仮面ライダーゲンムズ ~崩壊世界と神域のゲーマー~   作:紙コップ113

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有  言  実  行
ギリギリ間に合いました。海淵城の前に、一旦チャプター11-1の方を先に書きます。


虚空の穹、孤独な月

『天穹市南部に崩壊災害発生中』

『付近の方は避難所まで速やかに避難してください』

『天穹パトロールが速やかに避難区域に向かっています 繰り返します……』

 

『キアナ……これ以上崩壊エネルギーに触れてはいけない……!』

『行こう。いまのあなたじゃ何も出来ない。』

 

「何も出来ない?行かないと……!」

 

頭で考えるよりも早く、崩壊獣の攻撃をバットで受け止めて逃げ遅れた親子に叫ぶ。

 

「時間を稼ぐから、早く行って!」

 

親子がこの場から離れたのを確認し、私も崩壊獣の群れから離れた。

 

 

 

 

 

この4カ月。私は全てから逃げ出せる場所を探して彷徨っていた。

だけど、そんなことをしても無駄だと、自分の過去からは逃れられないと私は最初から分かっていた。

この世界に生まれた時から、自分がどんな人間となり、どんなことを成すのかを初めから決まっていた。それも、あらかじめプログラムされたゲームのキャラクターのように。私には、自分の運命を変える力なんて全くなかった。

だって私は、『キアナ・カスラナ』なんかじゃなくて、『K-423』。そして、『空の律者』だから。

 

私が12歳の時、律者の力が目覚め、暮らしていた大地や人々に破壊と悲劇をもたらした。その時まで一緒に暮らしていたパパも、私の前から立ち去って行った。

それから私は、自分が律者だという真実から目を背け、同じところに留まることを避けていた。

彼女たちに出会うまでは…………

 

―――芽衣先輩。

―――ブローニャ。

―――テレサ。

―――それから…………

 

その出会いは私に居場所を与え、この先もずっと彼女達と一緒に居たいと私に願わせた。

たとえどんな危機に陥ろうとも。私の体にウイルスが入ろうとも。

 

だけど、それは叶わなかった。

 

「……キアナ・カスラナァ!」

 

「君が、天命によって生み出された……」

 

「第二律者だからだァァァァァハハハハハハハハ!」

「ヴェアーーハハハハハハハハァー!!」

 

私に感染していたウイルスの男、檀黎斗によって、私が忘れかけていた真実を暴露された。

そのせいで、私のゲーム病は一気に進行し、そのまま消滅……出来なかった。

今思えば、あの場で消滅したほうが良かったかもしれない。そうしたら、彼の神業によって、私は『キアナ』としての第二の人生を歩めたと思う。それも、同じ律者として悲劇的な死を迎えようとも、バグスターとして蘇ったウェンディのように。

 

気を失った私は、フカの手で天命本部に連れ去られ、オットーの手で第二律者に覚醒した。

律者は本部の戦乙女や私を助けに来たハイペリオンを襲撃し、更には世界中にバグスターウイルスを散布した。

あの時、私は見ることしか出来なかった。崩壊獣によって、ネゲントロピーの機甲が破壊していく様を。バグスターウイルスによって、多くの人々が苦しむ姿を。そしてこんなバカな私を根気よく指導してくれた先生を自分の手で殺めた光景を。

 

「姫子先生…………。」

 

彼女の最後の授業は、もはや呪いに近い存在になっていた。

初めての実戦で、彼女はこう言っていた。「もし仲間が崩壊に支配されたら、迷わずその命を終わらせなさい」と。だけど彼女は、律者になった私を救う方を選び、その命を散らした。

 

「いやぁぁぁぁぁ!」

 

「……!?」

 

住民の甲高い悲鳴に私は現実に引き戻された。

悲鳴の方を向くとそこには……

 

「ゲンム!?」

 

住民を襲っていたのは、バグヴァイザーをドライバーとして使っている白いゲンム、ゾンビゲーマーレベルXがいた。

どんな理由かは知らないけど、このまま放っておけない。

 

「行かなきゃ……!」

 

『罠だキアナ!今の彼は、確実にあなたを殺す!』

 

「うるさいよ!アンタが言えるような立場じゃないでしょ!?」

 

頭の中にいるフカの忠告を押し退け、私はゲンムに突撃した。

 

「黎斗!その人から離れろ!」

 

「ァ?ヴァハハハハハァーーー!」

 

ゲンムは私の方を向いて高笑いし、私に突撃してきた。

咄嗟に双銃を構え、ゲンムの胴体を撃ち抜くが、少し仰け反っただけでその足は止まらない。

ゾンビの如く薙ぎ払う腕を受け流し、顔面を蹴り飛ばす。

 

とにかく今は、あの人が逃げるだけの時間を稼げばいい。適当にあしらってこの場から離れて……

 

「ヴァァァァァ!」

 

後ろから呻き声を上げたゲンムがもう一人現れた。周囲を見回せば、また一人、もう一人と、ぞろぞろと同じ姿のゲンムに囲まれていた。

 

「フフフフ……崩壊現象を中心に分身を配置すれば、こうもアッサリ見つけられるとはなァ……!」

 

「黎斗!?」

 

彼の眼差しは、仲間を心配する目ではなく、格好の獲物を見つけた狩人の目をしていた。

 

「さぁキアナ、ゲームマスターの私と共にハイペリオンへ帰ろうじゃないか。心配するな、芽衣やブローニャは君を待っている。」

 

「グッ……!」

 

ハイペリオン……。確かに、自分の身がボロボロになろうとも、芽衣先輩は律者になった私を止めようとしてくれた。でも……。

 

「……悪いけど、もうあそこには帰れない。」

「もし私がハイペリオンにいたら、確実に天命に狙われる。そしたら、芽衣先輩たちは確実に殺されるよ。」

 

「フッ……そう言うと思ったよ。」 ”ガッチョーン!”

 

黎斗はバグヴァイザーを装着し、デンジャラスゾンビガシャットを装填した。

 

「変身。」

 

”バグルアップ! デンジャラスゾンビ!Woooo!”

 

「君が帰還を拒絶するなら、私は君を……『空の律者』として削除するまでだ。」

 

黎斗はそう言い放ち、私の方へ突撃した。

 

……私は空の律者。人類の敵。戦乙女としての責務を果たすなら、この場で死ぬのが正解かもしれない。だけどここで死んだら彼女は……

 

「ヌゥン!」 「ガハッ!?」

 

一瞬の迷いを突き、ゲンムの拳が私に当たる。

吹き飛ばされて受け身を取り、苦し紛れの銃撃も意味なく弾かれた。

 

「私はまだ……死ねない……!」

 

「お前は既に人類の敵だクズ!死ねクズゥ!」

 

攻撃を防ごうにも、試験で戦った時よりスペックが何十倍にも上がっていることが身をもって感じ取れる。

 

「グゥッ……ネコォ……チャーム!」

 

ネコチャームで叩きつけるも、エネルギーはすぐに飛散し、何のダメージも与えられなかった。

 

『ダメだキアナ!これ以上崩壊エネルギーに触れたら……!』

 

「うるさい!あんな奴に殺されるなんてまっぴらごめん……グアッ!?」

 

お前の力では……あの男に勝てない。

 

「ハァ……ハァ……アンタの思い通りなんかに……させない!」

 

何を言う。その器は、私の為に用意されたんだ。お前の指図を受けるつもりはない。

その体を……寄越せ!

 

「グッ……アァァァァァァ!!」

 

「やはり律者の意識が回復しつつあったか。だったら……!」

 

”ガシャコンソード!” ”ガシャット!” ”キメワザ!”

 

ゲンムはガシャコンスパローに真っ白なガシャットをセットし、刃に白いエネルギーを充填させる。

 

「ブハハハハハ!もう一度ご退場願おうか律者ァ!」

 

そのまま私の胸部をキメワザで切り裂き、大きく吹き飛ばされた。

 

「グッ……ガハッ……ハァ……ハァ……!」

「……あれ?」

 

何とか体を起こした頃には、さっきまでの律者の気配が薄くなっていた。

 

『律者の力が……抑え込まれた……!?』

 

「ようやく気付いたか。」

「無量塔姫子が君に注入した薬剤を覚えているだろう?私の手に掛かれば、それをライダーシステムに組み込むことなど容易い……!」

「そう、第二律者など、私の前では赤子同然となったのだァ!ヴェハハハハハァーー!」

 

「……何が目的なの?」

 

黎斗のことだ。私を助けたのにも善意だけじゃない。彼には疑いを持たざるを得なかった。

 

「君のゲーム病が進行しなかったのは、第二律者の力があったからだ。それさえなくなれば、君を消滅させ、私の夢が果たされる……!」

 

ベルトからバグヴァイザーを取り外し、私の方へ歩いてくる。

 

『……まさか!?いけません!』

 

私の中にいた委員長が、ゲンムの腕とバグヴァイザーを掴み、歩みを止めた。

 

「フカか。何故君がここにいる?」

 

『第八の神の鍵……『渡世の羽』の第零定格出力によって、私とキアナの意識を結びつけました。』

 

「……何故だ?崩壊の化身である律者と行動することが、君にメリットがあるとは思わないが。」

 

『姫子先生が命を懸けた最後の授業を無駄にしないためです!』

『彼女は授業を通しこう言いました。「この完璧じゃない世界を変えなさい!」、「生きなさい」と!』

 

「だからどうした?彼女は生きる価値もない奴の為に死んだ!ゲームマスターの私との取引を破ってな!既に授業に何の意味もないのさァ!」

 

ゲンムは委員長を振り払い、殴り飛ばした。

そのまま私にバグヴァイザーを向け……

 

「さぁ、消えてもらおうか。」

 

バグスターウイルスを散布した。

その瞬間、ずっと感じてなかったゲーム病の苦しみが一気に呼び戻された。

 

「グッ……ガァッ……アアアアアアアアアアアァァァ!」

 

「フハハハハハ!この時をどれだけ待ち望んでいたかァ!」

 

『黎斗さん……あなたって人は……!』

 

「……嫌だ……!嫌だぁぁぁぁ!死にたくない!いやぁぁぁぁ!」

 

「いいぞ!苦しめ!もっと苦しめェ!お前は戦乙女の器じゃなかったのさ!私が完全体となるための、生贄となるがいい!」

 

『これ以上は……!キアナ!』

 

「させるかァ!」

 

私の方に駆け寄ってくる委員長はゲンムに阻まれ、一方的に殴られている。

 

「誰……か………………助け…………」

 

 

 

 

 

 

 

パリィン!

私の視界にある空間のガラスが割れ、コツン、コツンと、誰かの足音がする。

深紅の装甲を纏い、片手に大剣を持つ彼女は、そのまま私の横を素通りした。

 

それは、私がずっと求めていた響きだった。

だけど、それは私のような哀れな人を救ってくれる恵みではなかった。

 

―――キアナ

 

―――何を待っているの?

 

彼女が言った言葉は、決して甘い言葉ではない。救いを与えず、ある意味厳しい言葉だった。

ここにいない彼女はガラスのようにひび割れ、姿を消した。

だけど、道を見失っていた私を導いてくれた。

 

「…………分かった。」

 

見失っていたものが、やっと見えた。最後の授業、やっと理解できたよ、姫子先生。

 

「この完璧じゃない世界を……私の望み通りに変えて見せる……!」

 

 

 

 

 

「フッ!ヴェアァ!」

 

『グハッ……!キアナは……死なせない!』

 

「死なせないだと?この都市に住む者は彼女の死を望んでいるだろうがなァ!」

 

「アアアアアアアアアアアッ!」

 

私は手に持った亜空の矛をゲンムに振りかざし、委員長から引き離す。

 

「グアアアッ!」

「…………何だ…………その力は!?」

 

「ウアァァァァァァァ!」

 

とにかくゲンムを倒し、生き延びる。そのことだけを考えて、がむしゃらに矛を何度もゲンムに叩きつけた。

 

「ハァァァァァァァッ!」

 

そして、ゲンムの胸部に槍を突き刺し、吹き飛ばした。

 

「グアァァァァァァ!」

「グハッ……!ガァッ……!?」 ”ガッシューン…”

「律者の力を……制御出来たのか……!?」

 

ダメージが蓄積されたゲンムは変身加除された。

 

『キアナ……あなたは、自分の意志で空の律者の力を抑えた。』

 

委員長の言葉を聞き、私はその場で力なく座り込んだ。

ゲーム病の症状は既に引いていた。だけど、胸の苦しみはずっと晴れなかった。

気が付けば両目からは生暖かい水が溢れ、私は泣きじゃくっていた。

 

「……もっと早く抑えられたら……もしかしたら……!」

 

私の心に残ったのは、後悔。あの時、律者の力に負けなかったら、大崩壊なんか起きなかった。

 

「キアナ、仮定の話をするのはナンセンスだ。律者の力をコントロールしたのは、意味もない懺悔をする為でないはずだ。」

 

倒れていた黎斗は起き上がり、私にこう語りかけた。

 

『姫子先生が見たいのは、あなたが懺悔する姿じゃない。』

『あの人が命懸けで最後の授業をしたのは、あなたを信じていたから。あなたが全てを変えられると信じていたから。』

 

「分かってる。もう二度と、過去の苦しみに溺れたりはしない。姫子先生との約束を果たす。」

 

「信じていたから……か。」

 

『黎斗さん……お願いします。どうかキアナに、もう一度チャンスを与えてくれませんか?』

 

「……ゲームマスターの取引と同等の価値があるとは思わないな。」

 

「もし私がまた律者に吞まれたら、その時はアンタの好きにしたらいいよ。」

「だけど私は最後まで、このゲームから逃げたりはしない。私が望むエンディングにたどり着くまでね。」

 

「……フッ、いいだろう。せいぜい私を失望させるなよ。」

 

「行こうキアナ。まだまだ道は長い。やるべきことも、数えきれないほどあるのだから。」

 

止まっていた時間が動き出した気がする。私たちは、再び歩き始めた。

 

暗闇だった空も、気付けば太陽に照らされていた。




読んでいただきありがとうございました。
このチャプターで流れた『アメイジング・グレイス』って曲なんですが、直訳すれば『素晴らしき神の恵み』なんですね……。この小説だと意味が変わってくる気がする。

それはさておき、6月から投稿し始めたこの小説も今年はこれでおしまいです。
良いお年を!

まとめを兼ねた人物紹介、要ります?

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