悪名高き都市に転生した男の話   作:アオコクモツ

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最近夏バテ気味です。

一気に時系列飛びます。


封筒

 

 

 

 

 

 

暗い、どこまでも暗い空間で座っている。

 

 

周りを見渡しても何もない。ただ、暗い闇だけが広がっている。歩き続けても、歩き続けてもどこにも着くことができない。

 

 

歩いて、歩いて、歩き続けて

 

そうやって歩き疲れていって、いつしか立ち止まり座り込んでしまった。

 

どれだけの間そうしていたのか分からない、だが気が付くと目の前に誰かの気配がした。

 

顔をあげると白い人影が俺の前に立って俺を見つめていた。

 

その人影の下だけ、青いような、水色のような草が生えていてその下は水のような透き通った地面だった。

 

「....ミレイ?」

 

思わず手を伸ばそうとする、だけどその手は人がけに触れることは出来なくて、そのまま体をすり抜けた。

 

その人影の表情までを読み取ることは出来ないが、その人影の気配から、もし浮かべているとしたら悲しい表情なのだろうか。

 

そんなその人影は霧散していき、周りの景色は一転する。

 

 

 

不快な音楽、目に焼き付いた装飾、そして何より

 

『あぁ...素晴らしい...素晴らしい芸術...これこそ私の美!明確なビジョンだ!さあもっと食べて!飲み込んで!』

 

あの忌々しい不気味な笑顔

 

そして気が付くと、口の中に鉄の味が広がっている。

 

確認しなくても分かる、きっと、これは、ミレイの

 

 

 

 

 

 

「______ッ!?!?」

 

まだ日も昇らず薄暗い自室で目が覚め、飛び起きた。

 

「はっ....はぁ....」

 

まだあの感触が口の中に残っている。あの味が口にこびりついている。

あの日の出来事の何もかもがある種の固執のようにグロテスクに反芻され、悪意が満ちていた。

 

吐き気がし、這うようにして洗面器まで駆け寄る。

 

「んぶっ.....オエ゛ェ゛ェ゛ェ゛....」

 

胃の中からせり上がってくる感覚、今でも慣れることはない。口を抑えて何とか鎮めようとしても到底抑えることのできるモノでは無く、さして時間もたたない内に、このドロドロとした気分と共に吐き出した。

 

あの日からもう何年たったのか分からない。

 

最初、私はそばにあった鏡の欠片で喉を切り裂こうとした、だが喉を切り裂く寸前で手が止まってしまった。その時、俺はミレイが生かしてくれたのではないかと思った。

 

ただまぁ結局のところ、私がどうしようもなく生きたがっていたことを正当化しただけなのかもしれない。

 

あの日から自分の中で何かが変わった。

 

生き抜くための方法に躊躇しなくなっていた。どんな汚い手を使ってでも、絶え間なく生き抜くための方法を探していた。

 

どんな汚い手を使ってでも、騙し、騙され、時には...というより頻繁にだが殺しを重ねてでも生き抜いていった。

 

そして、そうやって生きていくうちに、二度目の生の記憶に押し出されていくかのように、前世の記憶がぼやけていく、記憶の端から徐々に薄くなり、少しずつ、少しずつ抜けていった。

 

それに比例するかのように少しずつ精神が都市の人に近づいているのだろう。

 

その証拠に、以前のように人を殺しても激しく動揺したり、精神が不安定になるようなことが無くなっていた。だから気にする事じゃ無い。

 

気にする事じゃ無い。

 

気にする事じゃ無い。

 

気にする事じゃ無いのに。

 

殺してきた人達の表情を忘れることが出来ない。

時折殺してきた奴の顔が脳裏をよぎり、頭から離れなくなることがある。その度に手が血で汚れているように見える。洗っても洗っても落ちることなく、石鹸を使っても、擦っても、ヤスリで削って、痛みに耐え、血を流しても、その血は手にこびりついて落ちることなんてなかった。

だから、血に染まった手を見たくないが為に私は手袋を付けた。何色にも染まることのない黒い手袋。

この手袋は一種のお守りのようなもので、溢れ出る感情を覆い隠してくれる。

そうやって自分を守りながら行きてきた。

 

ただ、結局のところ私がここまで生きてこれたのは、運が良かっただけなのかもしれない。

 

もし運が良かっただけでも、その運を無駄にしないために、そして自分の中で自殺の回避を正統化していただけとしても、ミレイがつないでくれた命を無駄にしないために、観察して、学習していった。

 

そうやって育っていた後、私は他の巣の裏路地に行くことに決めた。

 

初めてW社の区画から出ていったとき、その治安の差に驚きはしたが、程度の差は有れど殺し、殺される光景が変わることはそこまでなかった。

 

そして私はこの年まで生き残った。自分なりの考え方をもって

 

私は今、V社の巣の裏路地でフィクサーをやっている。

 

「....んぶっ....うぅ....」

 

胸の中の様々な感情を吐き出すと、いつの間にか空が明るくなっていた。

 

悪夢はほぼ毎日、寝ている時に頭をよぎり、そのたびに胸を締め付けてくるが昔よりは頻度は減っている。けれどもいまだに心の痛みは、あの日から癒えることなく茨のように私の心を締め付け、その棘は私の心に血を流させる。

 

「....行くか。」

 

食欲はないが、食べなければ生きていくことは出来ない。胃に最低限の食べ物を流し込んで部屋を出た。

 

そうしていつものように事務所に向かう。

 

俺が所属している事務所は余り立場の良い事務所じゃない。入ってくる仕事の量も多くはない。ただ、事務所のトップが他の事務所とコネを持っているからか、同じような立場の事務所よりは仕事の量も多いのだろう。

 

それに普段は何かと嫌味ばかり言ってくるが、実力主義者でもある。その証拠として7級に昇格した時は、以前よりも多く仕事を回してくれたりなど、色々と助かっている。それはそれとして事あるごとに投げかけてくる嫌味には辟易しているのだが。

 

道中、野郎達が喧嘩しているのか、喧騒が聞こえる、聞こえてくる会話的に恐らく騒音問題辺りだろう、だが気にすることはない。いつものことなのだから、構っている方が時間の無駄だ。

 

そうして事務所に入り、いつものように来た依頼を確認しようとデスクに向かう。

 

だが、今日はいつもと違いデスクの上に封筒が一枚置かれていた。任務だったら書類がそのまま置かれていることが多いのだが、その封筒は小奇麗でとても上質なモノを使っているのか、いつも見ている書類よりもくすんではいなかった。

 

「....ん?なんだこれ」

 

俺個人に宛てて依頼でもくることなんてあるのか?などと思いながらその封筒を手に取った。その封筒は黒く、急いで封を開けると

 

「....は?」

 

前世で私が青春を捧げてまでハマっていたゲーム。

 

「...嘘だろ?」

 

L社、ロボトミーコーポレーションのロゴが書かれていた。

 

 

 

 

 

 

急いで近くにいた同僚にこのことを話してみると。

 

「...は!?!?!?!?

つまり、支社とはいえ翼に内定したってことか!?応募した覚えもないのに!?」

 

同僚は飲んでいたコーヒーを噴き出して目を剥き、声を荒げてきた。

 

「....うーん、これ...どうしよう、マジで」

 

頭を抱えてそう聞いてみる。本音を言うならば入ってみたい。あれほど熱中したゲームの舞台だ、本社ではないにしろその一端を感じることができるなんて事は今後一生ないだろう。

死体なんてもう見慣れた、殺しも慣れた、こんな血で汚れてしまった私でも何かを成せるかもしれない。

元々前向きに考えては居たが、幻想体を抽出することに使われたり、都合よく利用されて殺されるだけかもしれないと考えて、少し足がすくんでしまう。

 

そうやって悩んでいたところに同僚が背中を叩いてきた。

 

「せっかく巣に入社出来るのになんでそんなに悩んでんだよ、最近は煙戦争が起こったせいで南部はどこも人材不足らしいからな。一生に一度しかないチャンスかもしれねーだろ?やってみりゃいいだろ、死んだらそん時はそん時だろ」

 

そうやってがははと笑いながら、背中をバンバンと叩く同僚に背中を押され

 

「...やってみるか...入ることにしてみるよ。」

 

 

どこか不安ながらも、入社を決意した。





カイル:22歳、10年たってもトラウマが抜けない一般7級フィクサー、黒色の手袋がある意味精神安定と化している。

同僚:特に設定を決めてない8級フィクサー、豪快で良い人だけどこういう人は長くは生きれないのよね。

____________________________________________

L社の職員の選考基準はトラウマを持っている人なので余裕で条件満たしてますよね!(白目)

えーと....投稿が遅れて大変申し訳ありませんでした(DOGEZA)

これから大きく物語が動きます。お楽しみに!

あと、個人的な都合の結果、しばらく執筆ができない環境になるので数週間は投稿ができなくなります。その間設定とかもろもろ練ったり今まで投稿した過去話の誤字など修正します。

オリジナルアブノーマリティを出しても良いか否か

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