ラブとピースとアーカイブ   作:はみがきこな

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いつもより ちょっとだけ 文字多いです。







Peace 3 憩い(1)

 

 

 

 

 

 ネルが、ニンゲンと戦い始めた直後。

 アロナとプラナが、アスナに関する報告をくれた。

 

『先生! アスナさんのバイタルが低下しています!』

『このままだと、アスナさんの命が……』

「”わかった、すぐ向う。アスナまでの最短ルートを表示できる?”」

『はい! ……完了です!』

 

 その瞬間、シッテムの箱の液晶に、青い線で道のりが表示された。

 

「”私はアスナ達のところに向かうから、二人で帰れる?”」

 

 アロナとプラナの的確な指示を元に応急手当をした、服が少し破けた状態のカリンとアカネに聞く。 

 

「ああ、私たちは大丈夫……おっと」

 

 転び掛けたカリンをアカネが美しい動作で支える。まさにメイド、と言ったふうに。

 

「もう、少しは自分のことを労ってくださいね?」

「すまない……。いや、別に大丈夫なんだ、先生。少し立ちくらみがしただけで……」

 

 少し無理しているのは誰が見ても一目瞭然だ。 

 

「”アカネ、カリンが無理しないように見ててね”」

「ふふ、勿論です、先生。さぁカリン、行きますよ?」

 

 そう言うと、アカネは華麗な動きで歩き始めた。 

 

「ちょ、アカネ……速い……」

「あら、そうでしたか? ……なら、手、繋いでいきましょうか?」

 

 

 仲良く帰っていく二人の背中を見た後に、振り返って走り始めた。

 迷う暇は無い。所々痛む体を動かして、青い線を辿っていく。

 

 

 止まることは許されない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 足を止めると、そこには争いの跡と、

 虚ろな目をして座っているアスナが居た。

 

 

「”アスナ? おーい、アスナ〜? ”」

 

 

 呼びかけると、すぐにこちらを向いてくれた。

 

 

「あ、ご主人様? 来て〜?」 

「”うん。ちょっと待ってね。よいしょ……っと”」

 

 

 瓦礫の山を越え、アスナの下に向かう。

 

 

「”どうしたの、アスナ? 何かあった?”」

 

 

 そう問うと、アスナは答えた──いや、答えようとした。

 

 

「う〜んと……なんか……。う……、う〜んと……?」

 

 

「”まさか……。大丈夫!?アスナ!?”」

 

 

「え、あ……あ!ご主人様!?あのね、さっきまでここに敵が居て……痛ッ!?」

 

 

 そう言って、頭を抱えて苦しそうにするアスナ。

 

「”アスナ!?アスナ!?”」

 

 

「何か……頭が痛いよ……。何これ……ご主人、様……」

 

 

 最悪の予感が頭をよぎる。

 

 

 

 

 

()()()

 

 

 

 

 

 酷い頭痛に、言葉が出なくなるという症状。これは紛れもなく、脳卒中の症状だ。

 いや、考えすぎか? アスナは前までもこういう性格を……いや、駄目だ。酷い頭痛は違う。

 もし本当に生命に危機があったら、そんな子を無視してしまったら、そんな事をしたら、アスナは……。

 

 

 いや、悩んでいる暇は、無い。

 脳卒中なら、一分一秒を争う事態だ。

 アロナとプラナに、待機している医療班に連絡を入れてもらう。

 

『はい、わかりました! 至急、連絡を入れます!』

『即刻来てもらう形で宜しいでしょうか?』

「”うん、そうして”」

 

 連絡を入れ、少し息を吐く。

 前兆は、あったのだろうか? 

 あったのなら、私は……。私は……何をしていたんだ? 

 迷っている暇は……無い。

 

「”……アスナ、救急車を呼んだから、もう大丈夫だよ。”」

 

「うん……! ありがとう、ご主人、様!」

 

 

 喋るのも嫌であろうに、眩しい程の笑顔を見てアスナはこう言った。

 駄目だ。私には。

 私は、この子の為に、何か出来るのだろうか……? 

 

 

 アスナとここで過ごす時間は、あっという間に流れ、気づけば救急車のサイレンが木霊していた。

 救急車に乗せられようとしているアスナが、右腕を振りながら、別れの言葉を放った。

 

「じゃあね、ご主人、様……」

「”……うん、またね、アスナ”」

 

 

 遠くなっていくサイレンを、救急車を見送り、アロナ達にネルの所までの道のりを教えてもらう。話す前に、深呼吸をした。

 

「”……アロナ、プラナ、次はネルの所に行く。場所は分かる?”」

『はい、もちろんです!少し待って下さい……え〜っと……こうです!』

 

 途端に、また映し出される青い線。その全長は、どんどんと長くなっていく。

 

『現在、ネルさんは交戦中です。移動しながら戦っているようです』

『できるだけ、急いで向かいましょう!』

 

 向かおうとした。でも、脚が震えて力が入らない。これはきっと恐怖だ。生徒を失うことへの、恐怖だ。

 

 こんなところで止まっている私は、駄目な先生だ。

 

「”生徒を守れない”」

 

 そう、呟いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生、それは違いますよ」

「”……黒服? ”」

 

 振り返ると、そこには黒い服を着た、幻影のような黒い靄が立っていた。

 

「ええ、お久しぶりです、先生」

「”何の用?”」

 

 彼に弱みを見せてはいけない。虚勢を張り、何時もと何ら変わらない様に接する。

 彼のことを信用することは出来ない。生徒(ホシノ)を騙そうとした、悪人だから。

 

「クックックッ……そう構えないでください、先生。私は貴方と協力関係を築く、そのためにここに来たのです」

「”へぇ、それはまた随分と急だね。で、本当は何が目的なの?”」

「協力関係を結びたい、と言うのは本当ですよ、先生」

 

 ……相変わらず何を考えているのか分からない。が、空が赤くなったあの日、彼が居なければ私達に勝利は無かった──ここは、聞いてみるのも有りだろう。

 

「”協力関係、と言うのは?具体的には?”」

「あの人間、いえ、そうですね……。モンスター、と呼称するのが近しいでしょうか。アレをキヴォトスから()()するのです」

「”そりゃ随分と無茶なことを言うね。殺す、とかなら分かるけど、()()?どう言うこと?”」

「私達がベアトリーチェに使った物です。アレを使うことさえできれば、あのモンスターを()()することが出来ます」

「”なんで君の計画に私が?参加する義理も、メリットも無いよ”」

「貴方が参加していただければ、あのモンスターについての情報も、そして」

 

 

 

 

「あの代償の神秘……アスナさんについての情報も、教えて差し上げますよ」

 

 

 

 

 全く、小賢しい大人だ。しかし、メリットが生徒の事なら━━

 

「”わかった、乗るよ、その話”」

 

 乗るしかない。

 

「”代償は払わなければならないのだろう?”」

「ええ、勿論です。それが貴方と協力関係を結ぶことの私のメリットですからね」

 

 後は、ネルの所に向かうだけ。

 ……と、その前に。

 

 

 

 

 

「生徒に何かしたら、お前の命は無いぞ」

 

 

 

 

 

「クックック……。約束、と謂うのは、契約と同義です。それを破る事は致しませんよ」

 

 

 そう言うと、黒服は黒いポータルの様な物を作り出し、入っていった。

 

 

 

 

 

 脚の震えは、既に止まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「”……?止まった……?”」

 

 走り続け、5分ほど。体感時間だが、ある程度は合っているはずだ。伊達に毎日カップラーメン生活をしていない。

 そんな中、ピタリ、とネルの動きが止まった。

 

「”何か有った……!?”」

 

 まるで別の物を嵌めたかのような、感覚の無い脚を鞭打ち、ひたすら走る。立ちすくむ摩天楼を、追い越していく。

 ネルにまで何か有ったら、私は……!

 

「"ネル!!"」

 

 そこには、激しい争いの跡と、大の字になって倒れているネルがいた。

 

「ああ、先生か。……すまねぇ、アイツ、逃がしちまった」

「”ッ……!そんなことより……目が!!”」

 

 ネルの右目に、巻かれた布には、血が滲んでいた。目を、攻撃されたのだろう。

 

「”直ぐに、救急車呼ぶから……!”」

 

 またアロナ達を働かせてしまう事になるが、辛抱してほしい。

 

「おう、ありがとな」

 

 右目に巻かれた布は、服だろうか。確か清潔な包帯があった筈……。こちらを巻いてもらった方が良いだろう。

 

「”はい、ネル。こっちは清潔だから、巻くんだったらこっちにお願い”」

 

 手遅れにならなかった。それによる安堵感が身体を包む。

 ネルは、慣れた手つきで包帯を巻き、また、大の字になった。ネルは物思いに耽るように遠くを見ている。雲が流れ、顕になった太陽が、コンクリートの上の私たちを照らしていく。

 

 

 ネルは、暫く経った後、こう呟いた。

 

「あたしって、まだまだだな」

 

 黙って耳を傾ける。ネルの左目からは、涙が溢れている。

 

「あんな奴を……殺せなかった。私は……」

 

 

 

 

 

「弱いな」
 

 

 

 

 

 そう、吐き捨てるように言った。悔しさからか、痛みからか、涙が出ていた。顔を背けて、一人で泣いていた。

 ネルは、弱くなんかないのに。

 

「”ネルは、強いよ”」

 

 そういうと、ネルの泣き声が大きくなった気がした。

 

 

 救急車が来た。ネルは、直ぐに乗せられて、病院に送られた。

 

「”任務失敗……かな”」

 

 少し後悔の念を込めた言葉が、口から出る。生徒は、片や脳卒中、片や大怪我と云った、紛れも無い失敗だ。

 先生として、最悪だ。

 

 

 後ろを振り返り、帰路に就こうとしたその時、後ろから震えた声がした。

 

*ねぇ キミ せんせい っていうんだろ?

 

 後ろに振り返っても誰もいない。誰かのイタズラか?そう思って進もうとすると、目の前から()が地面を貫き出現した。

 その花には、顔が付いていた。

 

*むし しないでよ。

 

「”花が……喋った……!?”」

 

 思わず口から溢れる。いや、無理もない。花が喋ったのだから。

 

「”人面花……?”」

 

*なんで ヨウカイあつかい すんのさ。

 

 訝しげな表情をされた。

 いや、普通はするだろ。逆に普通に接せれる人、いないだろう。 

 

「”え?ああ……ごめんごめん。えっと、そう!私は先生だよ!”」

 

 動揺を隠して虚勢を張る。私の得意技だ。

 

*なに ビビってんのさ。

 

 通用しなかった。全く。なんで……?

 

「”ええっと、用件はなんだい?”」

 

 話を切り替えて、用件を伺う。

 花の用って何だろう。肥料とか、水とかかな?

 

 そんな私の予想は見事に外れたらしい。その花は、ガタガタと震え始めた。まるで、恐怖に襲われたみたいに。

 

*あの バケモノから……。

*ボクを たすけてほしいんだ。

 

 余程のことなのだろう。ここは、先生として、大人として。助ける選択をした。

 

「”勿論、良いよ。ところで、君、名前はあるの?”」

 

 名前がなければ、呼び合う事も出来ない。大切なものだ。

 

 

*ああ ボクの なまえ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*ボクは フラウィ。

*お花の フラウィさ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









フラウィ 参戦!!!!!!ドーン

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