*1しゅうかんごには ころしあいが はじまるよ。
夜の帳が下りたミレニアムの何処か片隅の廃墟、そんな場所で、花は告げた。アパートのようなマンションのような建物の全ての階層には穴が空いており、室内に月明かりを導いている。
サワサワと、風で雑草が擦れる音がする。月明かりはそれを照らしている。
横縞のシャツを着たニンゲンは、黙って瓦礫の上に座っている。何を考えているのか分からない不気味な笑みを浮かべて。
*にしても あの センセイって ヤツ。
*ほんとうに バカな ヤツだよね。
ニンゲンは、同意も不同意もしないで座っている。風が唸っている。
フラウィは心なしか怯えているように見える──怯える心があるのかは定かではないが。
*ねぇ……。
*なんで ボクは こんなところに いるの?
*はいきょの ことじゃ なくてさ。
*この せかいに いることだよ。
疑問を呈するフラウィ。言われてみれば当然だ──まずキャラが居るという時点で可笑しいのだが。
*顕現。
*再現 とも言う。
まるで何を言っているのか分からない、と言った風なフラウィの顔を見て、少し説明を付け足した。
*最初に 殺した ニンゲン。
*アレの タマシイを 使った。
*カケラしか 拾えなかったが。
なるほど、ニンゲンのタマシイはモンスターのタマシイよりも遥かに強い。それのカケラで作られた存在というわけだ(ちょうどモンスターのタマシイと同じような性質だったのだろう)。いつ作ったのかは分からないが。
別にアズリエルのタマシイから作られた訳でもないので、タマシイを集めてもアズリエルには戻らないのだろう。完全な道具となった訳だ。
それを察したのかは知らないが、フラウィの体(この場合は茎だ)が少し縮こまった気がする。
*殺し合い。
確かめる様にニンゲンは言う。そしてまた確かめる様に手を開閉しながら言う。
*ナイフは どこだ。
独り言なのか、フラウィに問い掛けたのか。どちらにせよ空気が重いので、フラウィは怖がってこう言うだろう。
*……。
*とってこようか?
■
にゅっ、にゅっという効果音が正しいのかどうか分からないが、今、黄色い花はシャーレ内部を隈なく探し回って探し回っている(側から見れば意味のわからない文面だが、今これを読んでいる君たちなら分かるだろう)。
ただ、フラウィは半分あの場から逃れるための「取ってこようか」だったので、どこにあるかは微塵も知らない。もう既にヴァルキューレに渡っているかも知れない──そちらの方が可能性が高い──どちらにせよ、フラウィは「取ってこようか」と言っていただろう。
しかし、見当たらない。キッチンだの洗面台だのと探したが、無い。ナイフではなく包丁はあるのだが。
だが、フラウィは諦めない。このままノコノコ帰ったら──まぁ、花弁が少なくなっているかも知れない。
■
*やっと みつけた……。
目を半開きにし(所謂ジト目だ)、独り言を言うフラウィ。目の前にあるのはナイフ──ではなく、大きな金庫だった。*1
ここにポツンとあるのか? 流石に厳重すぎる気がするが……。
フラウィに扉という概念は存在しないので、一度潜って金庫の中に入った。
その瞬間。
数々の砲台がこちらを向いた。それには、メイド軍団と戦った時、街で見たマークがあった。ただ設置されたものではなく、壁、天井──至る所に埋まって銃口がこちらを向いている。
*なんだ コレ。
フラウィが疑問を口にすると、待っていたかのように音声が流れ出した。
『これは、ミレニアムサイエンススクールエンジニア部作、特殊牢屋だよ』
フラウィが怪訝な顔をしていると、声は言う。
*あ〜……。
*どういう ろうやだよ。
『雷ちゃんの発明で使った砲台──椅子の技術、ミレニアムに元からある牢屋を 組み合わせただけの簡単な牢屋だよ。
*じばくきのう?
*ぶっそうだね。
『ロマンだよ』
多分こいつはダメなやつだ、そう悟ったフラウィは更に質問する。
*キミは だれ?
『私? 私はミレニアムのマイスター、白石ウタハだよ。そして、君は最近シャーレで育てられているフラウィ君だね?』
*だれが そだてられてるって?
『ジョークだよ、ジョーク。それで、君はこの部屋に迷い込んだんだろう? なら、出て行った方がいいよ』
*ボクは ナイフを探しにきたんだ。
*だって アレは きけんだからね。
*こわしてやろう とおもったんだけど……。
嘘をついてナイフの在処を探ろうとする。まだ問題は起こしていないので、相手から敵意を向けられていないはずだ。快く教えてくれるだろう。
そう思ったのだが。
『う〜ん、アレか……。確か、今はヴァルキューレで押収品として保管されてたはず。先生の許可無しでは手に取ることもできない、と聞いたよ。鉄の棒も同じ感じだから、犯人の使っていた武器は諦めた方がいい』
ま、そりゃそうか。人殺した凶器がキッチンなんかに置いてある訳ないよな。ボクがどうにかしてた。
『しかし、何であんな物で人を傷つける事が出来たのだろう。先生ならまだしも、ナイフで刺そうとしたらナイフが折れる筈なんだけどね』
『おっと、今のは独り言だよ、すまないね』
とりあえず、ヴァルキューレ──確か、ケイサツって言ってたな──にナイフがあるらしい。行ってもどうせ無駄だろうから、ここは素直に帰ることにした。少し嫌だが。
*じゃ ボクはこれで
『じゃあね、次会う時を楽しみにしているよ』
そして、地面に潜った。
*ふむ……。
そう呟く。
ナイフの奪還は困難だと聞いた時、妥当だろうと思った。
*私が 行くか……。
ヴァルキューレがどこにあるのかは知らないが、この辺りにいる奴らに聞けば分かるだろう。
そんな事を、都市部に着くまでは考えていた。
■
*……。
夜が薄まり、空が段々と白み始めてきた頃。人一人いない街を目にした時は、流石に肩を落としたものだ。自分の起こした騒動のせいなので、自業自得なのだが。
鍵のかかっていない家があったり、その辺りにポケットティッシュや帽子などが落ちていたりする事を考えると、よほど急いで去って行ったのだろう──この街に住む人々全員が。
*全く。
*面倒臭いな。
何か手掛かりが欲しい。
なので、ミレニアムサイエンススクールに行くことにした。
■
ミレニアムサイエンススクールの窓からは、灯りは全て消えていた。
フリスクが苦戦していた校門を何とかしてよじ登って地面に降りると、警報が鳴り響いた。
何処か頭上からガチャガチャと音がする。何事かと思って上を見上げると、いくつかの砲台のようなものがこちらを見下ろしていた。
前へ転がり込むと、元いた場所には焼けこげた跡があった。
*レーザーか……。
ホットランドで見たものとは全く違う、殺すためのレーザーだ。こんなものを普段使いしているとは思いたく無いので、ここまで来る事を見越して改造した、または入れ替えたと考えるのが妥当だろう。
幸い、レーザーの再発射まで時間があるようなので、そのまま登校口まで走って行き、無事に校内に入った。
■
薄暗い校舎の中を歩いていくと、様々な部屋があった。モニターがある部屋、椅子と机が並べられてある部屋、いくつかのゲームカセットやハード、コントローラーが散乱している部屋、メイド服が散らばっている部屋。暗くてよく見えないが、うっすらと見えるその影たちを横目で見ながら歩いていく。
何処かに手がかりは無いか、そう暗い廊下を彷徨っている様は、ホラーゲームの敵のようだ。誰かが痕跡を残していないか、誰か居ないか──そうやって一部屋一部屋確認していく。
そして、尻尾を掴んだ。
「ひっ……誰か来た……!?」
一人、何処かで声を出した。
周りを見渡すと、不自然に開けられた教室のドアがあった。中に入り耳をすませば、息を吸い、息を吐いたりする音がハッキリと聞こえる。場所は、教室の奥━━掃除用ロッカー。慌てて入ったのだろう。
周りを見渡しても、残念ながら武器になり得そうな物はない。首を絞めるしかないか。
てくてく歩いて行く。
「はぁっ、はぁっ、はっ、はっ」
ロッカーの中の獲物は、より一層息遣いが荒くなっている。過呼吸になってしまいそうな勢いだ。
ゆっくり、ゆっくりとロッカーの扉を開けた。
するとそこには──
「ひっ……あっ……ああっ……!」
若干赤い髪を額が見えるように流した、ブカブカの上着を着た少女が一人。それは顔をどんどん青白くさせながら、こちらを標準の合わない目で見ている。
「こっ……来ないで……!」
要求を無視して腕を伸ばし、手で相手の首を絞める。
前は
「あっ……がっ……くるし……っ……だれか……たすけ……!」
バタバタと暴れ回るので、ロッカーが金属製の音を周囲に響かせる。その耳障りな音は、次第に鳴らなくなっていく。
「やっ……ぅ……うぁ……がっ……」
もうそろそろで苦しまなくなる頃だ。やっとEXPが手に入ると思うと、気分が上がる。
が、現実はそう甘くない。
「ドットを打つように緻密に……!」
直後、背後から幾つかの弾丸が飛んできた。避けなければ殺されるので、回避する。赤い髪の少女の首から手が離れる。その代わり、いくつか弾丸が当たったが。
その直後、緑色が基調の猫耳をした少女は、赤髪の少女の元へ駆け寄っていった。
「ユズちゃん! 大丈夫!?」
「わ……たし……は……だい……」
ユズと呼ばれた赤髪の少女はそこまで言うと倒れ込み、緑の少女に抱きかかえられた。
緑の少女は、こちらを睨んでいる。すぐに、誰かに指示を出した。
「アリスちゃん、今!」
直後飛んできた青白い光線。それは、私の腕を軽々と葬った。
HP 9/64
「アリス、やりました! 魔王に大ダメージです!」
「お姉ちゃん、このまま戦う!? ユウカたちの仇を討つなら今だよ!」
「もっちろん! 行くよ〜!」
お姉ちゃんと呼ばれた桃色の少女は、こちらに向けて銃を乱射する。今銃弾に当たると非常に不味いので死に物狂いで回避する。セーブはしていないので、死ぬとかなり前から復活する━━つまりは、戻るのが面倒くさいのだ。
しかも、今から戦って相手を全員殺す様な事も出来ない。武器が無いからだ。
武器さえあれば別なのだが。
*フラウィ。
*……何?
*ナイフを よこせ。
*でも あれは……。
*いや わかったよ。
*だから ころさないで……。
そう言うと、フラウィは何処かに去って行き、代わりに少女たちの話し声が聞こえ始めた。
「今の花って……」
「アリス知ってます! あれはシャーレの二人目のマスコットキャラクターです!」
「うええ!? でもさっきアイツと喋ってたよ!?」
「先生と同じで弱いので、従うしかないらしいです!」
アリス、という私の腕を奪った少女は、フラウィ(と先生を)煽り散らかしている━━自覚はないらしいが。
少女たちの話は終わったらしく、再びこちらに向けて銃口を向けた。
四面楚歌。絶体絶命。あとは……。
「もう……これ以上人を傷つけないで!」
ピンクの銃が火を吹いた。避ける術はない━━いや、ある。
グルンと前転の要領で開けっ放しのロッカーに近づき、入った。
ガガガガガガ、と鉄を鉄で削る音が聞こえる。
命の危機、という事を事細かに説明しているような音は、暫くすると声を上げるのを止めた。
逃げれるか?
出ても、恐らく緑色の方に殺される。
出なかったら、アリスという少女に殺される。
……ロードは出来る。
多少面倒だが、やるしかない。
私は、ロッカーのドアを蹴り、開けた。
数秒後、視界は黒に染まった。
GAME OVER
■
目を覚ますと、そこは廃墟だった。
フラウィがいない事と、最後にセーブした日は
これから、連邦生徒会が会議を始める。
会議終了後、一人一人別れる時を狙って殺せば良いのではないか。
いや、まずは武器だ。
気味悪い笑みを浮かべたニンゲンは、武器を拾いに廃墟から旅立った。
*ケツイ。
Chara LV12
最初にニンゲンを殺すのは誰か?
と言う問いに全く悩まずノリでゲーム部にしました。あざした
あなた方が望むのは?
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ハッピーエンド
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バッドエンド