ナチュラル、パーフェクトなストフリを駆る   作:全智一皆

10 / 13
第九話「相互理解」

 

■  ■

「自己紹介とかしない?」

「…いきなりどうした?」

 

 どうも、幼馴染からの突然な発言に驚くナチュラルです。

 世間からは『白騎士事件』と呼ばれる様になった事件から少し経って、ようやく体が動く様になってきた頃の事だ。

 篠ノ之から、いきなり自己紹介をしないかという提案がされてきた。どうしたんだ篠ノ之、何があった?

 

「その、お前の事全然知らないなと思って」

「え、マジ? そんなに俺の事知らん? 小中ずっと同じクラスだから何度も自己紹介してるのに?」

「…そうだよ、全然知らない。殆ど話聞いてなかったから」

「酷くね? じゃあ、俺の好きな食べ物も知らねぇの?」

「知らない。あるの?」

「そりゃあるよ。寿司だよ、寿司。幼稚園とかそこらの頃から寿司が好きでさ、特に回転寿司。回らない寿司よりも回転寿司が好きなんだよ。篠ノ之は何かねぇの?」

「無いよ。不味くなければ何でも良いし」

「毎度の如く思うけど勿体無い生き方してるよなー、お前」

 

 好きな食べ物も無いってのが本当に勿体ない。ISっていう夢を見つけるまで、何を糧に生きてたんだよコイツ。

 まぁ、前世で人生の半分が戦争だった俺が言うのもあれだけどね。転生したからやりたい事なんて馬鹿みたいにあった側だし、俺。

 それこそ、軍事とかそういうの関係無しの友達を作りたいっていうのもやりたかった事だ。

 アスランとかシンとかルナマリアとかレイとかは後輩だし、俺は兎も角、ヤマトの方は多分友達とは思ってなかっただろうし、ルーシュはなんか年下の従妹みたいな感じだったし。

 アグネス? 彼奴は論外だよ。すぐ叩き伏せてから避けられる様になった。まぁ、俺としてもあんま関わってて楽しい奴ではなかったし良いんだけど。

 イザークとかディアッカもなぁ、別に友達ではなかったんだよな。特にイザークは一回殴り合った事もあるくらいだし。

 

「…なら改めて自己紹介するか。名前は…別にいいか。好きな食べ物は寿司、特にエビとツナマヨが好きだな。好きな事は友達と遊んだり話す事、空を見る事。嫌いな食べ物はトマトだな、あれマジ無理。嫌いな事は…そうだな、友達が酷い扱いされたりとか? 特に篠ノ之とか織斑が関わるとすぐキレる」

「ほんとね。そうは言っても、ガチギレしたのは高1の時だけではあるけど」

「あれはガチギレだったなー。事実、後にも先にもあれだけキレたのはあれが……いや、違うな。白騎士事件のやつもガチギレだわ。今までないくらい怒鳴ってたろ?」

「うん。別人なんじゃないかって疑っちゃうくらいには怒鳴ってたね。正直、初めて恐怖っていうのを覚えたかも」

「そこまで? お前に怖いって思わせるくらいキレてたの俺? それはマジごめんなんだけど」

「なんでお前が謝んのさ。悪いのは私なんだから、謝る必要ないでしょ。お前が言った通り、私はガキだったんだよ。感情に支配されて、あの通り」

「……お前、反省とか出来るんだな」

 

 つい出た言葉に、篠ノ之が顔を顰める。

 すんません、謝るんで振り上げた拳を収めてください。でもお前もお前で悪いんじゃない? とか思ったり。

 

「反省くらい出来る。それを次に活かすんだ。…もう、間違えない様に」

「そっか。なら頑張ろうぜ。今度は俺も一緒にやってやる」

「…うん。ありがとう」

「お、良いじゃん良いじゃん。そこでごめんじゃなくてありがとうが出てくるの、素直に嬉しいぜ」

「散々教えられたからね。お前にも、ちーちゃんにも」

「あ、それそれ。俺は愛称で呼んでくんねぇの?」

「え」

 

 俺だけ仲間外れは良くないと思います。織斑だけ愛称ついてんの羨ましい。

 友達ならばあだ名の一つや二つくらい有っても良くないか? 俺は沢山あだ名つけてんだぞ!?

 

「俺はしのちゃんとかしのしのとか色々言ってるけど、俺をそういう感じで呼ぶ事ないじゃん」

「いやっ、それは…その……」

「やっぱ俺が友達じゃ無理か?」

「ち、違うっ! それは絶対にない!」

「お、おう…。いや、そんな必死に否定せんでも。冗談だよ、冗談」

「…そういう冗談止めて」

「ガチトーンじゃん…はい、すいませんでした」

 

 今まで聞いた事のない類のガチトーンだったぞ。

 篠ノ之からあんな言葉が聞けるとは思わなかったな。なんか嬉しい。

 

「で、どうなんだ?」

「…――いから」

「はい?」

「恥ずかしいからっ…呼べない」

「………えぇ? お前からそんな乙女みたいな言葉出てくる事ある?」

「う、うるさいっ! 良いだろ別に! 今までずっと苗字だって呼ばずにお前お前しか言ってこなかったのに、いきなりあだ名で呼べる訳ないだろ!?」

「逆ギレかよ!? 良いだろ好きに呼べば!」

「出来るかッ! そ、それに、お前だって親友だ何だ言う癖に名前で呼ばないでしょ!?」

「呼ばないだけで普通に呼べるぞ、束。何ならちゃん付けだって出来るぞ束ちゃん」

「〜〜〜〜っっっ…!!!!!」

「いてっ、痛い痛い!! ちょ、マジ痛いって! お前なぁ、事ある毎に俺殴るの止めてくんないか!? わりと痛いんだぞ!?」

「黙れ!」

 

 遂にうるさいから黙れになりやがった!? どんどん口が悪くなっていくぞ、コイツ!

 お前が煽るのが悪いんだぞコラ! 俺は名前で呼ばれるの嫌だろうなと思ってるから苗字で呼んでるんだ! 恥ずかしくはねぇぞ!

 

「呼んで良いなら普通に名前で呼ぶっての。お前と織斑が嫌がるだろうなって思ってるから苗字で呼んでんだよ」

「…デリカシー無いくせに、そういう所は真面目なの何なんだよ。ムカつく」

「酷い言い様だな、おい。つか、お前の自己紹介は?」

 

 なんか色々と本題からめっちゃズレたけど、元に戻すと今回は自己紹介をしようってやつだった。

 俺は一応やったけど、まだ篠ノ之の自己紹介を聞いてない。というか何気に初めてだ。コイツ小中一貫して自己紹介無視して来たからな。

 

「あぁ…そういえば、してなかったな。…名前は、篠ノ之束。好きな食べ物、嫌いな食べ物は特に無し。嫌いなやつは無能だね。特に支離滅裂な事しか言わないやつ」

「最初に嫌いなやつ持ってくるのお前だけだよ」

 

 プラスなやつ持ってこいよ、なんでマイナスな自己紹介から持ってくるんだよ。

 しかも嫌いなこと、とか、ものじゃなくてやつって。自分が嫌いなタイプの人間語られても困るって。

 俺とか織斑は知ってるから良いけど、普通の人なら困惑するぞ。

 

「好きなことは…特に無かったんだけどね」

「え、無いの? 理論云々のあれって好きだからやってたんじゃねぇの?」

 

 幼稚園の頃とか、めっちゃ複雑な数式とか論理とか書いてたの好きでやってたんじゃないのか、あれ。

 だとしたらスゲェぞ。いや、篠ノ之が十分凄いのは知ってるんだけども。だとしてもスゲェな、おい。

 好きでもないのにあんなクソみたいに長い数式書き出すなんざ、常人には出来んぞ。あれならOSの書き換え訓練する方がマシだ。

 

「好きでやってたって言うよりは、思い付いたりしたのを書いてたって感じかな。未知の探求っていう意味なら、好きな事なのかもしれない」

無かったってことは、今は違うのか?」

「うん。宇宙を見たり、調べたりする事が増えて…あとは―――友達と一緒に居る事。お前のくだらない雑談を聞いたり、ちーちゃんと一緒にそれを聞いたり、ご飯を食べたり……そういう当たり前の事が、好きになれた」

「…そっか」

「お前のお陰だよ。お前が居なかったら、きっとそれが大切だって事にも気が付かなかった」

「大袈裟…って言うのは野暮だな。素直に受け取っとくよ、お前からの貴重な感謝だ」

「そうだよ、私からの感謝。何度も言うけど、ありがとう」

「どういたしまして。これからも存分に雑談してやるよ、色々とやりながらな」

 

 ISだけじゃなく、フリーダムの事もあるしな。

 やらなきゃいけない事は沢山ある。

 それも含めて、織斑とも一緒に色々と話しとかないとな。

 

「…そういや、昼食ってねぇな」

「食材ないよ」

「答えるの早いな。えー…じゃあ、織斑に持ってくる様に頼むか」

「…お前、料理出来るの?」

「そりゃな。弁当も全部自分で作ってるんだぜ」

「えぇ…!?」

 

 そんな驚かれるか…。ちょっとショック。

 

 それから暫くして、織斑に買ってきてもらった食材で簡単な昼食を作った。わりと好評で嬉しかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。