先生が帰って、何となく寂しさが蘇って来た頃。
何となく、視界に既視感を覚えた。
何となく、とかそういったものでは無いかもしれない。
「ミドリ……?」
「何、お姉ちゃん」
「なんかさ、デジャブ感じない?」
「それって人それぞれ起こるヤツでしょ。私に聞かないでよ、もう。それより、シナリオ書けた?」
「し、シナリオ!? なんで!? 緊急事態だよ!?」
「……ユウカに、良いゲーム作るって言ったの」
「……そっか。なら、任せて〜! すぐに終わらせるから!」
今の会話も、
私は覚えている。
これから出すシナリオは、ミドリに却下される。
さっきあそこを通った人は、10秒後派手に転ぶ。
「あべぇっ!?」
ほら、やっぱり!!
もしかして……。
「未来予知できるようになった……!?」
「バカ言わないで。早くシナリオ書いてよ」
ふふん、こんなこと出来たら──何でも出来ちゃう!
「未来を見た経験を活かして──できた!」
「速っ」
「みてみて! ほら、どう!?」
「う〜ん……。なんか、ここぐちゃぐちゃじゃない? 時系列というか、もっと整理して……」
あうう、これから出すシナリオは却下されると言うことを忘れていた……。
ま、いいや。
次のやつは行けるって分かってるし!
「ほら! どう!? 完璧じゃない?」
「これは……。すごい! お姉ちゃんが書いたの? ほんとに?」
「そう! 私が書いたの!」
やっぱり!
この力、すごい!
■
あれ……?
この力があれば、あいつ──ユウカの仇、討てるんじゃ!?
それに気づいたのは、未来予知に気づいて数日した頃。
この無敵の力を使って、私は沢山人を助けて、色々してきた。
だから、あいつの行動も全て読めるのでは?
考え出したら、行けそうな気がしてきた。
「だからさ、私、行こうと思うの」
「確かに、お姉ちゃんは最近凄かったけど……」
ミドリは、首を傾げる。
その隙に、ユズも言う。
「でも、相手は殺人鬼だよ……? も、もしモモイが、し、死んじゃったらどうするの……?」
「う、それは……」
「アリスも、モモイを行かせることは出来ません!」
「で、でも! 私、分かってるの! あいつの居場所! ユウカの仇を討つなら今だと思う!」
みんなは頷かない。
何で? ユウカの事、何とも思ってないの?
ノア先輩のこと、何とも思ってないの?
「わ……私は行くからね!?」
「お姉ちゃんに行けるわけないでしょ!? あそこ、もう立入禁止区域だよ!?」
「でも!」
「ふ、二人とも……。落ち着いて……!」
私とミドリは、睨み合ったまま動かない。
それを見ているユズとアリスは、慌てた様子でこっちを見ている。
「皆んなは……ユウカのこと、何とも思ってないの!? ノア先輩のことも!」
「仇を討ちたいに決まってるでしょ!?」
「じゃあ、行こうよ!」
「……だめ。それは出来ない」
「何で……」
ミドリは、涙で潤んだ目でこっちを見て叫んだ。
「お姉ちゃんに、死んでほしくないのっ!!!」
「……っ」
でも。
私は行かなきゃ。
ユウカのこと。ノア先輩のこと。
仇を討たなきゃ意味がない。
この力は、そのためにある。
「でも、私は行くから」
「っ、何で!?」
「仇を討つため。それで十分でしょ?」
銃を担ぎ、財布を掴む。
もう何も分からなくなるくらい走った。
目の前には、電車があった。
今、ここは知らない景色だ。
既視感を微塵も覚えない。
これに乗ったら、私はどうなるのだろう。
でも、戻るわけには行かない。というか、戻れない。
じゃあ、乗るしかない。
電車の中に、人はいない。
車輪が動く音と、私の呼吸しか鳴っていない。
──一人なんだね。
──今の所。
自問自答して、気分を落ち着かせる。
すぐに電車は動く。
──
──いいよ。
ユウカの仇を討つんだ。
私が。
■
電車は駅に停まる。
ホームに降りる。温度は、車内より少し低い。
伽藍堂の駅。空気が私を拒絶しているようだ。
──ケツイはした?
──もちろん。
『ケツイがみなぎった』
淡々と、足を動かしていく。
私の生徒証じゃ通れないゲートは撃って壊した。
──これじゃ、もう悪者だよね。
答える声は無い。
溜め息を一つ。
地面を見下ろし歩いていくと、見慣れた道に嵌る。
見上げると、親の顔より見た校門があった。
鍵のかかっているところを撃ち、無理やり開ける。煙が上がっている。
レーザーを撃ってくるロボを撃ち壊し、歩いていく。
──こんな光景、予知してないんだけど?
私が見た景色は、アリスがケイのキーホルダーを忘れたからみんなで乗り込んで。
バラバラになって探そうってなって。
ユズが殺人鬼に見つかって。
それをみんなで倒して。
──今回は、そんなのないよ。
分かってる。
「やっほ、久しぶり?」
殺人鬼は、あからさまに嫌な顔をしてこっちを見た。
殺人鬼の近くには、大量のパンフレットのような──見たことがある、キヴォトスの地図だ。
「どこ行こうとしてたの?」
殺人鬼はその辺の手すりを折って剣みたいにした物を持ってこっちに向かって来た。
銃を乱射すると、相手は華麗な身のこなしでそれを避けた。
殺人鬼はそのまま私に近づいて剣を振る。
私のタマシイみたいなものは、それを避けようとする。
体はその動きに従う。
──すごい。一発も喰らってない。
避けながらリロードし、攻撃の準備を始める。
「こっちのターンだよ!」
相手に猛接近し、銃口を殺人鬼の額に突きつけた。
「終わりっ!」
全弾発射すると、殺人鬼の頭は弾き飛んだ。
脳と血液と頭蓋骨の破片が私の服に飛んできた。
「これで、終わり……」
──大したことなかったなぁ。
──本当に?
気づいたら、私は駅のホームにいた。
■
「やっほ、久しぶり?」
殺人鬼は、あからさまに嫌な顔をしてこっちを見た。
殺人鬼の近くには、大量のパンフレットのような──見たことがある、キヴォトスの地図だ。
「どこ行こうとしてたの?」
殺人鬼はその辺の手すりを折って剣みたいにした物を持ってこっちに向かって来た。
銃を乱射すると、相手は華麗な身のこなしでそれを避けた。
殺人鬼はそのまま私に近づいて剣を振る。
私のタマシイみたいなものは、それを避けようとする。
体はその動きに従う。
──すごい。一発も喰らってない。
避けながらリロードし、攻撃の準備を始める。
「こっちのターンだよ!」
相手に猛接近し、銃口を殺人鬼の額に突きつけた。
「終わりっ!」
全弾発射すると、殺人鬼の頭は弾き飛んだ。
脳と血液と頭蓋骨の破片が私の服に飛んできた。
「これで、終わり……」
──大したことなかったなぁ。
──本当に?
気づいたら、私は駅のホームにいた。
■
……何これ?
殺したよね?
何で私、駅にいるの?
……ああ、なんだ。
そういうこと。
クソゲーだ。
クソみたいなシナリオ。
主人公が勝つだけのゲーム。
この場合、主人公はあの殺人鬼。
テイルズ・サガ・クロニクルとタメはれるかもね。
ゲーム批判するなんて、私らしくないな。
なんか、気持ち悪くなってきた。
一回吐いて、ホームを汚す。
じゃあ、最後の戦い、しに行こう。
■
「やっほ、久しぶり?」
殺人鬼は、あからさまに嫌な顔をしてこっちを見た。何回も見たことある顔。
殺人鬼の近くには、大量のパンフレットのような──見たことがある、キヴォトスの地図だ。
「どこ行こうとしてたの?」
殺人鬼はその辺の手すりを折って剣みたいにした物を持ってこっちに向かって来た。
銃を乱射すると、相手は華麗な身のこなしでそれを避けた。
殺人鬼はそのまま私に近づいて剣を振る。
私のタマシイみたいなものは、それを避けようとする。
体はその動きに従う。
──すごい。一発も喰らってない。
──すごい。私、ずっと同じ動きしてる。
避けながらリロードし、攻撃の準備を始める。
「こっちのターンだよ!」
相手に猛接近し、銃口を殺人鬼の額に突きつけた。
そんなのは、もう相手には知られていて。
「あづっ……!」
銃を支えていた左腕に、剣が突き刺さる。
ユウカも、おんなじくらいの痛みを負ったのだろうか?
そんなの、わかるわけないか、バカだな。
「あぐっ」
「うあっ」
「うっ」
あははは。
こんなクソゲーに生きてた自分がバカみたい。
最後くらい、笑わせてよ。
私って、本当に──
──バカ。
迫る血塗れの凶器を捉えながら、最後の最初で最後の薄ら笑いを浮かべた。
あ、あと。
死ぬ瞬間の幸福度が高いって、嘘なんだね。
ミドリたちと居た時の方が、楽しかったもん。
死にたくないよ。
「お姉ちゃん」
「お姉ちゃん」
「お姉ちゃん」
「お姉ちゃん」
目の前に横たわっているモモイ──もとい、肉塊。
それに話しかける。
「わ、わたし」
「お姉ちゃん」
「私……!」
大粒の涙がポロポロと流れ始める。
流れ終わった血と涙が混ざり合う。
混ざって混ざって、一緒になる。
「お姉ちゃん」
「これ、持っていくね」
ミドリは、モモイの銃を取った。
血に塗れたそれを大事そうに抱えて言った。
「うん」
「ありがとう、お姉ちゃん」
「あはは、そうだね」
「それは、ちょっと……」
ミドリは、どこを見ているのか分からない虚な目で独りで会話している。
まるで、姉と話しているかのように。
「じゃあ、私が仇討つよ」
「お姉ちゃんの分も、ユウカの分も、ノア先輩の分も」
「終わったら、褒めてね?」
うん、先生より生徒の方がいいわ
あなた方が望むのは?
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ハッピーエンド
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バッドエンド