世紀末『世界最強』覇王   作:むむむむむい

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皐月は次次回と言ったな、あれは嘘だ。ここからご都合主義ゾーンに入るのでご注意を。


毎夜生まれては明け方に消えるもの

 

ーー4月4日、伏竜ステークス。

 

 

《5番テイエムオペラオー1着!余裕の走りでゴールイン!芝のジュニア王者はダートでもその貫禄を見せつけつけてくれました!2着は…》

《他を寄せ付けない余裕の走りでしたね。足への負担が気になりますが、2週間後の皐月賞でも素晴らしい走りが期待できますね》

 

一着 5番 テイエムオペラオー

 

「はーっはっはっは!どこであろうとも美しく輝くボク!さあ!君も此度の主役の凱旋を、讃えたまえ!」

 

予想していた結果ではあったが、オペラオーが圧勝した。

 

「ああ、本当にっ……。足は、大丈夫そうか?」

 

デジたんの協力もあってオペラオーの適性はダート、マイル共にB寄りのC。彼女の肉体自体はこのop戦に余裕を持って耐えうる体を持っている。だがそれでも絶対は無かった。

 

「トレーナー君の言った通り、今回のレースはゲネラル・プローベ!ボクがまさかリハーサルで本番に差し障るようなことをするとでも言うのかい?」

 

たしかに今日の走り、そしてタイム、そしてステータスを見る限り皐月賞に差し障るような走りをしていたとは思っていない。普段の併走トレーニングの方がよっぽど足に負担がかかっているだろう。

 

「それでも、ウマ娘にとってレースというものは精神的にも肉体的にも負荷がかかる。走ってくれと言った俺が言えるセリフではないが心配だ。」

 

「はっはっは!心配の必要はないさ!かの神の讃えしウマ娘もレースを練習代わりにしたというし、それを超える世紀末覇王にとってはもはや柔軟体操さ!」

 

そう言った後、こちらを伺うような視線を向けるテイエムオペラオー。ああ、そうだな。

 

「よくやったくれた、オペラオー。」

 

彼女のホームではない条件でのレース、並のウマ娘では勝負にすることすらできないだろう。

 

(op戦とはいえ周りのウマ娘たちが本気で走るレースを柔軟体操呼ばわりか、強がりでなければいいのだが…。)

 

「…………次は、皐月賞だな。」

 

今日このレースに勝ったことで“とある海外のレース”の出走権が得られる。つい口からその話が出ようとしたが、なんとか収めた。皐月賞を控えた状態で、精神的に圧力をかけるのは誰にとっても特にはならないだろう。出るかどうかも決めていない海外のレースを見越して、体力を温存するのも、精神をすり減らすのもあってはならないことなのだ。

 

今更罪悪感が湧いてきた俺を見透かすようにオペラオーが笑う。

 

「ふふ、君がボクに何を託そうとしているかは今は聞かないであげるよ。少なくとも、今日のレースでもボクの糧になるものはあった。…クラシックにおける最初の星、ボクと君で掴み取ろうじゃないか。」

 

「…ああ。とりあえず今日は、ゆっくり体を休ませてくれ。」

 

皐月賞まで後2週間。テイエムオペラオーの身体はほぼ仕上がっているが、ライバルにはホープフルステークスでオペラオーと競り合ったアドマイヤベガ、そして前哨戦である弥生賞にてそのアドマイヤベガを降したナリタトップロードがいる。

これからやれることは少ない。2週間後テイエムオペラオーをいかにベストコンディションを持っていくか。それがやるべきことであるとして、ステータスを見ることしかできない俺は頭を回すのだった。

 

ーーー

 

ーー4月18日、皐月賞。

 

『さあ今年もこの日がやってまいりました。クラシック3冠レースの初戦、皐月賞です。』

『いやぁ待ちに待ったという感じですね。昨年の黄金世代の活躍もあって、ファンの皆さんも首を長くしていたんじゃないでしょうか。』

 

なんとかテイエムオペラオーの調子をベストに整え、迎えたクラシック最初の一冠。

控室でのオペラオーも闘志に満ち溢れていたため、いくばくか軽い心持ちでレースを待つことができた。後はもう待つだけ、いや少しでも力が届くように声を張り上げるだけである。

隣にはデジたんとドトウ。いつものメンバーではあるが、いつもよりも少し緊迫した顔つきでレース場を見つめる。

 

「来ちゃい、ましたね。…皐月賞、ほ、ほんとは、わわわ私も出たかったんですけど、やっぱり、ドジ踏んじゃって…たぶん踏まなくても出られなかったです、けど。」

 

そう口にするメイショウドトウ。1月のメイクデビューを彼女は勝利で飾ったが、そこからはコーナーでつまずいたり体調不良などで惜しくも入着。今年はG2に出るので精一杯らしい…それでも上澄みだが。

レースへの緊張が高まっていく中、アグネスデジタルが口を開いた。

 

「あたしは、いったいどうすべきなんでしょうか。」

 

どのウマ娘を推すかという話だろうか。

 

「…今年からなんですよね、あたしのトゥインクルシリーズ。こうやってレースに出て、そこにはキラキラ輝く推したちがいて。…みんな、真剣で、それが尊くて。あたし、そんな推したちがもっとも輝く場所で、その姿を間近で見たいってトレセン学園に入学して、芝とダートどっちがいいんだーなんてしょうもないことで悩んでたんです。」

 

いつものふやけた顔とはうってかわった様子のアグネスデジタルが話を続ける。

 

「でも、トレーナーさんについて行って。ウマ娘ちゃんたちの色々な面を見て、そうして今この場に立って、思ったんです。ーーなんの覚悟もないあたしなんかが混ざっていい場所なんかじゃないって。…ごめんなさい、こんなときにする話じゃないですよね。トレーナーさんは今日はオペラオーさんのことだけを考えてあげてくださいね。」

 

そう言っていつもどおりのふやけた顔に戻るアグネスデジタル。しかしその顔にはどこか影がさしているような気がした。

 

 

 

 

 

《ーー本日は雨が降っておりますが、中山レース場は例年よりも大きな盛り上がりを見せています。》

《なんといっても今年はテイエムオペラオーがいますからね。メイクデビューにて大差、ホープフルではアドマイヤベガとのふたり旅。連続出走というのが気掛かりですがクラシックの大本命、期待したいですね。》

 

解説の言う通りでこの2週間はなぜ伏竜ステークスに出したのかと記者の取材が絶えなかった。しかし学園の手伝いもあり一部を除いてお断りできていた。一部というのがミソらしく、学園が月刊トゥインクルのみに取材を許可することでヘイトを買いテイエムオペラオーに被害が及ばないようにしてくれたのだ。もちろん学園には事情は伝えており、黙秘してもらった。月刊トゥインクルの取材はオペラ節でなんとか乗り切った。乙名史記者のことだ、うまくやってくれたのだろう。

 

《中山レース場芝2000メートル右回り、バ場状態は重。今年の皐月賞は17名で行われます。それでは早速パドックの様子を伺っていきましょう》

 

《3番人気、2番アドマイヤベガ》

《弥生賞ではナリタトップロードに遅れを取りましたがその鋭い末脚は健在ですね。間違いなく今日の主役の一人と言えるでしょう。》

 

どうにも調子がよくなさそうに見えるアドマイヤベガ、しかしホープフルステークスの追い上げを考えれば決して油断できないだろう。

《2番人気、8番ナリタトップロード》

《皐月賞の前哨戦、弥生賞で勝利したウマ娘ですね。1番人気こそ譲りましたがその強さはまったく劣りません。テイエムオペラオーとは今回が初めての直接対決、どうなるか見ものですね。》

 

弥生賞ウマ娘、ナリタトップロード。直接見るのは初めてだが、ステータスの完成度が高い、オペラオーには及ばずとも抜きん出ている。

 

「トップロードっ!お前ならやれる!」

「「「いいんちょーーーっ!!がんばれーっ!!!」」」

 

ナリタトップロードが笑顔で観客席へと手を振った。隣で歓声がわいた。

《そして本日の1番人気、12番テイエムオペラオー。》

《素晴らしい仕上がりに見えます。前走の疲れも見られず、1番人気に応えた走りを期待してしまいますね。》

 

「はーーーーっはっはっは!やあやあ、この場に集まりしボクのファンたち!そして、愛すべき好敵手たちよ!

 

ようこそ、『世紀末覇王伝説・第一の章』の舞台へ!!

 

レース場に轟かんばかりの声で、オペラオーが謳う。

 

《テイエムオペラオー!ホープフルステークスに続き、2度目の宣戦布告っ!ものすごい迫力ですっ!》

《前回と違い、サブタイトルがありませんね。》

《解説は何を言っているのかわかりませんが、やるき十分ですね。》

 

 

歓声とともに、オペラオーを応援する声が上がった。

レースに絶対は無いとはいえ、今日も絶好調である。この様子ならオペラオーは大丈夫だろう。そう思った俺は少し肩の荷が下りた気分であった。

 

 

パドックでの選手たち紹介が終わりそろそろレースへの熱気が高まってきた頃、テイエムオペラオーは己のリヴァルとなるだろう2人に声をかける。

 

「…トップロードさん、アヤベさん」

 

そしてナリタトップロードとアドマイヤベガの2人へ手を差し出した。

 

「…オペラオーちゃん。今日はよろしくね。」

「…」

 

アドマイヤベガはそれを無視したが、ナリタトップロードはその差し出された手に応じ、笑顔で手を伸ばした。

 

だがしかし、その手は空を切った。

 

「ーー全力で抗ってくれたまえ。今日の主役は、このボクだ。そして明日も、これからもずっと!」

 

差し出した手を胸の前で握りしめ。テイエムオペラオーは宣言する。それはテイエムオペラオーにとって宣誓であり、事実であり、覚悟であった。身体から溢れ出る覇気に2人は気圧される。

 

「っ!…オペラオーちゃんがすごいのは知ってます。でも、私だっていっぱい練習してきました。トレーナーさんやみんなに支えられて。だから、絶対に負けません!!!」

 

「ふっ、それでこそボクのリヴァルに相応しい。…それでも、勝つのはボクだ。」

 

テイエムオペラオーは自信を言葉にしてパドックを離れる。ナリタトップロードも表情を引き締めてゲートへと向かう。

 

 

「………今度こそ勝つから。」

 

一人残ったアドマイヤベガが、小さくそう呟いた。

 

ーーー

 

 

 

《ファンファーレが鳴り響き、さあ間もなく始まります皐月賞!各ウマ娘、次々とゲートインしていきます。》

《彼女たちにとって一生に一度きりの挑戦です、もっともはやいウマ娘は誰なのか!?》

 

…頼む、オペラオー。

 

《各ウマ娘ゲートイン完了、体制を整えました。》

 

 

 

ガコン

 

 

 

《スタートしましたっ!まずまず揃ったスタートといったところ。先頭は3番アクアオーシャン躍り出る。インコースの方からトロピカルスカイが参ります。2番人気8番ナリタトップロードは中団後方、アドマイヤベガはその外についていくかたち。1番人気12番テイエムオペラオーは後ろから3番手で控えます。》

《普段の先行策からは考えられない位置です。これは失敗かもしれませんね。》

 

涼しい表情でテイエムオペラオーは最後方についていた。解説も言うように今までのレースとは違った作戦での走り。レース前日にレース展開の予想と、各作戦における位置取りについては先日話し合ったが、追い込みで走るという話は聞かなかった。。

 

スタートは悪くなかった。ならばなぜーー足でも痛めたのか?

 

最悪の想像に動悸が激しくなる。陸上においてスタートの1歩目で足を痛めるというのはままあるもので、ウマ娘においても同じである。

 

「…トレーナーさん、オペラオーさんを、信じましょう。」

 

ドトウがそう言った。

ここからは故障率が見えないので祈るしかない。

 

「…トレーナーさん、いや同志の頑張りはあたしが一番知ってます。絶対に大丈夫です、デジたんの魂を賭けますよ。」

 

テイエムオペラオーが走り続ける。顔も見えない遠くのコーナーで、彼女がニヤリと笑っているように見えた。

 

 

《第一コーナー第二コーナーへと回っていきます。アクアオーシャン先頭1バ身のリード、続いてトウカイダンディ、後ろにトロピカルスカイ。また1バ身離れてキヌマモルら3頭、外から逃げ宣言ヤマニンアクロが追走。そして中団真ん中オーツカダークネスが押していきます。》

《熾烈な位置取り争いですね。ウマ娘一団となってカーブしていきます。外側の娘たちには厳しい展開ですね。》

 

ーーテイエムオペラオーは未だ後方。

 

《インコース8番ナリタトップロードじわじわと位置を上げる、ぴったりと追うようにアドマイヤベガ。12番テイエムオペラオーは未だ後方4番手。1分12秒平均ペースで1200メートルを通過しました。》

《しっかりとマークしていますね。流石はナリタトップロード、そしてアドマイヤベガといったところでしょう。》

 

《しかしここで徐々にピッチが上がって第三コーナーへと移ります。オーツカダークネス早くも上がってくる。先頭にたつアクアオーシャン、外目を突きましてトウカイダンディも早めに上がって先頭に立った!その後ろユアアウェイク、そして動いたアドマイヤベガ!》

 

ーーテイエムオペラオーは未だ後方。

 

《アドマイヤベガ上がってくる!そしてアドマイヤベガとナリタトップロード一緒に動いた!第四コーナーをカーブして、さぁこれから!直線コースへと参ります!1番人気テイエムオペラオーは未だ後方っ!》

 

《トウカイダンディ先頭だっ!インコースからユアアウェイク、その内を通って、その内を通ってオーツカダークネス!オーツカダークネス先頭に立った!アドマイヤベガは失速かっ!テイエムオペラオーまだ上がってこないっ!!》

 

ーーテイエムオペラオーは未だ後方。

 

ーーー

 

 

もっとも強い走りとはなんだろうか?

 

 

《外から、外から一気にナリタトップロードすごい勢いで上がってくる外からナリタトップロードっ!!》

 

「ーーいけるっ!!!私がっ!このままぁっ!!!」

 

他を寄せ付けぬ圧倒的なスピードによる逃げ?そうかもしれない。

 

前方でレースをコントロールし、最後に抜け出す先行?その通りだ。

 

常に展開を伺い、ここぞという一瞬ですべてを置き去りにする差し?これぞまさにだろう。

 

極限まで脚をため、最後に圧倒的な末脚で蹂躙する追い込み?嗚呼、そうだ。

 

 

劇的で、圧倒的で、無慈悲な一閃。

 

 

彼女を讃えるように、世界が煌めく。

 

《大外からテイエムオペラオー!テイエムオペラオーやっと上がって来たぁっ!凄い末脚でテイエムオペラオー上がってくるっ!先頭2人逃げ切れるかっ!》

 

「…ッ!?」

 

白鳥の騎士たるボクには優雅な先行策が似合うが、トレーナー君のためなら仕方がない。

心配性な君に、すべてを吹き飛ばす走りを。

 

(おや、もしやこれはボクの領域…いや、まだ先がある、世紀末覇王への道は遠いようだ。)

 

すべてを蹂躙して走る、走る。

 

《テイエムだっ!テイエムオペラオー先頭!テイエムオペラオー先頭で今、ゴーーーーーールインっっっ!!》

 

《皐月の栄冠を手にしたのはっ!12番テイエムオペラオーーっ!見事な大外一気で勝利を掴みましたっ!二着はオーツカダークネスっ!3着はナリタトップロードっ!!》

 

1着 12番 テイエムオペラオー

2着 11番 オーツカダークネス 3/4 バ身

3着 8番 ナリタトップロード ハナ

 

大歓声がレース場を揺らした。

 

ーーー

 

「はっはっは!最初の問いの答えはこのボクだったようだ。このボクこそが“希望”というわけだね!」

 

ウイニングライブの後の勝者インタビュー。

パシパシとひっきりなしにカメラのフラッシュが焚かれる。もちろんその先には皐月賞ウマ娘、テイエムオペラオー。

 

「テイエムオペラオーさん!今のお気持ちは!」「すべての生命がボクの勝利を讃えているかのようだよ!」

「今回のレースの印象は!」「美しいボク!」

「手強かった相手は!」「ボクの美しさ!」

「今回の勝利を1番に伝えたいのは!」「トレーナー君!」

 

「これからの予定は!やはり日本ダービーでしょうか!」

 

「はーっはっはっは!次の出走は世界さ!ボクの美しさは全世界のファンに届けられるべきだからね!」

 

何やら不穏な答えに記者が再度尋ねる。

 

「…具体的な目標を聞いても?」

 

「まずはケンタッキーダービーさ!もっとも偉大な二分間にボクの姿がないと世界中が落涙してしまうだろう?はっはっは!」

 

「「「…は?」」」

 

 

テイエムオペラオー、ケンタッキーダービーへ出走表明。

 




ここから地獄のローテです。オペラオー絶対アメリカダート走れるって!走れるよな!走れるよね!(洗脳)
芝ダート海外適性を上げるためにデジたんを仲間にする必要があったんですね。
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