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走り出してから数時間がたった。途中途中で休憩を挟みつつ走っていたのだが次第に体力も尽きて、今は裏路地をとぼとぼと歩いている。
「つかれた...。」
裏路地を歩いているうちに元からどんよりとした灰色を写していた空は更に暗く、ネオンの看板や破壊されていない数少ない電灯がチカチカと目に映り、裏路地を行き交う人々の喧騒、
そして時折、喧嘩の声と打撃音などが聞こえてくる。
「お腹すいた....。」
途中で見つけた少し大きなボロボロな布を身に纏って、
空腹で時折小さく音をたてる腹を抑えながら、水が漏れだしていた水道管の水でのどの渇きと一時的にだが空腹を凌ぐ、そしてあてもなく、ただただ歩き続けた。
「...もう、無理かもしれない。」
「体が重い...頭もぼやぼやする...。」
数時間後、気づけば外をうろつく人は誰も居なく、ネオンの看板も消え、残った光源は数少ないまだ壊れていない電灯だけとなった。
「なんで誰も居なくなったんだろう...。」
思わず周りを見渡した。そして、なぜ誰も居なくなったのか、なぜネオンの看板も消えて店が閉まっているのか。
その恐ろしい真実に気づいた。
「....あっ」
なんでもっと早く気づかなかったんだろう、都市にはあの時間があるじゃないか、午前3時13分から80分間、掃除屋たちが裏路地に落ちているモノを片っ端から掃除するあの時間が、
裏路地の夜が。
「どこか...みつけなきゃ!入れる場所、隠れられる場所!!!」
その事実に気づいた瞬間、残っていた体力を燃え上がらせて走り出した。
掃除屋は室内にいれば入ってはこれない。*1だけどもそんな建物はどこにもない、ちょうどよさそうな空き家なんてものもなかった。
駆けずり回りながらあたりを見渡しても、どこもドアは固く閉ざされている。
それに仮にドアが空いているような建物があったとして、その建物は一部が倒壊していたり、穴が空いていたりと、お世辞にも室内なんて呼べないような建物しかなかった。
「おねがい、おねがいします!!!誰か!!誰かぁ!!!」
そうやって走り回っているとどこからか
カチッ ガチャ
と、音がした。
一瞬誰かがドアを開けてくれたのかと思い希望を抱いた。だがそんなに都市は甘い世界なんかじゃないなんてことはさっきの笑った仮面の連中が教えてくれたようなものだ、だとすれば、
そんな音の正体は、
掃除屋
足音が増えた、何十も何百もの足音がする。
その瞬間、半狂乱となって駆け出した。
「誰かぁ!いませんか!たすけて、たすけてください!!!」
そうやって叫んでも答えてくれるような人は誰も居ない、隠れ潜んでいるような人たちにとっても掃除屋にバレるわけにはいかないのだ。
せいぜい、不運な奴がまた一人死んだのか、と思う程度だろう。
「誰か...だれかぁ...」
誰も答えてなんてくれない。誰も、助けてくれなどしない。
足音はどんどん数を増し、そして大きくなっている。
そうして自分の末路に絶望したその時、
「________!!!」
どこからか声が聞こえた。
「えっ...。」
とっさに周りを見渡すと、一つだけドアが半開きになっていた。その間から自分と同じくらいの年頃であろう子どもが、大きく手を振っている。
「い、いかなきゃ!!!」
希望が見えて思わず涙目に、なりながらそちらの方へと走り出した。
「はやくこっちに!急いで!」
ドアを開けてくれた子どもの声がはっきりと聞こえた
掃除屋の足音が近づいてくる中、その建物に向かって全力で走る、胸が苦しくなっても、くじいた足が痛んでも、走り続けて、ついにその扉へと飛び込んだ。
「6286393726382782363892」
「36283628937292738?」
「829372912917837828926189239」
その瞬間、扉がしまってその直後に、掃除屋の意味の解らない言葉と金具のぶつかり合う様な音がドア越しに聞こえてきた。
「はぁっ....はぁっ...ありがとう...ありがとうございまずぅ゛ぅ゛!!!」
ある程度息を整えた後、ドアを開けて私を助けてくれた子どもの手を両手でつかみ、深く頭を下げて、泣きそうになって鼻声になりながら感謝を伝えた。
この子がいなかったら、自分は今頃掃除屋の一部になっていたのかもしれないと思うと恐怖で思わず涙がこぼれ落ちる。
「ちょ、ちょっと...泣かないでよー!これくらいどうってことないってば!」
「でも゛ぉ゛ぉ゛、ごわぐっでぇ゛...。」
「大丈夫だって!あいつらは部屋には入ってこないから!絶対かどうかはわかんないけどね!」
その子は、明るい調子で私を慰めてくれた。
そんな様子に思わず、今まで溜まっていた涙があふれだしてしまった。
◆◆◆
「それで、どうして君はあの時間にあんな所をうろついていたの?」
そう質問されて、私はこの世界に転生してからの事を簡潔に説明した。
しばらく私の話を聞いていた彼は、
「皮を剝ぐ連中...聞いたことあるかも...。逃げ切れて運がよかったねー!」
と、私のことを慰めてくれた。
「ねえ、君ってどんな名前なの?教えてほしいな!」
そう聞かれたが、現状自分の名前が思い出せない。思い出そうとしてもその記憶だけがすっぽりと抜け落ちたかのように無くなっている。
「わかんない...名前が思い出せないんです...。」
「名前忘れちゃったの!?じゃあ僕が君が名前を思い出すまでの名前をつけてあげる!」
そういうと、その子どもは腕を組んで考え始めた。
「うーん...、あ!思いついたよ!君の名前は、そうだなぁ...カイルなんてどうかな!なんとなく思いついたんだけど...どうかな。」
カイル...カイル...その響きは私の心に温かく、そして優しく沁み込んだ。
「ちなみの僕の名前はミレイって言うんだ!よろしくね!カイル!」
「...うん!よろしく!ミレイ!」
濃密な死を感じたその日、私はこの世界に来て初めての優しさを感じた。
えーということで、主人公君の名前はカイルくんに決まりました。
実はリアル時間30分くらい考えましたね()
ちなみに描写はしませんでしたがちょうどドアに飛び込んだ10m後ろには掃除屋の大群が居ました、危なかったですね。
主人公君は若干肉体に精神年齢をぴっぱられています。