仮面ライダーゲンムズ ~崩壊世界と神域のゲーマー~ 作:紙コップ113
テレサ学園長はブローニャを治療する手段を探すため、中央教会堂データベースによって作られたバーチャル空間に入った。
私とキアナは彼女の後を追い、データで構成された第二次崩壊の戦場にたどり着いたのだ。
この空間で私たちは、当時のテレサ学園長、キアナの父であるジークフリート・カスラナ、さらにはこの戦闘で命を落としたセシリア・シャニアテの再現データと出会った。
私は空間内で復活させたウェンディを含め、数多くの崩壊獣や第二律者を退けながら、シベリアのバビロン実験室前までやって来たのさ。
ちなみに、バビロン実験室は、私たちが仮の目標として設定した”塔”を指す。今回はその内部を調査し、第二律者を仕留めるってことだ。
「ここが実験室の内部?どう見ても監獄にしか見えないけど。」
「ここは大主教がご自身で管理をされているの。私も実験の内容についてはよく知らないけど、何となく変な感じがするわね。」
バビロン実験室。内部はこれといった装飾はなく、金属上の壁や床、正面には奥にはエレベーターとそれを操作する端末がある。永夢の体からパラドを分離させた”ネクストゲノム研究所”を彷彿とさせる。私なら、9610やSHINの文字を形にしたバルーンを設置したいところだがな。
「そんなことはどうでもいい。今は第二律者を追うことに専念しろ。」
「え!?せっかくママとお話しできたのに…黎斗は余計なことばっかして!」
『警報!警報!侵入者を発見!』
耳障りな警報音とともに大量の機甲が出現した。あの細身の体からして、たしか”悪夢ブロック”という機体名だったか?
「奴らは私が引き受けよう。変身!」
私はコンバットアクションゲーマーレベル3に変身し、ガトリングで機甲を掃射する。ジェットコンバットは飛行能力だけでない。ガトリングによる面制圧にも長けているのさ。
大量の機甲を始末し終えた後、新手の機甲が降って来た。それもかなり大型の。
………あの機甲、ME社に侵入した際に戦った覚えがある。あれはネゲントロピーの機甲じゃないのか?なぜ天命の施設に配備されている?
まぁいい。どのみち破壊することには変わりない。
私はガシャットを入れ替え、ロボットアクションゲーマーに変身した。
機甲のパンチに合わせ私も左腕のパンチで受け止める。ご存じの通り、ゲキトツロボッツのパンチはレベル不相応の威力をしているので、パンチを繰りだした方の機甲の腕は容易く吹き飛んだ。
ダメージを受け、リミッターが解除されたのか、機甲が赤く光り、私に全力疾走で向かってくる。
私もガシャットをキメワザスロットに装填し、キメワザの体勢を取る。
”ゲキトツクリティカルストライク!”
キメワザによる会心のパンチにより、機甲は粉々に砕け散った。
機甲を倒した私たちはエレベーター前にて、端末に目を向ける。
「これをどうにか起動できれば、上層に行けるはずだが。」
「駄目だわ。このエレベーターはロックされている。カードキーがなければ起動できないみたい。」
「この近くにキーがあるかもしれないわ。探してみましょう。」
近くにあるとすれば、ここの人間は相当セキュリティ意識が杜撰だろう。
……テレサが所持している通信機器が鳴る。
「あれっ、大主教から連絡が。なに?あたくしにすぐ戻れと?どうしてこんな時に……」
「テレサちゃん行って。大主教様なりの考えがあるんだと思う。ここは私に任せて。」
「安心してよテレサ。私もいるよ。それに黎斗とウェンディも。セシリア様は必ず守るから!」
「…分かった。頼んだわよ、あなたたち!」
少し腑に落ちない様子を見せながら、テレサはたどった道を戻る。
「私たちはキーを探すとしよう。手分けして周辺の監獄を見て回り、それらしきものを見つけたら、エレベーター前で集合だ。」
私が一行を取り仕切り、周辺の探索を始めた。
さて、久々の単独行動と言ったところか。まずは目に入った監獄から探していくとしよう。
しかし妙だな。なぜ研究所に監獄が設置されているのだ?
……いや、簡単な理由だ。それは実験に使うモルモットを逃がさないためであろう。
監獄の扉にある端末に手を伸ばし、軽く操作する。
「先端システム部門配属”実験体”か。天命の奴、ずいぶんエグイことをしているじゃないか。」
内部データにアクセスするため、バグヴァイザーを端末に突き刺す。どれどれ……………。
取得したのは、この監獄で撮影された監視記録だ。
幼い子供の助けを呼ぶ声と激痛に悶える悲鳴が私の耳を刺激する。思わずバグヴァイザーの電源を切ってしまった。
全く……………。そこまでして人類を救いたいのであれば、私のようなバグスターになればいいだけの話だ。そうすれば、自分のライフを消費して実験ができ、戦乙女に貢献できるじゃないか。実際私も九条貴利矢にノせられる形ではあったが、70以上のライフを消費し、ゲムデウスワクチンを作り上げたのだから。
………まぁ、当時はバグスターという概念など存在しなかったわけだから、いくら私がプロデュースしようが無駄だがな。
ジジジッ……………
何だ?今一瞬辺りの空間が揺らいだ?
……プレイヤーであるキアナの身に何かがあったのか?
私はエレベーター前までワープした。
「黎斗さん!」
「ウェンディ……君も空間の揺らぎに気づいたようだな。」
「はい。私たちは監獄の中で被験者の子が書いたと思わしき日記を見つけ、それをセシリア様に見せていたときに、キアナさんが急に頭痛を訴えて……………。」
「その結果が今の状況か。」
私が目を向けた先には、気を失ったキアナがセシリアに膝枕をしてもらってるではないか。
「……………少し、羨ましいです。」
「何だ、ウェンディ?ダメ元で君も頼んでみてはどうだ。」
「いえ、遠慮しておきます。」
これを”ときめきクライシス”等の恋愛ゲームに例えるとすれば、プレイヤーが好きなヒロインに膝枕をしてもらう状況だ。折角のデータ空間で、何かの法を犯すわけでもないのに、勿体ないことをする。
おっと、そう言ってる間にキアナのお目覚めだ。
「目を覚ました?」
「あれ、セシリア様……何が起こったの?」
「あなた、日記を見て急に倒れたの。大丈夫?具合は悪くない?」
「大丈夫だよ。ちょっと頭痛がしただけだから……。」
日記か……………。
「キアナ、君が見つけた日記を見せてくれ。」
私はキアナから破れたノートを取り上げ、生きているページを開く。
子供の汚い字だ。少し読むのに手間取った。
要約すると、とある医者の指示で書かれた日記だ。
毎日の辛い”治療”について、母親と離れ離れになったことへの恐怖、破れたページの先には……
「Ich☆liebe☆dich☆……?」
これはドイツ語での”I love you”、つまり”愛してる”という意味だ。
幼い子供が母親のことを思って書いたと考えればそこまで不思議なことではないが、やけに印象に残る。
とはいえ、バビロン実験室が医療施設ということは確実に嘘だ。親から子供を引き剥がすための法便に違いない。
日記を読み終えたので、もう一度キアナに目を向ける。
「……かわいそうな子。」
「えっ?」
……今度はセシリアの胸で抱擁されているじゃないか。
「恥ずかしがらなくてもいいのよ。私の胸の中で少しお休み……。」
「ありがとう、マ……ううん、違う……セシリア様。」
「なぁウェンディ、このチャンスを逃せば次はないぞ?」
「どうしよう……。」
次に恋愛ゲームを作る際は、VRゲームも視野に入れるとしよう。
「少し、よくなった?」
「……うん!もう大丈夫だよ!ほかの部屋も探してみよう!」
「そうだ、日記も持っていこう。」
「でも、日記に書かれた呪文…さっき読んでた時、心の中でママに抱っこしてほしいと思ったから、ほんとに叶った…噓でしょ、まさか、ほんとに願いを叶えてくれるの?」
呪文に該当する言葉といえば、日記の最後に書かれていた「Ich☆liebe☆dich☆」だろう。
「キアナ、次に願いをするなら、私も聞こえるように言ってくれないか?」
「ん、どうして?」
「願い次第では、私が会話に合わせづらくなる。いいな?」
”願い事”による空間の揺らぎに対応するため、私はキアナと行動することにした。
「この部屋は監獄ではない、いわゆる看守室と言ったところか。」
監獄と比べてベットの質が良く、コンピュータが置いてある。
ベットの上に謎のカードを発見。これがカードキーのようだな。
「あれ、紙もある?これは、日記の破られた部分?」
内容を要約する。
体の痛みが強くなっていく被験者が多数のテレビが設置された部屋に連れられ、謎の数字の映像を見せられている。おそらく思考実験の最中だろうか。
ついでに、被験者は母親とソファに座ってみるテレビが好きなようだ。一応覚えておこう。
「ママとの楽しい記憶がこんなになっちゃって、可哀想に。でも、私はママと一緒にテレビを見たこともない。」
「いいなぁ。ここにテレビはないかな?でもソファがないのも駄目だよね…」
「Ich☆liebe☆dich」
「君はセシリアとテレビが見たいのか?ついでにゲームをするのも願ったらどうだ?」
「……はっ!まさかさっきまでの独り言を聞いてたの!?」
「あぁ。私の頼みを聞いてくれたようだな。」
「忘れてよ!恥ずかしい……」
「カードキーを持っていくぞ。君も早くセシリアに会いたいだろう?」
エレベーター前まで戻ってきたのだが、セシリアがいない。
待機させていたウェンディ曰く、自分でもキーを探してみると言ってどこかに行ったようだ。
「セシリアについては、戻ってきてからでいいだろう。早くエレベーターを起動するぞ。」
私はカードを端末に挿入し、起動を試みる。
『ビジターデータを検知 3級権限 認証開始』
キーに違いはなさそうだ。これで動いてくれればいいのだが…
『エラー警報 コア権限無し 認証を完了できません』
「は?」
『違法侵入を検知 権限凍結 システムロック カウントダウン開始……』
「そう都合よく進めるわけではなさそうだな。」
「どいて!クソ、復旧して!ここで終わっちゃダメ!」
「……!?空間が、また……!?」
「いや、好都合だ。この揺らぎを利用しよう。」
私はバグヴァイザーにプロトマイティアクションXガシャットを装填し、ゲームのデータを空間に散布する。
……揺らぎが静まった。さてどうなる?
『コア権限検知 認証完了 起動システム読み込み中』
「これは……ゲーム?」
どうやら干渉に成功したようだ。
端末の画面に映されているのは、私にとっては非常になじみの深いゲーム……
マイティアクションXだ。
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(ネタバレのため一応反転)
第二次崩壊のデータ空間、キアナの見た幻覚ってことになってるようですが、なんでオットーが監視できてるんでしょうかね?謎です。