転
ドスンと言う音と共に私は穴の最奥にとたどり着いた。
かなり長く落ちていたように思う、落ちた時の衝撃が少なかったのはここにあるゴミが緩衝材になったためであろう。
それにしても、危ないところだった。
後少しずれていたら胴体を貫かれ動けなくなっていたかもしれない。
「いっつ……」
右腕に走る痛みを我慢しながら周りを見渡す。
そこは、廃棄場……だろうか。
暗くて全貌は見えないが落ちてきたところ以外にもゴミが積み重なっている。少しだけ明るいのは上にポツンと電球が光っているためだろうか。
「あ、よかった!おじさん
こっちこっち」
と少女の声が聞こえる。
そちらの方向を向くとお尻を摩りながら手を振る少女の姿があった。
怪我一つなく無事なようだ。
「よかった……」とほっと一息つく。
「ここならアンドリューも入ってこれないと思う。
でも、私たちもここから出ないとご飯食べれなくてお腹減っちゃうからいつかは出ないといけないけど……」
「そうか、それならしばらくは安全だ」とふぅと息を吐き安心する。
そういえばふと、思った。
散々色んな話をしていたのに少女の名前を聞いていないことを思い出した。
「今更だし、急なんだけど、名前……聞き忘れてた
私は〇〇って言うんだけど君は……?」
「……名前……」少女は表情を曇らせる。
「…………覚えてない」先ほどまで笑顔だった彼女は急につまらなそうな表情になりそう言った。
「そ、そうか……それなら、いつまでも名前呼べないのも申し訳ないし……あだ名つけてもいいかな?」
「あだ名!!いいよ!つけて」顔をばっと上げたかと思うと少女の顔に笑顔が戻る。
プレッシャーである。
ものすごく期待されている。あだ名……あだ名……
どうしよう、悲しそうな表情が嫌だったから言ったが何も考えてない。
女の子であるし変なあだ名はつけられない。
花の名前……なんてどうだろうか。
ふと、妻の好きだった花を思い出した。
妻の好きだった花、ガーベラ。
妻がこの花の花言葉は「希望」、「前向き」、「常に前進」と言っていたはずだ。
この少女に相応しいのではないだろうか。
「……ガーベラ……なんてどうだろうか……?」不安そうにそう聞いてみる。
「ガーベラ……ガーベラ!ガーベラね!わたしガーベラ!」
少女は喜んでいる。私がつけたのはあだ名であって名前ではないのだが……ここまで喜んでいるなら水を刺すこともないだろう。
アンドリューが襲ってくることを考えると戦うことも視野にいれなければならない。
その時に備えて武器の一つでも探した方がいいのかもしれない。
幸いここは廃棄場らしい。武器になりそうなものは山ほど転がっているだろう。
「さて、ガーベラ
これからどうしようか」と私は問いかける。
「ガーベラ……ガーベラ……えへへへ……」
呼びかけられたガーベラは幸せそうに笑っている。
どうやら自分の世界に入り込んでいるのか聞こえてないらしい。
「おーい、ガーベラー?聞こえているか?」
「はい!私ガーベラです」
よほどあだ名をもらったのが嬉しいようだ。
「あらためて、
これからどうしようと言う相談だ」
「アンドリューはこれからも私を狙って襲ってくると思う。
だから、せめて時間が稼げるように武器になりそうなものをみつけたいんだ」
「ガーベラはどう思う?」
「えっと、武器を探すって言うのは悪くないと思う。
前に見た時も色々あったし、武器になりそうなものもあると思う!」
「それじゃあ、それぞれで探そうか
ガーベラは武器を見つけて知らせてくれればいいからね」
流石に一時であっても少女に武器を持たせるわけにはいかない。
「うん、おじさんわかった!
じゃあ、いってくるね!」トットットッと楽しげな足取りでガーベラは武器を探しにいった。
さて、私も探すとしよう。
まずは近場からだ。
私が落ちた際クッションになってくれたゴミを漁ってみる。
廃材の中を手を切らないよう漁る。
近辺を一時間ほど漁っただろうか。
「っしょ」
ずっと屈んでいたため少し痛めた腰をさすりながら
使えそうなものを並べてみる。
壊れた木箱、足の取れた椅子、左腕のない人形、人形のパーツと思われる足、胸に穴の空いた人形。
あまり武器に使えそうなものはない。
流石に振り回せなくもないが大きすぎる。
「さて、私の方は見つからなかったか……あまりここに長居もしたくない」
ガーベラも見つけられなければ諦めるか……と言おうとした瞬間ガーベラが「おじさん!おじさん!」と大声で呼びながら走ってきた。
私の前まできたところでふぅふぅ、と息を整える。
「おじさん、えっと……これなんでどう?小さいけど……」
小さい奇妙な形をしたナイフ……刃先に固まった絵の具だろうかさまざまな色がついている。
いや、これはパレットナイフか
幸い刃先が尖ってるタイプの物だ。
「ガーベラありがとう。これなら使えそうだ」
「ガーベラ役に立てた?やった!」
ガーベラからパレットナイフを受け取り、少し離れて素振りをする。
この大きさなら私でも振り回せそうだ。
素人が下手に大きな武器を持っても扱えないだろうし、これくらいがいいのかもしれない。
素振りを三回ほどやったところだろうか。
右腕の傷が疼き顔を顰めた。
ガーベラが気づいたのか
「おじさん!どうしたの?痛そうにしてたけど……」
隠そうと思ったが服は破けており傷口も見えている。
「あぁ、ちょっとね……逃げる時にアンドリューにやられちゃって」とやっちゃったよ、あははとなんでもないことのように正直に伝える。
ガーベラが何かに耐えるような……真剣な表情で自分のスカートをみると破き出した。
「おじさん、そこ座って。あんまり綺麗じゃないけど手当しなきゃ」
ガーベラの真剣さに押され「ありがとう」と感謝を伝えながら座る。
「んしょ、んしょ」とあまり慣れていない手つきで破いたスカートを右腕に巻いていく。
10分ほど経っただろうか。
「おわり!ごめんね、あんまり綺麗にできなくて……」と下を向き申し訳なさそうなガーベラ。
「いや、ありがとう。嬉しいよ」
少女の献身に対して改めて感謝を伝える。
「さて、結構長居してしまった。そろそろ出口に向かおうか」
と私が告げると思い出したかのようにガーベラが
「そうだ!ちょっと待って、おしゃべりする変な人形?を見つけたの」
「話す人形……?」
ガーベラのいうことに理解が追いつかず復唱する。
「そう、そのナイフ?探してる時足のない人形が座ってたの。それで、顔のところ汚かったから拭いてあげたら急に話しかけてきてびっくりしちゃった」
ガーベラの言うことだ。彼女は私に嘘をついたことはない。本当のこと……なのだろう。
現実離れしたことが起きすぎている。
本当にここはどこなのだろうか。
「とりあえず、その人形が気になる。連れて行ってもらってもいいかな?」
「わかった!ついてきてー!」
タッタッタとゴミを器用に避けながら駆けていくガーベラ。
「まったく……」と苦笑いしながら着いていく。
――――――――――――――――――――――
「おじさん!まったく遅いじゃない」ぷんぷんと頬を膨らませ起こっているのだろうか。
しかし、いかんせん子供っぽいからだろう。
申し訳なさより微笑ましさが勝って少し笑ってしまう。
笑ったことに気づかれたのか
「むー……」とまたまた頬を膨らませるガーベラ。
話を変えようとガーベラに尋ねる。
「ごめん、ごめんよガーベラ。それで、だ。
さっき言ってた人形は何処かな?」
ガーベラは少しまだ怒っているようだが、
「まったく、仕方ないおじさんね」と呟くと
喋る人形のことを話したいらしい。少し興奮した様子でこっちこっちと指を刺す。
ガーベラの指の刺す先をみるとそこには足のないマネキンのような人形が壁に背を預けながら寄りかかっていた。
「おや、今度は男の人だね、どうしたんだい?」
声変わりしていないであろう少年の声が聞こえた。
マネキンの見た目に反してかなり流暢に話す。
「驚いたかい?ふむ、まさか人形が話すとはと言うところかな」
「いえ……話すことはこの子に聞いていたので。」
「あぁ、それならこの見た目と話し方のギャップかな」
マネキン人形は納得が行ったような声色で話す。
「えぇ、失礼ながら」
「まぁ、こんな見た目だからね、そう思うのも仕方ない」
「それで、何か聞きたいことでもあるのかな?」
聞きたい事?どう言う事だろうか。
ガーベラに視線を向ける。
「あ、なんかね、この人形さん昔からいるって言ってたから何か知ってるかもって思って」
「あぁ、この家ができた時からいるとも」
「ッ」
この家ができた時から?
であるならばここが何か知っているのかもしれない。
もしかしたら出る方法も……
「おや、その顔は何か聞きたいことがあると見た。
言ってみるといい。すでに終わってしまった人形だが役に立てるのであれば素晴らしいことだ」
「では、ここは何処なのか…そして、ここから出る方法はあるのか……を教えていただければ」
ダメ元で十分、出れる可能性があるのなら追求しなければ。
「ふむふむ、意地悪な人形であればここはお願いを聞いてくれたら……となるんだろうけど。いいとも、必要とされるなら答えよう。」
人形は続けて話す。
「一つ目の答えだけど……ここは人形の家だね。
ここに入る前に人形が踊るオルゴールを見ただろう?
その中さ」
「オルゴールの中に人が入る……?」
意味がわからない、どういうことだ?
いつから私は現実の住人ではなくなったのだろうか。
これでは娘が読んでいた物語にでも入ったようではないか。
「おじさん……」
ガーベラが心配そうな表情でこちらをみている。
マネキン人形は気にした様子もなく続ける。
「さて、それじゃあ2つ目の答えだ。
ここで死んだ人は人形になって閉じ込められる。
でもね、人も殺した人形は人になってでられるみたいだよ」
「なぜ?という顔をしているね。それは僕もわからない。そういうルールだから。ここを作った人がそう定めたんだ」
「僕は勝手にカミサマって呼んでるけど。」
「カミサマ……」
私はそう呟く。
思い出したようにマネキン人形は続ける。
「そういえば、昔ここに入ってきた人間が人形にならず消えたって話があったな……」
「ッ!その話詳しく聞かせていただいても?」
それだ。私が今必要としている情報。
ここからでられる方法。
「んー、あまり気持ちのいい話じゃないけど……
知りたいならいいかな」
マネキンは不本意そうにそう話し始めた。
「ここにね、昔1人の男が入ってきたんだって」
「そのヒトかなり病んでたみたい。頭抱えて泣き叫んだり、自分で自分を傷つけたり。」
マネキンは意味がわからないよねと言いたげに続ける。
「そのヒトがいた日数はあまり多くないみたい。
この家、人形の家だけあって食べれるモノないし普通のヒトのままだと餓死しちゃうんだよね」
「あ、ちなみにね、餓死すると意思のない壊れた人形になっちゃうんだ。だからここに捨てられるんだ」
「ここに……ですか」
そうか、だからここには壊れた人形が沢山あったのか。
しかも本来であれば発生する生ゴミ、食べ残しなどがなかった理由もそういうことなら納得がいく。
「そそ、ここ廃棄場に捨てられるんだ。僕は見た目が悪いし足もなくなっちゃったから昔いた主様にポイって捨てられちゃったんだよね」
マネキンはいやー困ったよあははと笑っていながら話す。
「まぁ、人形は必要とされることが喜びだからさ、
悲しかったけど仕方ないよね。
動かない人形はいらないもの」
……?何か今この人形の思考の一端が見えたような…
「あ、ごめんね、話戻すね。
あの時は平和でヒトを殺して出ようとするって人形はいなかったし……
でもね、あのヒトはある日2階の部屋の中に閉じこもっちゃったんだ〜」
「なんだろ、怖かったのかな?僕にはよくわかんないけど……」
「あ、また話ズレちゃった。おかしいな……こんな関係ない話するはずなかったんだけど……」
「部屋にこもってしばらくドタドタ騒がしく暴れたみたいんなんだけど…そのヒトが一際大きい叫び声を上げたと思ったら静かになったんだって」
「そしたら不思議なことに
部屋中、血塗れで真っ赤っか
なのにその部屋の中に誰もいないんだよ」
「本来だったらそのヒトか、殺されたなら人形があるはずなのに跡形もなかった」
「そして、今に至るまで見つかってない
だからさ、そのヒトはここからでれたんじゃないかなってみんな話してた」
「つまり……でたかもしれないしでてないかもしれない……ということですね」
しかし、仮にその男が本当に出れたのであれば希望が見えるかもしれない。
「んー、まぁそうなるかな?」
「ところでさ、その腕……どうしたの?
さっきから、その腕にすっごい惹かれるんだよね」
「あぁ、これは少し怪我をしてしまいまして……」
待て、様子がおかしい
「怪我…人形が怪我するわけないし
もしかして、キミ……人間?」
「あぁ、人間なんだ……キミ。
あれ?、もしかして、キミを殺せれば僕もここから出れるのかな……」
「おじさん!!逃げるよ!」
今まで黙っていたガーベラがここから離れようと私の手を引く。
ハッとした。
マネキン人形は動く両手を使って地面に這いつくばり、ズルズルと音を立てながら這ってこちらに向かって来ていた。
「ねぇ、まってよ。もう少し話せることがあるよ?」
マネキン人形のいうことが気になりはするが先ほどから様子がおかしい。
話している途中から淡々とした無機質な様子から感情的な様子に。
さらに、私が人間だと分かった瞬間からさらにおかしい。
「僕たち人形はさ!人間の血を見るとだんだんおかしくなっちゃうんだ。血を摂取することで足りないモノをそれから補おうとするように」
ガーベラもいる。危険な目には合わせられない。
マネキン人形を蹴り飛ばすと、ガーベラが案内する出口に向かって走り出した。
「痛いじゃないか、ねぇ、なんでそんなことするの?
待ってよ、待て、まてまてまてまて待てよ!!」
「痛い?あれ?なんで、僕人形なのに?痛いの?」
「いや、それはいい、今はあの人間だ」
マネキン人形は先ほどと異なり腕でその小さな身体を浮かしこちらに歩いてくる。
少しずつ、慣れて来たのか腕で歩く速度が上がってくる。
「腕で、歩く……だと?」
いや、驚いている暇はない。早く逃げなければ。
「おじさん!急いで!この扉抜ければまた、上に戻れる!」
ガーベラが出口の扉前でそう叫ぶ。
「わかった!待っていてくれ」
と私はガーベラに伝え右腕の痛みに耐え走る。
出口についた。
マネキン人形との距離はもう五メートルもない。
この扉を閉めればもう腕しかないあいつはこっちに来れないはず。
急いで扉をくぐり勢いよくバンっと音を立て扉を閉める。
ダン!ダンダンダン!と扉を叩く音がする。
「ねぇ、もっと知りたいことあるでしょ?教えてあげるからこっちにおいでよ、ねぇ!!!」
狂ったようにマネキン人形が叫んでいるのが聞こえる。
こちらがおかしくなりそうだ。
ガーベラに促され先に進む。廃棄場に落ちる前に通っていた隠れ道のようだ。
「たしか……ここを押すと」
ガコンという音と共に壁が凹みズズズと音を立てて動き出す。
人が通れる隙間になったところでガーベラが先に入りこっちだよと手招きしてくる。
隠し扉から出るとそこは暖炉のある部屋だった。
基本的な部屋の構造は最初に入った隠し扉の部屋と一緒のようだ。
「えっと、明かりは…つけないほうがいいかな…?アンドリューが来ちゃうかもだし」
とガーベラが聞いてくる。
「あぁ、そうだね、そうしようか」
暗い部屋でガーベラと二人か……
「ねぇ、おじさん。……そっち行ってもいい?お話ししよう?」
そういえばさっきのマネキン人形、
気になることを言っていたような……
「さて、それじゃあ2つ目の答えだ。
ここで死んだ人は人形になって閉じ込められる。
でもね、人も殺した人形は人になってでられるみたいだよ」
さらに、
「そのヒトがいた日数はあまり多くないみたい。
この家、人形の家だけあって食べれるモノないし普通のヒトのままだと餓死しちゃうんだよね」
他にも、
「僕たち人形はさ!人間の血を見るとだんだんおかしくなっちゃうんだ。血を摂取することで足りないモノをそれから補おうとするように」
…………では……ガーベラは……?
彼女はどうなる?
「わたしも前に来てからずぅぅぅとここにいるから」
「多分だけどおじさんはいまからこの家を歩き回るでしょ?
わたしついていくから、色んなお話をして欲しいの」
「たった、それだけ……簡単でしょ?」
ガーベラが何かに耐えるような……真剣な表情で自分のスカートをみると破き出した。
「おじさん、そこ座って。あんまり綺麗じゃないけど手当しなきゃ」
食べるもののないこの場所にずっといる
なぜついてこようとした……?
怪我の手当の時も、何かに耐えようとしていなかったか……?
「ガーベラ、待つんだ。こちらに来ないでそこで止まってくれ」
真剣な声色で彼女にそう伝える。
「おじ……さん?どうしたの?急に私何かやっちゃった?」
暗闇だからわからない。でも少し不安で悲しそうな声だ。
罪悪感を感じる。それでもこれを問わなければならない。
「君は……いや、君も……人形……なんだね?」
腰からパレットナイフを取り出しガーベラにそう尋ねる。
「わかんないよ、わたしそんなのわかんない」
「だって気づいた時からここにいたんだもの」
「ねぇ、おじさんなんでそんなこと言うの?」
「私のこと……嫌いになっちゃった?」
「ごめん、ごめんなさい、嫌いにならないで」
悲しそうだ。こんなことは言いたくはない。
しかし、あのマネキン人形に種を植え付けられてしまった。
疑心暗鬼の種だ。知らなければこのまま彼女と行動を共にして最後に殺されても良かったかもしれない。
しかし、私を殺す動機があることを知ってしまった。
そう、ガーベラもあの場所で私と一緒にマネキン人形の話を聞いていたのだ。
「さて、それじゃあ2つ目の答えだ。
ここで死んだ人は人形になって閉じ込められる。
でもね、人も殺した人形は人になってでられるみたいだよ」
人を殺した人形は人になってここから出れられる。
ガーベラは外のことに興味を示していた。
それはもう、見ず知らずの私について来て話をねだるくらいだ。
さらに、この家から出る方法を探すため探検していたらしい。
……なら……それなら、私を殺せば……
ヒトになってここから出られる
そういうことなのだ。そう、あのマネキン人形の言うことが真実ならそうなってしまうのだ。
「おじさん……」
「さっきの人形さんの言ってたことが気になっちゃってるんだね……」
「わかったよ……色々お話してくれてありがと。わたしがいると安心できないみたいだから……」
「ここの部屋から……でるね」
「おじさんがお家に帰れたらいいね……」
ガチャっと言う音と共に扉からのぞく光がこちらを照らす。
ガーベラと扉の影。その二つがだんだんと小さくなり扉の閉まる音と共にまた世界が暗闇になる。
「っ」
ガーベラっと呼び止めようとする口を両手で押さえて黙らせる。
暗いはずの視界がなぜぼやける。
「…………」
「ガーベラ……」