許せサスケ……。
「”モモイとミドリが、行方不明……!?”」
徹夜して、仕事がようやっとひと段落ついた時。
アリスからかかってきた電話は、まさに寝耳に水だった。
「”いつ二人が行っちゃったか、分かる?”」
『ひぐっ、ぐずっ……。えっと……。昨日の、お昼、に、モモイが出ていっちゃっで……。その次に、ミドリもでず……』
泣いているアリスの言葉を聞き取り、近くに落ちていたメモ帳を取り、胸ポケットからペンを出す。聞いたことを全てメモする。
『その頃、モモイはすごくて……。未来が見えていて、それで、ユウカの仇を取るっていって……。それで……』
「”大丈夫。無理に話さなくていいからね”」
『うう……うああああああん!!!』
泣きじゃくるアリスを電話越しに宥め、励ます。
しばらくするとアリスは泣き止んだ。
『おねがいじます、ぜんぜい……。モモイとミドリを、助けてくだざい……!』
「”もちろん。絶対助けるよ"」
電話を切った。
ふぅ、と、一息つき、シッテムの箱を手元に寄せて、液晶を見る。アロナは机に座っていて、プラナは寝ていた。
「”アロナ”」
『はい、なんですか?』
「”連邦生徒会のセントラルネットワークに入ること、出来る?”」
『もちろんできますが……。バレたら大変ですよ?』
「”でも、バレないようにできるでしょ? ”」
『そうですが……。リンさんが黙っているとは思えませんし……』
「”ま、怒られるだろうね……。でも、やらないわけにはいかないから"」
強い決意を私は持って言う。
子供を守る、それが私の使命なのだから。いま、連邦生徒会を怖がってたって、それは何の役にも立たない恐怖だ。
目を閉じる。黒色の瞳を瞼に隠す。
思いを反芻させる。
守る。
守る。
*生徒たちを守る。
*そう思うと、ケツイがみなぎった。
ゆっくり目を開ける。
黒色の目は━━ほんの一瞬━━赤色に染まっていた。
だれもそれを、知ることは無かったが。
■
連邦生徒会のセントラルネットワークに潜入したアロナが手に入れた情報は、いたって簡単だった。
モモイは、恐らく死亡。
死亡。
まただ。
結局何も守れない。
脳裏によぎる、あの明るい笑顔。
手の届かないところで、また笑顔が散っていく。
涙が頬を伝うのを感じた。
ミドリは、恐らく現在交戦中。
「"モモイは……。でも、ミドリは、まだ……!"」
ならば、こんな所に居る必要はない。すぐ向かって、助ける。
どこで交戦しているのだろう?
画面をタップし、場所を確認する。
「”ヴァルキューレ……?”」
なぜ、そんな所で。
いや、今は考えなくていい。
助けるだけだ。
■
居場所を少し調べた後、すぐにミドリの居場所に向かった。
ヴァルキューレ。
さほどシャーレから距離があるわけでもない。さっと着くだろう。
地下鉄等は止まっているので、徒歩で行くしかないのだが、それでも、早く着いた。
着いた。
それまでは良かった。
ヴァルキューレの有り様は、酷いものだった。
窓ガラスは銃弾で割られており、床には血がついていた。
血を触ると、熱は無かったが、指に、液体状のまま付着した。
戦いから、まだ暫く経っていないようだ。
入り口付近に、割られたマグカップとコーヒーが散乱していた。
「”このマグカップ……。カンナの……!”」
血痕は、ヴァルキューレ内をのたうち回っていた。ヴァルキューレ内で戦っていると言う事だろう。
私は、警戒しつつ中を調査することにした。
中は、外よりも酷かった。
血の匂いが充満し、ところどころに落ちている薬莢が、戦いを示唆していた。ヴァルキューレの白い壁は弾丸によって抉られている。
長い廊下を歩き、階段から上階に上る。
そこで、彼女と出会った。
「”……え”」
「あ、先生。やっほ」
血みどろのミドリが、立っていた。
「”ミドリ……? ホントに、ミドリなの……?”」
「うん。私だよ」
と言って、にこりと笑うミドリ。
その笑顔は、なんだか、狂気を含んでいた。
「久しぶりだね、先生。でも、今は再会を喜ぶ時間は無いの」
「”それってどういう……”」
言った瞬間、ミドリの頬を何かが掠めた。
それは、壁を抉った。
「おい。待て化け物……先生?」
抉ったものは、銃弾。
銃弾が飛んできた先を見れば、傷だらけのカンナが立っていた。
「”カンナ、その傷……”」
「ああ、大したことありません」
「”何があったの?”」
「そうですね」とカンナは言った。「決闘、とでも言いましょうか。どちらが
「”どういうことなの……”」
流れは分かったが、意味がわからない。
「殺人鬼を逮捕しようとした時にそいつが現れたんです。私に殺させろと、そう言ってきたんですよ」
ミドリの方を見る。
頷いていた。
……確かに、ミドリがモモイの死を知ってしまった可能性はある。それの復讐、というものか。
「”……なるほど、大体分かったけど……。本命の殺人鬼は何処にいるの?”」
カンナとミドリは、互いの目を見て、頷いた。
「逃しました」
「”え?”」
「邪魔だったので、逃しました」
「”ええ……?”」
どういうことなの……。
「そんな顔しないでください、先生。これ見てください」
カンナが取り出した端末には、キヴォトスの地図があり、一つの点が映っており、その点は移動していた。
「GPSを付けておいたんです。これなら本拠地が叩けます」
「”ああ、なら……良くないね!? 先に殺してよ!?”」
「すみません」
本拠地を叩く前に、主力を潰せたのなら先に潰しといて欲しかった……。
みんな、ストレスとかで変になってるんだろう。
はぁ、とため息を吐く。
まあ、相手の本拠地が叩けるのなら良いんだけれど……。
「”カンナ、ちょっとそれ貸して”」と私は言う。「”一回、そいつの位置を確認させて欲しい”」
「良いですよ、どうぞ」
ピッピッ、と点は動いたり止まったりを繰り返していた。
どこに向かっているんだろう? 恐らくこのまま行くとミレニアム郊外辺りだろう……。
よし。
良い情報を得た。
「”これ、借りてっても良い?”」
「良いですよ。それだけでしか見えない訳じゃないですし」
「”ありがとね。あと、二人とも”」
キョトンとする二人に言う。
「”もう二人で戦うのはやめてね”」
「……はい」
「……わかりました」
何でこんな時に生徒同士で争わないといけないのだ?
今は、殺人鬼のことだけを考えていればいい。
一階に降りて、出口に向かう。
よし、じゃあ後はあの殺人鬼を──
揺れ。
「”何だ、これ”」
揺れ。
爆発。
ヴァルキューレの壁が吹き飛んだ。
「あ、会長〜! 先生いたよ〜!」
ミカ?
何でここに……。
会長?
まさか──
「先生。お久しぶりですね」
「”……リンちゃん”」
あ〜。
バレちゃった?
「”ヤッホ〜……”」
「……何でそんなに怯えているのです?」
「”いや〜?”」
セントラルネットワーク……。
あちゃ〜……。
「……もし、セントラルネットワークの事を考えていられるのでれば、それは間違いです」
「”ふぇ?”」
違うの?
というかバレたんだ……。
「先生を、捕えにきたのです」
「”それは、どう言う事?”」
「貴方を動かすわけにはいかないのです。貴方はすぐに奴を捕えるために動くでしょう?」
「”大人の、責任だからね”」
「その責任を負わせるわけにはいかないのです。もし貴方が亡くなってしまったら、このキヴォトスは終わります。それに、貴方が居たら、抹殺は遂行できないでしょうし」
「”……私は、死なないよ”」
「それは、どうでしょう?」
リンが指を鳴らすと、見覚えのある子たちが姿を現した。
ヒナ、ミカ、ツルギ……。学園で『最強』と称される子たちと、それに匹敵する強さを持つ子たち。
「”本気っぽいね”」
「ええ。貴方に行って欲しくないので」
さて、どうしようか。
私は生徒に攻撃なんかしたくないし。
カンナ達に戦いを頼む──いや、流石に戦力差がありすぎる。
どうしようか。
彼女らが私の胸中を察する訳もなく、戦い──題して、『先生捕獲戦』は幕を開けた。
更新激遅申し訳ない
あなた方が望むのは?
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ハッピーエンド
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バッドエンド