小鳥遊ホシノのちょっと前向きな同級生   作:電気未

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第五話

駅から出た先の駐車場に、()()はあった。

黒塗りの高級車。

私たちの前には、そう表現するしかないものが駐車していた。

いわゆるリムジンと呼ばれる車種だろうか。創作物でしか見たことがなかったので軽く感動している。

 

「なんかすごいね、偉い人が乗ってそう。」

「マコトたちは実際偉い人だよ。」

「その通り。何を隠そう我々は、このゲヘナを支配する生徒会───万魔殿(パンデモニウム•ソサエティー)なのだからな!」

 

ゲヘナに存在したのか、生徒会。相手の立場的に今までの対応は失礼だったかな、とかそんな不安よりも驚きが勝った。

 

「キキキッ…、緊張しなくてもいいのだぞ、小鳥遊ホシノ。マツリの友人ということは私の友人でもある。

さあ、乗りたまえ乗りたまえ。私たちの拠点に行くぞ。」

 

グイグイと車の中に押し込められる。そんなことしなくてもちゃんと乗るのに。

 

「マツリお姉ちゃん、あれやって!あれ!」

「いいよ〜。」

 

イブキちゃんがマツリちゃんに何かを頼んでいる。

ふと、マツリちゃんが懐から一枚の硬貨を取り出した。

 

「じゃ、見ててね。1、2、3!」

 

掛け声に合わせて、目の前の硬貨が視界から完全に消えた。

 

「すごいすごい!何回見ても全然分かんない!どうやって消したの!?」

「ネタが割れるとつまらないからね。きっとマコトは仕組みを見破ってるだろうから、あとで聞いてみて。」

「!?と、当然だ。この私に理解できないはずがないだろう。その、あれだ。サイコパワーを使ったんだ。」

 

羽沼マコトは理解できなかったようだけど、私にはコインの動きを捉えることができた。

消えたように見えたコインは、全員の死角に移動させられただけだ。ただ、問題なのはその練度。

あまりにも上手すぎる。

しかもここは車内。いくら安全運転を心がけていても、揺れるものは揺れる。そんな環境で成功させるのは至難の技と言えるだろう。

 

「マツリちゃん、マジックとかできたんだね。」

 

アビドスで披露したことは一度もないはず。

イブキちゃんの感想からも、これが今日初めてのマジックではないことも明白だ。少しだけ違和感を感じる。

 

「けっこう前から練習してたんだけどね。

アビドスのみんなには完璧な状態で見せたいと思ってさ。」

「…そっか。帰ったらみんなに見せてよ。」

「皆様、到着しました。」

 

そうこうしている内に万魔殿の拠点に着いたらしい。 

拠点の入口に赤毛の少女が佇んでいた。制服からして、彼女も万魔殿の1人なのだろう。

 

「イロハ先輩、ただいま!」

「おかえりなさい、イブキ。…お久しぶりですね、マツリさん。」

「久しぶり、イロハちゃん。この子が前話したホシノちゃんだよ。」

 

マツリちゃんは私の肩に手を添えて、イロハと呼ばれた赤毛の少女にそう言った。

 

「イロハとイブキはホシノに中を案内してくれ。私とマツリは少し話すことがある。」

「わかった!こっちだよ!」

 

イブキちゃんが手を引っ張ってきた。二人きりで話すことがあるのは気になるけど、マツリちゃんなら大丈夫だろう。

引きずられるようにイブキちゃんに付いて行く。

 

「到着!」

 

着いた先には、高そうな絵やシャンデリアが飾ってある、豪華な空間が広がっていた。すごいな、みんなパイプ椅子使ってる対策委員会(ウチ)とは大違いだ。

 

「いつもここでみんなとお話してるんだよ。」

「そうなんだ。」

 

ここが会議室みたいなものか。

 

「………………………………。」

「ホシノ先輩って休日何してるの?」

「寝てるよ。」

「イブキもお昼寝好きだよ!」

「そうなんだ。」

「うん!」

「………。」

 

まずい。会話が続かない。初対面の人との会話はいつもマツリちゃんに丸投げしてたから、何を話せばいいのかまるでわからない。

 

「マツリさんが自慢してたんですが、ホシノさんはとても強いみたいですね。普段トレーニングとかしてるんですか?」

 

気まずい空気を感じたのか、イロハさんが助け舟を出してくれた。本当にありがとうイロハさん。

 

「特別なことは何もしてないですね…。というか、マツリちゃんが自慢してたんですか?私のことを?」

 

いつもマツリちゃんに頼りきりなのに。事務仕事とか後輩の教育とか、全部マツリちゃんが一人でやってる。私にできることといえば戦闘くらいだ。 

 

「それはもうべた褒めしてましたよ。キヴォトスで一番強くてかわいいんだぞ、とかホシノちゃんが連邦生徒会長になればいいんじゃないかな、とか。」

 

何を言ってるんだ…?マツリちゃんが他人に私を紹介するとき、過剰評価しがちなところがあるのは知ってたけど、連邦生徒会長?何がどうしてそうなった?

 

「キヴォトスで一番かわいいのはイブキですけどね。」

「ホシノ先輩もかわいいよ。」

「あ、ありがとう。」

 

気を使わせてしまっただろうか。それにしても羽沼マコトといい、万魔殿のメンバーはみんなイブキちゃんを溺愛しているのかな。そう考えていると、聞き慣れた声がした。

 

「おまたせ、ホシノちゃん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




コミュ障ホシノ見てみたいんですよね。原作だとユメ先輩のペルソナを被ってるとこがあるので、実はそれ抜きだとあんまり喋れなかったりするのかなと想像してます。
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