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拝啓、母さん、父さん。季節も遂に春に入り、暖かな風が吹いて桜の花弁が舞い散る今日この頃、如何お過ごしでしょうか? 私は今日も元気に子供生活を満喫しております。
はい、どうも。元ザフト所属、現在子供のナチュラルくんです。
あの馬鹿阿呆クソ間抜けな神もどきに、碌な理由も教えられずに転生とか言うのをさせられて早くも五年という月日が経ちました。早いよね、月日が流れるのって。
赤子として産まれてからも意識があったからね、マジでめっちゃ心労溜まった。せめて意識無くしてくれよ、何だってこんな歳にもなって母親の乳なんざ吸わねばならんのだ。あれか、俺を恥ずか死させようという新手の拷問か? だとしたら大成功だよ、くそったれ。
親は別に悪くねぇんだ、俺が勝手に心労溜めてるだけだから。だって前世が大人なんですもの……まぁ、言うて三十路にもならなかったけどな。二十歳の後半ぐらいで死んだし。
いや、だとしても苦しいもんがあったよね。すっごい恥ずかしかったよ。だからね、常時賢者タイムに突入して逆に心配されてた俺は決して悪くないと思う。そう思いたいです。
まぁ、そんなこんなで五年だよ、五年。俺も五歳になって幼稚園に通う様になったよ。幼稚園なんて何年ぶりだろうよ。あんま良い思い出ないけど。
戦争でぶっ壊してしまった苦い思い出があるのだ、俺には。あの日は思いっ切り吐いてしまった。整備士の皆様マジすいません。
幼子の死体とか見て平然としていられるよりはマシだと思えば、多少は楽になっていたかもしれない。ナチュラルであれコーディネイターであれ、あんな無垢な子供を死なせてしまった事には罪悪感を抱かずにはいられなかったなり
戦争だから、と割り切れたら良かったんだけどな……生憎と、俺はそこまでメンタル強くなかったんだよな。
いつもナチュラルってバレないかどうかのハラハラを耐えてる癖に、そういうのには弱いってのは本当に訳分からん。俺は鋼のメンタルなのか豆腐明太子なのかどっちなんだろうか、いい加減はっきりしたい所である。
だがまぁ、そう考えると此処はめっちゃ平和だ。戦争がない訳ではないけど、この国はめっちゃ平和だし。戦争があるのは基本的に外国ばっかで、この日本にはそういうの一切無いんだもの。
「へいわだなぁ…」
「あの子、またおじいちゃんみたいな事言ってるよ…」
「最初はしっかりした子としか思ってなかったけど、この時期にあそこまで自立してるって流石に早すぎるわよね…」
ひそひそと保育士の女性達が話しているのが聞こえるが、聞こえないふり聞こえないふり。いやまぁ、分からんでもないけれども。俺も同じ立場だったら多分同じ事言ってるし。
正直、園児の真似事するのは面倒なので普通に振る舞ってるだけなんだけども。そんな事すればそりゃ変な目で見られるよね、良くも悪くも。
けどなぁ…面倒なもんは面倒だからな。おままごととかするつもり全然無いし。鬼ごっことか隠れんぼならやるけどな、あれは楽しい。
だからと言うか、あんま友達出来てないんですよね。べ、別に寂しくなんてないんだからねっ?……うわぁ、気持ち悪っ。自分でやってて反吐が出そう。
「また一人で変な事考えてるの?」
「いきなりひどくない?」
しっかりと呂律を整えて発声された流暢な言葉が耳に入り込んでくる。前々から思ってたけど、めっちゃファウンデーションのロリっ娘に似てる気がする。
床に座り込んで、窓の外の景色を眺めて水筒を飲む俺を見下す様にしながら言葉を掛けてくるのは、この幼稚園において数少ない友人―――俺が勝手にそう思っているだけ―――の篠ノ之束である。
幼児ながらめっちゃ頭の良い天才です。コーディネイターかと疑ってしまうぐらいには頭が良い。というかぶっちゃけコーディネイターだと俺は思っている。
「だってまた変な顔してたし。どうせ変な事なんでしょ」
「かいこういちばんから、すっごいばとうだな。そんなへんなかおしてた?」
「顰めっ面してた」
「よくしってるな、そんなむずかしいことば」
「お前もじゃん。まだ呂律がちゃんとしてないだけでしょ」
「ようじなのに、そこまでろれつがととのってるきみがすごいとおれはおもう」
「当たり前じゃん。逆になんで出来ないの?」
「しのしのがれいがいなだけ」
「ふんっ」
「いって!?」
このクソガキっ、結構本気で殴りやがったな!? 幼児な事もあってくっそ痛く感じるんだぞ、こっちはー!
教えはどうなってんだ、教えは!
俺は頭を抑えながら、目尻に溜まった涙を無理矢理引っ込ませた。落ち着け、落ち着くんだ俺。この溢れんばかりの暴力を抑え込め…!
「お前が変な名前で呼ぶのが悪いんだよ、べーっ」
ほんまどついたろかこのガキ。
おっと失礼、本音が漏れてしまった。やれやれ、子供になって煽り耐性も弱くなっている様だ。困ったもんだぜ。
取り敢えず腹が立つので、
「すきあり」
「った!?」
立ち上がって即座にデコピン食らわせてやったぜ。どうよ、この子供ながらの手出しの速さ。
突然の小さな暴力に驚いて、額を抑える篠ノ之。へっ、どんなもんじゃい。
ドヤァとしていると、額を抑えながらぷるぷると篠ノ之の肩が震えているのが目に入った。おっと、これはちょっとヤバいかな?
「っっっ……ったな…」
「へ?」
「よくも打ったな! 父親にも打たれた事ないのにっ!」
涙目になりながら、顔を鬼が如く真っ赤にして声を荒げる篠ノ之。
えぇ…そんな怒る程ですか? あんま強くやったつもりないんだけど……。でもめっちゃ怒ってるな、んでもってやっぱファウンデーションのロリっ娘だな、篠ノ之の声。
「でこぴんもぶったはんていなのかよ!? というか、さいしょにてをだしたのおまえだぞ!」
「うるさいっ! 許さない、絶対にぶん殴ってやる!」
「りふじんにもほどがあるだろ!?」
「見て、束ちゃんがあんなに感情を顕にしてるわ…!」
「流石ね。いつも誰とも関わろうとしない束ちゃんが、あんなに感情を曝け出している…やるわね、あの子」
「そんなかってになっとくしてないで、できるならたすけてはくれませんかね!?」
すごい感心してる保育士の皆様に、俺はこう叫ばずにはいられなかった。助けてくださいよ、一人の園児が天才に殴り倒されようとしてるんですよ!?
本当に教えはどうなってんだよ! 天才だからって基本的に放置してんのか!? 一般常識の一つや二つくらいは叩き込んでくれよ才能知ってるならば!
「うぉぉぉぉぉ!!!!!」
「逃げるなァ!」
「無理に決まってんだろ逃げるに決まってんだろ! そんな鬼みたいな顔して追っかけられちゃ逃げる他ねぇでしょうよ!?」
「いきなり呂律整えるな気持ち悪い!」
「ほらまた出やがったな理不尽暴言! だが感謝してやろう、お前のお陰で呂律が整ったありがとう! お礼に今度からしのしのうさぎと呼んでやろうか、兎が好きな篠ノ之さんっ!」
「っ!? な、なんでお前がそれを知ってる!?」
廊下を全力疾走しながら、俺がにやりと不敵な笑みを浮かべてそう言えば篠ノ之の動きが少し鈍った。
甘く見るなよ小童が。伊達に長い間、軍に身を寄せちゃいねぇんだよ! まぁ現世だと単なる園児でしかないから知る由もないだろうがね!
「お昼寝の時間に実は起きていてな! お前が兎の本読んでニヤニヤしてる所見ちまったよ! 意外と乙女な所もあるもんだなぁ!?」
「ッッッッッッ――――――!!!!!! 殺すっ、お前をここで殺すッ! ちーちゃんにだって教えてなかったのにっ!」
「すまんな! 実は織斑にはいの一番に伝えてあるんだザマァ見ろ!
「しねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!」
「やれるもんならやってみろォォォォォ!!!!!!!!」
「お前等、廊下を走るなァ!」
「ぐおっ」
織斑の野郎、良いラリアット極めやがった…!
つーかいつ先回りしたんだよ…
まぁ、この様にわりと楽しんで生活しているので、どうか見守っていてください。息子より。
ナチュラル(幼稚園)
五年の歳月を経て幼稚園の終盤となったナチュラルくん。意識があるが故に赤子の頃の生活は大変苦労したという。
子供のふりをするのが面倒という理由で、素の自分を曝け出している為、大人からは普通より早く自立したしっかり者として認識されている。
知識も隠していない為、篠ノ之束にはそこに目を付けられた形で交友関係になった。
篠ノ之束(幼稚園)
まだ園児な束さん。天才の中の天才、即ち天災。になる前のまだ綺麗な束さん。
この頃から頭脳明晰だった為に孤立していたが、園児にも関わらず大人の様なナチュラルが気になってよく彼女からちょっかいを掛けている。
中の人がファウンデーションのロリと同じ。
織斑千冬(園児)
最強のブリュンヒルデ、その幼き頃。束の幼馴染。
基本的に人と関わらない束が自分から気に掛けているナチュラルくんに興味を持っている。変な奴だと思ってる。