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「アンタさ、なんであんな奴と絡んでんの?」
「はい?」
どうも、久しぶりのナチュラルです。
またもや時間は淡々と過ぎて行き、中学校を卒業して、高校生になってから一ヶ月くらいは経ちました。
今回も篠ノ之、織斑と同じ高校に入学する事となりはしたものの、残念ながら今回は俺だけが二人とは別のクラスとなってしまった。中々に珍しい。
幼稚園から中学校まで常に同じクラスであったら俺たちが別れるというのは、思ってもみなかった事だ。
篠ノ之は清々するとか言ってたけど、残念だったな。俺は手間掛けてでもお前達の教室に遊びに行くって決めてるんだ、小学校の時からな。
まぁ、そんなこんなで昼休みになって篠ノ之の教室に来ると、お目当ての篠ノ之も織斑も居なかったのだ。
どうしたもんか…と悩んでいると、そのクラスの女子に話し掛けられた。だいぶ口が悪そうだね。
「なんでって、そりゃ友達だからな」
「はぁ? アンタ、それ本気で言ってんの?」
なんでもない様に答えると、その女子は信じられないといった表情を浮かべた。ドン引きしている様な気もする。
まぁ、ぶっちゃけ分からんでもない。一般人の目線で考えてみりゃ、篠ノ之ってマジで無愛想かつ傲慢という社会で生きていけるか不安で仕方ない様な人格してるし。
そんな彼奴と友人である俺が、そんな目で見られるのは仕方のない事だろう。それはそれとして心外ではあるけど。
「本気も本気よ。俺、織斑と同じで幼稚園の頃からの友達なんだぜ。もはや親友の域ですらある」
「マジで言ってんの? 気持ち悪っ」
「そりゃ酷いだろ。まぁ、客観的に見りゃ分からんでもないけど、俺にとっちゃ大事な友達だ。あれでも良い所もあるんだぜ?」
「あんな奴の何処が良いの? 無愛想で、いつも人を見下して…頭が良いからって、何でも許されて。そんな奴と友達で、何が楽しいの? アンタも、織斑も」
苛立っているのか、少し声が荒んでいる。
えぇ…何に怒ってんの? 俺が篠ノ之と友達な事に怒ってんのか? 俺コイツと知り合いだっけかな……うん、全然憶えてないね。
え、マジで何に怒ってんだ? 全然分からんのだけど。
もしかして友達居ないんかな? なんかアドバイスとかした方が良いんだろうか。
「だから何だよ。そんなの、篠ノ之の一面でしかないだろ? 頭が良い、色んな奴に特別扱いされる、だから何だって話だ。俺の友達が偶然そういう奴だった、それだけの事だ」
「っ…なに、それ」
「そんな事を一々気にしてちゃ、出来る友達も出来んだろ。受け容れる、これ大事ね」
「なによ、それッ!」
女子が大きく声を荒げる。
うるっさいな! いきなり大きい声を出すな、心臓口から出てくるか思ったわ!
何よ何なのよ! なんでそんな怒ってんの!? 俺なんか変な事でも言いましたか!?
「受け容れる? 出来る訳ないでしょッ! アイツが、篠ノ之と織斑が来た所為で私の人生は台無しになった! あの二人が、何もかもを崩していった!!」
「えぇ…? いきなりどうしたよ」
「勉強も運動も、全部私がトップだった! 習い事も塾も、小さい頃から全部やって、結果を残してきた! なのにっ…あの二人が現れた! 彼奴等の所為で、私はっ!」
「めっちゃ逆恨みじゃんか。知らねぇよ、そんな事。メンタルケアなら保健室の先生に頼むわ、俺そういうの苦手なんだ」
最近の高校生って皆こうなのか? いきなりキレ出すのは流石に恐ろしいんだけど。
周りを見ても、揃いも揃って目を逸らしやがる。ちょいちょい、助けてくれよ。誰か止めてよ、この人。
「うるさいッ! アンタの事は知ってるわ…いつもいつも、朝も昼も放課後もあの二人と一緒に居るものね? ねぇ、アンタは何なの? 大して頭が良い訳でもなく、運動が出来る訳でもないアンタは、なんであの二人と居るの?」
「いや、だから友達だから」
「そんな訳がないでしょ! 知ってる? アンタは隠れ蓑だの、お荷物だの言われてるのよ? 見合わないってさ」
「はぁ…だから?」
「は?」
「だから何なの。隠れ蓑だの、お荷物だの言われてるから、何だっての? それと俺が彼奴等の友達なのは関係ないだろ。他人に友人関係をどうこう言われる筋合いねぇぞ」
こっちが下手に出てりゃ好き放題言いやがってよぉ、流石に温厚な俺もこれにゃキレちまうぜ?
いいのか、キレ散らかすぞ! とんでもなくキレ散らかしちまうぞ、いいのか!? 俺は男女平等主義だから遠慮なくグー出せるんだぞ、テメェ!
と、内心ノリノリで一発かましたろかなー、としていると、
「何してんの?」
聞き慣れた声が後ろからした。
制服姿の篠ノ之が、其処には居た。けど織斑は居ないな。なんだ、一緒じゃないのか。
「やっほー、しのちゃん」
「はいはい」
「いいね、流しも慣れてきた。織斑は居ないのか?」
「ちーちゃんは教師に呼び出し」
「マジ? 遂になんかやらかしたか?」
あの織斑が問題行動を…!?
仮に暴力沙汰であるなら大丈夫なのか? 織斑ではなく、織斑に暴力を振られた生徒か教師が。全身骨折したりしてないか?
要らん心配をすると、それを見透かした様に心底呆れて溜め息を吐いた篠ノ之に否定される。
「お前じゃあるまいし、する訳ないでしょ。委員の仕事で手伝いしてるだけ」
「あー、なるほどね」
「で、何の用?」
「そりゃ昼飯だよ。いつも来るだろ?」
「知ってる。お前じゃなくて、其処の奴に聞いてるんだ」
女子を指差す篠ノ之。
女子はキッと篠ノ之を睨んでいる。ほら、指差すんじゃないよ。それわりと不快に感じる人居るんだから。
俺が諌める様に言うと、面倒くさそうにしながらも指を下ろしてくれた。コイツかなり素直になったな。
「お前さぁ…クラスメイトの名前くらい覚えろって、いい加減。可哀想でしょ?」
「目に入れるし、受け答えする様になったんだから良いでしょ」
「うーん…まぁ、確かに…? いや、やっぱダメだろ。苗字くらいは覚えろって」
「嫌だ」
「子供かよ」
「は?」
「逆ギレすんなよ。ちょ、痛い、痛い痛い! おい的確に脛蹴ってくんな!」
「……何なのよ、本当に」
俯いて、呟く女子生徒。
雰囲気が変わったな。完全に余裕が無くなってる。
ここまでされれば俺でも分かる。コイツは危険な奴だ、どうなるか分かったもんじゃないな。
流石に警戒するよ、俺でも。というかこの世界で荒事を対処するの初めてかもだ。
「篠ノ之さ…アンタって、思ったより弱いんだね」
「気でも狂った?」
「やっと分かった……そいつが、アンタの枷なんだ。アンタが自分を人だって認識させる、周りに居るのが人だって認識させる…自分が怪物だって事を隠す為に、平々凡々なそいつと態々友達やってんでしょ?」
パキッ―――と、頭の中で何かに罅が入る様な音がした。
怪物だと? 篠ノ之が?
篠ノ之は人だ。人間だ。怪物なんかじゃない、化け物なんかじゃない。れっきとした人間だ。
「偶に居るよね、お前みたいに支離滅裂な事を言うやつ。私はそういうのが一番嫌いだよ、多少の話も通じない」
「ふふ…どうとでも言いなよ。アンタだけじゃない、織斑も…きっとそうだ。なら、コイツが消えれば―――」
頭の中で、再び何かが割れかける。
篠ノ之だけでなく、織斑までも怪物と呼び捨てるのか。自分の勝手な想像で、俺の友人を怪物だと吐き捨てるのか。
―――巫山戯るな。
「え――――――?」
「ちょ、お前…!?」
気が付けば、体が動いていた。
大きく踏み込み、眼前に立つ生徒の顔面へと容赦なく拳を叩き込んでいた。
頭が割れる様に痛い。酷い頭痛だ、今まで味わった事のないタイプの頭痛だ。すっごく頭が痛いぞこれ。気分が一気に悪くなっていく。
だが―――思考はクリアだ。自分が何をしたのかも、周りが何をしているのかも容易に理解出来る。
不思議な感覚だ。決して爽快ではないし、冷静であるとも言えないが―――何故だか、落ち着いている様な気がしてならない。
「お前っ…何してんの!?」
「……えっと、殴った?」
「そんなの見りゃ分かる! 本当に何してんんだよ!」
「いや、友達の事を怪物呼ばわりされたら怒るだろ、普通。…まぁ、だとしても怒り過ぎな気もするけど」
「なんで自覚あるんだよ…」
「うわぁ…人殴ったな、俺。しかも顔面。クリティカルヒットじゃなかった?」
「しっかり中心捉えてたよ馬鹿。なに、そんなに私達の事を友達だと思ってたの? 本気で?」
「そりゃ、そうだろ。幼稚園の頃からの付き合いだぞ? 俺はお前も織斑も本気で友達だと思ってる」
「……あっそ」
そう言って、篠ノ之はそっぽ向いてしまった。
なんでそっぽ向くんだ。こっち見ろ、つか助けてくれ。マジで頭が痛いんだ。立つのも辛い。
「篠ノ之、織斑と先生に宜しく言っといて」
「はぁ? なんで私が…」
「俺ぶっ倒れるから」
「は?」
ぷつん、と電源が切れた様に。
俺の意識がシャットアウトした。