悪名高き都市に転生した男の話   作:アオコクモツ

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二人で見た日の出

バットで男の頭を潰した後、少しのあいだその場から動くことができなかった。

一つの命を奪った感覚、頭を潰した時の感触、人を殺したという焦燥感と少しばかりの高揚感、それらがわたしの頭と心を染め上げていた。

 

それらの感情に支配されていた数秒間の後、私の意識を覚まさせたのはミレイのうめき声だった。

その声にサッと血の気が引き、地面に倒れているミレイへと駆け寄る。

 

「ミレイ!ミレイ!大丈夫!?」

 

「ミレイ、おねがい...しっかりして!!!」

 

ミレイに何度声をかけても意識がはっきりとしないのか

 

ウゥ... ウァ....

 

などとうめき声をあげていて、まともに返事が出来る状態じゃない。

ボコボコにされ、頭から血を流しているミレイを見て、冷や汗が流れ鳥肌が立った。

その直後、

 

「クソッ!!!あいつ戻ってこねぇぞ!どこまで探しにいってんだあいつ!」

 

「こっちを探すぞ!」

 

と残りの二人の声が遠い所から小さく聞こえた。

急いで、先ほどまで男だったモノが羽織っていたジャケットや使えそうなものを拝借し、背負ったときの衝撃を少しでも抑えるために地面に倒れているミレイに着させた後、慎重に振動が無いようにと注意を払いながらミレイを背負う、ケガしている上に大きな負荷が掛かって肩の痛みが酷くなっていく。だがそんなことミレイの安否に比べれば石ころに等しい。

痛みを歯を食いしばって耐えながら、私たちは裏路地の奥へと歩き出した。

 

 

 

 

 

すっかり暗くなってしまった裏路地をミレイを背負って歩いている。

ミレイはすでに意識を失ってしまっている。

だけど、腕だけはがっちりとわたしの首に回している。

このまま何もなければ、いずれ私たちが拠点としている廃屋へとたどり着けるはず。そこまでいけばミレイの傷を治療できるものがある。

それまであいつらに見つからないことを願いながら酷くなっていく肩への痛みに耐え、一歩一歩踏みしめて歩き続けた。

 

 

◆◆◆

 

 

あたまがもうろうとする。だけども、体があったかい。

 

だんだんと頭がはっきりとしていく、さっき僕は、僕たちはあのバットを持った男に

 

そして僕は、あの男に何度も何度も殴られた。あれ、でもじゃあなんで僕は死んでないんだろう。

 

 

 

...あ、カイルだ、カイルがあの男の事をバットで殴って僕を助けてくれたんだ。

 

なんとなくだけど体が揺れてるってことだけは分かる。

体が揺れてるって事は、君が僕のことを背負ってるって事かな?

 

カイルのあんな顔見たことなかったよ、震えていたし、おびえてもいたのに、あの時、あの瞬間だけ、凄く怖い表情をしていた。

 

だけどあの時、凄くうれしかったよ。あのまま逃げちゃうことだってできたのに頑張って立ち向かってくれて。

 

....今動くと慌てさせちゃうかな?

 

君の背中暖かいし、もう一回眠っちゃおっと!

 

 

◆◆◆

 

 

裏路地を歩いていくと、いつもねぐらにしている廃屋へとついた。

正直な話、私はかなり焦っていた。時間的に見てもいつ裏路地の夜がはじまってもおかしくない時間帯だったから。

最悪の場合、覚悟を決めて二人ともに掃除屋の一部になることまで覚悟していたが、幸いそんな事態に陥る前に廃屋までたどり着くことができた。

 

「良かった...なんとかたどり着い....!?!?」

 

廃屋に入ると誰かが侵入していたのか、部屋の中が荒らされていた。

取り合えず無事だったマットにミレイを寝かせた後、先ほど男から取ったナイフを構えて家の中を見渡した。だが、誰の気配もない、室内が荒らされている様子から盗みに入ったはいいものの持っていけるようなものが無く、憂さ晴らしに荒らしたのだろうか。

 

「居ない...か、救急箱は無事...だ、良かった...」

 

とりあえず、ナイフを机においてマットの上で横になっているミレイの傷跡に包帯をまいたり、殴られた跡を濡らしたタオルで冷やしたり、素人に毛が生えた程度ではあるが、自分にできる精一杯、出来る限りの処置をした。

 

そして自分も濡らしたタオルを腕にまきつけて包帯で肩を固定する処理をした。

 

処置を終えて寝息を立てているミレイにジャケットをかけた後、私は二階に上がり、窓を少し開けて外を見た。

そとでは裏路地の夜がはじまったからか遠くで隠れる場所をみつけられなかった者の悲鳴が聞こえてくる。

そして、掃除屋たちの蠢く音が聞こえてくる。

彼らは、無慈悲で、それでいて淡々と機械的にそれらを掃除していく。普段なら見ることのない光景を見て、肝が冷えた。

そうして時間を潰している間に、体内で分泌されていたアドレナリンが切れたからか、先ほどまで静まっていた痛みが、先ほどより大きくなって帰ってきた。

 

「____________ッ!!!」

 

凄く痛い、のたうち回りたい位に痛い、だけどこれくらい耐えられる。

とにかく耐えろ、耐えていればそのうち痛みは消える。

そう思って、腕を抑えて痛みに耐えているうちに、肉体的にも精神的にも疲れが溜まっていたのか。いつの間にか眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「...ル」

 

「...イル!」

 

「カイル!」

 

 

「....ん?ミレイ?」

 

ミレイの声で目が覚めた。

こうやって声を掛けてきているということはミレイは回復したんだよね?

 

「ミレイ!!!回復したんだ!良かった~!ってまって痛い痛い痛い!!!」

 

うれしさのあまり痛む方の手を振り上げてしまった。応急処置と睡眠で痛みは軽減されてはいるのだが相変わらずケガしていることには変わりはない。涙目になりながら手を降ろした。

ミレイは包帯の後が痛々しいものの元気そうに見えた

 

「僕はもう大丈夫なんだけどさ、そっちの方が重症じゃない?」

 

「いや、大丈夫。しばらくすれば治るよ。それにほら、こっち動くからね」

 

心配そうなミレイに私はもう片方の手を動かした。

頭がまわってきたころ、なぜこんなに早い時間に起こしてきたのかを疑問に思った。

 

「...ん、そういえばなんでこんな時間に?」

 

「あ、そうだよ!今日は珍しく朝晴れてるんだって!昨日捨ててあった新聞に書いてあったんだよね。だからこの時間に起きれば日の出が見れるんじゃないかなって思って。」

 

確かに、そもそもここの地区で晴れること自体が相当に珍しいことらしく、私が都市に転生してから数週間一度も晴れなんて見たことがなかった。たしかに見たい、凄く見てみたい。

 

「見てみたい...凄く見てみたい!」

 

「じゃあ今から見に行こうよ!さっき外を見たときはまだ日が出てなかったからさ!まだ間に合うと思うよ!」

 

私たちは急いで建物の屋上へと急いで登った。

太陽は僅かに出ており、残念ながら日が昇る前の光景は見られなかったものの十分に綺麗な光景が広がっていた。

空は濃い青色から青へ、そして薄い水色へと移り変わり始めている。

昇ってくる太陽の白く、そして僅かなオレンジと黄色の混じったような光と混ざり合い、美しく、そして神秘的な色を空へと映し出していた。

数多の建物に遮られながらも、むしろそれらの建物すらそっと優しく包み込むかのように日の光は明るく、そして優しげに輝いていた。

 

たとえ都市でも、元の世界でも日の出というのはとても美しい

 

 

「....凄く綺麗だよね」

 

「...うん、凄くきれい」

 

ミレイの言葉に、ただそうとだけ答えてそのまま、二人でその光景を見つめていた。

 




私は冬の日の出が一番好きです。

次話は少々時間かかりそうです。遅くても明日までにはあげられる...かも?
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