世紀末『世界最強』覇王   作:むむむむむい

6 / 13
この作品においては、選抜レースが5月前半、7月後半、10月後半、1月後半の年4回あるものとします。また、G1レースは2024年に現行のものと名称、格付けはほぼ一致するものとし、その他出走制限等はアプリ版ウマ娘を基準として、現行のステップレース制度を考慮に入れ史実と作者の気分によって決まるものとします。

つまりメイショウドトウはマル外による制限はありませんがクラシック五大競走には出走しません。


飛躍のコロラトゥーラ

 

ーーオペラオーのメイクデビューから数ヶ月が経ち、メイショウドトウは3回目の選抜レースで一着、トレーナーからスカウトをもぎ取り、晴れてテイエムオペラオーのライバルとして名を挙げられーーなかった。

 

どうやら10月半ばという遅めのスカウト。そして担当トレーナーの意向によりメイクデビューは年明けに持ち越されたようで、戦績如何によっては来年のクラシック路線のG1出走は厳しいらしい。本人は1年で追いつけるとは思っておらず、気にしていないというのが救いだろうか。そして当の覇王はというとーー

 

「はーっはっはっは!今日も美しいボク!美の女神フライアでさえもボクの輝きには嫉妬してしまうだろうね!」

 

「ひょわああああ!!今日も、推しが、尊い!!一生ついていただかせていただきますぅぅぅ!」

 

いつもどおり限界なデジたんとともにトレーニングに勤しんでいた。

 

「デジタル!これ以上はお前にはまだ早い!そろそろ切り上げろ!」

 

…アグネスデジタルは色んな意味で限界に見えた。

 

「…ま だ で ず!!推しが頑張っているというのに!デジたんだけがこのままゴロゴロと転がり落ちてそのままゴロゴロとポップコーン片手にオペラオーさんの勇姿を拝むわけにはいきませんっ!!ウマ娘ちゃん大好きオタクであるこのあたしが!たかが高低差4メートル程度に負けるわけにはいきません!はああぁぁぁぁぁぁ…、あ、そろそろダメそうです」

 

そう、いま行っているトレーニングは坂路トレーニングである。坂路トレーニングはダートや芝の平地トレーニングに比べて、必然的にゆっくりと走ることで関節の負担を軽減し、それでいて筋肉に大きな負荷をかけることができるトレーニングであり、故障率的にもデジたんが怪我を負うことはないがそれにしても1000メートル3本はやりすぎである。

 

「はっはっは!デジタル君!君の勇姿は見届けさせてもらった!あとはこのボクに任せたまえ!」

「ひゃっ!で、デジたん自分で歩けますから!オペラオーさんの手を煩わせるわけにはアッやわらか…」

 

実に幸せそうな顔をしたデジたんがオペラオーに運ばれてくる。疲労で気を失っているようにも見えるが、きっと本望だろう。

 

(デジたんが沈んだしちょうどいいタイミングか、改めて今後の予定についてちゃんと話しておいたほうがいいだろう。)

 

「すでに聞いていると思うが、次走は2ヶ月後のホープフルステークスを予定している。本来ならそれまでにもう一戦走る予定だったが、メイクデビューの走りを見て不要だと判断した。ここまではいいか?」

 

ホープフルステークス、旧名ラジオたんぱ杯。数少ないG1の一つであり、ジュニア級でもっとも重要視されるレースである。

 

「ああ、ホープフルステークスっ!新たな時代を彩る最初の栄光!それをつかみ取るのは世紀末覇王たるこのボクこそふさわしい!」

 

「そうだ、君なら穫れる。…と言いたいところだが一人だけ、注意すべきウマ娘がいる。

ーーアドマイヤベガ、君が選抜レースで負けた相手だ。」

 

選抜レースのあの時、未完成ながらも覇王の走りをするテイエムオペラオーを食い破った一等星。新人である俺とは違い、経験も実績もあるベテラントレーナーのもとで研鑽を積み、ホープフルステークスに出走表明した彼女は十分な脅威となり得るだろう。

 

「アヤベさん…やはり君とボクは戦う運命だったようだね。確かに前回のボクは不覚を取ったが、しかし!!今のボクは元より完璧な走りに『覇王式トレーニング』が加わりまさに世紀末覇王!!トレーナー君はよもや空が落ちてくるという心配をするのかい?」

 

だがそんな俺の心配をよそにテイエムオペラオーは高らかに宣言する。

 

(そこまで断言されてしまえば、何も言えないじゃないか。)

 

「…いや、しないな。すまない、どうやら俺はいつの間にかオルトルートに唆されていたようだ。」

 

「はっはっは!謝罪など不要さ!悪い魔法使いに唆された姫を助けるのもボクの役目だからね!はーっはっはっはっは!!」

 

自信に満ち溢れたオペラオーを見ているとどこまでも走ってくれそうな気分になるが、それはそれとしてトレーナーの責務を果たさなければならない。そう思って改めて説明を始める。

 

「…まぁでも、対策するに越したことは無いさ。ホープフルステークスは中山で行われる中距離のレースだ。右回り2000メートルでメイクデビューのときと条件は変わらない。だがしかし、決定的に違う点がふたつある。」

 

「ずばり、オーディエンスの多さだね!世界中の人々がボクの走りに魅了される…ああ、大歓声を浴びるボクの美しい姿が目に浮かぶようだよ!」

 

…オーディエンスの多さはおそらく彼女にとってはなんの障害にもならないだろう。

 

「もちろんそれもあるが…一つは最終直線が短いこと、京都に比べると20メートルほど短いため少し早めに仕掛けた方がいいだろう。…正直これに関しては心配はしていない。だが問題はラストスパートが割と急勾配の坂だということだ。」

 

中山の直線は短いというのはもはや年末の代名詞とまで言えるが、先行策で第4コーナーの終わりにポンと抜け出す彼女にとってはそれも障害たり得ない。となればテイエムオペラオーの妨げになるのはただ一つ、勾配への対応なのだ。

 

「…なるほど、そのための坂路トレーニングだね?」

 

「ああ、本番はここまで傾斜があるわけではないが、それでも急勾配の道を全力で駆け抜けることになる。そのためスピード、スタミナ、パワーはもちろん体幹が重要になるんだ。」

 

「ふふふっ、君の言いたいことがわかったぞトレーナー君!さぁ!トレーニングを指示したまえ!」

 

そう、斜面を走るのに必要なものは多岐に渡るがそれらすべては言ってしまえば身体コントロール能力である。そして身体のコントロールといえば演劇、ならば答えは一つ。

 

「…斜面でもぐらつかないバランス力、コースを見極める繊細さその他すべてを鍛えるために必要なのは…そう『覇王式トレーニングwith坂路』だ。」

 

「はーっはっはっは!」

 

演劇を通常トレーニングに組み込んだ『覇王式トレーニング』。テイエムオペラオーの個性を完璧に引き出すために考案したそれは、驚くべき速さでオペラオーの血肉となりーー

 

ーー気がつけば12月後半、ジュニア世代の登竜門ホープフルステークスの日を迎えたのだった。

 




物語の都合上しばらくデジたんはとにかく死ぬことになります。覇王式トレーニングは適当です、アプリトレがやってたし入れただけ。次はホープフルステークスです。

女神フライアはフレイア、フレイヤと同一ですが誤字ではないです。今後もこのようにライバル→リヴァルなど和製ではあまり見慣れない言葉を使うかもしれません。

ところで今更ながら気づいたんですが、映画で脳を焼かれた結果書いてるこれ、映画まで遠すぎない?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。