「ホシノちゃん、明日空いてる?」
先生が委員会の顧問になった日の放課後。
スマホを見ていたマツリちゃんはそう聞いてきた。
「別に空いてるけど…なんで?」
「明日ゲヘナに行かないといけなくなっちゃった…。」
困ったような、呆れたような顔で言ってくる。
「ゲヘナに?」
「友達がね、どうしてもって。急用だから来てって。
ほら、あそこはなにかと物騒だからさ。護衛を頼みたいんだよね。」
「ああ、なるほど。」
ゲヘナは至る所で事件、事故が絶えないかなり治安の悪い学園だ。確かに一人では不安だろう。
「何時の電車で行く?」
「9時のやつでお願い。」
「分かった。じゃ、また明日。」
外が暗くなってきた。話も一通り終わったし、帰るにはいいタイミングだ。
翌日。アビドス駅の寂れたホームで私たちは電車を待っていた。
「そういえばゲヘナの友達ってどんな人なの?」
マツリちゃんの友達だし、あんまりゲヘナっぽくない人かも。
「……向上心と芯の強い人、かな…。」
抽象的な答えだけど、たっぷり置かれた間がどんな人物なのかを物語っている。
「脅されてるとかじゃないよね?」
もし不良集団にカツアゲされてるとかだったら、私が──。
そう考えていると、電車が到着するというアナウンスが聞こえた。
「大丈夫大丈夫。乗ろうか。」
住民がほとんどいないため電車の中はガラガラだ。
立つ必要がないのはいいけど少し寂しく感じる。
しばらく電車に揺られていると、マツリちゃんが真剣な面持ちで話しかけてきた。
「ねぇ、ホシノちゃん。」
「ん?」
「もし私が悪い人になったら、それでも隣にいてくれる?」
それは。
告白のようで、告解のような。
苦しそうで、楽しそうな表情だった。
「…私は」
紡ごうとした言葉は、電車のブレーキ音で掻き消された。
「冗談だよ!行こう!」
「…うん。」
私はただ、曖昧に頷くことしかできなかった。
「マツリお姉ちゃん、久しぶり!」
ゲヘナの駅の改札口。その向こうであどけない少女がこちらに向かって手を振っていた。
「あれがゲヘナの友達?」
聞いていた人物像とかなり差があるが。
「友達は友達だけどね。私を呼んだのは違う人。」
話しながら改札口を抜ける。
「初めまして!丹花イブキです!」
「…あ、小鳥遊ホシノです。」
私が言えたことじゃないけど、高校生とは思えないほど幼く見える。中学…いや小学生にしか見えない。
「イブキちゃんは飛び級してるんだよね。」
「クククッ…イブキはとても賢くてかわいいからな。」
声が聞こえたほうを見ると、目つきが悪く背の高い長髪の生徒がいた。
「待っていたぞ、流上マツリ。小鳥遊ホシノ。」
「いたんだ、マコト。」
「少し迷ってしまったが、無事貴様らを迎えることができた。
これも私のマッピング能力あっての偉業だな。」
ゲヘナの駅はそんなに広いのか。遠目にはそこまで大きく見えなかったが。
「この駅、体育館一つ分もないけどね。」
……え?
マコトエアプなのでどこまで馬鹿にしていいものか悩んでいます。
この世界のホシノの髪は過去編と現在の中間ぐらいの長さです。
肩甲骨の終わりぐらいで切ってます。