地球防衛軍4二次創作 2025絶滅螺旋   作:dwwyakata@2024

99 / 120
守るに値しない者は……

こんな時に、それは考えてはならないことです。


3、回転木馬

連日の戦闘が続く中。

 

北海道の旭川基地から、緊急連絡が来た。

 

基地周辺に、八隻に達する新型輸送船が飛来。空軍には撃退する能力もなく、なすすべなく投下される巨大生物を見守るばかりだという。

 

大阪基地を壊滅させ。

 

福岡基地を追い込んだフォーリナーだ。苦戦を続けている北海道の基地にも、此処で大きな打撃を与えるつもりなのだろう。

 

支援部隊は例のごとくストームチームのみ。

 

近くまではヒドラを飛ばせるが。既に北陸も東北も、敵の手に落ちている。そういえば秀爺の息子達も、東北にあるシェルターで、防衛部隊になっているそうだ。

 

シェルターさえ喰い破られていなければ、生きているだろう。

 

今は、ただ北海道へ急ぐほか無い。

 

ヒドラで複雑な経路をたどりつつ、北海道へ。

 

東京基地にも散発的な攻撃があるが、それは留守居の部隊にどうにかしてもらうしかない。日高司令も、連日プロテウスで前線に出ている状況だ。ストームチームだけが過重労働をしているわけではないのである。

 

八時間ほどを掛けて、北海道に到着。

 

旭川基地の周辺をゆっくり廻っている新型輸送船を視認。巨大生物は既に完全に包囲を整えている。

 

「八隻のわりには、巨大生物が少ないですね」

 

黒沢が双眼鏡から顔を上げる。

 

続いてほのかが、意見を述べてくれた。

 

「敵に蜂がいるわ。 数は百五十ほど」

 

「厄介だな」

 

ドラゴンがいないだけマシではあるけれど。確かに、高空戦力がいることは、厄介極まりない。

 

旭川基地との通信は上手く行かない。

 

少し前に、ドラゴンがバイザーのネットワークを封じる物質を吐いていたが。恐らくはそれと同じ現象だろう。

 

周囲から、状況を観察。

 

旭川基地は、一旦敵との交戦をした後、籠城戦に切り替えたらしい。巨大生物は包囲した旭川基地を散発的に攻撃はしているが、現時点で陥落させるつもりは無い様子だ。おそらく、此方から援軍が出る事を、想定していると見て良いだろう。

 

どう戦況を切り替えてくる。

 

偵察に出ていた涼川が、面倒くさそうに言う。

 

「基地の周辺には、凶蟲と黒蟻がたんまりだぜ。 あれは基地と共同戦線を張らないと、駆除は難しいな」

 

「さて、問題は此処からどうするか、だが」

 

包囲突破の定石は、一点集中。

 

敵の一カ所を突き崩すことが基本となる。

 

だがフォーリナーは、今までの戦闘で、人類側の対処手段を学んできている筈。どうしてこの程度の戦力で、包囲を見せびらかしているのかが気になる。

 

やはり、戦闘経験を蓄積させるためとみるべきだろう。

 

だが、旭川基地がこのままでは危ないのも事実だ。

 

レーダーに反応。

 

味方だ。

 

一応警戒態勢を取る中、ジープで姿を見せたのは、レンジャーの一部隊。

 

敬礼してきたのは、ナナコと同じくらいの年格好の子供。間違いなく、強化クローンの戦士だろう。

 

「ストームチームですね」

 

「そうだ。 お前達は」

 

「旭川基地所属の、レンジャー4です。 既に通信が不能になっている状況ですので、直接来ました」

 

まず、現状について聞かされる。

 

現在旭川基地は、200名ほどの戦闘要員を有しているが、その内の半数以上が負傷者。実際に戦えるのは、80名程度だという。

 

更にビークル類もかなり損傷が酷く、特にベガルタは連戦で殆どが破壊されてしまっているそうだ。

 

まだ旭川基地は、戦力を残している方だが。

 

それでも、疲弊は此処まで酷くなっている、という事である。他の地区の基地が、どのような有様かは、正直想像もしたくない。

 

「お前達は、どうやって来た」

 

「緊急脱出用の地下通路があります。 其処から来ました」

 

「どうする?」

 

弟に判断を促す。

 

基地と連携して、内外から包囲を突き崩すか。

 

それとも、基地と合流して、敵を撃退するか。

 

正直な話、敵が包囲から、一気にストームへの攻撃に切り替えてきた場合、かなり厳しい戦況になる。

 

敵の数は千を超えている。

 

更に、膨大な増援を投入できることが、ほぼ確実だ。

 

それならば、いっそ基地を捨てて、東京基地に合流するという選択肢もあるが。此処は幾つかの重要な工場があり、転送装置が機能しなくなる可能性がある現状。安易に放棄も出来ない。

 

弟が決断する。

 

「よし、基地の戦力と合流するぞ。 ベガルタはその通路を通れるか」

 

「問題ありません」

 

「総員急げ」

 

すぐに行動開始。

 

相手に蜂がいる以上、ヘリは持って行けない。だから、谷山は不平満々でギガンテスに乗り込む。

 

このギガンテスにしても最新型のものなのだが。

 

谷山は、やはりヘリの方が好きなようだった。

 

民家の駐車場にしか思えない場所を、レンジャー4の兵士達が操作すると、地下へ通じる道路が現れる。

 

全員で入り込み、急ぐ。

 

ベガルタはぎりぎり通ることが出来た。これはおそらく、大戦開始前から用意されていた通路なのだろう。

 

ただし、通路には明かりがなく。

 

足下が不安定だ。

 

「周辺のシェルターはどうなっている」

 

「東京基地がかなり引き受けてくれたので、状態は改善されています。 ただし、それでも、不満を出す人は多いようです」

 

「そうか、そうだろうな」

 

薄暗い通路だ。

 

会話は、わんわんと反響する。

 

意外にすぐ、通路は終わった。旭川基地の内部に出る。

 

其処は、想像よりも、遙かに酷い状態だった。

 

外壁はほぼ半壊状態。基地内の構造物は、あらかたやられてしまっている。倉庫や滑走路も潰されていて、とても戦える状況には見えない。

 

基地司令官が来る。

 

秀爺と知り合いらしい。軽く敬礼を交わした後、髭もじゃの老人である司令官は、面白くも無さそうに言った。

 

「支援感謝する、ストームチーム」

 

「さっそくですが、この状況は」

 

「少し前に青ヘクトルとディロイに攻撃を受けましてな。 要塞砲でどうにか撃退はしましたが、戦力の過半を失いました」

 

どうしてそれを先に言わない。

 

私はレンジャー4の戦士を見たが。彼は申し訳なさそうにうつむくばかりだった。

 

そうか、そういうことか。

 

この司令官。

 

ストームチームに、敵を全て押しつけるつもりか。

 

ざっと見るが、基地内の戦力は八十名も残っているとは思えない。活用できそうなのは、壊れかけの外壁と、かろうじて生きている人員くらい。

 

老司令官はとても戦えそうには見えない。

 

「戦闘要員を集めて貰えますか」

 

「お前達、集まれ」

 

唖然とする。

 

司令官が手を叩いて集まってきたのは、殆どが子供ばかり。つまり強化クローンしか、兵士が生き延びていないと言う事か。

 

確か、旭川基地には、そこそこの規模の強化クローン生産設備があったはず。

 

まさかとは思うが。

 

「強化クローンにのみ戦わせているのですか」

 

「そうなる」

 

「貴方は……」

 

「今は人間が生き延びることが最重要案件だ。 それなら、人間以外の存在を、どれだけ活用するかが重要だろう?」

 

とっさに手が出そうになったが、弟に制止された。

 

EDF内にも、こういう輩がいる事は分かっている。だが、それでも、である。戦力としては、カウントしなければならないのだ。

 

他のメンバーも、かなり腹を立てているようだ。

 

涼川は香坂夫妻と連れだって、壁の上に。ジョンソンはエミリーを手招きすると、別方向へ。

 

この男と、一緒にいたくは無いのだろう。

 

オンリー回線を、弟が開いてきた。

 

「姉貴、状況が悪い。 下手をすると、勝った後も、背中から撃たれかねん」

 

「どうする」

 

「まずは敵を退ける。 だが、補給も支援も期待出来そうにないな」

 

いっそ、此処を見捨てるか。

 

いや、そういうわけにはいかない。

 

旭川は重要な戦略拠点の一つ。そして、この有様を見て、状況が間違っている事が理解できた。

 

敵は包囲して、殲滅するつもりでは無い。

 

充分に痛めつけた旭川基地を、押さえ込むだけのつもりだったのだ。

 

勿論ストームが横やりを入れてくることも想定していたのだろう。だからこんな過剰な戦力を準備していた。

 

あわよくば、戦闘経験を、更に積み重ねるために。

 

無能な味方に、有能な敵。

 

両側に敵を作ると、流石にストームでも厳しい。

 

外壁の上に出る。

 

辺りに散らばっているのは、セントリーガンの残骸。谷山が司令官に、物資の供給を求めているが。司令官は拒否したようだった。

 

「守りに必要だって、今がその時だろうに」

 

珍しく谷山が激高している。

 

気持ちは分からないでもない。私だって、同じ状況になったら、腹を立てることだろう。

 

弟が外壁の周囲を見回った後、作戦を立てる。

 

かなり危険な作戦だが、他に方法は無い。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。