悪堕ち王子の快楽ダンジョン、女冒険者を帰さない ~エロゲの悪役に転生した俺、ひっそりスローライフを送りたいだけなのに美少女たちが集まってくるんですけど!?~   作:タイフーンの目

4 / 43
第4話 かがくのちから、すごい

 

 ■ ■ ■

 

 メディは1人、ダンジョンを出て森を抜けていった。

 早くご飯を手に入れて、ご主人様と一緒に食べるために。

 

 けれど急いで走ろうとすると、足下がもつれてしまう。

 

「っ! あし、むずかしい……」

 

 ヘビの尻尾から人間の足に変わったばかり。まだまだ慣れないが、アルトと同じ姿になれて嬉しい気持ちでいっぱいだ。

 

 深い森を抜けると、広い湖にでた。

 

「おー」

 

 キラキラ光る湖面。じーっと水中を凝視すると、

 

「! さかな!」

 

 魚はメディの大好物だ。きっとアルトも大好物だ。

 勢いを付けて飛び込もうとするが、

 

「…………、ふく」

 

 このまま水中にダイブすると、せっかくアルトに(しつら)えてもらった衣服がびしょ濡れだ。それはなんだか良くないと思った。

 

「ぬぐ!」

 

 いったん、全裸になることにした。

 改めて湖に飛び込む。

 

 人の足で泳ぐのにはやっぱり苦労があったが、メディは漁の達人だった。手づかみで簡単に魚を捕まえては、水面からポイポイと岸に放っていく。

 

「とれた!」

 

 大漁だ。20cmほどのイワナを8尾。

 

「(ムフーーーっ)」

 

 両手を突き上げて喜ぶが、

 

「…………」

 

 褒めてくれる人がいない。

 試しに、自分で頭をなでなでしてみるが、

 

「……ちがう」

 

 さっきアルトに頭を撫でてもらった気持ち良さには遠く及ばない。

 帰ろう。

 

 メディは身体をブンブンと振って肌の水滴を落とすと、服を着て、両手に魚を抱えて家路につく。

 

 

 

 

 ダンジョンまで帰って、『我が家』の前に立つ。

 

「…………」

 

 ドアを少しだけ開けて隙間から見ると、ご主人様のアルトが、ああでもない、こうでもないと悶えながら作業に没頭中だった。

 

 そういえばさっきも。

 熱中しているご主人様は、苦しみながらもとても楽しそうだった。

 

 

 メディは、『家』に帰ってくるのを楽しみにしていた。ダンジョン内には生まれたときから同族はおらず、他のモンスターからも恐れられて避けられていた。

 

 だからアルトが、メデューサの姿だったときから平気で触れあってくれたのが嬉しかったし、ともに暮らす住処ができたのも幸せだった。

 

 でも、急に不安になる。

 

「めでぃ、じゃまになる……?」

 

 それどころか、帰っても気づいてもらえないかもしれない。

 2人のために作ると言ってはくれたが、今、ご主人様の興味はアッチに向いている。

 

 その集中をさえぎるのは悪い気がする。

 

「めでぃ、かえった……」

 

 小さな声で、邪魔にならにように。

 が。

 

「おお!! おかえりメディ!!」

「――――っ!?」

 

 メディも驚くほどの勢いで、アルトが笑顔を見せてくれる。

 

「それ全部メディが獲ったのか!? すごいな!?」

「う、うん、とった」

「ありがとうな!」

「うん」

「って髪、濡れてるぞ? そうだ、いいもの作れるようになったんだ。こっちこっち」

「?」

 

 魚をキッチンに置いたメディの手を、アルトが引いていく。

 洗面台。

 

「これだよ、ドライヤー!」

「どらいや?」

「大人しくしてろよ」

 

 アルトはその謎の器具を右手に持つ。カチッと音がしたかと思うと、

 

 ――ぶぉおおおおおっ

 

「――――っ!?」

「大丈夫だ、怖くないから」

 

 謎器具から吹き出てくる熱風を、メディの頭が浴びる。

 

「どうだ?」

「き、もちいい……♪」

 

 初めての感覚。

 熱風は攻撃的なそれではなく、むしろ、慣れれば妙な安心感すら感じられた。

 

 アルトの左手が優しく濡れ髪を持ち上げてくれて、そこにたっぷりの温風が含まれて、あっという間にメディの髪は乾いてしまった。

 

「まほう……!?」

「じゃなくて、科学の力だ。……《クリエイト》ってここまでの自由度じゃなかったはずなんだけどな」

 

 アルトが、うーんと唸る。

 困っているようにも見えるけれど、どこかワクワクしたような雰囲気も。

 

「建築作業を繰り返すと作れるものが増えていく仕様なのは同じ……でも、俺がイメージしたものまで作れるなんてな。リアル異世界だから効果が違うのか、それとも例の【隠し要素】のおかげなのか――」

「?」

 

 言っている意味のほとんどを理解できなかったが、

 

「かがくのちから、すごい」

「そうそう、とにかくすげーのよ!」

 

 ご主人様も嬉しそうなのでオッケーだ。

 

 メディも幸せ。

 ドライヤーしてもらうのは気持ち良かった。このためにまた頭を濡らしたいくらいだ。

 

「メディが獲ってきてくれた魚を食べようか。俺が料理するからさ」

「たべる……けんちく、いい?」

「建築は食後に再開だな! さすがのエナドリでも空腹ばかりはどうしようもならないし。せっかくだし、新鮮なうちにな」

「アルトさま――」

「ん?」

 

 アルトのほうを振り返って、

 

「めでぃ、かえってきてよかった!」

「おう? うん、良かったな。今度からは『ただいま』って言うんだぞ」

「いう! ただいむ!」

「ただいま、な」

 

 また頭をよしよしされて、メディは思った。

 

(しあわせ……すき……、アルトさまと、ずっといっしょにいる……)

 

 そのとき。

 

 

 ――ピロリロリンッ

 

 

「…………っ!?」

「どうしたメディ?」

 

 アルトには聞こえなかったようだ。

 すると、彼の()()に、

 

 

 ――モンスターからの忠誠度120を達成(通常:100、裏設定:120)

 

 ――プレイヤーのスキル効果及びダンジョン拡張機能の解放

 

 

「??」

 

 なにか模様のようなものが浮かび上がった。

 いや、これは人間が使う『文字』だ。

 

 

===解放済み===

(条件:モンスターからの忠誠度100を達成)

 ・プレイヤーのレベル上昇率20%アップ

 ・モンスターのレベル上昇率20%アップ

 ・ダンジョン瘴気濃度10%アップ

 ・建築コスト50%カット

 ・クリエイトに『自分でデザイン』追加

 

===新規解放===

(条件:モンスターからの忠誠度120を達成)

 ・プレイヤーのレベル上限解放

 ・モンスターのレベル上限解放

 ・ダンジョン瘴気濃度30%アップ

 ・建築コスト80%カット

 ・モンスター生成コスト90%カット

 ・トラップに『擬人化』追加

 ・キャラクターメイクの対象に『装備』追加

 

 

 

「???? もじ、よめない」

「ん? どうした、俺のうしろに何かあるのか」

 

 アルトが振り向くと、複雑怪奇な文字はフッと消えてしまった。

 

「なにもないぞ」

「うー……」

 

 なにか悪いものならご主人様に伝えないと、とメディは思ったが、

 

 

 ―― ヽ(*´∀`)ノオメデト─ッ♪

   このモンスターたらしめ☆

   ( ※ゲーム制作者より)

 

 

「おー?」

 

 なんとなくハッピーそうな模様が浮かんだので、メディは「ヨシ!」と納得し、ひとり頷いた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。