ーー中央トレセン学園の食堂にて、多くのウマ娘たちがそわそわとしながら食堂内に設置された大画面のテレビを見つめていた。
朝練を終えたアドマイヤベガはいつもと違う食堂の様子に困惑しながらも朝食に箸をつける。
「アヤベさん!おはようございますっ!もうすぐオペラオーちゃんのレースが始まるんだって!一緒にどうかな?」
アドマイヤベガに声を掛けたのはクラスメイトにしてライバルのナリタトップロード。彼女はどうやら他のクラスメイト達と一緒にオペラオーのレースを観戦するつもりらしい。
「興味ないわ。もうすぐ日本ダービー、他のことに気を取られている暇は……」
重賞で未だ勝利を挙げていないアドマイヤベガは自分のレース以外に心を向けるつもりは全く無かった。そうしないと生きられなかったあの子に申し訳がたたないから。
俯いたアドマイヤベガを見かねたエアグルーヴが声をかける。
「たわけ、仮にもライバルだろう。応援くらいしてやれ。それにこのレースはきっといい参考になる。」
「…」
しかしエアグルーヴの言う事にも一理あり、どうせ2分程度のレース、食事を取りながら見れば時間の無駄にはならない。そう考えてテレビ画面へ目を向ける。
《時刻は日本時間午前7時55分、これより本バ場入場となります。それでは各ウマ娘たちの様子を確認していきましょう。》
《1番アドニス、8番人気です。…》
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《5番エクセレントミーティング。ここまでGI4勝、2着3回と名実ともに今レース最強と言われているウマ娘ですね。》
《日本よりGIレースが多いアメリカならではの成績ですね。今回のレースは彼女を中心として》
「まだ5月にしてGI4勝、実力的に考えて何も起きなければこのレースは彼女が勝つだろう」
「ねーハヤヒデぇーっ!頭ちょっと横にずらしてよー!」
「誰の顔が大きいって!?」
「2人ともうるさいっての…」
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《16番カリズマティック、11番人気です。2週間前の皐月賞と同じ日に開催されたレキシントンステークスではレコードを叩き出したウマ娘です。人気は低いですが十分な走りが期待できますね》
《そして20番っ!我らがテイエムオペラオー、12番人気です。》
《皐月賞の快勝は記憶に新しいですが慣れないバ場、慣れない土地、それに大外だということもあって厳しい戦いになるでしょう……ですが!それでも彼女ならなんとかしてくれると信じています。》
「彼女、あれだけの走りで12番人気なのね。」
メイクデビュー、ホープフルステークス、そして皐月賞。彼女の走りはどれも圧巻で常にアドマイヤベガの前の壁として立ちはだかっている。そんな彼女が、12番人気。
「アヤベさん…今回のレース、ダートらしいんです。しかも日本のダートとは全く違うって昨日調べました。」
さらっと優等生ぶりを発揮するナリタトップロード。
「ダート!?ダートならウインディちゃんにおまかせなのだ!」
「もぅ、ウインディちゃんったら…オペラオーちゃん、大丈夫かな…」
シンコウウィンディをたしなめるトップロードを横目に見ながら食事を続ける。
(あのオペラオーがダート、か。そのままダート路線に変更して帰ってこなくてもいいのに。)
ふと脳裏に浮かんだその考えに吐きそうになった。
「…」
勝ちたい、その欲望がどんどん歪になっていくのを感じた。
ーーー
ーー2日前、チャーチルダウンズレース場にて
「一般的に大外枠からの出走はカーブなどで走る距離が多くなる分不利と言われている。しかしケンタッキーダービーに於いては少し異なる。出走人数の多さから内枠は外に潰されることが多く良い位置取りにおいて外が勝る。また、ケンタッキーダービーは先行有利と言われていてその点でも位置取り優遇の外枠は悪くない番号だろう。」
「まぁそれはテイエムオペラオー君のバ力あってのことだろうがねえ?トレーナー君に言われて過去50年のレースを洗ってみたが大外から良いポジションに位置取ってそのまま抜け出すという展開も多かったようだ。いやはや重労働だったよ、私は勝利なんかには興味ないんだがねぇトレーナーくぅん?」
「…この埋め合わせは必ずしよう、無事に終わったらモルモットにでも何でもやってやるよ。」
「ほう!ちょうど新薬のレシピが完成してねぇ、実験台を探していたんだよ!」
アグネスタキオンの口から不穏な言葉が飛び出したが今大事なのはケンタッキーダービーであり、アグネスふたりの協力によってもたらされた今回のレース予想をできるだけテイエムオペラオーに伝える。
「つ ま り は、いつもどおり白鳥のような優雅な走りをすればいいんだね?」
先行策が強いうえに予想の展開やマークも、オペラオーに味方しそうなので言ってしまえばそれが結論であった。
「ああ、それでいい。…あとはそうだな、今までレース自体にはあまり口出ししてこなかったが今回は一人だけマークして欲しいウマ娘がいる。」
これを伝えるのは、俺しかできないことである。それぞれのステータス、枠番、走りを見て、とあるウマ娘が最も手強い相手となることを分析できた。
「ほう!このボクのリヴァルとなるべきウマ娘!やはりエクセレントなんとかかい!?さぁ!答えたまえトレーナー君!」
「覇王たる君が注目すべきフリードリヒ伯爵は…
カリズマティック
前走のレキシントンステークスでレコード勝ちしたウマ娘だ。」
16番カリズマティック、今回出走する中でオペラオーを除いて最もステータスが完成しており、最も枠番に恵まれているウマ娘であった。
ーーー
《ファンファーレが高らかに鳴り響き、アメリカにとって最も偉大な二分間と言われるこのレース、ケンタッキーダービーが始まろうとしています。場所はチャーチルダウンズレース場ダート2000メートル左回り、バ場状態は良といったところです。各ウマ娘ゲートへと向かっていきます。》
《今回のレースはなんと言っても4年ぶりに日本のウマ娘が出走しているところに注目ですね。しかも無敗のGI2勝テイエムオペラオー、彼女の大ファンとしては好走に期待したいところです。》
信じる。ボクを信じる。トレーナー君を信じる。大丈夫、いつもどおりさ。
なんだが自分に言い聞かせるような感じでボクは声を張り上げる。
「『諸君!ボクは今日、挑戦者としてここにいるが今日からは君たちがそうなる。世紀末覇王戴冠のプルミエールを聞かせてあげるよ』」
「『弱い犬ほどよく吠えるとは言ったものね』」「『黙れク◯野郎!』」
うむ、実は英語はそんなに詳しくない。きっとボクの素晴らしさを褒めたたえているのだろうね!
さあ、世界に刻みつけよう、覇王の足跡を。
《各ウマ娘ゲートイン完了して体勢整えました》
ガコン
《さあケンタッキーダービーのスタートです。さあまずハナをとったのはアンサーライブリー、その横バルフォルが並んでいます。》
《テイエムオペラオーはどんどん内へ前へと進んでいます。斜行気味に見えますが問題はなさそうですね。》
(さて、トレーナー君の言うフリードリヒ伯爵はどこだったかな。…16番、なるほどこれは強いね。)
テイエムオペラオーがカリズマティックをマークして後ろに控える。カリズマティックはマークに慣れていないようで後ろをチラチラと気にする様子はあるが、走り自体は真っすぐであり迷いはない。
《キャットシーフも先行争いへと乗り出し現在先頭はバルフォル。最初のゴール板前を通過し第1コーナーへと差し掛かります。我らがテイエムオペラオーは外目5番手といったところ。カリズマティックをマークするような形で追走。
《良い位置に付けましたね、アメリカダートでの走りも問題ないですしついにこの日がやってきたのかもしれません。》
《一番人気エクセレントミーティングは後ろから三番手、後方からの競走といったところで各ウマ娘第二コーナーから向正面へと向かっていきます。》
大外から来たということもあって若干外を回されるテイエムオペラオーであったが、それでもカリズマティックをピッタリとマークして直線を走る。
《先頭は変わらずバルフォル、半バ身ほど離れてキャットシーフとアンサーライブリー追走、その後ろの集団の中カリズマティック、そしてテイエムオペラオーが好位についています。一番人気エクセレントミーティングは内ラチ沿いをどんどん押して第3コーナーへと接近です!》
《そろそろ仕掛けどころですね、テイエムオペラオーいい位置です。》
(ここらへんで剣を抜くべきか、なっ!)
踏み抜いた土がめくれ上がり宙に舞う。
第4コーナーに差し掛かりテイエムオペラオーが仕掛ける。それを予感してかカリズマティックも仕掛けた。
テイエムオペラオーとカリズマティックが競り合うかといったところでテイエムオペラオーは予感した。
“領域”が来ると。
「『期待してくれたみんなのためにも、ワタシ自身のためにも今度こそ絶対に負けられないからっ!』」
領域『灰被りの英雄譚』
「『はあああああぁぁぁぁっ!!!』」
(なるほど、君はフリードリヒ伯爵ではなくシンデレラだったようだね。だが覇王として、そのガラスの靴を踏み潰させてもらおうか!!)
「はーっはっはっは!シンデレラ?結構なことだっ!だがこれは覇王の物語っ!!『世紀末覇王伝説第3の章外伝』、君の出番はないっ!!!!!」
領域『ヴィットーリアに捧ぐ舞踏』
ーーー
《先頭争いは依然としてバルフォルとキャットシーフ、外からカリズマティック上がってくる、そしてテイエムオペラオーも上がってきましたっ!バルフォル苦しいかここで先頭をキャットシーフに譲った!》
カリズマティックとテイエムオペラオーがすっと上がってくる。
「やはりカリズマティックが上がってきたか。」
「トレーナーさん、スゴいデース!」
少し自己満足的な考えだが、ちゃんとレースでもオペラオーの役に立てたような気がして安心した。
俺が君にできることはここまでだ。あとは頼んだぞ、オペラオー。
《キャットシーフ先頭一歩踏み出して前へ出る。第4コーナー回って最後の直線テイエムオペラオー上がってくる、テイエムオペラオー2番手までカリズマティックと競り合って上がってきました。》
「ひょわっ!みみみみえましたよっ!ここまで負け続けてそれでも故郷のみんなに期待されてライバルたちに夢を託されて走るカリズマティックさんの御姿がっ!ワンダーアキュートさんのような負けてもなお永劫まで燃え続ける闘志(※未デビュー)はもはや誰にもとめられないっ!しかしオペラオーさんも全く負けてませんっ!日本の期待ライバルの期待そしてあたしたちの期待を背負って走ってくれているのがわかりますっ、でもその根本は圧倒的は自分へのトレーナーさんへの信頼!踏み出す一歩はまさに覇王の一歩!こんな間近で推しの伝説的瞬間をリアタイできるなんて尊すぎてしんどいっ!もはやしんどいオブザイヤー受賞確定ですっ!!!!」
「ふむ、少し遅めのペースだねぇ。」
デジたんはいつもどおりの様子。アグネスタキオンはノートパソコンを通してレースを観察している。
勝負は最終直線へと向かう。
《テイエムオペラオーとカリズマティック先頭、テイエムオペラオーとカリズマティック、残り300メートルを切りました!後ろからメニフィー上がってくる!》
先頭はカリズマティック、外からテイエムオペラオー。しかしその差はわずか。柄にも無く我慢できずに立ち上がってしまう。
「マナーは良くないデスが応援してあげてくだサイっ、トレーナーさん!」
《しかし先頭はテイエムオペラオーとカリズマティック、テイエム頑張れ!テイエム頑張れ!》
「オペラオおおおおぉぉぉぉっっ!」「オペラオーさあああああぁぁぁぁん!!!!」
テイエムオペラオーが抜け出す。
《テイエム、テイエムだテイエムだテイエムだ!テイエムオペラオー抜け出して先頭!》
ありったけに声を上げろ!お前が!
「お前がっ!!!世紀末覇王だああああああっ!!
気張れえええええええええっ!」「オペラオーざあああああんっ!!!!!!」
お前が!1番だ!
《残り100メートル!覇王の伝説は目の前だ!テイエムオペラオー先頭だ!テイエムオペラオー先頭だ先頭だ!危なげなくゴーーーーーールインっ!!!》
《海外にて覇王、戴冠っ!!日本のテイエムオペラオーがケンタッキーダービーを勝利しましたっっっ!!!全米よ、これが日本の覇王だ!日本のウマ娘が初めて、初めてケンタッキーダービーを制しました!…あっ、2着はカリズマティック!!3着はメニフィー!》
テイエムオペラオーが観客に向かって右手を振り上げた。
1着 20番 テイエムオペラオー
2着 16番 カリズマティック 1/2バ身
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ーーー
「…勝っちゃった。」
トレセン学園の食堂はしんと静まり返っていた。
ガタン、と音がして誰かが食堂を飛び出そうとする。
「っアヤベさんっ!?」
「離してっ!……自主トレーニング、再開するだけだからっ」
ライバルが、ライバルだけが華々しい活躍をすることに絶えられなかったアドマイヤベガが食堂を飛び出そうとする。
ナリタトップロードはそれを制止しようとするもアドマイヤベガは振り払い走り去る。
「アヤベさん…。」
ナリタトップロードはそれを呆然と見送ると同時に己の中でもふつふつと暗い気持ちが湧いてくるのを感じていた。
レース描写って実況解説で全部言うから地の文書きにくい。
あと投稿頻度ちょっと落ちます。
アンケート見てるんですが掲示板入れろが1/4くらいなので気が向いたら書く…かも?レースわかりづらいという意見が少ないのが意外でした。
志向調査
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読みにくいので改行増やせ
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読みにくいので地の文減らせ
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読みにくいので名前減らせ
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レースなんもわからん
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レース主役以外いらん
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レースの書き方変えろ
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掲示板入れろ
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掲示板絶対入れるな
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特殊表現入れろ
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特殊表現入れるな
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1話の文字数増やせ
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はよ話進めろ
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もっとゆっくりやれ
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他の視点入れろ
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解釈違いじゃ
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タグ増やせ
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ひょわぁ〜ウマ娘ちゃん尊しゅぎ