ナチュラル、パーフェクトなストフリを駆る   作:全智一皆

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第八話「青き清浄なる世界」

 

■  ■

 世界はC.Eへと劇的に変わる。

 それは、かつての彼を見る者の視点。

 ザフトに所属する一軍人―――キラを始めとし、各国から警戒されるジン乗りのパイロットの事だ。

 

『滅殺ッ!』

『くっ…!』

 

 場所はヤキン・ドゥーエ宙域。

 其処ではザフトを始め、コーディネイターとナチュラル達の戦争が繰り広げられていた。

 フリーダムガンダム―――自由の名を持つ機体を駆るパイロット、キラ・ヤマトもまた、そのヤキン・ドゥーエ宙域にて第三の陣営として戦う者だった。

 世間において、三馬鹿と呼ばれる者達―――ブーステッドマンと呼ばれる非人道的な実験から生み出された三人のパイロットを相手取っていた。

 

 クロト・ブエルが駆るレイダーガンダムの武装、スパイク付金属球「ミョルニル」が宙を薙ぎ、盾でそれを防いだフリーダムごと吹き飛ばす。

 両翼を展開し、空中で姿勢を制御してすぐ体勢を立て直すが、幾らやっても攻撃の嵐が止む事はない。

 オルガ・サブナックが駆るカラミティによる砲撃、シャニ・アンドラスが駆るフォビドゥンの格闘戦用の大型鎌「ニーズヘグ」による攻撃。

 フリーダムもまた攻撃をしてはいるが、全て決定打にはなり得ていない。

 彼らは各々で好き勝手に動いている様で、しかし連携は完璧だった。一人がミスをすればカバーする様に攻撃し、墜ちない様に援護している。

 好き勝手に動きながらも上手いフォローが行われる、即興的な連携。攻めるに攻め切れない攻防戦に、キラのペースが乱されていた。

 

『はぁぁぁ!!!』

『墜ちろっ!』

 

『このままじゃっ…!』

 

 迫り来る大鎌と砲撃。

 曲線を描くインパルス砲をシールドで防ぎ、抜刀したビームサーベルを下から振り上げて大鎌と鍔迫り合う。

 このままではジリ貧だ。向かわなければならない場所があるというのに…!

 

『――――――』

『ぐあっ…!?』

 

 ガキィンッ!!!

 火花が宇宙に咲き、カラミティの背後から凄まじい衝撃が叩き込まれる。

 稲妻の如き一閃がビームを中断し、背後から機体の股を蹴り上げる様にして押し退けて、その機体は全速力でフォビドゥンへと斬り掛かる。

 

『はぁっ!?』

『え…!?』

 

 剣は正確に左側のブースターの内部を切り裂き、行場を失ったエネルギーが即座に爆発して硝煙を漂わせた。

 フォビドゥンが振り向くが、既に手遅れだ。事は為された後なのだ。だが、自分をやった相手を目視する事は出来た。

 それは―――ジンだった。ザフトのモビルスーツ、ジン。特色がある訳でもない単なるジン。

 だが、その右肩には翼の様なエンブレムが刻まれていた。

 

『《羽付き》…!』

『……』

 

 『羽付き』。それが、各国が警戒したジン乗りのパイロットの異名である。

 右肩に刻まれた翼のエンブレムが特徴のそれは、他のジン乗りとは一線を画す実力を持ったエースだ。

 

 ガンッ! と、鋭い打撃がフォビドゥンの顔面を叩き込まれ、一時的にメインカメラに砂嵐を走らせる。

 トランスフェイズ装甲―――フェイズシフト装甲の改良型であるそれは、しかし実弾防御能力はフェイズシフト装甲よりも見劣りする。

 要するに、衝撃への耐性はPS装甲よりも下なのだ。だからこそ、ジンの打撃だけでメインカメラに一時的な砂嵐が巻き起こる。

 さらにはそれだけでなく、本来ならば持っていない筈の武装―――此処に来る前に、連合軍のMSストライクダガーから奪い取ったビームサーベルを起動し、フォビドゥンの要とも言えるビームを屈折・偏光させる特殊兵装『ゲシュマイディッヒ・パンツァー』を斬り付けた。

 

『貴方は…』

『―――聞こえるか、フリーダムのパイロット』

『は、はい』

 

 つい咄嗟に返事をしてしまった。

 オープンチャンネルの回線でキラに呼び掛けられた声は、キラが想像しているものよりも若々しいものだった。

 

『ついでにお前もだ、この馬鹿後輩。聞こえてるんだろ?』

『この声は…! な、何故貴方が此処に!?』

 

 オープンチャンネルからキラの回線を伝い、その相手―――ジャスティスのパイロット、アスラン・ザラへと彼は呼び掛けた。

 アスランよりも一期早く赤服としてエースとなっていた彼は、アスランにとっての先輩だ。イザーク・ジュールやディアッカ・エルスマン、ニコル・アマルフィも同類だ。

 ザフト所属である筈の彼は、本来ならばプラントを死守する為にプラント周囲に散開しているMS隊の一員だ。

 にも関わらず、彼は此処に現れた。

 

『信じられんかもしれんが、加勢する。コイツ等はザフトの敵に回っても厄介極まるからな』

『……』

『理由のない加勢よりも理屈が通った加勢だろ。だが、信用しないならそれでいい。後ろから撃っても文句は言わねぇよ。戦争ってのはそういうもんだし、俺達はそれをされる程の事をした』

『……』

『キラ…』

『本音を言えば、戦争なんざ無いに越した事はない。お前達が居れば、戦争は終わる―――そう思うから加勢するんだ』

 

 重斬刀とビームサーベルを重ねて構え、自らに降り掛かる重力という枷なんて一切気に掛けずジンは疾走する。

 全ては平和な未来の為に。

 

 

 

「はぁ……死にて〜」

「開幕にそれか?」

 

 こんばんわ、バカを仕出かしたナチュラルです。

 白騎士とか言うISを叩き伏せ、篠ノ之からの単純な言葉だけで覚醒したチョロ甘い俺はフリーダムの全武装を用いてミサイルを撃墜した。漏れなく全てだ。

 それは良かったものの、フリーダムと白騎士が戦っている瞬間はどうやら各国が観ていたらしく、約20m程の機体と対等にやりあった現状の所為で結局ISに対する見方を完璧に変える事が出来なかった。

 さらには俺が駆ったフリーダムも危険視され、色んな国から戦闘機だの何だのが突っ込んでくる羽目になった。巫山戯んな、自業自得だけど。

 まぁ、邪魔するなとか叫んで全部片っ端から片翼ぶった斬って殲滅したけど。

 

 ぶっちゃけ、自分でもあそこまで出来た理由は全く分からん。ドラグーン・システムが使えた理由も含めて分からん。あれ大気圏外でしか使えないんじゃなかったか?

 欲しかった言葉を貰ってテンションが馬鹿みたいに上がった自覚はあるものの、それでもあそこまでなるものかね?

 というか、あの頭の中で種が割れるみたいなやつ? あれの所為でめっちゃ頭が痛い。ついでに体も怠い。指の一本すら動けねぇ。

 

「あんな息巻いたくせに、結局何も出来なかったし俺……ISの評価を兵器として向けさせない為に動いたのに…。あと織斑もごめんな、強めに蹴ったりして。体、痛くないか? どっか骨折れたりしてない?」

「お前はメンタルが強いのか弱いのか分からんな…。私は大丈夫だ、束の素晴らしい夢のお陰で、怪我一つない」

「そっか…なら良かった。篠ノ之も…ごめんな。ごめんだけど、ちょっと聞いていい? 織斑も含めて」

「……なに?」

「なんだ?」

「なんで俺は現在進行系で篠ノ之に膝枕されてんの?」

 

 頭が痛いとか体が怠いとか云々よりこっちのがめっちゃ気になるんだよね、正直。

 篠ノ之の家まで来て、一発強めのデコピンぶちかました後に気を失って気が付けばこれだよ。どういう状況なのよ、これ。

 篠ノ之だぞ? あの篠ノ之が俺に膝枕とかどういう事だ? 今の今まで一度たりともそういう事をされた事ないぞ。だいたいが罵倒か盗み食いだったんだぞ?

 それがこれよ。何これ。

 

「…嫌なの?」

「嫌ではないけど…。お前からこんなご褒美貰う様な事したかなって」

「はぁ……」

「織斑さんでっかい溜め息吐かないでくれない? 織斑のそれは何なの? 呆れなの?」

「呆れだ。無頓着と言うべきか、それとも馬鹿と言うべきか…」

「それどっちも同じじゃね? ちょ、しのちゃん? ぺちぺち叩かないでくれない?」

「うるさい。…これくらいは、しないと」

「だから、それが分からないんだよなぁ…」

 

 篠ノ之に、これくらいはしないと、なんて思わせる様な事をした覚えが全くない。

 寧ろ怒られても仕方ない事をやっていたと思う。篠ノ之にも織斑にも。

 めっちゃ偉そうに声荒げて言ったものの、織斑に関しては俺だって同罪だ。織斑より短いとは言っても篠ノ之とは長く居たし、気付けなかったのは俺も同じだ。

 しっかりと根強く篠ノ之に言ってたら、もしかしたら根負けして悩みを打ち明けてくれかたもしれない。

 篠ノ之を信じたとは言っても、なんか言い訳みたいにも感じるし。

 それに、結果論だが俺は何も出来なかった。ISへの見方が変わってしまった事に、何ら変わりはないし…。

 

「違うよ」

「え?」

 

 見透かした様に、篠ノ之が喋った。

 

「お前は…返し切れないくらいの事をしてくれた。私も、ちーちゃんも…お前の言葉が嬉しかったよ。私の夢を泣いて喜んでくれて…間違った事をしたのに、受け入れてくれた。それを止めようと、改めようとしてくれたんだよ。……本当に、嬉しかった」

「ちょ、止せ止せ。あんま褒められ慣れてないんだぞ、俺。その―――大事な友達だからな、放って置く訳にはいかないだろ」

「…そうやって、お前は私達を真っ直ぐ見てくれるから」

「え? どういう意味だ?」

「友達なんて…私には、ちーちゃん以外に居なかった。要らないとすら思ってた。私を、篠ノ之束を人間として見てくれる人も、織斑千冬を一人の女の子として見てくれる人も、居なかった。けど…お前はそうじゃなかった」

「あぁ。私も束も、お前は一人の人間として向き合ってくれた。友達として、ずっと―――そして、真正面からああやって強い言葉を掛けてくれた」

 

 おぉう…まさかそんなに感謝されるとは思わなかった。

 思わず面食らった。いや、だってそこまで深く感謝されているとは思ってなかったから…。

 特に篠ノ之。いつもウザがられてたし、かなり呆れられてるとばかり…

 

「改めて…ごめんなさい。私の所為で、お前まで巻き込んだ……」

「謝るなよ。俺が自分から突っ込んだんだぜ。決して友達だから云々ってのが無い訳でもないが、それを抜きにしたって俺は動いた。他でもない自分の意志で、お前の為に巻き込まれたんだ。気にすんなよ。俺は謝罪より感謝が欲しい」

「……ありがとう。本当に…ありがとうっ」

「こっちこそありがとうだよ。織斑も言ってくれて良いぜ?」

「そうだな…。ありがとう、お前には助けられた」

「どういたしまして。何時でも呼べよ、いつでも何度でも助けてやる」

「友達だから?」

「それもあるけど……まぁ、自分でも中々アレだとは思うが、お前ら大好きだからな俺。大好きな奴に頼られたら全力尽くすだろ」

 

 うわ恥ずかし。自分で言ってて中々気持ち悪い。

 ちょ、篠ノ之! 本気で叩くんじゃねぇよ! 織斑も蹴るな! こっちは怪我人なんですけどぉ!?

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