悪名高き都市に転生した男の話   作:アオコクモツ

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前話の内容を結構変更いたしました。
主な変更点としては、カイルくんの人間性の補完などです。


Lobotomy Corporation編
入社式


 

封筒が届き、L社に入社する事を決意した翌日、今まで所属していた事務所のトップに辞表を出した。トップはその辞表を受け取った直後、目を細めこちらを睨みつけてきた。

 

「お前、本気なのか?」

 

こちらを睨みつけてくるトップに対して若干の恐れと罪悪感を抱いた。だが、一度やりたいと決めた事なのだから今更撤回することなどない。というか、そんなこと、この人はなおさら許さないだろう。

この先、どうなるのかは誰にもわからない。L社に入社した後、死んでしまうのかもしれない。はたまた死ぬよりもつらいことになるのかもしれない。

だが、もし死んだ時に後悔の無いように生きたい。

そう思って、依然としてこちらを見透かすような視線を向けてくるトップに向き合った。

 

「本気です、やりたいことが見つかったんです。だから、ここを辞めます。」

 

トップの目が一層鋭くなり、足を組んで机に肘をつき、頬骨をつく。

 

「ここもそこまで悪い所じゃないだろ、なぜ?」

 

言いたいことは分かる、この都市において元居た組織を抜けるということはそれ相応のリスクがある。一般的には新しい組織でまた一から始めなければならないということ、それが意味することは、新しい所に馴染めなくても元の組織には戻れず、たとえ苦痛だったとしても新しい組織に馴染まないといけないということだ。そして、組織によっては一度は言ったら出られない組織だってある。組織を抜けることは分の悪い賭けのようなものなのだ。

 

だけど、私は選んだ。

 

「ここも悪い場所じゃ無いと思っています。いや、むしろ自分にとってもったいないような良い場所だと考えています。」

 

「そうか、じゃあ「ですが、後悔したくないんです。」」

 

トップは少し驚いたようにこちらを見つめた。

そして、私もこちらを見ているトップの目を真っ直ぐと見つめた。

 

「もし、立ち止まって後ろを振り返った時、動かなかった自分に後悔したくないんです。」

 

「.....」

 

互いにしばらくの間無言の時間が続く。先に沈黙を破ったのはトップだった。

トップは軽くため息をつくとデスクから立ち上がり、私に近づいてきた。

最初は、なにか言われるのかと思って軽く身構えていたのだが想定とは違い、私の方に手を置いていつもよりもどこか柔らかい口調で語りかけてきた。

 

「まあ、精々頑張りな。応援だけならしてやるよ。」

そう言ってトップは部屋を出ようとドアを開ける前に立ち止まり、もう一度こちらを向いた。

 

「あ、そうそう言い忘れてた。」

 

「これだけは忠告しておく。抱え込みすぎるな、色々なことが積み重なってどうしようもなくなった時は誰かに一度話してみろ。潰れる前にな。」

 

それだけ言うとトップは今度こそ部屋から出ようとドアノブに手をかけ部屋を出ようとした。

いつものトップらしくない言動で少しだけ困惑していた。だが、少しだけ心が温かくなったような気がした。

 

「今までお世話になりました。」

 

そう言葉を掛けるとトップは一瞬だけ固まったが、直ぐに片手をあげその部屋を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間が過ぎ去るのは早く、あっという間に入社式の前日になった。

準備を済ませ、部屋を出る直前になって、部屋の中をもう一度見渡した。この日が来るまで長く住んできたこの部屋は、私が住んでいた時と殆ど変わらない。相変わらず少し暗く、コンクリートの壁が天井の電気の光を反射して鈍く光っていた。

元より最低限の生活必需品以外に殆ど購入していなかったからか、荷物整理が出来るような荷物などなく、今この手で持っているバッグの中の生活用品以外に何も持っていくものなどなかった。

何年も住んでいたこの部屋に思い入れが無いわけでは無い。だが、この部屋で過ごした日々は、毎日が繰り返しのようでどこか空虚だった。

今まで過ごしてきた部屋にさよならを伝えるように、私はゆっくりと扉を閉めた。

 

封筒に入っていた資料を読むと、どうやら私は、都市の北部、X社のロボトミ―コーポレーション支部に内定しているようだ。ここからだとW社の区を経由しないと向かうことは出来ない。だが、

 

 

絶対に行きたくない。

 

 

どうしたものかと悩みながら歩いていると、ワープ列車の看板が目に留まった。

 

そうだ、ワープ列車があったじゃないか。一般席であっても多少座席の料金が嵩む、というより結構痛い出費なのだが、23区を経由するよりもよっぽどマシだ。

…何か忘れている気がするのだが、気のせいだろう。どちらにせよ23区の裏路地より酷いことなどそうそうあるはずが無い。

そう思い立って、しばらく歩いているうちに、ワープ列車の駅にたどり着いた。

一般席の切符を買い、電車の到着をプラットフォームで待つ。先ほどから何故か腹痛が起きていて、凄く嫌な予感がするのだが、それを気のせいだと思うようにした。

 

”まもなく、X社行きXW-362ワープ列車。まもなく到着いたします。”

 

そのアナウンスが流れた直後、目の前にワープ列車が到着した。

その中に入ると、中は青色の光でどこか無機質な印象を覚えた。

その中の自分の席に、座っていると、徐々に他の乗客たちも続々と列車に乗りそのうち全員が着席を終えたようだった。

 

”発車、10分前です。お乗りになられていないお客様はお急ぎになってくださいますよう、お願いいたします。”

 

…先程よりも嫌な予感が強くなっている。ただ、もう座ってしまったのだから今更引き返すという選択肢はない。そのまま座ってワープ列車の発車を待ち続けた。

 

”この電車は今よりワープします。シートベルトがしっかり着用されているか今一度お確かめください。”

 

無意識にシートベルトを握る手に力が入る。何かとんでもないことを忘れてしまっている子がするのだが記憶が朧気で思い出すことができない。何を忘れているのかを思い出そうと頭を悩ませている内に

 

”では、ただいまより。ワープを開始します。”

 

ワープ列車は出発した。

 

 

 

 

 

 

 

入社式当日、私はL社X支部の前にいた。

特異点の情報流出の対策なのかどうかは分からないが、周りが開けており、少し遠くにビルなどの建造物を見ることが出来た。外見は普通の建造物よりも大きいビルのような建物なのだが、何匹も幻想体を収容できるような大きさではない。恐らくロボトミー本社の様に地下に広く広がっているのだろうと推察することができた。

 

支部の中に入ると、地下へ行くためのエレベーターに案内された。どうやら階段もあるようなのだが今は使う必要は無いだろう。エレベーターに乗るとドアが閉まり、そのまま地下へと動き始めた。

僅かな時間を経た後、ドアが開いた。その先は黄色いライトで部屋全体が黄色い印象を覚える大きな部屋が広がっていた。恐らくだがコントロール部門のメインルームなのだろうか。

 

「おーい、何ボケっと突っ立ってるんだ?早く来いよ」

 

部屋にばかり気を取られていたら声を掛けられた。慌ててそちらを見ると既に4人ほど集まっている。

全員私と同じ新入社員なのだろうか。慌ててそちらに移動した。

 

そうこうしているうちに入社式が始まった。

最初は映像を見せられ、その後、先輩方による説明などがあった。

どうやら業務自体は本社とそう変わらないようで、幻想体に作業を施しエネルギーを抽出する事だった。他の新入社員は幻想体という存在に驚愕していたようだが、前世でフィルター越しとはいえ存在を知っていたからか、さほど驚愕することもなかった。

 

どうやらここの支部は最近新しく誕生したようで、施設の規模も余り大きくなく人材不足気味で、私たちは第二世代の様だ。

それで大丈夫なのかロボトミ―、と思ったが突っ込んでは負けだろう。全てはここの支部の管理人の掌の上なのだろうから。

その後、異常事態に関する対処事項や侵してはいけない規則などの資料をもらい、それに目を通しつつ説明などを聞いていると、あっという間に入社式も終盤の方向へ向かっていた。

最後に、全員に腕輪のようなものが渡された。どうやらそれが現在のバイタルなど生体情報や現在の状態をそのまま送るための装置らしい。

恐らく逃げないようにするための物だろうななどと思いつつしょうがないものだと割り切って腕輪を付けた。

 

入社式が終わるとそのまま、会社近くの社員寮に案内された。その途中で先ほど話しかけてきた新入社員と雑談をしていた。

 

「お前、元フィクサーだったのかよ!」

 

先ほど声を掛けてきた新入社員はフィクサーだったということを知り少し驚いていた

 

「いや、でも7級止まりだったんだからそんなに...、それにフィクサーというのもそんなに誇れるような仕事でもないから、逆に貴方は?」

 

「俺は元魚屋だったな、U社のマカジキ漁港ってとこで魚屋をやってた。まああんまり売れなかったけどな、チンピラ共も多かったしそんなに治安の良い所じゃねぇ」

 

「魚...噂では人魚という存在が居るって聞いた事があるんだが、本当なのか?」

 

「あぁ居る、ただし見た目が悪い、どれも見た目に一癖二癖あってな、あんまり見るもんでもねぇ。お、そうこうしている内にもう着いたな」

 

そんな話をしていたらいつの間にか社員寮の目の前についていた。

 

社員寮に入ろうとしている彼に対してそういえば名前を伝えていないし聞いていないと思い、慌てて話しかけた。

 

「あ、あの....そういえばまだ名前を伝えてなかった、私の名前はカイルって言う。貴方の名前は?」

 

そう聞くと彼は笑いながら答えた。

 

「ん、俺か?俺の名前はメイソンっていうんだ。よろしくな!」

 

「うん、よろしく。」

 

そう言って彼は社員寮の中に入り、私もその後に続くように入った。

 

部屋のカギを受け取りその部屋の番号の前についた、どうやら私たち第二世代の部屋は2階の様で、部屋に入る前に先ほど会話していたメイソンや他の同期の職員たちとも雑談などを挟みつつ、それぞれの部屋に入っていった。

部屋の中は以前住んでいた部屋よりも質がかなり高く、冷蔵庫やレンジ、エアコンなど家電や設備もかなり充実していた。

ただし故障したらいかなる理由であれ問答無用で弁償なのは気を付けなければならないだろう。

明日から早速業務が始まるから早めに寝たほうが良いだろう。

そう思って目を閉じ、しばらくしていると意識がまた暗い底に沈んでいった。

 




投稿遅れて申し訳ありませんでした。
これからは週に1、2回くらい投稿できるように頑張りたいと思います!

前書きの時に書いていた主な変更点は二つです
変更点1、記憶の欠落。記憶が一部欠落してます。そのため、本能が危険信号を出していましたがワープ列車に乗ってしまいました。W社に乗っている間の話は別の機会に挿話として書きたいと思っています。

変更点2は前話に新しく挟んで入れたあの部分です。主に精神面の大幅な弱体化...というよりかは彼はもっとこういう人間だろうなって思ったので入れました。カイルくんほんま都市に向いてない。

そして、前々話から前話にかけて時系列を一気に飛ばした理由といたしましては描写可能範囲外だったからですかね...もしご期待していた方がいらっしゃいましたら申し訳ありません。

今回名前が出てこなかった同期に関してもこれから名前を順次出していきたいなって思ってます。

それと、今後の方向性を決めるためにアンケートをしたいと思います。ご協力していただけると幸いです。

感想・評価していただけると嬉しいです!お待ちしています!

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