仮面ライダーゲンムズ ~崩壊世界と神域のゲーマー~   作:紙コップ113

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メリークリスマス! デンジャラスゾンビィ!


なぜ崩壊は存在するか

空の律者が覚醒したことにより、世界は大崩壊に陥った。

無塔量姫子が神殺しの槍を注入したおかげで律者は沈静化したが、この4カ月の間に、生き残った者たちは安全な場所への逃亡を余儀なくされた。

難民共の行き先は、神州に築かれた科学都市『天穹市』。そこで、4週間前に空の律者の姿が映された監視カメラの記録が何者かの手によってインターネットにアップロードされた。

何としても私たちが、天命より早く律者の行方を知る必要がある。アップロードした張本人である、情報屋の『灰蛇』とコンタクトを取るために、ハイペリオンは天穹市へ舵を切った。

 

「……いや、『ハイペリオンは天穹市へ舵を切った』と言ってる癖に一人だけワープしてるじゃないですか。そこは歩幅をそろえて下さいよ。」

 

「情報は鮮度が命だ。チンタラしていたら天命に先を越されるだろう。」

「それに、君もワープして私についてきてるじゃないか。」

 

「一応テレサさんに、黎斗さんの監視役を任されているので。『あのバカが何か変なことをしたら迷わず叩き潰して連れ戻してきなさい!』と言ってました。」

 

「レベルXの私に君が勝てるのかい?」

 

「それなら大丈夫ですよ。変身前を狙いますので。」

 

「……私は監視システムに侵入する。君は上空から探してくれ。」

 

そういえば、ウェンディは変身前でもレベル1ほどのスペックを持っていたな。ライダーシステムの原理を知る彼女に生身で戦えば確実に負ける。

これ以上波風を立たせないように、私はすぐさまワープし、周辺の監視システムに侵入した。

 

 

 

 

 

監視を始めておよそ1時間が経過した。護衛と思わしき機甲の中心にいる金属のマスクをした男を発見した。

バグスターウイルスを通して機甲のプログラムを書き換え、男の前に姿を現す。

 

「あなたが、灰蛇で間違いないですね?」

 

「君は……何故私の護衛が反応しない?」

 

「ハッキングには自信がありまして。ご安心ください、あくまで護衛対象に私を追加しただけです。あなたの安全は保障しましょう。」

 

「それを言うのは、君が私の命を狙わない確証があってこそだ。そのドライバーさえあれば、私を殺すことなど容易い。そうだろう?」

 

「確かに。しかし私はあなたの中にある情報に用があります。あなたを殺すことに何のメリットもありませんよ。」

 

私はバグヴァイザーを装備し、背後を追っていた刺客にビームを発射する。

 

「重要な取引の隙を狙うとは。メイドの作法とは思えないな、リタ・ロスヴァイセ。」

 

「これは失礼しました、檀黎斗様。ですが、主人の指令に従うのがメイドです。」

 

ビーム程度ではダメージ一つ与えられないか。

バグルドライバーを装着し、デンジャラスゾンビガシャットを起動する。

 

”デンジャラスゾンビ!”

 

「取引の場所を変えましょう。あなたは今のうちに退避を。」

 

灰蛇はウェンディに引き上げられる形でゲームエリアから離脱した。

 

「変身!」

 

”デス・ザ・クライシス!デンジャラスゾンビ!Woooo!”

”ガシャコンスパロー!”

 

ゲンムレベルXの変身と共に、ガシャコンスパローを召喚する。

鎌モードに変形させ、リタの持つ大鎌と切り結ぶ。

 

「伝えても無駄かと思いますが、大主教様はあなたの裏切りをとても残念がっていましたよ。」

 

「裏切りだと?先に私を裏切ったのはお前たちだろう!このクズが!」

 

そう言い捨てると、私はリタを押し切って吹き飛ばす。流石はレベルX。既にスペックはS級戦乙女と互角以上だ。

 

「空の律者と対等に戦った以上、このまま正面でやりあうのは得策ではありませんね。」

 

「選択肢は二つ。すぐにここから立ち去るか、私の手でゲームオーバーとなるかだァァァ!」

 

「そうですね。なら、ここは一度退かせていただきましょう。」

 

リタは後ろに振り返り、私の前から撤退する。

 

「…………かかったな!」

 

ヴァァァァァ!」 「何!?」

 

事前に増殖させておいた分身がリタに襲い掛かる。

 

「ブハハハハ!残念だったなァ!敗者に選択する権利は与えられないのさァ!」

 

ゾンビがリタの大鎌に触れ、その刃を腐敗させていく。

さぁフィニッシュだ。バグルドライバーのボタンを押し、キメワザの構えを取る。

 

”クリティカルエンド!”

 

空高く跳躍し、回転蹴りを分身ごと食らわす。

分身は消滅し、リタは壁に勢いよく叩きつけられた。

 

「グッ…………!」

 

得物である鎌は腐敗し、身に纏う装甲もキメワザの一撃で半壊した。機能停止までは陥ってはいないが、私に楯突くほどの余力は残っていないだろう。

 

「君も不憫なことだ。大主教がゲームマスターの私に逆らうような真似をしなければ、こうもならずに済んだものを。」

 

「……フフフフッ。」

 

「何がおかしい?」

 

「大主教様のおっしゃる通り、黎斗様は意外にも……お優しい方ですね。」

 

「は……?グアッ!?」

 

意味不明な言葉に困惑している隙に、私の右腕をロボット犬が噛み付いた。

そのせいでガシャコンスパローを手放してしまった。

 

「それでは、私はここで失礼いたします。ごきげんよう。」

 

ロボット犬を破壊した時には、リタの姿はなかった。

 

「リタ・ロスヴァイセ……目的はギリギリチャンバラだったか。」

 

何故ギリギリチャンバラを優先したかについては、既にお見通しだ。以前、デュランダルが持っていたバグヴァイザーⅡの出処を考えれば、大体察しが付く。

 

「……九条貴利矢か。」

 

まぁいい。ガシャコンウェポンの一つぐらい、彼にくれてやっても大した問題にはならないだろう。これも神の恵みの一つだ。せいぜい有難く受け取るといい。

私は変身を解除し、灰蛇が避難した場所にワープした。

 

 

 

 

 

 

とあるビルの屋上、そこには灰蛇とウェンディ、そして護衛である機甲が立っていた。

 

「お待たせしました。取引を始めましょうか。」

 

「……それを言うのは、せめて武器を手放してからだ。」

 

おっと、そうだったな。私は手持ちのガシャットをバグヴァイザーをウェンディに投げ渡す。

 

「あれ?ガシャットの数が足りないですよ?」

 

「ちょっとしたアクシデントがあってね。この取引には影響しないから、君が心配することではないよ。」

 

ウェンディは呆気にとられた返事をしながら、この場から離れた。

 

「本題に入りましょう。2週間前、あなたは三つ編みの少女が映った監視カメラの写真をアップロードしました。それはあなたが、彼女が誰なのか、そして彼女にどんな価値があるのかを知っているからだ。」

「彼女がまだ、この天穹市にいるのかどうか、YESかNOかで答えていただきたいのです。」

 

「……私にはどんなメリットがあるのかね?まさか、『答えれば命が助かる』など、商道徳に反する真似をするために私の前に現れたのではないのだろう?」

 

「当然です。取引には金銭を筆頭とした物理的であるほど、誠実さを得られる。私からは、これを手札としましょう。」

 

私は懐から、とあるプログラムをインストールした白いガシャットを取り出し、灰蛇に見せる。

 

「これは一体、何を意味するのかい?」

 

「あなたほどの情報屋であれば、HSN-b46血清についてはご存じですね?」

 

「それは勿論。だが、それは取引に何の関係があるのかね?」

 

「このガシャットには、その血清をライダーシステムの技術で再現したプログラムがインストールされている。」

「使い方についてはあなたに一任しましょう。これを天穹市を守る為に使用するのもよし、解析して企業に売り捌き、莫大な富を築くのもよし。」

 

「これは驚いた。まさか君からその技術の一端を渡されるとは。」

「……いいだろう。答えはYESだ。」

 

灰蛇は取引に応じ、私からガシャットを受け取った。

 

「いい取引が出来ました。機会があればまた会いましょう。」

 

「……檀黎斗。」

「君は既に、蛇の目の中に入っている…………。」

 

……蛇か。

その蛇に私をどう捉えているだろうか。餌となるネズミか。それとも天敵であるタカか。どうであろうと私にとっては関係のない話だが。

 

 

 

 

 

 

 

灰蛇との取引を終えた私は、ハイペリオンにワープした。

 

「さて黎斗。灰蛇との取引の結果を教えてもらおうか。」

 

「あぁ。キアナまだ天穹市に滞在している。」

 

「何ですって!?詳細は!?写真とか地図とかないの!?」

 

「詳細?そんなものは必要ない。あの都市にいるという情報さえあれば、簡単に釣り出せるさ。」

「コレさえあればね。」

 

テーブルに置かれていたデンジャラスゾンビガシャットをテレサに見せつける。

ゲームエリアに出現するゾンビバグスターを利用すれば、彼女の正義感を刺激できるからね。詳しい計画は伏せておくが。

 

「情報を得られたことだ。早速キアナの捜索に掛かるとしよう。」

 

「そうしたいのは山々だが、君が戻ってくる数分前に、厄介ごとを頼まれたんだ。」

「通信のログがある。君にも見せよう。」

 

アインシュタイン博士はタブレットを通し、私にある映像を見せてきた。

 

『久しぶりね、博士?』

 

「カカリアだと?」

 

博士の通信相手は、まさかのカカリアだった。派閥が違うとはいえ彼女もネゲントロピーの幹部、私たちとコンタクトを取ること自体に問題があるわけではないが、何が目的だ?

ログ上のカカリアの話が続く。

 

『最近、私の部隊が度々天命の襲撃を受けているわ。彼らの行動から推測するに、オットーが欲しいのは4つの律者コアの一つ、デザイアジェム。』

『おそらく、散らばった4つのコアを回収し、空の律者の力を全盛期まで戻そうとしているんでしょう。空の律者の復活だけでは、奴の狂った野望は満たせないようね。』

『だから、何処にいるのか分からない律者を探すより、私を手伝ってデザイアジェムを一緒に輸送しない?』

 

「ということだ。黎斗、君の意見を……」 「興味ないな。」

 

「やはりカカリアは私を少々低く見過ぎなようだ。第二律者の完全覚醒を防ぐ?そんな回りくどい攻略をするぐらいなら、直接律者を始末したほうが手っ取り早い。幸いにも、発見する手掛かりは私の方にあるからな。」

 

「待ちなさい黎斗。いくら手っ取り早いとはいえ、キアナを殺すような真似は許さないわよ。」

 

「学園長という立場を失った君の命令を聞く道理はない。」

「それに、君が目を向けるべきなのは私ではなく……彼女たちだろう。」

 

私はテレサに、ブローニャとウェンディの方へ視線を促す。二人とも、苦虫を嚙み潰したような複雑な顔をしている。

それも当然だろう。ウェンディは一度死亡した直接的な原因、そしてブローニャはウェンディ殺害の片棒を担わされた原因である女を前にして、平静でいられるわけがない。

 

「もし私が彼女たちと同じ立場なら、私はカカリアを見捨てる。もしくは自分の手で削除するな。」

 

「……二人はどうしたいの?あたくしは、あなたたちの選択を尊重するわ。」

 

「……すみません、ブローニャでは決められません。」

 

「……私も、皆さんの判断に任せます。」

 

「ブローニャ……ウェンディ……。」

 

そう言うと思ったよ。ゲームの選択肢は常にYESかNOかの二択だ。選べないプレイヤーには次に進むことが出来ないというのに。

 

「想定内だ。だからこそゲームマスターの私が、迷える君たちにプレゼントを与えよう。」

 

「プレゼント?ちょっと黎斗、何する気よ!?」

 

「ウェンディ、君にはこのガシャットを。」

 

私を咎めようとするテスラ博士をよそに、ウェンディへプレゼントを渡す。

 

「ガシャット?これは……『エージェントバレッツ』?」

 

エージェントバレッツ。エアリエルの戦闘データとカスラナ家のガン=ガタを基にして開発したガンアクションゲーム。テンペストテイルズと併用すれば、バレットテイルズゲーマーレベル3に変身できる。

 

「そしてブローニャ、君にはこれを預けよう。」

 

「これは……バグヴァイザー!?」

 

「厳密には『ガシャコンバグヴァイザーⅡ』だ。従来の機能はそのまま、一部スペックをアップデートした次世代機だ。」

「当然だが、このバグヴァイザーにもバグスターウイルスを吸収、散布する機能が搭載されている。」

 

仕上げとして、ブローニャの耳元にこう囁いた。

 

「これさえあれば、君はあの女を削除できる。それも可能な限り苦痛を与えてからな。」

 

「……!?」

 

「さて、渡したプレゼントをどう活用するかは、君たち次第だ。私の心を躍らせる、いい結果を期待してるよ。」

 

私は二人にそう伝え、キアナ捜索の為に天穹市へ再びワープした。

 

 

 

 

 

 

灰蛇と取引をしたビルの屋上で、私は再びこの都市を見渡す。

人間も生物である以上、対処不能な天災に遭遇すれば、これまで住んでいた場所を捨てて安全な場所へ逃げる。そうなれば、自ずと人や資源、技術は一か所に集まり、強固な砦が形成される。その摂理によって築かれたのが、今の天穹市だ。そう考えれば、『人間も自然の一部分』という思想もあながち間違いではない。

 

では何故、この世界では『崩壊』という現象が存在するのか。

私が読んだ資料の中に、環境破壊の原因たる『文明』対しての世界の免疫……という一説がある。しかしこれは、先述した天穹市のメカニズムとの食い違いが生じる。文明を形成したのは、多種多様な生物同士の生存競争に対する人類のアンサーだ。皮肉ながらも、行き過ぎた文明のせいで人類同士が争うことになったがな。

その理屈だと、開拓によって多くの種が絶滅に陥ろうが、家畜として種をコントロールしようが、世界そのものに滅ぼされる道理はない。人類の滅亡で許されるのは、せいぜいほかの種が人類を蹂躙できるほどの力を持つようになってからだろう。

 

それを踏まえて、私は『崩壊』が何故この世界に存在するのかという問題の答えを、私なりに編み出した。

それは、『人類を次の段階に進化させる』為だろう。

私の全てを形成している概念であるゲームには、レベルが存在する。敵キャラ、ミッションなどのあらゆる困難や試練をクリアすれば経験値が溜まり、一定の数値に達すれば『レベルアップ』する。そうすれば、攻撃力や防御力といったステータスが上がり、『進化』する。

つまり、崩壊は人類のレベルアップを促す『試練』ということになる。何より私自身が、天才ゲーマーMとは違う形で、私の才能を刺激されているのが何よりの証明だ。

 

そうなれば、この世界の人類は不憫なことだ。何せこの檀黎斗Ⅲが、対崩壊の最前線に立ち、経験値を独占しているからな。しかし問題ない。人類に試練を与えるのは既に経験済みだ。人類のレベルアップなど、神の才能があれば容易いことだ。

だからせいぜい、崩壊には私の才能の肥やしとなってもらおう。仮面ライダークロニクルを超えた、究極のゲームを作るためにな。

 

……おっと、つい独り言が多くなってしまった。

計画通り、私はデンジャラスゾンビガシャットを起動、ゲームエリアを展開する。

 

”デンジャラスゾンビ!”

 

「さぁ、君はこの試練をどう攻略する?キアナ・カスラナァ……!」




読んでいただきありがとうございました。
独白を入れると、ついつい文字数が多くなりがちです。
チャプター9-1,9-2終了です。ここに何話も使いたくなかったので、オリジナル展開中心にサクッと終わらせました。
皆さんはクリスマスをどう過ごしますか?ちなみに自分は一人です。ご安心を。
もしかしたら、今年中にあと一話は更新できるかも?

まとめを兼ねた人物紹介、要ります?

  • いる
  • いらない
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