ナチュラル、パーフェクトなストフリを駆る   作:全智一皆

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第二話「宇宙から眺める世界」

 

■  ■

 平和な世界を謳歌する。それは、俺が過去の人生で経験する事のなかったものだった。

 ナチュラルでありながらザフトに入隊するまでも、入隊した後も、俺の人生には平和なんてものは一つも無かった。しかし半分は俺のへまによる自業自得という事実。心が折れそうだ。

 だが、そうやって考えれば考える程にこの世界の平和さには安心せざるを得ない。治安良いし、ナチュラルとかコーディネイターみたいな差別も無いしで、正直かなり楽しんでいる俺が居る。

 でも、どうやら俺の友人である篠ノ之束ちゃんはそうでもないらしい。悲しいね。

 

「ちゃん付けするな。これで言うの何度目だと思ってるの? 学習能力ないの?」

「その言葉、ヤタノカガミでそっくりそのままお返ししてやるよ。お前の方こそ学習しろよ、もう気にしない方が楽なんだと」

「イヤだ。お前にちゃん付けされるのは嘗められてる気がして癪に障る」

「もう何年もの付き合いになるというのに酷い言い様だ。織斑、いつもお前と絡んでる時のコイツどこ行った?」

「コイツなりの照れ隠しだ。気にしてやるな」

「ちーちゃん!? いきなり何言い出すのさっ!?」

「なに、ちゃん付け照れてんの?」

「違うっ! 勘違いすんな、この馬鹿阿呆間抜け木偶の坊!」

「馬鹿阿呆間抜けはともかく木偶の坊は言い過ぎだろ、テメェ!」

「怒る所そこなのか…?」

 

 そんなやり取りを続けて数年だ。

 あれからまた数年の時間が過ぎたんだ。俺も篠ノ之も織斑も小学生高学年。もう六年生だよ、六年生。ちょっと前まで園児だったのに早すぎる。

 とはいえ、六年生になっても篠ノ之は相変わらず生意気だ。というか歳を得てから、知識というか頭の回転というか、そこら辺に拍車が掛かっている気がする。何なのお前、マジでコーディネイターじゃん。

 篠ノ之だけじゃなく織斑もちょっとおかしいけど。身体能力どうなってんの? 戦闘用コーディネイターと大差ねぇぞコイツ。小学生がしていい身体能力してねぇんだけど。

 揃いも揃って普通じゃないね。頭脳の怪物と膂力の怪物に挟まれる俺は、さながら二匹の狼に囲まれた兎と言っても過言ではないのではなかろうか。

 

「お前が兎とか本当に止めてほしいんだけど。兎が可哀想でしょ」

 

 心底気持ち悪いという感情を包み隠さず解き放つ篠ノ之が酷い暴言を放ってきやがった。心を読めるのかコイツ。コーディネイターじゃなくてアコードなん?

 

「あのさ、しのちゃんさ? 平然と人の心を読むのマジ何なの? 人間じゃなくて妖怪か何かなの、お前?」

「だからちゃん付けするなッ! 渾名でも呼ぶな! ほんっと、何なんだお前は!」

「お前の腐れ縁。或いは良き友人です」

「友達を選ぶ権利は私にもあるよ。なんだってお前みたいな有象無象…」

「ほらまた出たよ! お前好きだよなー、他人の事を有象無象呼ばわりするの。そんな他人見下して楽しいかね」

「私は事実を述べてるだけだよ。有象無象は有象無象でしょ、低俗で馬鹿ばっかり」

「じゃお前はギフテッドに胡座かいてる傲慢不遜で常識の欠けた天性の馬鹿だな!」

「あ?」

「こっわ。女子小学生がしていい目付きじゃねぇよ」

「私はお前の肝の座りもかなり異常だと思うが…束を相手にここまで堂々と言える奴はそう居ないぞ」

「世間が腰抜けなだけだって。コイツは頭脳が常軌を逸してて行動力も桁外れなだけだろ、そんだけのガキなの」

 

 別にコイツぐらいの頭脳なんざC.Eの歴史じゃ珍しくなかったしな。ユーレン・ヒビキとかみたいなのが居るぐらいだったし。

 そもそもの話、あっちにはコーディネイターが居たんだ。コーディネイターと比べてみれば、別に篠ノ之の天才性は珍しくないだろう。

 戦闘用のコーディネイターが造られていたくらいだし、中には頭脳関連を特化させた知識型のコーディネイターもきっと居た筈だ。

 ユーレン・ヒビキは狂人だの何だの言われていたらしいが、篠ノ之に限ってはそうでもない。

 まぁ、危険性を孕んじゃいるし、まだその領域にまで踏み込んでないってだけの話だが、今の所は常人より遥かに頭が良いだけの天才だ。

 ただそれだけ。本当にそれだけだ。

 妬みも僻みもする意味も必要もなし。そもそも天才性について特別に何かを思っている訳でもないんだから、そういう感情を抱かないのは当然っちゃ当然だが。

 

「お前は天才だよ、それは事実だ。ノーベルも霞んで見えるくらいには天才だ。だが、どんな天才も人間としての常識は保ってた。あのアインシュタインですら、表向きを装う顔を持ってたんだ。世の天才達を越える天才ならメリハリ付けろよ。夢持った時に苦労するぞ」

「……夢なんてない」

「分からないだろ。未来が視える訳でもないんだし。夢なんてな、興味持ったものでも何でも良いんだよ。新たな説を立証するのも良し、誰も辿り着いた事のない場所を見付けるも良し、世界を隅から隅まで探索し尽くすも良し、宇宙に国家を作るも良しだ。何でもいいんだよ、何でも」

「最後のは規模がデカ過ぎないか…? それ以外もかなり規模がアレだったが様な気がするが…」

「コイツなら出来る。まぁ、最後のはちょっと難しいかもだけどな。手始めに宇宙の謎でも解いてみたらどうだ?」

「宇宙……」

 

 宇宙という単語に、篠ノ之が考え込んだ。

 お、これは良い発見だ。どうやら宇宙が気になるらしい。

 分かる分かる。良いよな、宇宙。俺も戦争なんて無かったなら、地球とプラントを行き来しながら楽しい生活を送りたかったもんだ。

 ま、結局は戦争に戦争の毎日だったけどな。クソ喰らえ。

 

「…宇宙から見る地球は、本当に綺麗だった」

「…?」

「遠い宇宙(そら)から眺める星は、穏やかで、静かで、綺麗だった。それだけ見れば、誰もあの綺麗な水色の星で、自然が壊され、人々が争っているだなんて考えないだろうな」

「……まるで、本当に宇宙から地球を見たことがある様な言い方だな」

「―――夢だよ。酷くつまらない、クソみたいな夢の話だ」

 

 あんな世界でなければ、良い眺めだって心の底から言えたんだけどな。

 まぁ、そもそもの話として前世で見た事があるなんて言える訳がないのだが。何言ってんだコイツみたいな目で見られるの分かってるし。

 

「ま、気儘に決めりゃ良いだろ、夢なんて。まだ小学生なんだ、焦る必要もない」

「…ガキのくせに大人みたいな事言うね」

「ひっぱたくぞクソガキ」

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