もしもグランゼニスの神秘がいたら   作:伝説の超三毛猫

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実はコイツ、善玉らしい。
グランゼニスの悪い心らしくない気がする。


栄光に酔う者

「お客さん、もうやめにしないかい? 酒代、払えないでしょう?」

 

「うっへぇ~! オイラぁ、まだ飲むんだよォ…

 こぉ〜〜んな、嬉しい日にゃあ飲まなきゃよぉぉ!」

 

「だったら尚更だぜ。そんな日に水差されたかないだろ?」

 

 とある居酒屋にて。

 甲冑を着た鎧を着た豚の獣人が、悪酔いしていた。

 周りには空いた酒瓶がいくつも転がっており、何杯も飲んだことが伺える。

 そこに、1人の少女がやってきた。

 

「こんにちわ! やってますかマスター……」

 

「悪いなキリノちゃん。ちょっと困った事が起きてね…」

 

「あぁん?おい!ポリ公じゃあねぇか!!

 マスターてぇめえチクリやがったな!」

 

「バカ言うな! この子はここの常連なんだ!」

 

「わー!わー! 落ち着いて下さい!」

 

 豚の獣人とカラス頭のマスターの諍いの間に割って入ったのは、ヴァルキューレ警察学校の生活安全局の生徒・中務キリノである。

 

「どうしたんですかおじさん!

 落ち着いて、ちゃんと話してください!」

 

「うるへぃやい!

 どーせオイラの話なんか誰も聞いちゃくれねーんだよ……おぃぉぃぉぃ……」

 

「大丈夫ですよ! 本官、ちゃんとおじさんのお話聞きますから!

 ゆっくりで構いません、聞かせてくれませんか?」

 

「……ほんとか? ホントに嬢ちゃん、オイラの話を聞いてくれんのか?」

 

「はい。もちろんですよ、息を吸って…」

 

 生活安全局におり、有事の経験は少ないとはいえ、市民の安全を守ってきた警察官。

 若手でありながら酔っ払いの扱いはお手の物であった。

 豚の獣人は、ブフゥと深呼吸をしたあとで、ぽつりぽつりと話し始めた。

 

「ヒック! ……オイラはよぉ、昔は神さまでよぉ~~~~、キレーな宮殿でカワイイ娘とたのしくくらしてたんよ~~~~~~……」

 

「へ、へぇ…か、神さまですか…」

 

 初っ端から意味不明な話が出てきた。

 マスターはこの時点でもうマトモに話が出来る状態じゃないと判断していたらしく、キリノに向かって首を振り、早くソイツから離れた方が良いと無言でアピールしていた。

 だがキリノは違う。「大丈夫です」と表情だけでマスターを説得し、豚の獣人に続きを促した。

 

「あるときオイラ、きたねートコに封印されてよぅ……飲まなきゃやってらてんかったんだよぉ~~~~!」

 

「封印、ですか?」

 

「そ~~らよォ、オイラが寝てる間によォォォ~~~~ッ、ヒデーと思わねぇかぁ??」

 

 女子高生に泣きつく大柄の豚の獣人。

 どれだけ好意的に捕らえても情けない絵面である。

 しかも話しているのは、とても現実離れしている内容だ。かつては神さまだっただの、寝てる間に封印されただの、イマイチ信憑性と現実味に欠けた話だ。これは誰にも相手されなくなる。

 だがキリノは、市民を相手にするときの警察の心得をもう既に持っていた。この程度の酔っ払いの話を聞くなど、朝飯前である。

 

「それはそれは……封印されるようなことをした心当たりはなかったんですか?」

 

「ど~~~だったかなァ~~~……もう憶えてねーやぁぁ…」

 

「そうですか…それは大変でしたね……」

 

 本来ならば、聞き流されていい方で、無視されてもいいような話を真摯に聞いてくれるキリノは、他の生徒よりもかなり善性のある生徒である。

 その善性が功を奏したのか、豚の獣人はさらに気を良くした。

 

「でもおじさん……あ、お名前を聞くの―――」

 

「あーーーオイラかぁ。

 オイラ、イボイノスってんだぁ」

 

「そう!イボイノスさん、今はここでお酒を飲んでらっしゃいますよね?」

 

「そう!そうだよ!そうなんだよ!!封印だのなんだの、そんなむっかしのことはもォ~~良いんだァ。

 なんせオイラ、自由の身になったんだからよぉ!」

 

「えっと…つまり?」

 

「今こうして呑めてんだろう?

 もう封印なんて解けたってェだよォォォ~~~~!

 こりゃあ、飲まない訳にはいかないだろうよォ~~!ヒック!!」

 

「あー……それは、良かったですね!」

 

 話を聞きながら、キリノは考えていた。

 

「(この人……本当に、()()()()()()()()()()()()()()()?)」

 

 

 キリノが居酒屋に来たのにはワケがあった。

 とあるヴァルキューレの作戦……創世セニカの一部を捕らえるように先生から要請を受けて立案された作戦を受けて、その件の獣人を見つけ出す仕事を任されていたのだ。

 最近、山海経で目撃情報が多いということだったので見回りをしていたのだが、まさか自分が大当たりを引くとは思っていなかったのだ。しかも、自分が最近見つけ、気に入った飲食店で。

 捜索対象の名前と外見は既に共有されている。名前を確認した以上、既にポケットの連絡端末で本体に連絡はした。後は、彼女達がやってくるまで、時間を稼げばいい。

 

 それが…作戦だった。

 しかし。しかしである。

 

「(この人…酔っぱらっているけど、良い人なのでは?)」

 

 彼の身の上から、可能性を感じてしまい。

 

「(本官は…この人を騙そうとしているんじゃ?)」

 

 ヴァルキューレにおける自分の役割を思い出し。

 

「(このまま何も話さないで、いいのかな)」

 

 葛藤が生まれた。

 誰にもバレないように……悩んだあげく、キリノが選んだことは。

 

 

「あの!イボイノスさん!」

 

「お~~?」

 

「創世セニカさんという方が困っているんです!

 あなたのお力をお借りすることができれば、彼女は助かるそうです!

 急な話ですみませんが……ご協力願えませんか!?」

 

 すべて、ブチまけることだった。

 警備局、及び公安局の人間では普通にあり得ない行為である。

 だがキリノは、己の信念に従った。「奉仕・傾聴・誠実」……そして笑顔。自分自身に誇れる警官であるように。

 

「……嬢ちゃんよォ~~。

 その名前を出して、頼みごとをするってことはよ?

 オイラに『もう一度あそこに戻ってくれ』っつってるのと同じなんだよな?」

 

 しかし、それが。

 

「同じなんだよなァァァァァッ!?!?!?」

 

 それが、まずかった。

 

 

「ぶわっ!!?」

 

 キリノの視界が、急にブレた。

 かと思ったら、まったく見覚えのない場所の、住宅街の壁に叩きつけられていた。

 自身が殴られたと気が付いたのは、居酒屋の中にいたハズの店主が、心配そうに駆け寄ってきたのと、瓦礫の中から豚の獣人―――イボイノスが現れたのを見た時だった。

 

「ったく……エラく聞き分けのいい嬢ちゃんだと思ったら…オイラを嵌めに来たってのか! 舐めやがって~~~!」

 

「おいテメェ! 年頃の女の顔を殴るとかそれでも男か!!」

 

「黙れェ! どいつもこいつも馬鹿にしやがってよォ、クッソ~~~~!!!!」

 

 店主とイボイノスの言い争う声が聞こえた。

 キリノは、痛む全身を奮い立たせながら、腰に掛けてあったリボルバー式(第3号ヴァルキューレ制式)拳銃を抜いた。

 

「さがって…ください、マスター」

 

「なっ……ば、バカ言うな!

 アンタ今の状態分かってんのか!

 顔を殴られたんだぞ! 足もフラついてんじゃあねーか!!」

 

「大丈夫です……っ。

 本官だって、ヴァルキューレの警察官……こういう時、市民の前に立たなければ、制服の意味がありませんッ!!」

 

「だからって……!」

 

 キリノを気遣う店主。

 先程の一撃をイチバン近くで見ていたのだろう。

 イボイノスの暴力を受けても尚立つキリノが気が気でないのだろう。

 それに対して、キリノは……普段通りの笑顔を作り、彼に語りかけた。

 

「マスターは警備局に電話してください。

 本官は………この人を説得してみせます!」

 

「くっ……すぐに助け呼んでやっからな!死ぬんじゃあねぇぞ!!」

 

 キリノの不退転の決意を見て、歯噛みしながら立ち去った店主。

 

「くっそ~~~~。ポリ公何人相手だろうが引くもんか!

 神様ナメてんじゃねぇぞガキんちょが!! かかってこんか~~~~い!!!」

 

 

 暴れ回らんとする酔っ払………暴虐の化身を前にして。

 果たして私が相手になるか……そんな恐怖を、燃え上がる正義感で抑え込み。

 揺れる脳とフラつく足を叱責して、確りと立ち。

 正義の味方(お巡りさん)として、キリノは強い眼差しを彼に向けた。

 

 

 ―――怪力軍曹イボイノスがあらわれた。

 

 




創世セニカ
 キリノとは個人的に友好……というか見識があった。流石にサクラコ達シスターフッドやツルギ、アビドスの生徒達ほど仲が良かったわけではないが、シャーレやDU地区内で何度も顔を合わせており、相性も良かったため知り合いではある。

中務キリノ
 ヴァルキューレアベコベクソエイム。セニカのことは先生から聞いていたが、ヴァルキューレの作戦では索敵と通報を担当していた。たまたまお気に入りになった店にターゲットがいたため対応したが、イボイノスの可能性を信じて素直に協力を求めた。だが相手が酔っ払いであることを失念しかけたせいで一発貰ってしまい、暴走の初期対応をすることになる。

怪力軍曹イボイノス
 暗い褐色肌をした、豚の獣人の魔物。ゴレオン将軍の色違いで、階級は降格したが、滅茶苦茶強い。激しい鉄球ぶん回しで混乱付与攻撃をするほか、雄たけびの強化版も使い搦手を交えた力技で抑えつけてくる。なお、コイツも例に漏れず創造神グランゼニスの一部から生まれており、拙作ではセニカの腹から生まれたことになっている。
 余談だが、コイツは怖い顔の割に心優しき魔物で、二日酔いで寝ている間に封印されたという過去を持っているらしい。本性は本当に優しいのだろうが、きっと酒好きな上に酒癖が悪いのだろう。キリノは運が悪かったと言わざるを得ない。



あとがき
 キリノにイボイノスの相手ができるの?と思う方もいるでしょう。安心してください。俺もだ。
 戦おうとしてもキリノが放った弾丸は、イボイノスに当たっちゃくれないんです。それでも知恵を絞って、絞って絞ってイボイノスに食い下がろうとするんです。もし自分が倒れたら、酒癖の悪い奴が何をするか分からないから。
 やぶれかぶれに撃った弾丸が標識に当たった跳弾で、イボイノスの後ろを直撃するとかね。でも、キリノは立てなくなるくらいイボイノスにボコられるんです。
 トドメを刺される直前、キリノは自分自身の走馬灯を見るのです。射撃が全然ダメな自分、犯人との交渉ができない自分、人質に弾を当ててしまう自分……結局、警備局員らしきことは全然できずじまいの自分が悔しくてたまらないハズ。
 そう思ったキリノに鉄球が襲い掛かる直前、イボイノスの鉄球の鎖を撃ち抜いて千切る者が現れるんです。複数の警備局員・公安局員を連れた狂犬は、大柄な豚の獣人に怯むことなく。

「私の部下になにをしている」―――と、低い声で唸るように睨みつけるんです。

好きな宝の地図のボスを選んでください

  • 黒竜丸
  • ハヌマーン
  • スライムジェネラル
  • スーパーキラーマシン
  • ブラッドナイト
  • アトラス
  • 怪力軍曹イボイノス
  • 邪眼皇帝アウルート
  • 魔剣神レパルド
  • 破壊神フォロボス
  • グレイナル(若)
  • 歴代魔王の誰か(ご意見を!)
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