風が吹き抜ける音。
全てを包み込んでいく闇。
伸び切った雑草。
ひび割れたコンクリートの壁。
まさに廃墟。
そんなところにただ一人佇んでいた。
なぜここに居たのだろうか。
恐らくあの怪物がここまで逃げたのだろう。
服にこびりついた返り血は、「お前は人を殺した」と語りかけてくる。
窓があったであろう場所から差し込む月明かり。
こんな綺麗な場所だ。気持ちよく死ねるだろう。
*思い通りに いくと思うなよ
まただ。ノイズが流れてきた。
十中八九、あの怪物───「
そして、
さらに、自身の中で
自我が完全に消えるまで、そう時間はないだろう。
そうだ。死ぬ前に、先生に謝罪をしなくてはならない。
こんなにLOVEが溜まってしまった自身の言葉など届かないと思うが。
まず、月明かりを頼りに外に出ることにした。
鬱蒼とした雑草を掻き分け、土の地面からコンクリートの地面へと足を踏み出す。
外は少し肌寒く、マフラーが欲しくなる。
煌めく星々は、光源に邪魔されずに輝いている。
つまり都市部ではない。
乾いた土の上を歩いていく。
近くに看板が立っていたので確認すると、
ミレニアムサイエンススクール 2.1km →
と書かれていた。
足がバカみたいに痛かった原因はこれか。
……2.1kmなんて歩いてきた理由がよく分からないが、必死に逃げたのだろうか。
それとも見慣れない景色に興奮してたのだろうか。
*……。
図星だ。
絶対にそうだ。
到底人を殺した後とは思えない。
こんな距離どうやって帰ればいいのだ。
さっきまでのように親切な人はいないだろう。いたとしても通報されるだろう。いや、通報されても別にいいのだが。というかしてくれた方がいい。
数分間どうにか楽に帰る方法を模索していたが、自分の頭脳では無理だと理解できたので、歩くことにした。
いやしかし、2kmは長い。本当に自分の足で歩いたのかと思えるほどだ。
ため息をついて、看板が指していた方向へ歩み始めた。
■
途中途中ベンチに座って休憩しながら、やっとビルが聳え立つところに来た。長かった。
ヒイヒイ言いながら歩いて来たのだ。
先生にさっさと謝らせて死なせてくれと、そんな気持ちを抱いている。
しばらく歩いたところで、ニンゲンは街の異変に気づいた。
そう、人が全くいないのだ。
全く、だ。
前、最初に人を殺した時の夜。
その時は、少しやんちゃな生徒がエナジードリンクを飲んでバイクで爆走していた。その後爆発音がした。
死んだ目で「妖怪MAX……妖怪MAX……」と言いながらうろついていた人がいたことも思い出した。あれは怖かった。
だからここまで街を静寂が包むのは、何か違和感を感じる。
……まぁ、こんな日もあるのかもしれない。
夜に外を歩いたことがないのでよく分からないが。
それよりも、だ。
先生は一体どこにいるのだろう。
前は奇跡的に出会えたが、今回もそうとは限らない。
また看板探しをしなくてはいけないのだろうか。だとしたら非常にまずい。
またkm単位の道を歩かされることになったら足が折れてしまう。ほんとに。
冷たい風が肌を刺すビルの屋上で、しゃがんで考え込む。
双眼鏡越しに確認したあの子供の顔は、まだ純粋だ。
殺人鬼の顔をしていない。
キョロキョロと周りを見渡している。
推測に過ぎないが───多分、人を探しているのだろう。
殺すためだろうか?
だが、ミレニアムの生徒たちには、『要塞都市エリドゥ』に籠ってもらっている。あそこまでたどり着くのは至難の業だろう。
残っているのは派遣したC&Cのみ。
トキにはアビ・エシュフで警備をしてもらっている。今夜だけなので、許してほしい。
私にはアロナとプラナがいる。安全は保証済みだ。
ふと、ネルが口を開いた。
「なあ、先生よお。あんなガキをあたし達で相手すんのか? あたし一人でもやれるぜ?」
「”ダメだよ、ネル。あの子は人を殺めているんだ。ユウカたちと真正面で戦って勝ってる。戦闘力は高いはず”」
セミナーのみんなは、弱くなかった。
数日前まで、共に任務をこなしていたのだ。
「会計か……。書記も、だったか?」
ネルは、舌打ちしてこう言い放った。
「チッ、クソ野郎が」
同感だ。
未来ある子供達の命を四つも奪った。大人のカードを使うことも視野に入れよう。
ユウカたちは、きっと苦しかったろう。
彼女たちの仇を討ってみせる。
そう思うと、少し力がみなぎった気がした。
「せんせ〜! 戦闘開始っていつだっけ? もうすぐ?」
アスナが背中に飛びついてきて、問いかけた。
「”夜明けだね。四時半からかな。今は───”」
「だいたい四時だな」
と、カリンが近づいてきて言った。
「え〜!? まだ三十分もあるの!? やだ〜!」
アスナが喚き始めた。
彼女の性格だ、待ちきれないのだろう。
「アスナ先輩、正確には残り二十三分ですよ」
と、懐中時計を見てそう言うアカネ。
「ほぼ変わんないじゃ〜ん……」
そんなやりとりを聞きつつ、頭の中で作戦を磨いていく。
作戦、と言っても、数時間で立てたもの。
だが、アロナたちのサポートもあり、勝率はほぼ100%だ。
だんだんと黒が薄まっていく空を見ながら、想いに耽る。
あの時。
あの時私があの子供を問答無用で処刑していれば。
あの時。
あの時私が最初に拾っていたら。
こんなことにはならなかったのかもしれない。
過去は変えられない。
死んだ人を蘇らせることもできない。
なんて無力なんだろう。
でも───
「先生、もう十分前だ。さっさといくぞ」
私には、この子たちがついてる。
「”そうだね、行こうか”」
「”まず、先制攻撃だ”」
「”やってくれ、カリン! ”」
「了解だ。」
火薬が爆発した音が、背後から鳴り響いた。
輝いたマズルフラッシュが、夜明け直前の夜空を切り裂く。
銃口から放たれた弾丸は、目標に向かい真っ直ぐ飛び立って行った。
C&C&先生VSCharaVSダークライ
ファイッ!!!!!
あなた方が望むのは?
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ハッピーエンド
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バッドエンド