※今回の描写にはカニバリズム描写が含まれます、苦手な方は読むことをご遠慮ください。
牢屋に閉じ込められてから四日目がたった。
常に頭にもやがかかっているような気がする。
ずっと苦い液体を飲み続けて固形物を口にしていないからか、とてもお腹が空いて力も思うように出ない。
思うように体も動かなく、逃走する意思もなくなって、今はただ、ボーっと虚空を見つめていた。
そうしていると、あの男の足音が聞こえてきた。またあの液体を飲まされるのかと考えていた。
その時、今まではボウルを持ってきていただけの男が私の足かせのカギを外した後
『出なさい』
とこちらに話しかけてきた。
そのころには私はその男の命令に逆らう気力なんてなく、そのまま指示に従って牢屋を出た。
だがずっと薬品が混ざっているであろう液体しか口にしていなかった私は空腹感や脱力感で足元がおぼつかず、牢屋の外に出た途端につまずいて倒れてしまった。
「あ、すいませ...あるけ...なくて....」
やらかした。
ブワッと全身に鳥肌が立ち、一筋の冷や汗が頬を伝って冷たい床へと垂れていく。
反抗の意思もぽっきり折れていた私にはその瞬間は恐怖以外の何物でもなかった。
心臓を鷲掴みにされているようなそんな恐怖が私を支配していく。
だが、特に乱暴を振るわれるようなことは無かった。それどころがニッコリとした笑顔で倒れていた私の腕を掴み立たせた後、私の手を引っ張り歩き始めた。
「...あの...これからどこに行くんですか...?」
普段の冷たい様子と違うので、疑問に思い恐る恐る聞いてみるが、その男は特にその質問に答えるようなことはなく何も言わぬまま私の手を引っ張り歩みを進めていく
だが、その男からはどことなく高揚しているような、おもちゃを前にした子供のような気配を感じたような気がした。
そうして私はされるがままでそのまま引っ張られ、特に抵抗もせず連れていかれる。
そうしているうちに暗くて広い部屋に連れてこられた。
私は椅子に座らされ、男はカギの束を目の前の机に置いた後そのままどこかへと行ってしまった。
私が座らされたイスは、先ほどまで私が居た牢屋のベッド兼椅子と違いクッションが敷いてあり、やわらかい。
そうしているうちに、ぼんやりしていた頭のもやが晴れ徐々に思考がクリアになってきた。
このままここにいてもあの男に何かされるのはほぼ確定、なら僅かな可能性に賭けて逃げた方が良いんじゃないか?あの男の発言からミレイはどこかで生きていることと、この建物の中に他に別の牢屋があることは分かっている。それにカギだってここにある。
なら今ここから抜け出して牢屋をみつけて二人でここから逃げ出そう。ミレイにはいつも助けられてばかりだった。今度は私が助ける番だ
そう思って椅子から降りようと足を動かした
だが、足は動かなかった。
座らされた時には気づかなかったが、足が枷でイスの脚に固定されていた。
どうやら思考だけでなく感覚も鈍くなっていたようでそれにまったく気づいていなかった。
「...え?...あ」
思わず心の声が漏れた。そしてそれと同時になぜあの男がカギを不用心に机の上に置いていたのかを察してしまった。
目先に希望をちらつかせ無駄な期待を持たせる。あの男の趣味だろうか、趣味が悪い
そしてまんまと私はまんまとあの男に乗せられたのか。
私はうなだれていた。目の前にあった希望を塗り潰された気分だ。
…だが、まだ諦めてはいけない。生きてさえいればまだ機会はあるんだから。
そう思い、心を持ち直した。
その時、急に暗かった部屋に光が満ちる。光で一瞬目の前が見えなくなるがそれもすぐに晴れた。
そして周りの様子が明らかになり、この部屋は四日前に見た店の景色と同じ、あの時侵入した時と同じ部屋にいた事が分かった。ただ、出されていたテーブルやイスは全てかたずけられており、なんなら一部の壁などがリフォームされており、一見すると同じ場所とは思えないようなリフォームが成されている。窓を見ても窓はシャッターが閉められており外の様子を把握することができなかった。
周りの様子を確認しているうちにどこからか音楽が聞こえ始めた。
この異常な状況と店との雰囲気にマッチしたクラシック音楽が異様さを奏で、心の中に不安感が浸食し始める。
そうしているうちに笑みを浮かべたあの男が来た
「何なんなんだこれ...私をどうするつもりなんですか...!?」
『おや?別にどうもしませんよ?ただ...貴方には晩餐会に出席していただくだけです!もちろん主役は貴方!そう、貴方です!』
男は今までとは打って変わって声高に、そして仰々しいふるまいと共に私を指さしてきた。
正直訳が分からない、四日間閉じ込めた後になぜ私のための晩餐会をする?
「...意味が分からない...あんた頭おかしいんじゃ」
そう言いかけた瞬間、男は私に向かって香水を吹きかけてきた。
薄く花のような香りがする、そう感じた瞬間、今まで考えていた不安感が薄れていった。そして私自身も薄くなっていく感覚がする。まるで体が軽くなった...ような...
『さてさてこれよりお出しするのは、白と水色の花のフルコース!是非ご賞味あれ!』
そんな声がどこからか聞こえる、音楽と店の光、そして豪華な店の装飾がぼやけた頭には幻想的な光景に見えた。
そうしてフルコースの幕が切って落とされた。
『まず最初にお出しするのはオードブル、冷赤身肉と特製ソース!ソースは私が腕によりをかけた自慢の一品です!』
そんな紹介と共に目の前に出されたのはほんのりと外に焼き目のついた赤身肉だった。
茶色のソースが肉の周りに掛けてあり、水色と白い花弁が飾り付けてあった。まるでミレイの目と髪色のような... いや、関係ないだろう。
僅かな時間こらえたのだが、空腹感も相まって出されたものへの警戒心も薄れ、口に含んでしまった。
「...っ、おいしい...!」
口に含んだ瞬間、赤身の肉が溶けるかのような感触だった。
冷やされた肉にはほとんど脂身が無く、しつこさもまったくない。
そしてソースに肉をつけて食べるとソースの若干の甘みと赤身の肉が相まって肉の美味さを引き上げる。そうしてあっという間にオードブルを食べ終えた。こんなにおいしい料理、私になんかじゃなくてミレイに食べさせてあげたい。
...だが、少し違和感を感じていた。ほのかに甘いソース、甘みの裏に若干鉄の味がしたような気が...。
そうやっている間にあの男が次の料理を持ってきた。
『続いてはスープとなります、このスープはT社の加速鍋で骨を煮込み続け、鍋の中で実質的に一週間煮込んだことにより旨味を引き出した一品です!』
そうして出されたのは透き通ったスープだった。口に含むと今まで味わったことのない味がした。こんな不思議な味の出る骨をもつ動物なんて今まで知らなかった。不思議な味のするスープだった。
ただ、スープを飲み終わった後、どこかが強く痛み涙がこぼれた。
...?どこが痛いんだろう....心?
『続いてはソルベです、お口直しにどうぞ。』
そういって出されてきたのは赤色のソルベだった。先ほどと同じようにスプーンを持とうとしたら、突如、腕が震えだしスプーンを落としてしまった。慌てて拾おうとしてもイスに固定されているので拾えない。
『あら、それでは食べられませんねぇ、なら私が直々に食べさせてあげましょう!』
どうしようかとあたふたしていると、そういってどこからかスプーンを取り出し、ソルベを掬って私の口元に近づけてきた。
ソルベは何種類かのベリーが合わさったかのような爽やかな味だった。ただ、涙が流れてくるし、甘さの裏にはなにか鉄のような味がした。
この鉄の味...知ってる。傷口を舐めて消毒したときの...。
『さあさあいよいよ本日の晩餐会もメインディッシュへと突入しました!メインディッシュではサプライズを用意しておりますので少々お待ちください!』
そういって男は私の目に目隠しをした。周囲の音を聞くとなにか物を置いたり移動したりしているようだった。
香水で霧がかっていた頭が少しずつ覚めていく。そして思考がクリアになっていくにつれてなにか取り返しのつかない不安感と言葉にできない感情がこみあげてきた。
そうこうしているうちに男は準備をし終えたのか周囲の物音が店内の音楽でさえも消え不気味なまでに静かになった
『ではメインデッシュのお披露目といきましょう!』
そういって男は私の目隠しを外す。
その瞬間店の音楽も先ほどの静寂が嘘かの様に何事もなかったかのように流れ始めた
『メインデッシュは...貴方のその表情です』
私の目の前に置かれたのは真っ赤なソースの掛けられた赤々しいステーキと
「...え」
大きなガラスの入れ物の中で青や紫、水色、白の花々で飾られ、その中で目を薄く開けている
ミレイの生首だった
店の中で流れている曲はショパンの『華麗なる大円舞曲』です。
改めて、ミレイ君は白髪に水色の目で、カイルくんは黒髪に黒色の目です。
後日絵描きたいなーって思ってます。
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タイトル決め
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悪名高き都市に転生した男の話
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灰色の都市で生きていく
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たとえ苦しくても歩いてゆこう
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都市の苦痛の中で生きていく男の話