「なんで…?」
信じられなかった。マツリちゃんも、ユメ先輩と一緒にいたはずなのに。なんでそんなことを言えるんだ。私の頭の中は混乱でいっぱいだった。
「これ以上は身内の問題だからね。報酬も渡したし、席を外してもらうよ」
「言われなくてもそのつもりだよ」
「じゃあね〜マツリちゃん!」
便利屋の面々はマツリちゃんの言葉で帰っていった。
「さて、部外者もいなくなったことだし説明しようか」
そう言いながら、マツリちゃんはいつもと変わらない笑顔とともに、その計画を語り始めた。
「大前提として、今のままじゃアビドスは絶対に滅びる。それは分かるよね、みんな?」
「今は先生という心強い味方がいます!先輩だっていつも言っていたじゃないですか!?希望はあるって…」
アヤネちゃんの言葉は、裏切られたような、そんな悲痛な叫びに聞こえた。
「仮に借金を返済し終えても砂漠化問題は解決しない。生徒は増えず、土地もない。そんな学校の未来なんて分かりきってるよね」
それは───その通りだ。目下の問題が借金返済というだけで、アビドスは他にも問題を抱えている。その現状から私たちは、目を反らしていたのかもしれない。
「資金面の問題なら私がなんとかできます!」
ノノミちゃんのカードか。確かにそれなら解決できるかもしれない。でも。
「その方法には再現性がない。学校を、いや国家を存続させるにはリソースを継続的に確保する手段が必要なんだ。ノノミちゃんの持つカードだって有限だ。何年も使い続けることなんてできないよ」
「だから奪う。土地を、人を、資源を。そうすることでしか、アビドスに未来はない。」
押し黙り熟考していたセリカちゃんが声を上げる。
「勝算はあるの?」
「セリカちゃん…!?」
アヤネちゃんが信じられないものを見るような目で、セリカちゃんに訴える。
「セリカちゃんは奪っていいと思ってるの?」
「…だって、現実的に考えたらそれしかない。いくら先生がすごい人でも、アビドスの問題を全部解決できるわけじゃない。そう考えたら、無謀な戦いでもやるしかないじゃない」
それが正しくないってことはセリカちゃんも分かってるんだろう。俯きながら拳を握りしめていた。
「無謀じゃないよ、ちゃんと策はある。」
「え…?」
はっきりと確信を持って断言された言葉は、セリカちゃんの顔を上げさせるには十分だった。
「私は、ゲヘナの生徒会───万魔殿と同盟を組んだ。」
部室に驚きが走る。そうか、万魔殿とつながりを持っていたのはこのためだったのか。
「さらに、寄せ集めではあるけどゲヘナの反トリニティ過激派勢力とも協力関係を結んだ。トリニティの重要戦力がバラける日も便利屋によって把握済みだよ」
私はどうしよう。どうするべきなんだろう。ユメ先輩の教えを守るなら反対するべきだ。でもこのままじゃアビドスは───。
そう考えていると、シロコちゃんの言葉が聞こえた。
「マツリ先輩はそれでいいの?」
「…?そりゃそうでしょ。私が立てた作戦なんだから」
「私には、先輩が一番苦しんでるように見える」
その一言は、明確にマツリちゃんを動揺させた。さっきまで薄笑いを浮かべていた顔が一気に真顔になる。
「相変わらず賢いね、シロコちゃんは。…本当は私だって、みんなとくだらない話しで盛り上がるような、そんな日々だけが続けばいいって。誰よりもそう思う。
────それでも、やらなきゃいけないんだ。」
強い決意が宿る瞳だった。もはやその場では誰も反論できず、最後にマツリちゃんはこう言って部室を後にした。
「襲撃は三日後。ここまで言ったけど参加は自由、強制はしない。この二日間で、ちゃんと考えて決めてね。」
私は。どうすればいいんですか?ユメ先輩─────。
次回、最終話です。