星型に寄せる狂詩曲(ラプソディー)~メモリーズ―秋―   作:飛鳥 螢

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旧校舎の探索

 新校舎から渡り廊下に出ると、朋也と春原はすぐさま追って来る相澤達の鼻っ先で勢いよく出口の観音開きの扉を閉めた。

「春原っ、岡崎っ。このヤロっ、開けろっ!」

 怒声を上げてドンドンと扉を叩き、ラグビー部の連中はノブを回して扉を引き開けようとするが、二人はそうはさせまいとしっかりノブを掴んで踏ん張る。

 鍵を掛けられれば一番いいのだが、生憎とこちら側から鍵を掛ける事は出来なかった。

 このままでは、いずれ手が痺れて開けられてしまう。

「朋也くん」

「すぐ行くから、先に旧校舎の中に入っていろ」

 心配そうに自分を見る渚にそう言うと、朋也は智代と杏に声を掛ける。

「おまえ等、俺達が旧校舎に駆け込んだら、すぐ扉を閉められるようにしといてくれ」

「分かった」

「分かったわ」

 頷き、二人は渚達を連れて旧校舎に入ると、渡り廊下の入口にある扉を半閉め状態にして、杏が朋也達に合図した。

「朋也、陽平。何時でもいいわよ」

「よし、いいか、春原」

「ああ、何時でもいいぜ」

 片目を(つぶ)って春原が朋也に不敵な笑みを見せる。

「じゃあいくぞ。——せぇのっ」

 という掛け声と共に、二人はノブを放して思いっ切り扉に体当たりした。

 扉を引き開けようとへばり付いていた相澤達は、勢いよく開け放たれた扉に押されて折り重なるようにひっくり返る。

 その隙に身を翻して朋也と春原は渡り廊下を駆け抜け、旧校舎へと飛び込む。

 同時に智代と杏が扉を閉め、中から鍵を掛けた。

 放課後の旧校舎は、部活で使われている教室以外の窓や扉は基本的に鍵が閉まっている。そして、一階に部活で使っている教室はなかった。

 唯一窓が開いている資料室は、その部屋の主である二年の宮沢有紀寧に昨日人手集めで声を掛けた時、明日の放課後は用があるとかで断られた。だから今日は不在で窓は開いていない。

 ここの扉に鍵を掛けてしまえば、かなりの時間が稼げる筈だ。

「よし、皆今の内に手分けして探すぞ」

 風子は空き部屋と言っていたから、部室に使われている教室は除外してもいいだろう。

 だが、それでも三階建ての旧校舎全部を捜すとなるとかなりのものだ。

「杏と藤林は一階、智代とことみと春原は二階を探してくれ。俺と渚は三階を探す」

「いいわよ」

「はい」

「ああ、いいだろう」

「分かったの」

「って、僕智代と一緒ですか?」

 それぞれが頷いて了承する中、春原は慌てて問い返した。

 流石に普段蹴られまくっている相手と一緒に行動するのは嫌らしい。

「別に杏と一緒でも構わんが」

「あ、それパス」

 すかさず声を上げ、杏が顔を(しか)めてちろっと春原を見る。

「いくら手伝えば好きな物(おご)ってくれるって言っても、そこまで面倒見る義理はないわ」

「ちょっと、奢るって何だよそれっ」

 初めて聞く話に仰天し、春原は明也に詰め寄る。

「おい、岡崎。どういう事だよっ!?」

「おまえ、今時タダで手を貸す奴がいると思うか?」

「そ、そんなっ。僕達友達でしょっ」

 当然のごとく答えた朋也に、春原が必死の形相で訴える。

 それを杏はあっさりと否定した。

「あたし、陽平のこと友達だと思ってないから」

「ひどっ、それって新手のイジメですかっ!?」

「あら、イジメじゃないわよ。事実だから」

「確かに、顔見知りではあるが、友達と言われると少々頷けないものがある」

 智代も杏に同意して、自分がここにいる理由を強調する。

「それに最初にも言ったが、私が今日これに参加したのは、おまえの報酬目当てではなく、美佐枝さんが来られると聞いたからだ」

 ある意味、智代は杏より春原を突き放していた。

「冷たすぎませんか、アナタ達っ!?」

「まぁ、現実はこんなもんだ」

「朋也くん」

 激しくショックを受ける春原の肩をポンっと叩き、全然慰めになってない言葉を掛ける朋也を(たしな)め、渚は慌てて春原に言う。

「わたしは朋也くんから聞いて、春原さんのお役に立ちたくて参加したんです」

「わたしもなの。わたしもお友達の役に立ちたいの」

「わ、私もです」

「渚ちゃん、ことみちゃん、委員長……」

 冷たい周囲の中に上がった心温かい言葉の数々に、春原は思わず感涙にむせぶ。

 だが、杏は全く情け容赦なかった。

「でも、全員手伝ったお礼はしてももらうわよ。男ならそれくらいの甲斐性見せなさいよね」

 あくまで自分を含めた全員の報酬を要求する。智代はともかく自分達は受験生なのに、こんなくだらない事にわざわざ付き合ってやっているのだから、それくらい当然だと。

「お、岡崎……」

「心配するな」

 鬼のような杏にビビッて情けない表情(かお)をする春原に、朋也はこそっと耳打ちした。

「相澤達に奢らせりゃいいんだよ。この勝負、勝った奴の言う事を無条件で聞くことになってただろう」

 その為に朋也はわざわざそういう条件を付けたのだ。

「そ、そうだよね。要は勝てばいいんだよね」

 希望を見出し、春原はぱっと顔を輝かせる。

「よし、僕頑張るよっ」

「ああ、じゃあ、智代達と二階を頼むな」

「まかしとけ」

 胸を叩いて請け合うと、春原はさっき智代と一緒なのを嫌がった事もコロッと忘れ、早速張り切って智代とことみを引き連れて二階に駆け上がって行った。

 

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