仮面ライダーゲンムズ ~崩壊世界と神域のゲーマー~ 作:紙コップ113
崩壊は人間を贔屓しない……そんなことは分かっている。運命だとしても、この残酷さを許容できるはずがない。
黎斗さんと共にハイペリオンに帰還する時には、艦内は地獄そのものだった。
大半のオペレーターがバグスターウイルスに感染、ゲーム病を発症していた。
動けるわずかな医療班が対応しているけど、単なる時間稼ぎに過ぎないし、余りにも発症者が多すぎる。
艦長は管制指揮で手が離せないし、ブローニャお姉ちゃんも幸いゲーム病には罹らなかったけど、病み上がりの体で崩壊獣を撃退している。
「バグヴァイザーの修理に取り掛かりたかったが、そうはいかないようだな。」
「今はこの場の混乱を抑えてからにしましょう。」
「仕方あるまい。」と黎斗さんは不満そうにしていたが、さすがに状況が許さないことを理解していた。背負っている芽衣さんとテレサさんをベッドに寝かし、大混乱の医療班の手助けをした。
よし、発症者の隔離が完了した。これで二次感染による全滅は防げると思う。
意外なことに、黎斗さんの手際が非常に良かった。それも昔は医療従事者だったかのように。
作業の合間に聞いてみたけど、因縁の相手にはドクターが多かったらしい。
ドクターが因縁の相手って……。黎斗さんの過去がどんな感じだったのかが非常に気になる……。
「では、私は作業に移らせてもらうよ。」
そう言い残し、彼はどこかへワープした。
それと同時に、気を失ってたテレサさんが呻き声をあげて目を覚ました。
「テレサさん……!」
刺激させないないよう、声を小さくしながら彼女の横に近づく。
「……ウェンディ。一体どうなったの?」
私はフカさんの援護によってハイペリオンまで撤退できたこと。だけど、乗組員がバグスターウイルスに感染し、ほぼ機能不全に陥ってることを話した。
「テレサさん……今のあなたは……」
「別に言わなくてもいいわ。自分の体はあたくしがよくわかってるから。」
今でも、テレサさんの全身からノイズのようなものが浮かんでいる。
「はぁ……今思えば、黎斗に治療法をちゃんと聞いておけば良かったわ
………。」
……ゲーム病は、自然に治ることはない。
治療するには、仮面ライダーでバグスターを討伐するしかない。しかし、肝心の仮面ライダーは黎斗さんのゲンムだけだが、さっきまで使っていたドライバーは律者に破壊されてしまった。
だから、今できることはストレスを可能な限り減らして進行を遅らせるぐらい。
「ウァァァァ!ガァッ!?」
ベッドで安静にしていたオペレーター1人が悲鳴を上げて容態が急変。
発生しているノイズが広がっていき、体全体を覆っていく。
これ……夢じゃないよね?
ノイズが晴れた後に見えるのは、崩壊獣に似た何かだった。
どういう事?確かゲーム病の進行によってバグスターが活性化するのは間違いない。今いる黎斗さんもその1人。
けれども、目の前にいるバグスターは、感染した人間の体を取り込んでいる……!
「ウェンディ、危ない!」
「しまっ……!?」
テレサさんが私の突き飛ばし、バグスターの攻撃をモロに受けた。
クソッ、しくじった……!
テレサさんもさっきと同じくゲーム病が進行し、崩壊獣に変化した。
その直後、私に向かって攻撃を仕掛けてきたが、ガシャコンチャクラムで弾き、キックで距離を取る。
だけど、その間にも1人、2人と崩壊獣に変化していってる。
今思えば、こうして隔離しておいたのは正解だったのかもしれない。
だけど悔しいことに、彼らを攻撃出来ず、防戦一方だ。
あの崩壊獣を倒してしまったら、取り込まれた人たちは戻ってくるのだろうか?
戦乙女の教範には、「崩壊に飲み込まれた仲間は迷わず始末しろ」と書かれている。きっと、このまま倒して艦内の被害を抑えるのが戦乙女として正しいのだろう。だけど、相手が厳密にはバグスターだという事実が、私の手を鈍らせている。
バグスターだから、殺す以外にも道はあるか、助けられる方法があるんじゃないのかと、私の中に潜む中途半端な希望が邪魔してくる。
ああもう!考えを纏めていなかったのがここで仇になった!そのせいで私は崩壊獣に囲まれ、集中砲火を受けそうになって………
バキュゥン!
何体かな崩壊獣の頭部に弾丸が突き刺さる。
「こっちだ、ウェンディ!」
発射された方を見れば、銃の形をしたガシャコンウェポンを握る黎斗さんがいた。
声を聞いて反射的に近くの遮蔽に隠れた。
「あの様子だと、バグスターが出現したようだな。」
「新種のバグスターだな……コンケストジェムの力で服従されたせいでウイルスが変異したのか?」
「私が援護します、黎斗さんはバグスターの対処を……」
「悪いが、今は様子を見に来ただけだ。」
「……は?」
「何言ってるんですか、皆の命がかかってるんですよ……!この時ぐらい空気をよんで…………!」
私のクレームを遮るように黎斗さんが何かを投げ渡してきた。
「これは……ゲーマドライバー?」
「少々手が離せないのでね。君が患者をオペをするんだ。」
「使い方に関しては、私の戦いを見て理解しているな?」
「えっ?い、いやいや、ドライバーって誰でも使えるわけじゃ……?」
「いるじゃないかァ…………神の所業で蘇った、私と同等の存在が……!」
そう言って、私を指差しで指名した。
……あぁ、なるほど。大体理解できた。
分かったからこそ、なんか無性に腹が立ってきた。私の人生がすでに、彼の手の上で転がされている感じがして。
とはいえ、今は目の前のことに集中しよう。
一度深呼吸し、ゲーマドライバーを腰に当てる。ドライバーからベルトが巻き付いて固定された。
次にガシャットの起動。親指の下にあるスイッチを押す。
”テンペストテイルズ!”
今までは特に気にしていなかったけど、ガシャットを起動すれば、周囲にピクセル状の波動が地面や壁を沿ってゲームエリアが展開される。
私の後ろにはテンペストテイルズのタイトル画面。が映し出された。
「…………変身。」
ガシャットをゲーマドライバーのスロットに装填。
……あれ?レバーを引いてからだと思ってたけど、セレクト画面が回り始めた。
よく分からないので、とりあえず緑のキャラを選んでみる。
”レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?アイム ア カメンライダー!”
これで変身できた?鏡とかがあったら確認したいけど……やけに体が鈍い、というかぎこちない?
見える範囲で自分の体を見回すと、太くて短い手足が映し出された。
病室の鏡をチラッと確認する…………え?は?なにこれ?着ぐるみ?
仮面ライダーって、ゲンムみたいに普通の体系じゃないの?これで戦えってちょっと厳しいけど?
「レベル1だな。この形態は患者からバグスターを分離できる機能がある。今回は出番がなさそうだが、一応覚えておくといい。」
「レベルアップを忘れているぞ。アクチュエーションレバーを引け。」
あっ、そういうことか。私が見覚えがあるゲンムは既にレベルアップ済み。思い出せば、ガシャットを装填してすぐにレバーを引いていた。
……仕切りなおして、レバーを引く。
”ガッチャーン!”という爽快な効果音と共に、ドライバーからパネルのようなものが立体化して私を通り過ぎる。
”レベルアップ!”
”風が紡ぐ旅路!テンペストテイルズ!”
さっきまでの着ぐるみボディが弾き飛ばされ、格段に動きやすくなった。これがレベル2か……。
「テイルズゲーマーレベル2。第四律者との戦闘データで開発した新たな仮面ライダー。」
「その名も『仮面ライダーエアリエル』!」
「エアリエルか…………いいですね、その名前。」
「さぁ行くがいい、患者の運命がどうなるかは……君次第だ!」
黎斗さんは横にあるスロットのボタンを押して、私と崩壊獣の群れを草原に転送した。第二律者の時にやったステージセレクトだろうか。
彼はその場からいなくなったけど、狭い艦内で戦う訳にはいかないからね。私の戦闘スタイルから見ても、こういう広々とした場所の方が戦いやすい。
もう一度ガシャコンチャクラムを取り出し、ダガーモードに変形して斬りかかる。
”HIT!”というゲームみたいなエフェクトを出して崩壊獣の表面が大きく切り裂かれた。
うーん……ゲームが基となってるシステムだから間違いじゃないけど、なんか遊んでるみたいで妙に緊張感が削がれる。恐怖心が薄れると考えれば、悪くない演出かもしれないけど。
崩壊獣からの反撃も難なく回避。
すごい、筋力、瞬発力、動体視力すべてが劇的に上がっている。普通の人間(というよりバグスター?)である黎斗さんがあそこまで戦えるのも納得の力だ。
そのまま飛翔して滞空。変身前の能力も特に問題なく使えるようだ。
ガシャコンチャクラムをを”ギュ・ルーン!”と合体してリングモードに戻し、崩壊獣目掛けて衝撃波を発射。小さいタイプの崩壊獣はそのまま撃破し、取り込まれた人が解放された。
その人たちを安全な場所に退避させる。
……これはあまり時間を掛けない方がいいかもしれない。一旦ガシャコンチャクラムを放り投げて両手を開ける。
第四律者だった頃の感覚を思い出し、両手にエネルギーを集中させる。
エネルギー体はだんだんと大きくなり、周囲の空気ごと崩壊獣を一纏めにした!
よし今だ!ドライバーに挿しているガシャットを横のスロットに装填。その後ボタンを押す。
”キメワザ!”
私の右足にエネルギーが充填されたのを確認し、もう一度ボタンを押して空高く飛翔する。
”テンペストクリティカルストライク!”
落下に加え、風の力による急加速で威力を増したキックが崩壊獣に炸裂!
着地と共に強烈な竜巻を引き起こし、崩壊獣をズタズタに引き裂いた。
”ゲームクリア!”
ゲームクリアってことは……全部倒した?
「いやぁぁぁぁ!なにこれ!?私たち飛んでるぅ!?」
「ていうかここどこなの!?まさか律者にハイペリオン落とされた!?」
げっ…………まずい。キメワザで崩壊獣を上空に吹き飛ばしたおかげで、テレサさんを含む取り込まれた人たちが竜巻に巻き込まれて宙を舞っている。
私は急いで彼らを回収、地表に降ろした。
レバーを戻し、ガシャットを引き抜いて変身解除。それと同時にゲームエリアから現実空間に戻った。
……仕方ないとはいえ、病室が滅茶苦茶だ。まぁ、犠牲者が一人も出てこなかったから艦長も許してくれるはず。
「んっ…………あれ、ここは……?」
「テレサさん……よかった、意識が戻った。」
「ウェンディ?どうしてあなたがゲーマドライバーを持ってるの?」
「それは……ちょっと話が長くなるといいますか。」
「…………黎斗ね。まさかドライバーをもう一つ用意してたなんて、初めから教えなさいよ、もう!」
「あはは……。」
黎斗さんに振り回されているテレサさんを見て、私はちょっぴり苦笑した。
飛べる!踊れる!エアリエル! なんちゃって。
オリジナルライダー登場です。
ざっくりとスペックを載せておきます。
仮面ライダーエアリエル テイルズゲーマーレベル2
身長:198.2cm
体重:98.4kg
パンチ力:6.2t
キック力:10.8t
ジャンプ力:40.2m(ひと飛び)
走力:2.9秒(100m)
第四律者の戦闘データを基に開発した『テンペストテイルズガシャット』で変身するライダー。
各所に設置されたエア噴射による飛行が可能となっており、極小のナノマシンを混ぜて流体を操作、攻撃や防御に活用できる。