その男は、正確無比な射撃を行うガンマンであると
その男は、その射撃の恐ろしさから死神と言われていると
そして
その男は、とある組織で平社員として働いていると
心地よい日差しがブラインド越しに降り注ぐ部屋に、一人の少年がソファに足を組みながら寝転がっていた。
ダークグレーのスーツに身を包み、黒のつまみ帽をアイマスク代わりのように目深に被っていた。
少年のいる部屋には色々な物が置かれており、
「…………ん?」
静かな時間だけが過ぎていく中、かすかな足音が聞こえ少年は目深に被っていた帽子を被り直し、寝転んでいた姿勢からソファに座り直した。
ほどなくしてかすかに聞こえていた足音が少しずつ大きくなっていき、バァンッと部屋の入口が力強く開かれた。
「戻ったわよ!!」
「ただいま〜」
「はぁ……ただいま」
「た、ただいま戻りました……」
現れたのは4人の少女。
扉を勢いよく開けたのは、この部屋の主である
社長『
続けて満面の笑みを浮かべながら入ってきた
室長『
ため息を吐きながらもあいさつをする
課長『
最後にオドオドしながらもあいさつをする
平社員『
「おぉ、おかえり」
そう言いながら、少年は
「あ〜!!何それタバコ〜?」
「タバコ!?ちょっとダメ!!タバコは
「タバコじゃねえよ!!ココアシガレットだ!!」
ムツキとアルがタバコだと勘違いしたが、ココアシガレットだと分かるとアルはホッと胸をなでおろした。
そんな慌てていたアルを見ながらくふふっとムツキは笑っていた。
「たくっ……で?救出任務とやらの方はどうだったんだ、バッチリ報酬はもらってきたんだろ?」
「うっ!?」
「あわわ!?」
「……はぁ〜」
少年の問いに、アル、ハルカ、カヨコはすぐに返せなかった。
「ん?どうしたなんか歯切れが悪いな」
「くふふっ、実はね〜」
少年の隣にボスンッと勢いよく座ったムツキが笑いながら今回の依頼について説明してくれた。
「つまり……最低条件のターゲットを無傷で救出が出来なくてタダ働きになっちまったと……そういうことか」
「うんうん」
「んなこったろうと思ったぜ」
呆れたようにそう言うと、少年はソファに深く座り込んだ。
そんな少年に、向かいのソファに座ったカヨコが話しかけてきた。
「そういえばなんで救出任務に来なかったの?一緒に来てくれてたらもっとスムーズに行けたのに」
「あぁ……ちょっとした別件の依頼に…な」
「………また一人で危険な依頼を受けたの?」
「心配すんな……俺はやられねぇよ」
「でも無理はダメ、難しい依頼が来たなら私達を頼りなよ」
「そうそう!!やっぱりみんな揃わないとさ面白くないんだよ?」
「フッ……そうだな……その時が来たらみんなに頼らせてもらうぜ」
カヨコとムツキの言葉を聞いた少年はそう言いながら、隣に座るムツキの頭を撫でた。
ムツキは目を細めて嬉しそうに撫でられていた。
「それで例の依頼の準備は大丈夫なのか?アル」
「私を誰だと思ってるの?弾薬も傭兵もすべて抜かりないわ……あと私のことは社長と呼びなさい」
「……一応聞いとくが、生活費とかの金は残してあるんだよな?」
「……………あっ!?」
少年の問いを聞いたアルは、一瞬の間を置いて"しまった!?"というような表情を浮かべた。
「「はぁ〜」」
「くふふっ、また使いすぎちゃったんだね〜アルちゃん」
「あわわ……でしたら今すぐにでも安いメニューのお店を…」
そんなアルの反応を見て察したのか少年とカヨコは深いため息を吐き、ムツキはいつも通りなアルに笑っていた。
ハルカはオロオロしながらも、安いメニューの店を探しに出ようとしていた。
「仕方ねぇな……昼飯代ぐらいは奢ってやるよ」
「えっ!?……だ、ダメよ!!社長が社員から奢られるなんて…「でも金ねぇだろ?」……ぐふっ!?」
社長としてのプライドが少年の一言で砕かれ、アルは社長机に倒れるように突っ伏してしまった。
「腹ごしらえを済ませたら、例の依頼をやる前に掃除を終わらせようぜ」
そして、少年を先頭に5人は部屋から外へと出ていくのであった。
「うぅ…」
「……ちくしょぅ」
その日の深夜、人のほとんどいない郊外で大勢の不良生徒達が倒れており、その中心には昼間の少年が一人立っていた。
「これも依頼なんでな……悪く思うなよ」
そう言い残し背を向けて去ろうとする少年だったが、倒れていた不良生徒の一人が最後の力を振り絞り倒れながらも少年の無防備な背中に銃弾を放とうとしていた。
「……ぐっ…これでも喰ら………」
ダアァンッ
「ガハァッ!?」
不良生徒が撃つよりも早く少年が振り返り、腰から抜かれた彼の愛銃コンバットマグナムが放たれた。
弾丸は不意打ちをしようとした不良生徒の眉間に正確に当たりそのまま気を失った。
それと同時に、少年の元にアル達も集結していた。
「そっちは終わったかしら?」
「ちょうど今終わったところだ」
アルの問いかけに少年はコンバットマグナムを腰のズボンとシャツの間に収めながらそう返した。
そして全員が去ろうとしたが
「待ちやがれ!!」
「ん?」
怒りを含ませた声に呼び止められ少年とアル達が振り返ると、そこには先程の不良生徒達の黒い制服とは違い赤い制服を着たいかにもリーダーのような不良生徒が立っていた。
「よくも仲間を!!なんでアタシ達がこんな!!」
「……依頼だ…お前らはもう用無しだとよ」
「依頼!?な、何者なんだお前らは!!」
少年の雰囲気にビビりながらもアル達が何者なのか問いただす不良リーダー
そんな彼女にアルは不敵な笑みを浮かべながら答えた。
「私達は便利屋
「ふざけんじゃねぇ!!そんな奴らごときにアタシらがぁ!!」
不良リーダーは、逆上して手に持っていたアサルトライフルをアルに向けるが、アル自身はおろかムツキ、カヨコ、ハルカは誰も身構えはしなかった。
なぜなら
ダアァンッ
「いづぅ!?」
頼れるガンマンがいるのだから。
先に銃を構えられたにも関わらず少年は目にも止まらぬ速さで腰からコンバットマグナムを抜き、不良リーダーの持つアサルトライフルの銃口に弾丸を放ち破壊したのだ。
「悪いな……うちの社長に銃を向けられたからには容赦は出来ねぇぜ」
「ぐぅっ!?……ハッ!!その正確な早撃ちとコンバットマグナム……お前まさか!?“死神”『次元ガイスケ』」
「その二つ名はもう捨てたよ、俺はただのガンマンで、ただの便利屋の平社員だ」
「ガンマンだと!?そんなガキの遊びみてぇな職業なんかやってるやつにアタシが負けるかぁ!!」
不良リーダーはそう言いながら、隠し持っていたハンドガンを抜き構えようとしたが
ダダアァンッ
「がぐっ!?」
少年もとい次元の方がコンバットマグナムを放った。
その上、弾は二発放たれていた、銃弾は不良リーダーの胸と眉間にほぼ同時に当たり一瞬で意識を奪ったのであった。
「……ガンマンは職業じゃねぇ、生き方だ」
コンバットマグナムを腰に収めて次元は倒れた不良リーダーに背を向けて歩き出した。
「お疲れさま次元……さすがキヴォトス最高のガンマンと言ったところかしらね」
「……最高のガンマン…ねぇ……アル、ひとつ教えとくぜ」
次元は足を止めてそう言うと、帽子の位置を直す仕草をした。
「ガンマンに最高も最悪もねぇのさ、ガンマンは死ぬまでガンマン……死ぬ間際にテメェの生き様を振り返ってその時初めて最高か最悪か決まるもんだぜ」
そう言い残して次元は再び歩き出し、明かりのない道を進んでいった。
「くふふっ、またカッコよく去っていったねぇ次元ちゃん」
「…えっと……すごくカッコよかったです」
「社長、私達もそろそろ行こう………社長?」
次元の去っていった方向を見ながらそれぞれが反応を示している中、アルだけは身体を震わせていた。
なぜなら
「(は…は……ハードボイルド!!)」
先程までの次元の一連の出来事に衝撃を受けていたのであった。
「(今更だけどなんであんなに強くてハードボイルドなのに
「社長?……社長!!」
「うぇ!?……な、何かしら?カヨコ」
「私達も早くズラかろう結構派手にしたから」
「そ、そうね……とりあえず………あら?」
アルとカヨコがそんな会話をしている中、先程次元が去っていった暗闇からエンジン音が響きライトの光が便利屋メンバーを照らしたのであった。
その正体は、黄色いカラーのコンパクトカーに乗った次元であった。
車は派手なブレーキ音と共に止まり、アル達は突然の次元と車の登場に呆然としていた。
「じ、次元?どうしたのよそんなに慌てて……」
「説明はあとだ!!風紀委員の奴らがもう来やがった!!さっさとトンズラするぞ!!」
風紀委員、その名前を聞いた便利屋メンバーは驚き、特にアルにいたっては
白目を剥いて盛大な悲鳴を上げたのであった。
そして、その悲鳴と同時に
「待て〜!!便利屋〜!!」
遠くから銀髪ツインテールの少女を先頭に大勢の人影の姿が迫ってきていた。
「さっさと乗れ!!」
「乗り込めー!!」
次元に急かされ便利屋メンバーは車に乗り込んだ。
助手席にアル、後部座席にはムツキを真ん中にして左右をカヨコとハルカが挟んで座った。
「よし行くぞ!!」
「じゃあね〜!!風紀委員のみんな〜!!」
全員乗り込んだのを確認すると車は発進した。
サンルーフからムツキが上半身を出して迫ってきていた風紀委員達に大きく手を振りながら走り去っていくのあった。
遠ざかる風紀委員達の姿をサイドミラー越しに見ながら、次元は今の充実した日常の出会いを思い出していた。
あの日は雨が降っていた
ひどい土砂降りだった
そんな雨の中を一人、壁伝いに歩く姿があった
「…グッ……ヘマしちまった」
それはかつて裏の世界で死神と呼ばれていた頃の次元であった。
彼の脇腹にはシャツを濡らすほどの血がべっとりと付いていた。
雨で身体が冷え、血を大量に失った次元はおぼつかない足取りのまま路地裏にまで来ると限界を迎えたのか、壁に背をつけたまま座り込んでしまった。
「(死ぬな…こりゃ……まぁ、そこそこ良い人生だったんじゃねぇかな?)」
朦朧とする意識の中、そう考えているとふと近くに人の気配を感じ視線を向けると
「だ、大丈夫…ですか?」
ショートヘアに眼鏡を掛けた少女が座り込む次元を心配そうに見ていたが、次元の脇腹から流れる血を見た少女は驚くのであった。
「あなた血がっ!?」
「…俺に構うな、行け…」
「でも…っ!?」
「……さっさと行け…」
血を見て駆け寄ろうとする少女であったが、次元はコンバットマグナムを向けて少女を遠ざけようとするのであった。
銃を向けられた少女は、仕方なく次元から離れていくのであった。
少女が離れていくのを見届けた次元はコンバットマグナムを握ったまま倒れるように横になった。
「死ぬ時は……
そう言い残して次元は意識を失ったのであった。
「……ん…」
ふと意識を取り戻した時に感じたのは、身を切る寒さではなく身体を優しく温める柔らかい感触であった。
身体を起こすことでそれが柔らかい掛け布団であることが分かった。
「……ここは?」
「あぁ!!良かった…目を覚ましたんですね!!」
ここが何処なのか探ろうとした次元に突然掛けられる声、次元は咄嗟に腰に手をやるが空を掴むばかりであった。
「うぐっ!?」
当然、怪我をしていた身体で咄嗟の行動を起こせば傷が痛むもの、脇腹からの激痛に次元は思わず痛む部分を押さえた。
「無理しないでください!?かなり深い傷だったんですから!!」
「……お前は?…それにここは………」
「ここは私の部屋です、そして私は…「おーい、ア〜ルちゃ〜ん」…あっ、戻ってきた」
少女が自己紹介をしようとした時、少し離れた所から別の少女の声が聞こえてきた。
「ねぇさっきの人起きた〜?…あっ!!起きたんだね」
姿を現したのは白い髪をサイドポニーにした少女で、次元が起きたことを確認すると人懐っこそうな笑みを浮かべたのであった。
「もう突然アルちゃんに呼ばれて行ってみたら血を流した人を背負ってたからビックリしたよ〜、重すぎてほとんど動けてなかったけど」
「それは言わなくていいのよ!!」
次元と話していた時と違い、砕けた口調なれるあたり本当に気の許せる友人なのだろう。
と二人の会話を聞いていた次元はそう考えていた。
「それでお前らは?」
「あぁっと!!ごめんなさい、私は陸八魔アル……ゲヘナの生徒です」
「私は浅黄ムツキ……アルちゃんと同じゲヘナの生徒だよ」
これが便利屋68を結成する直前のアルとのファーストコンタクトになるのであった。
「ヘヘッ!!」
「ん?どうしたの次元ちゃん、なんかいいことでも思い出した?」
「だから次元ちゃんって呼ぶんじゃねぇ………いやなに便利屋始める前のムツキとアルに初めて会った時のことを思い出してたんだよ」
次元から懐かしい出会いの時の話を出され、ムツキも懐かしむように満面の笑みを浮かべていた。
「くふふっ!!懐かしいね〜、あの頃のアルちゃんってたしかまだショートヘアに眼鏡かけてたんだよね〜!!」
「ちょっと!?恥ずかしい頃の私なんか思い出さないでくれるかしら!?」
「ハッハッハッ!!」
出会った頃から変わらぬアルとムツキのどんちゃん騒ぎを聞きながら次元は笑っていた。
そして、車は月明かりが照らす夜道を走り続ける。
帰るべき
アマプラでルパン三世を見ていている合間にブルアカをやっていた時に思いついた作品です
主人公の名前は一文字違いで考えてたんですが、ガイスケで調べてみると一応、ガイスケという名前のアニメキャラはいたのでそれでやってみました。