地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋 作:dwwyakata@2024
こんな時に、それは考えてはならないことです。
連日の戦闘が続く中。
北海道の旭川基地から、緊急連絡が来た。
基地周辺に、八隻に達する新型輸送船が飛来。空軍には撃退する能力もなく、なすすべなく投下される巨大生物を見守るばかりだという。
大阪基地を壊滅させ。
福岡基地を追い込んだフォーリナーだ。苦戦を続けている北海道の基地にも、此処で大きな打撃を与えるつもりなのだろう。
支援部隊は例のごとくストームチームのみ。
近くまではヒドラを飛ばせるが。既に北陸も東北も、敵の手に落ちている。そういえば秀爺の息子達も、東北にあるシェルターで、防衛部隊になっているそうだ。
シェルターさえ喰い破られていなければ、生きているだろう。
今は、ただ北海道へ急ぐほか無い。
ヒドラで複雑な経路をたどりつつ、北海道へ。
東京基地にも散発的な攻撃があるが、それは留守居の部隊にどうにかしてもらうしかない。日高司令も、連日プロテウスで前線に出ている状況だ。ストームチームだけが過重労働をしているわけではないのである。
八時間ほどを掛けて、北海道に到着。
旭川基地の周辺をゆっくり廻っている新型輸送船を視認。巨大生物は既に完全に包囲を整えている。
「八隻のわりには、巨大生物が少ないですね」
黒沢が双眼鏡から顔を上げる。
続いてほのかが、意見を述べてくれた。
「敵に蜂がいるわ。 数は百五十ほど」
「厄介だな」
ドラゴンがいないだけマシではあるけれど。確かに、高空戦力がいることは、厄介極まりない。
旭川基地との通信は上手く行かない。
少し前に、ドラゴンがバイザーのネットワークを封じる物質を吐いていたが。恐らくはそれと同じ現象だろう。
周囲から、状況を観察。
旭川基地は、一旦敵との交戦をした後、籠城戦に切り替えたらしい。巨大生物は包囲した旭川基地を散発的に攻撃はしているが、現時点で陥落させるつもりは無い様子だ。おそらく、此方から援軍が出る事を、想定していると見て良いだろう。
どう戦況を切り替えてくる。
偵察に出ていた涼川が、面倒くさそうに言う。
「基地の周辺には、凶蟲と黒蟻がたんまりだぜ。 あれは基地と共同戦線を張らないと、駆除は難しいな」
「さて、問題は此処からどうするか、だが」
包囲突破の定石は、一点集中。
敵の一カ所を突き崩すことが基本となる。
だがフォーリナーは、今までの戦闘で、人類側の対処手段を学んできている筈。どうしてこの程度の戦力で、包囲を見せびらかしているのかが気になる。
やはり、戦闘経験を蓄積させるためとみるべきだろう。
だが、旭川基地がこのままでは危ないのも事実だ。
レーダーに反応。
味方だ。
一応警戒態勢を取る中、ジープで姿を見せたのは、レンジャーの一部隊。
敬礼してきたのは、ナナコと同じくらいの年格好の子供。間違いなく、強化クローンの戦士だろう。
「ストームチームですね」
「そうだ。 お前達は」
「旭川基地所属の、レンジャー4です。 既に通信が不能になっている状況ですので、直接来ました」
まず、現状について聞かされる。
現在旭川基地は、200名ほどの戦闘要員を有しているが、その内の半数以上が負傷者。実際に戦えるのは、80名程度だという。
更にビークル類もかなり損傷が酷く、特にベガルタは連戦で殆どが破壊されてしまっているそうだ。
まだ旭川基地は、戦力を残している方だが。
それでも、疲弊は此処まで酷くなっている、という事である。他の地区の基地が、どのような有様かは、正直想像もしたくない。
「お前達は、どうやって来た」
「緊急脱出用の地下通路があります。 其処から来ました」
「どうする?」
弟に判断を促す。
基地と連携して、内外から包囲を突き崩すか。
それとも、基地と合流して、敵を撃退するか。
正直な話、敵が包囲から、一気にストームへの攻撃に切り替えてきた場合、かなり厳しい戦況になる。
敵の数は千を超えている。
更に、膨大な増援を投入できることが、ほぼ確実だ。
それならば、いっそ基地を捨てて、東京基地に合流するという選択肢もあるが。此処は幾つかの重要な工場があり、転送装置が機能しなくなる可能性がある現状。安易に放棄も出来ない。
弟が決断する。
「よし、基地の戦力と合流するぞ。 ベガルタはその通路を通れるか」
「問題ありません」
「総員急げ」
すぐに行動開始。
相手に蜂がいる以上、ヘリは持って行けない。だから、谷山は不平満々でギガンテスに乗り込む。
このギガンテスにしても最新型のものなのだが。
谷山は、やはりヘリの方が好きなようだった。
民家の駐車場にしか思えない場所を、レンジャー4の兵士達が操作すると、地下へ通じる道路が現れる。
全員で入り込み、急ぐ。
ベガルタはぎりぎり通ることが出来た。これはおそらく、大戦開始前から用意されていた通路なのだろう。
ただし、通路には明かりがなく。
足下が不安定だ。
「周辺のシェルターはどうなっている」
「東京基地がかなり引き受けてくれたので、状態は改善されています。 ただし、それでも、不満を出す人は多いようです」
「そうか、そうだろうな」
薄暗い通路だ。
会話は、わんわんと反響する。
意外にすぐ、通路は終わった。旭川基地の内部に出る。
其処は、想像よりも、遙かに酷い状態だった。
外壁はほぼ半壊状態。基地内の構造物は、あらかたやられてしまっている。倉庫や滑走路も潰されていて、とても戦える状況には見えない。
基地司令官が来る。
秀爺と知り合いらしい。軽く敬礼を交わした後、髭もじゃの老人である司令官は、面白くも無さそうに言った。
「支援感謝する、ストームチーム」
「さっそくですが、この状況は」
「少し前に青ヘクトルとディロイに攻撃を受けましてな。 要塞砲でどうにか撃退はしましたが、戦力の過半を失いました」
どうしてそれを先に言わない。
私はレンジャー4の戦士を見たが。彼は申し訳なさそうにうつむくばかりだった。
そうか、そういうことか。
この司令官。
ストームチームに、敵を全て押しつけるつもりか。
ざっと見るが、基地内の戦力は八十名も残っているとは思えない。活用できそうなのは、壊れかけの外壁と、かろうじて生きている人員くらい。
老司令官はとても戦えそうには見えない。
「戦闘要員を集めて貰えますか」
「お前達、集まれ」
唖然とする。
司令官が手を叩いて集まってきたのは、殆どが子供ばかり。つまり強化クローンしか、兵士が生き延びていないと言う事か。
確か、旭川基地には、そこそこの規模の強化クローン生産設備があったはず。
まさかとは思うが。
「強化クローンにのみ戦わせているのですか」
「そうなる」
「貴方は……」
「今は人間が生き延びることが最重要案件だ。 それなら、人間以外の存在を、どれだけ活用するかが重要だろう?」
とっさに手が出そうになったが、弟に制止された。
EDF内にも、こういう輩がいる事は分かっている。だが、それでも、である。戦力としては、カウントしなければならないのだ。
他のメンバーも、かなり腹を立てているようだ。
涼川は香坂夫妻と連れだって、壁の上に。ジョンソンはエミリーを手招きすると、別方向へ。
この男と、一緒にいたくは無いのだろう。
オンリー回線を、弟が開いてきた。
「姉貴、状況が悪い。 下手をすると、勝った後も、背中から撃たれかねん」
「どうする」
「まずは敵を退ける。 だが、補給も支援も期待出来そうにないな」
いっそ、此処を見捨てるか。
いや、そういうわけにはいかない。
旭川は重要な戦略拠点の一つ。そして、この有様を見て、状況が間違っている事が理解できた。
敵は包囲して、殲滅するつもりでは無い。
充分に痛めつけた旭川基地を、押さえ込むだけのつもりだったのだ。
勿論ストームが横やりを入れてくることも想定していたのだろう。だからこんな過剰な戦力を準備していた。
あわよくば、戦闘経験を、更に積み重ねるために。
無能な味方に、有能な敵。
両側に敵を作ると、流石にストームでも厳しい。
外壁の上に出る。
辺りに散らばっているのは、セントリーガンの残骸。谷山が司令官に、物資の供給を求めているが。司令官は拒否したようだった。
「守りに必要だって、今がその時だろうに」
珍しく谷山が激高している。
気持ちは分からないでもない。私だって、同じ状況になったら、腹を立てることだろう。
弟が外壁の周囲を見回った後、作戦を立てる。
かなり危険な作戦だが、他に方法は無い。