「セリカちゃんが誘拐された…?」
今すぐ助けに行かなければ。みんなと合流するため、私はすでに校舎へと走っていた。
「先輩、今走ってる?」
「うん、すぐにセリカちゃんを探さないと」
なんだろう、スマホの向こうから申し訳なさそうな雰囲気が伝わってくる。
「ごめん、セリカは先生のおかげで発見できた」
「え」
「先生の指揮で、ヘルメット団からセリカを無事に奪還することもできた」
「え」
なんだ、全部終わったあとだったのか。私は途中で足を止める。
「それならよかったよ。…あれ?ならどうして連絡してきたの?」
「なんか、変な人たちが学校に来てる」
「変な人たち?」
「うん。自分たちは便利屋で、依頼の報酬を受け取りに来たって。先輩は何か知ってる?」
便利屋?何だそれは。全く身に覚えがない。
「ハッハッハッハァ…やっと追いついた…」
ふと、後方からマツリちゃんの声が聞こえた。ぜいぜいと息を切らしながら駆け寄ってくる。手をフラフラさせてゾンビみたいな走り方だな。
「ホシッ、ホシノちゃんがいきなり猛ダッシュしちゃうから……大変だったよ〜」
「マツリちゃんに聞いてみるから一回切るね」
「ん」
スマホをポケットに入れ、マツリちゃんのほうを向く。
「ご、ごめん。ところでマツリちゃん、便利屋って分かる?」
「便利屋とは依頼人の要望に応じて様々な業務を遂行する仕事であり、何でも屋、万屋と呼ばれることもあるね。それがどうかしたのかなホシノちゃん?」
「そんなウィキペディアみたいな説明が欲しいわけじゃなくてさ。今学校に便利屋を名乗る集団が来てるんだよ。知らない?」
「便利屋とは…」
「ふざけてるの?」
明らかに帰りの電車から様子がおかしい。やっぱり、何か隠してるんだ。
「マツリちゃん、隠し事があるなら正直に言って。私はもう、マツリちゃん一人に背負わせたくない。これからは一緒に難しいことも、面倒なことも背負わせてよ!」
「適材適所…とか言っても、もう納得できないよね」
私を見つめるその目は悲しいとか嬉しいとか、いろんな感情が混ざり合い、複雑な表情をつくっていた。
「分かった。説明するからとりあえず学校に行こう。」
「…うん。」
そうして私たちは校舎に帰った。
「遅かったわね、マツリ」
「ごめんごめん、諸用でゲヘナに行っててさ」
委員会室に着くと、いつものメンバーと4人のゲヘナ生がいた。
今マツリちゃんと話しているのはコートを肩にかけた生徒だ。
「全く、トリニティへの潜入なんて本当に肝が冷えたわ…
でも、こんな依頼を成功させてこそ真のアウトローだもの!」
「トリニティへの潜入…?」
その口ぶりからして依頼者はマツリちゃんなのだろう。だが一体なんのために?
「先輩、説明して」
シロコちゃんが冷静な口調でマツリちゃんに説明を求める。
「…ここまで来たらもう隠せないよね…」
マツリちゃんは天井を仰ぎ、諦めたような笑みを浮かべた。
「近々、トリニティを襲撃しようと思ってる」
アビドス3章読みました。良かったです。