悪名高き都市に転生した男の話   作:アオコクモツ

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前話ですが、一部だけ大きく修正を入れました。


独りぼっち

 

 

 

 

 

 

どれだけ泣き叫んでも、懇願しても汚い笑い声が帰ってきて、男の手を引っ搔いて抵抗しようとしても顔を殴られ手にナイフを刺されて、そのまま枷で手を椅子に拘束された。

 

口の中に、ミレイの肉を何度も何度も押し込まれ、その肉が全て口の中へ、そして胃の中へ収まった後、私はようやくあの男の狂乱のから解放された。

 

「ハァ...ハァ.......ヴぇっ.....」

 

もう泣く気力すら起きない、泣き叫んで、暴れて、体力なんてとっくに使い切っていた。

 

ただただ、深い絶望とさびしさ、苦しみが心の中を満たしていた

 

気持ち悪い

 

「エ゛ッ.....エ゛ゥッ....」

 

爆発しそうな感情がこみあげ、吐きそうになる。

 

「エ゛ッ.....エ゛ッ......、!?な、なんで......」

 

だけど、吐けない。何度吐こうとしても、胃のモノが喉元までせり上がり強制的な食事によって傷つき、出血した喉をただれさせても尚、こみあげてきたソレはそれ以上昇っていくことを拒否しているかのように戻っていく。

 

体が吐くことを拒絶していた。

 

なんども吐き出そうとして、殴られ、そのまま押し込まれて行くうちに体が物を吐き出すことに恐怖を感じるようになっていた。

 

気持ち悪い

 

くるしい

 

さびしい

 

なのに

 

「エ....エヒッ....エヒヒッ....アハハッ.....」

 

どうして、笑いがこみあげてくるのだろう

 

暗くて、そして気持ちのいい笑いがこみあげてくる。

 

こんなにも寂しいのに、ミレイに対しての言葉にできない感情でつぶれてしまいそうなのに、抵抗した時の手足の痛みで泣き叫びたいのに

 

「エヒヒッ....アハハッ...!」

 

心は凪いでいた、何も感じなかった。

 

今にでも決壊しそうな感情とどこまでも静かな心が両立していた。

 

ただ、そんな心とは裏腹に狂った様な笑いしかこみ上げてこなかった。

 

「アハハハッ!.....アヒャッ!」

 

なんでこんなに苦しいのに、そして何故か何も感じても居ないのに笑っていられるのか自分で自分が理解できなかった。

 

「イヒッ...アハハッ.!」

 

ただ、それが自らの心を守る最後の抵抗だとも知らずに。

 

 

 

 

 

笑いが止まらなくなっている私を尻目に、あの男はまだ興奮が収まらない様子だった。

 

今まで用意していた料理を運ぶためのカートや料理の皿などをかたずけていた。そしてあの悍ましい笑顔を顔に張り付けたまま、なにかを準備していた。

 

私は、混濁した意識のまま笑い続けていて、男がなにかを準備していたことに到底気づいてなどいなかった。

 

 

 

 

 

気が付くと私は、なにかをえぐりだすためにあるかのような鉤や固定器具などの様々な器具に囲まれていた。

 

その異様な様子に、意味もなく出ていた笑いが一瞬にして収まった、頭の中がサッと冷めて、ただただ周りの異様な状況に困惑することしかできなかった。

 

『先ほどから随分と楽しそうでしたねぇ、よっぽどお友達を食べれたことに満足したのですか?』

 

男は煽っているわけでもなく、本当にそのように考えたかのような純粋な疑問の声で言葉を投げかけてきた。

 

その瞬間、その言葉に今まで色々と押さえつけられていた感情が冷めた頭に沸々と思いが込み上げてきた。

 

 

そうだ、こいつのせいだ、ミレイが死んだのはこいつのせいじゃないか。

 

 

「...お前が...お前の、お前のせいで!お前の!!!」

 

ミレイと私を騙したことに対する怒り

 

私達を数日間閉じ込めたことに対する恨み

 

そしてミレイを殺した事に対する、憎悪

 

ドス黒い感情が心を埋め尽くしていく、目の前の男が憎くて憎くて仕方なかった。

 

「...殺す...殺してやる....お前を!!絶対に殺してやる!!!」

 

「これを外せよ!今すぐにでもお前の首元にナイフでもフォークでも突き立ててやる!!!」

 

あの男を、いや、アイツに対する殺意で腕を枷から外そうとガチャガチャと必死に動かした。

何度も何度も強引に動かしたことで、いつの間にか枷で拘束されている腕の一部が青紫色に変色していた。だが、怒りで目の前が真っ赤になっていてそんなことには気づきもしなかった。

 

枷を外そうとしている私をアイツは笑顔で見つめながら

 

「返せ!ミレイを返し....グハッ!?」

 

突然、私の脇腹を蹴ってきた。

 

「カヒュ____!?!?、カヒュ____!?!?」

 

『あー、暴れられるとこれからやることに迷惑なので、ちょっと黙っててください。』

 

突然脇腹を蹴られたことで鈍痛が走る、その痛みで薄れていた恐怖が沸き立ったが、依然として殺意は消えず、依然として抜け出して一矢でも報いる為に枷を外そうと何度も手を動かした。

 

それほど時間のたたないうちにアイツは戻ってきた。手には何かを抉るために使われるようなノミのような物を持っていた。

 

鈍く光るノミはどことなく不安感を煽るように不気味に光り輝いていた。

 

『まだ、私のフルコースは終わっていません、まだ一つだけ残っています。』

 

男は不気味な表情を浮かべ、ノミを私にちらつかせてきた。

 

私は、その異様な様子に気圧され、言葉を発することが出来なかった。

 

『貴方の暗く沈み込みそうなその目と彼の青く透き通ったその目』

 

男はニヤリと笑い、私の肩に手を乗せた。

 

そうして笑いながら、悍ましいことを口にした。

 

『貴方の片目をあの透き通った目に交換したら、まるで夜と昼のコントラストの様ではありませんか?』

 

 

 

 

 

一瞬この男の言っている事が分からなかった。

 

何を言っているんだこの男は、目を取り換える?おもちゃでは無いのだから人間がそんな簡単に目を取り換えることが出来るわけが

 

「....は?何言って」

 

ここでなぜ男が周りに鉤や固定器具などの様々な器具を準備したのかを悟った。

 

まさか、この場で始めるつもりなのか?

 

「まさか...あぐっ...!!!」

 

その事実に気づいた次の瞬間、男が頭を掴み頭を上向きに固定した。

 

「やめ...やめてください!」

 

これから起こる出来事を察して冷や汗があふれてきた、固定された顔を必死に小刻みに揺らして懇願する。だがそんな事、男は知ったことではない。

 

「やめっ...あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!!」

 

片目にノミが触れ抉られた。その瞬間鋭い激痛が目から全身に伝っていく。

 

「あ゛、がああぁああぁっ!!! が、う゛、ぐぅうぅっ、……!!」

 

痛い、そんな言葉では言い表せないほどの激痛が体を貫く

 

『ほら、もうすぐ取れ、あら?この筋が切れっ...お、初めてにしては上出来なのでは?』

 

そういいながら何度も何度も何度も私の目の周りにノミを突き立てた

 

「ひぎっ!?、ぎ、があっ、ああぁぁあっ!!!」

 

『お!取れた!これなら縫合も、いやここはあれを使おう...』

 

なんどノミを突き立てられたのか分からない、永遠にも思えるような激痛を味わい、ようやく男がノミを突き立てる手を止めたとき、男の手には瞳孔の黒い眼が乗っていて

 

「はあっ....はあ.....うぅ....あぁ....」

 

私の片方の目にはぽっかりと穴が開いていた

 

もう激痛で何が起こっているのか分からない、自分がどんな状況なのかすらわからなかった。

 

 

 

ただ、苦痛に休みなんてものはない。

 

『では、いよいよこれをはめ込みますか』

 

その瞬間、空いた目の穴になにかがねじ込まれる、その瞬間一瞬だけでも引いた痛みがまた立ち上ってきた。

 

「....!?ぎぃ、がぁぁぁあああぁあぁあ!!!!!」

 

苦痛には暇は無く、何度も何度も押し寄せてきた。

 

目の奥で激痛と共になにかがつながっていく、それが何なのか私には分からなかった。

 

 

そうしてとても長くて短い様な苦痛を味わった後

 

『おぉ、繋がった!これぞ夜と青空のコントラスト....とても美しい、これにて私のフルコースは完成した!ありがとう....あぁ、もっと別のコントラストも見たい!例えば...』

 

そんな男の声を聞きながら、私の意識は暗闇へと落ちていく

 

「...ミレイ」

 

もう居ない私の友達の顔が浮かび、その名前が口から零れ落ち

 

そうして私の意識は途切れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付くと私はいつも張り紙を出していた裏路地の隅で蹲っていた。

 

「.......ぁ.....ぅぁ....」

 

ここは....いつもミレイと来ていたあの場所。

 

「ぅ.....イタ.....あっ!?」

 

右の目に鈍痛が走って痛い。いままで見えていた景色と違う。右目だけが微妙に視力が異なっているかのようで、距離感が合わず転んでしまった。

 

それよりも、何故か数日間の記憶があやふやになって思い出せない。なにか辛いことがあった気がする。ただ、それが何か思い出せなかった。だけれども、何か悪い夢を見ていたような気がした。

 

「....とりあえず...ミレイの所に帰らなきゃ....。」

 

とりあえずあの場所に帰らなきゃ、数日間も居なくなってたのだからミレイもきっと心配しているだろう。

 

「...ウグッ.....い、痛い...」

 

靄がかった記憶が心をざわつかせる、それと同時に右目が強く痛んだ。

 

何か大切なこと、それでいて思い出しちゃいけない記憶

 

痛みで足元がおぼつかず何度も転んでようやく、私たちの廃墟に着いた。

 

ミレイにあったら謝らなきゃ、数日間も居なくなっていたこと。

 

そんなことを考えながら扉を開ける。

 

「誰も居ない?」

 

中には誰も居なかった。それどころか数日間誰も居なかったかのようなそんな気配までした。

 

「ミレイ...」

 

中に入って探している内に霧がかかっていた記憶が晴れてきたような気がする。

 

そういえばあの時、私って....

 

その時、ちょうど探していた場所にあったヒビの入った鏡が目に映った。

 

鏡に映った私の右目には

 

 

「....へ?」

 

 

透き通るように青いくて水色の混じったような目、ミレイの瞳がそこにはあった。

 

 

その瞬間この数日間の記憶が一瞬にして蘇る

 

ミレイと私が男に捕らわれた記憶

 

牢屋に何日も閉じ込められた記憶

 

晩餐会の記憶

 

そして、ミレイのことを食べた記憶

 

ミレイの目を私に移植させられた記憶

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ....じゃあ...あの出来事は夢じゃなかったんだ...。」

 

目の前の景色が歪んでいく

 

「あぁ、アハぁ、ハハハ、あはは」

 

衝動的に目の前の鏡を壊してしまった、散らばった鏡の破片には右の青い眼だけが映っている、そう映っている?全てが青くて水色で

 

一つだけ黒い、黒い?黒くてもろくて今にも砕け散りそうな破片

 

その破片をこぶしで潰した。その後、他の破片、青の破片も水色の破片も黒の破片も、床が赤く染まるまで何度も何度も殴り続けた。

 

 

「あ、あは、ぁはぁ、はハは、は、ァはは、あ、あぁあアあぁぁ!!!」

 

 

 

その時、私の中の何かが音をたてて壊れていった。

 

 




壊れちゃった...(カイルが)

あとオッドアイ(後天性(物理))になりましたね!

そういえばミレイ君って身零(カラダ無し)ともかけるんですね、執筆中に気づきました。
これからも最低限週1回は投稿できるように頑張っていきたいと思っています。

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