

 

もたついていたら、助からなくなる。

 

部下を多く失った親城准将も、状況を見に行くと言って、病院に。

 

原田と涼川は、応急処置を済ませた後。病院で見て貰う事になった。そしてストームチームの面々は、全員が休息をしっかり取るようにと、また医者に説教された。

 

弟とジョンソンを連れだって、私は司令部に。

 

話が終わったら、すぐに休めと、角を生やした医者に怒られたけれど。こればかりは、仕方が無い。

 

日高司令は、待っていた。

 

現在、通信が取れる全ての部隊に、通信を入れて。

 

欧州は中心となっているベルリン基地さえ通信が出来ないが、幾つかの基地はまだ健在で、今回線がつながっている。オメガチームのリーダーであるアシャダムも、通信に加わってくれていた。

 

彼がまだ健在だというのは、心強いことだ。

 

ただ、オメガチームは人員の損耗が酷いようで、連戦でどれだけ犠牲を出しているかよく分かる。

 

彼ほどの強者が、声に疲れを隠せないのだから。その消耗のひどさがうかがえる。

 

北米は既に全ての基地から通信が途絶しているが、なんと移動中のX3改と通信をつなぐことが出来ていた。

 

連絡に出たのは、言うまでも無くストライクフォースライトニング隊長、エルムである。北米は今、フォーリナーによるモグラ叩きを受けているが。ゲリラ戦を粘り強くカーキソン元帥が行っており。エルムはその手足となって、最強の特殊部隊の一つ、ストライクフォースライトニングとともに戦いを続行していた。

 

他にも、かろうじて生き延びている幾つかの基地と連絡が取れる。

 

昔日とは比べようもないが。

 

まだEDFは屈していないのだ。

 

日高司令が、今回の会議の経緯を説明する。一番興味を示したのは、エルムだった。

 

「ブレインが、戦闘が行われている地点に、積極的に姿を見せる可能性が高い、だと」

 

「恐らくはデータを収集するためだ。 奴らの目的を考えれば、一番近くで、新鮮なデータを取りたいと考えるのが自然だろう」

 

「案外阿呆な奴らだな。 これは好機かも知れん」

 

オメガチームや、ストライクフォースライトニング。それにストームチームを囮にして、奇襲を仕掛ける。

 

それでひょっとすれば。ブレインを撃沈できるかも知れない。

 

誰もが、同じ認識を共有したはずだ。

 

だが私は少し危ないとも思う。

 

ブレインは、ストームチームの総力射撃三回を喰らって、ちょっとひびが入ったくらいのダメージしか受けなかった。

 

特大の火力を準備して。

 

それを直撃させたとして。

 

本当に、ダメージが入るのだろうか。

 

しかし、敵は条約という鎖に縛られている。あまりにも強力な兵器は、持ち込むことが出来ないはずだ。

 

希望は、浮かんでは消える。

 

アシャダムが、最初に言う。

 

「よし、此方は精鋭を招集する。 まだ生き延びて戦ってるチームの中にも、腕が立つ奴はいるからな。 そいつらに零式レーザーやノヴァバスターを渡して、一瞬でブレインを丸焼きにしてやる」

 

「此方では、第八艦隊の残存部隊を招集中だ。 ゲリラ戦で敵を叩いていたが、X3改を囮に、ブレインを直接攻撃する方が良さそうだな」

 

エルムも嬉しそうだ。

 

おそらく二人とも、辟易していたのだろう。全く先が見えない戦況と、絶望しかない戦力差に。

 

だが、勝負の行方は、これで分からなくなった。

 

実際問題、敵が満足するだけ戦ってやれば良いと言う条件については、つかみ所がなさ過ぎる。

 

ブレインを撃破して、敵を追い返した方が良いという方が、遙かに分かり易いのだ。

 

他の部隊とも、情報の連携を行っておく。

 

現状で、まともに戦闘を行えているのは、極東と欧州だけ。その極東も、既に無事なのは三基地だけ。欧州も似たような状況で、ベルリン基地は何カ所かに出現したアースイーターの電波妨害で通信途絶。ただ、長く伸びた地下通路を使って、人員と情報のやりとりはしており、頑強に抵抗していることが分かっている。

 

各地のシェルターについての情報も共有。

 

悲惨な状態は、何処も変わっていない。

 

極東に、避難民を逃がしたいと言ってくる地区も前には多かったのだけれど。今は。輸送船など浮かべていたら、瞬く間にドラゴンの餌食になってしまう。

 

苦しいが、耐えて欲しい。

 

そう言って廻ることしか出来ないと、アフリカ地区でゲリラ戦を続けているマズダ少将は苦しげに言うのだった。

 

マサイ族出身の彼は優れた戦士だが、それでも最近は苦闘が続いているせいか、めっきり老け込んでいる。

 

今回得られた希望についても、自分には関係無いと、自虐的でさえあった。

 

誰もが、心折れかけている。

 

このままでは、勝てる戦いも勝てなくなる。

 

ただ、アシャダムとエルムがまだやる気を捨てていないことだけは救いだ。彼らを主軸に、抵抗を続けていくしかない。

 

会議が終わった後、医師に捕まって、カプセルに放り込まれた。

 

強制睡眠で、無理矢理にじっくり休まされる。

 

夢は、見なかった。

 

 

 

起き出して、シャワーを浴びる。

 

それで気付いたのだが、シャワーの湯が温い。それだけエネルギーが、節約されているという事だ。

 

体を拭いて、着替えて。

 

ぼんやりと、空を見上げながら、バイザーを付ける。

 

この辺りは、もう職業病だろう。

 

ざっと戦況を確認。

 

九州の福岡基地。体勢を立て直した長沼指揮下の部隊が、敵を撃退。ただし、福岡基地を死守するのが精一杯。

 

旭川基地。

 

かなりの損害を受けながら、戦闘を続行。

 

各地の残存戦力が集まっており、粘り強い抵抗を続けてはいるが。負傷者が多く、病院がパンク状態。

 

近隣のシェルターも、不満が爆発寸前だという。

 

皆、等しく苦しい状態だ。

 

不意に、通信が入ってきた。日高中尉からだ。

 

「はじめ特務少佐」

 

「どうした」

 

「久々に訓練を見て貰えないですか」

 

「良いだろう」

 

気分転換にはよい。

 

原田と矢島、池口と三川。それに日高中尉と、ナナコ。

 

いつものシミュレーションで鍛えているメンバーが勢揃いしていた。少し前に、難易度インフェルノのミッションを攻略したと、彼らは息巻いていたが。

 

さて、どんなものか。

 

難易度は当然インフェルノに設定。

 

今回は防衛ミッション。シェルターの入り口を、ドラゴンやヘクトルも含む敵の猛攻から、支えるというものだ。

 

しばらく戦況を見るが。

 

日高中尉を中心にまとまっていた前回とは、戦況がだいぶ違う。

 

リーダーになる人間がいない。

 

日高中尉は、壊れてからと言うものの、最前線でとにかく敵を殺す事しか考えなくなった。

 

リーダー不在になったのだ。

 

しかし、彼らは戦闘経験を積んで、言われなくても自然に役割をこなせるようになってきている。

 

全体的な戦力は上がっているが。

 

これでは、少しまずいかも知れない。

 

ミッションは攻略完了。

 

だがこの程度のシミュレーションミッションなど、現実の敵に比べれば児戯に等しい。それは、皆も分かっている筈だ。

 

全員が出てきたところで、皆を見回す。

 

「日高中尉」

 

「はい」

 

「戦闘力は著しく向上したな。 だが、皆をまとめる事を忘れてしまったようだな」

 

「はあ、まあ。 戦っている方が楽しいですし」

 

皆が一様に、前はこんなではなかったと、顔に書いている。

 

特にナナコは悲しそうだった。

 

しかし、日高中尉は、平然としている。此奴はおそらく、涼川と同じ、キリングマシーンへの路をたどりつつある。

 

そして一兵士としては、悪い事では無いのだ。

 

事実涼川は、恐ろしいほどの戦果を上げてきている。奴は頭のネジを外したことで、人類の救世主の一人となったのである。

 

実際ストームチームの涼川と言えば、何処でも怖れられるほどの存在だ。

 

「敵をより効率よく殺したいか」

 

「それは当然ですっ! もっともっと殺したい!」

 

「……」

 

特に原田は、完全に真っ青になっていた。

 

日高中尉を、ナナコの次くらいに慕っていたからだろう。ナナコはもう、死んだ魚のような目で、変わり果てた日高中尉を見ているのだった。

 

「ならば、皆の中心だったことを少しで良いから思い出せ。 それで、更に効率が上がるはずだ」

 

「ええー?」

 

「より多く殺したいならそうしろ」

 

「分かりましたー」

 

口をとがらせ、日高中尉は下がる。

 

それでいい。

 

前大戦で頭のネジが外れた直後の涼川も、こうだった。今の涼川は、後進育成の重要性を理解しているし、集団戦術の強みも把握している。だから、以前よりも更に強い。ただ涼川の場合は、それを教えてくれる人間が他にいなかった。

 

だから、気付くまで、随分時間が掛かってしまったのだ。

 

今は私がいる。

 

故に、教えておくと効率が良い。

 

そして、実例を見せるのが、なお良い。

 

ジョンソンと連絡を取る。日高中尉に教育をしたいというと、ジョンソンは面倒くさそうに、構わないと言った。

 

彼は特殊部隊設立の夢が絶たれてから、若干自棄になっているが。それでも、仕事はしてくれている。今回も、私が意見を通したことを、喜んではくれたようだ。

 

「お前達、私と入るぞ。 次は日高中尉は、外で戦況を見るように」

 

「はじめ特務中佐がシミュレーションに加わってくれるんですか」

 

「そうだ。 指揮は私が執る」

 

日高中尉に分かるように、ステータスを調整。現状の日高中尉と同じレベルにまで低下させる。

 

シミュレーションを開始。

 

敵を全滅させるまでの所要時間は。バラバラに戦っていたときの半分を切った。この程度は余技だ。何より戦闘参加した全員が、納得した顔をしている。

 

日高中尉は、ほおと呟いていた。

 

「見ての通りだ。 半分の時間で今の敵を殺せたのだ。 残り半分で、更に敵をたくさん殺す事が出来る」

 

「すごいです!」

 

「そう思ったら、皆の中心であったことを思い出せ。 そうすれば、効率が上がる」

 

これで、充分だろう。

 

次の戦いでは、さらなる戦果が期待出来る。

 

 

 

埼玉の浦和に、敵の大型輸送船が出現。

 

現在、東京基地に難民を輸送しているシェルターの一つが側にある。放置しておくと危険だと、日高司令が判断した。

 

大型輸送船は、蜂とドラゴンを投下している。

 

数はそれぞれ、ドラゴンが一個部隊、蜂が二百から三百。放置しておけば、更に数が増えるのは確実。

 

しかも、現在東京基地が使える大型要塞砲の射程から、微妙に外れている。その上放棄されたビル街すれすれに滞空しており、挑発が露骨すぎるほどである。

 

幸い、前の戦闘から、二日の時間があったから、休憩だけは出来た。ビークル類の調整も、済ませている。

 

ただ今回は、増援無し。

 

他のチームの消耗が激しいこと。ビークル類の損害は決して小さくないこと。これらを修理するために、電力を限界まで使っていること。

 

何より、ブレイン攻撃のための戦力を、編成していることが、その理由になる。

 

親城准将は、自分が支援に出ると言ってくれた。

 

第五艦隊も、支援砲撃をしたいと申し出てくれたが。

 

日高司令が、反対したのだ。

 

ストームチームに負担を掛けるのは心苦しいが。今は、それ以外のチームのダメージが大きすぎる。

 

せめて強化クローンの生産を進めて、最後にブレインを落とすときの戦力を残しておきたい、と。

 

事実欧州では、その準備を進めている。

 

残った基地から、強化クローンと、歴戦の人員を集めて、ブレインが来るように激しい戦闘を実施中だそうだ。

 

同じように、集結しつつある第八艦隊と合流したストライクフォースライトニングも、敵の小部隊を片っ端から潰して廻り、ブレインが来るように誘導しているとか。彼らの実力なら、安心とまでは言えないが。

 

人類は、反撃のための、準備を着々と進めているのだ。

 

第五艦隊は東京基地の港湾設備に入って、修復と補給を続行中。空軍も、整備を続けている。

 

牙を研いでくれているのだ。

 

それならば、その間の時間は。戦闘力面で余裕がある、ストームチームがこなすほかない。

 

幸い今回は、現在展開している部隊だけで考えれば、今まで交戦してきた相手に比べて、随分と少ない。

 

ヒドラで現地近くに到着。

 

ビークル類を下ろして、状況確認。

 

双眼鏡を下ろしたほのかが、あまり良くないと言った。

 

「これは困ったわ」

 

弟が、続きを促す。

 

ほのかによると、敵が既に、廃棄されたビル街に完全に溶け込んでいるという。殲滅するつもりなら、全てビル街を焼き払うくらいの覚悟が必要だと、彼女は言うのだった。

 

浦和は東京に近い。

 

町田同様、全て焼き払ってしまうのは、あまりにも損害が大きい。

 

町田の時は、マザーシップとの戦闘で必要だったし、何より巨大生物との激戦で、既に焼け野原だった。

 

浦和は、まだ少し修復するだけで、使えるのだ。

 

蜂はビル街の間を低空飛行。

 

ドラゴンはビル街の合間に張り付き、此方が攻めこんだ来た時に対応するべく、牙を研いでいる。

 

これでは、敵によるゲリラ戦も同じ。

 

これでレタリウスが出てきていたら最悪だったが。幸い、それだけはなかった。

 

弟が腕組みして悩む。

 

私が見かねて、通信をオンリー回線で入れる。

 

「かまわん。 焼き払ってしまおう」

 

「しかしだな、あれだけの規模のビル街だ。 再建するまでに、一体どれだけの資材と財産を消耗するか。 日高司令も何というか分からないぞ」

 

「ゲリラ戦でどれだけ消耗が酷いか、お前も分かっている筈だ。 此方はストームチーム一つ。 相手は三百を軽く超えている。 それもドラゴンが混じっている状況だ。 下手をすると、半数以上戦死するぞ」

 

流石にその事実を告げると、弟も口をつぐむ。

 

大きく嘆息すると、弟は言った。

 

「まずは輸送船を落とす。 輸送船に攻撃を加えながら、敵の出方を見る」

 

イプシロンの照準をセット。

 

ネグリングも。

 

攻撃開始。火力投射に対して、敵は動かない。輸送船はぴったりと殻を閉じ、それ以上は何も反応を見せなかった。

 

グラインドバスターでもあれば、撃墜は可能だろう。

 

しかしあれは。

 

空軍でも、専用の攻撃機にしか搭載できないのだ。

 

かといって、敵にドラゴンと蜂がいる現状、攻撃機を出すのは自殺行為だ。瞬時に嬲られて、撃墜されるのがオチ。

 

舌打ちした弟が、本部に通信を入れた。

 

しばらく、やりとりを続ける弟。

 

通信を切ったときには、敵に対する怒りを、顔中に湛えていた。

 

「仕方が無い。 街ごと焼き払う。 池口少尉、ネグリングで、ドラゴンと蜂に火力投射開始」

 

「分かりましたー!」

 

池口が、ネグリングを起動。ミサイルを乱射しはじめる。

 

見る間に、今までかろうじて無事だった浦和の街が、焼け野原になって行った。

 

流石に溜まらず飛び出してくるドラゴンと蜂の群れ。

 

輸送船も、倒された分を補充するべく、口を開ける。攻撃目標を転換。イプシロンで、口を開けた輸送船を狙撃。瞬時に一隻を叩き落とし、残り二機はつるべ打ちにされるとたまらないと判断したか、空間転移で逃げ去った。

 

ドラゴンと蜂の群れが、雲霞のごとく押し寄せてくる。

 

下がりながら、陣形を保って、迎撃開始。

 

ドラゴンが少ないとは言え、蜂の数が多い。ネグリングで中途に撃墜していくが、それでも近接距離まで来られるのは避けられない。

 

電磁プリズンを展開後、対空戦に移行。

 

波状攻撃を仕掛けてくる相手と、激烈な肉弾戦を続ける。さっと引くドラゴン。代わりに蜂が、纏わり付いて主力となる。

 

ハーキュリーとエメロードで迎撃。

 

当たりさえすれば、一旦地面に降りてくる。其処を、谷山に任せているギガンテスの主砲で消し飛ばす。

 

辺りに配置したセントリーガンはフル稼働だが。

 

敵も既に学習を進めている。セントリーガンを優先的に攻撃してくるようにもなっていて、そろそろ自走式を開発しなければならないかも知れない。

 

敵はヒットアンドアウェイを繰り返し、ビル街を確実に壊されながらも、まるで屈する様子が無い。

 

それどころか。

 

ビル街を壊すことが最初から想定済みだったかのように、じりじりと戦闘区域を変えて行っている。

 

挑発しているのか。

 

いや、そうなのだろう。

 

不意に、後方に輸送船が出現。空間転移で、戻ってきたのだ。

 

それに合わせて、敵も一斉に反転迎撃。戦いは一気に激化した。この数でも、敵が緻密な戦術を駆使して攻めてくれば、相応の苦戦は避けられない。

 

輸送船の一隻を、集中攻撃で撃墜。

 

だがその間に肉薄してきたドラゴンに、電磁プリズンを喰い破られる。

 

一気に乱戦に持ち込まれた。

 

 

 

どうにか敵を撃破して、帰還。

 

とはいっても、全滅はさせられなかった。形勢不利とみた敵は撤退を開始。此方の損害も大きく、追撃どころでは無かった。

 

ネグリングは大破にまで追い込まれている。

 

元々遠距離火力制圧が目的になっているビークルだ。集中攻撃を浴びてしまうと、どうしようもない。

 

数日は工廠の世話になるほかないだろう。

 

ベガルタAXも、全身から煙を上げている。ドラゴンの攻撃から、皆を庇い続けたのだし、無理もない。

 

キャリバンには、矢島と三川が入って、治療を受けている。

 

日高中尉は、前ほど勝手には動かなかったけれど。

 

それでも、あれだけの猛攻だ。

 

負傷者が出るのは、避けられない。

 

ただ、敵を追い払う事が出来たのは事実。浦和の街は、焼け野原になってしまったが、シェルターは救う事も出来た。

 

すぐにヒドラが来る。

 

浦和のシェルターの代表者は、もう限界だと訴えていた。しかし、東京の地下も、人員をいくらでも受け入れられる訳では無い。

 

現状で、浦和のシェルターは定員を二割ほど上回っている。引き受けられるのは、その定員余剰分だけだ。

 

この余剰分は、各地のシェルターから、死ぬ思いで逃げてきた人々だ。

 

シェルター内には、自給設備は整っているし、医療設備もある。ガンも克服できている現在、人員さえ過剰ではなければ、大概は助かる。本当だったら、平均寿命だって、130歳まで向上している筈なのだ。

 

ヒドラで、難民がピストン輸送されていくが。

 

傷ついているストームチームを見る難民達の目は冷たかった。

 

「やっと来やがった」

 

「今まで何をしてやがったんだ」

 

「俺たちを見捨てて、遊んでやがったんだろ」

 

難民達は、色々な国の言葉で、そんな事をいう。フェンサースーツの翻訳機能で、嫌でも分かってしまう。だが、責める気にはなれない。

 

彼らは、閉鎖空間で地獄の恐怖と戦っていたのだ。

 

いつシェルターが喰い破られるかも分からない恐怖。

 

外に出れば死ぬ。

 

中はすし詰め。

 

地獄の環境下で、誰もがおかしくなるのは充分だ。だから、おぞましいほどの罵倒が飛び出すのも、無理はない。

 

それでも、怒りを目に湛えて、原田が前に出ようとする。

 

私が肩を掴んで止めた。

 

「放っておけ」

 

「でも、はじめ特務中佐」

 

「いいんだ。 私は気にしていないし。 慣れている」

 

そういうと、原田はうつむいて、顔をくしゃくしゃにした。

 

気が弱くて、戦闘適正も高くないこの男は。やはり戦士には向いていないのかも知れない。これだけ強くなった今も、それは同じだ。

 

私は。

 

もう何処かで、諦めているのだろうか。

 

ブレインが言ったことはもっともだ。負ければ死ぬし、勝ってもどうせ碌な事にはならない。

 

英雄として祭り上げられるのはほんのちょっとの間だけ。

 

ヒドラが、難民を輸送していく。

 

俺たちも運んでくれ。

 

そうヒステリックに叫ぶ男を。シェルターの防備についているEDF部隊が、引きずっていった。

 

人殺し。

 

そいつは、シェルターに連れ戻されるとき。

 

そう叫んでいた。

 

作業が終わった後、本部から連絡が来る。日高司令は、やはり罪悪感をとても強く感じているようだった。

 

「すまなかった。 増援部隊を出さないと決定した私のせいで、苦労を増やしたな」

 

「うるさい無能」

 

ぼそりと呟いたのは。

 

日高中尉だ。

 

聞こえないようにして、だったが。私の耳には届いていた。

 

親子関係が上手く行っていないことは理解していたけれど。此処まで露骨な批判が出たのは初めてだ。

 

元々他人の悪口を言う事は殆ど無い娘であったから、私も少し驚いた。

 

ただ。今の日高中尉の場合。

 

おそらく。より多く殺せる機会を作らなかったことで、父を批判しているのだろう。

 

「浦和の街は残念だった。 だが、死者を出さなかったことは素晴らしい。 出来るだけ急いで戻ってくれ。 君達の消耗も小さくないはずだ」

 

「イエッサ」

 

弟が無言で、ヒドラに乗るように、皆を促す。

 

既にピストン輸送は完了。数万の人間が、東京地下シェルターへと移されていった。かなりの人数が東京地下シェルターへ移ったが。まだ余剰はある。各地のシェルターの内、まだ経路が確保されている場所からは、どんどん人員が集められている。

 

東京基地に到着した時は、既に真夜中。

 

そのまま会議に出て。

 

休んだのは、明け方近く。

 

珍しく、それからは夢を見た。

 

既に地球の全ての地上が、フォーリナーに制圧され。

 

巨大生物に促されて、人類は武器を渡されて。一定の場所で、巨大生物と殺し合いをさせられる。

 

ブレインからは、声が響いている。

 

「今回の目標キル数は2000です。 2000を殺し次第、貴方たちはシェルターに戻ります。 此方の戦術についても事前に連絡したとおり。 創意工夫して、苦難を乗り切ってください」

 

不満たらたらの人々。

 

しかし、巨大生物は、本気で殺しに来る。

 

殺戮と暴虐が吹き荒れる中。

 

最初に引っ張り出された人達は、見る間に皆殺しにされてしまった。

 

もうEDF何て存在していない。

 

「次の人々」

 

容赦なく、ブレインが告げる。

 

老人や子供も、銃を持たされて、戦場に引きずり出される。

 

全員が戦闘目的の奴隷なのだ。

 

「まだ目標の一割にも達していませんよ。 頑張らないと、このシェルターは全滅してしまいますよ」

 

煽っているかのような、ブレインの声。

 

また、戦いが始まる。

 

巨大生物と戦える武器があっても、此処にいる人々は素人なのだ。見る間に殺戮と暴虐の餌食になってしまう。

 

結局、ブレインが満足するまでに。

 

万を超える人が犠牲になった。

 

「よろしい。 では次の作戦が来るまで、繁殖と休養に励んでください。 不足している物資は提供します」

 

シェルターの周囲には。

 

無数のヘクトルやディロイ。四足までいる。

 

物資はコンテナに詰められているが。

 

食糧として用意されているものの中には。巨大生物の餌となって、タンパク質にまで分解された人肉も混じっているのだ。

 

逆らったら、シェルターごと焼き払われる。

 

だから、誰も文句を言うことはできない。

 

ブレインは、別のシェルターに移動。

 

「適切な数まで繁殖したようで、結構なことです。 これより、作戦を開始します」

 

悲鳴を上げる人々。

 

もはや、人類は。戦闘用家畜へと墜ちていた。

 

ふと、光景が切り替わる。

 

今度は、別の世界だ。

 

どういうわけか、EDFがフォーリナーを地球からたたき出した世界。私は銃を突きつけられ。手錠を掛けられて歩いている。

 

周りには、群衆。

 

「裏切り者だ!」

 

「何が英雄だ! 出来レースで敵と戦っていたくせに!」

 

「EDF本部は敵と通じていた! 全員殺せ!」

 

銃を持っているのは、EDFではない。

 

国連軍だ。

 

空を見上げる。

 

戦争が終わった後、EDFは国連軍によって解体された。元々フォーリナーとほとんど相打ちになるような形で、壊滅していたのだ。スポンサーとなる各国や、国連がイエスと言わなければ。再建など叶うはずもない。

 

その後は悲惨だった。

 

もっともらしい証拠がでっち上げられて。EDFの幹部は全員が処刑された。必死のゲリラ戦を生き延びたカーキソン元帥も。極東を守り抜いた日高大将も。その中には含まれていた。

 

弟も。

 

世界最強を噂された弟も。

 

群衆には、銃を向けなかった。

 

そして私は捕らえられて。今、公開処刑の場に連れて行かれている。

 

石が飛んできた。

 

投げたのは子供だ。頭に直撃した。

 

その場に倒れた私を、乱暴に引きずり起こす兵士達。

 

「さっさと立てよ、化け物」

 

「休んでるんじゃねえよ、英雄様」

 

散々暴力を振るわれて、私の体はすっかり弱り切っている。もう、抵抗する力も残っていない。

 

台に乗せられる。

 

どうやら、絞首刑では無く、銃殺刑のようだ。

 

私の罪が読み上げられていった。

 

フォーリナーと通じ、地球の大半を焼け野原にした元凶。悪魔の化身。死刑以外にはなし。

 

ああそうか。

 

やはり、こうなったか。

 

私は台の上にある柱にくくりつけられる。

 

普通猿ぐつわや目隠しがされるものなのだけれど。私の場合は、その必要もないと、判断されたようだった。

 

悪魔の化身だから。

 

殺して良い。

 

人間の理屈らしいと、私は苦笑した。

 

そのまま、無数の弾丸が、私の体に食い込む。だけれど、死にきれない。血を吐いてうつむく私を見て、皆が嘲笑う。

 

まだ生きてやがる。

 

さっさと死ねよ、見苦しい。

 

弟は、こんな罵声を浴びながら、死んだのだろうか。

 

そう思うと。

 

何だかとても悲しかった。

 

 

 

寮のカプセル内で目が覚める。

 

最悪の夢を見た。そしてその夢は、どちらもおそらく、将来ありうる光景だ。私が負けた場合と勝った場合。

 

他の未来は、あるのだろうか。

 

たとえば、私が人間になる未来。

 

自分が人間では無いことくらいは、私だって分かっている。生殖能力だってないし、何より下手をすると寿命でさえも。

 

地下の彼奴と融合したことで、それは更に顕著になった。

 

弟に戦闘能力で及ばないとしても。

 

おそらく存在としては、もう弟以上に、化け物となってしまっている。

 

カプセルから這い出して、シャワーを浴びる。もの凄く冷たい水を敢えて浴びて、頭をさっぱりさせようと思ったのだけれど、上手く行かない。

 

ぼんやりと、空を見上げる。

 

未来とはなんだろう。

 

むしろ頭が悪い方が、私は幸せだったのでは無いだろうか。戦いそのものは続ける。しかし、ブレインも指摘していたことは、事実だ。

 

私に未来なんてものはない。

 

敵に勝った所で、先に待っているのは迫害と粛正だけ。

 

生きるには、どうしたら良いのだろう。

 

シャワーから出て、フェンサースーツを着込んでいると、弟が来る。

 

「うなされていたようだな」

 

「珍しく悪夢を見た」

 

「将来のことか?」

 

「お見通しだな。 ろくでもない未来の夢を見たよ。 フォーリナーに戦闘奴隷にされた人間達の末路。 フォーリナーに勝った後、粛正される私とお前」

 

弟が、無言でハムエッグを作り始めた。

 

とはいっても、どちらも合成品だ。物資はある。だが、殆どは合成によって作られている。

 

それだけ、人工淡白の作成技術が上がっているのだ。

 

「フォーリナーにつこうなどとは思わんが。 確かにこのまま戦いを続けても、我々には二つの路しか無いな」

 

「少し考えたが、もう一つだけ路があるかも知れない」

 

「……聞こうか」

 

弟が口にしたのは。

 

確かに、第三の手段とも言えた。

 

しかしそれは。

 

口をつぐむ私に。弟は、ハムエッグを食べるよう進めた。

 

「俺も前から考えてはいた。 確かに、このまま敵に勝利しても、俺たちに待っているのは破滅の未来だけだ。 この方法なら、恐らくはそれを回避できる」

 

「そう、だな」

 

「すまんな。 俺は頭が悪いから、これくらいしか思いつかん」

 

「いや、それで充分だ。 それに……」

 

私は正直な所。

 

戦場が好きだし。それ以外の所で、生きようとは思わなかった。

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