おれは美少女になりたい   作:ふぁっしょん

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モモトーク「XX」
プロローグ


 流行りらしいから名前は聞いたことがある、ブルーアーカイブとかいう、ゲームだかアニメだか知らねえが、そんな名前のなにかしら。

 そんなところにつっこまれて、おれは美少女として生きることになった。

 その過程とかはまるでどうでもいいから置いておくとして、いまを振り返ると、差し迫ったある問題がある。

 美少女ってなんだよ、どういうのが美少女なんだよ。

 そういう疑問を解決するための知識とかなんとかを、おれは持っていなかった。

 他人事だとつまらんちっぽけなものだが、おれにとっては差し迫ったピンチだった。

 

 だから苛立ちを右足にのせて、石を軽く蹴ったりする。当然靴越しに足指がぶつかって僅かに痛い。余計にむかっ腹がたつ。汚い言葉を吐きだしたくなる。

 

 が、おれはいま美少女だから、口をつぐんだままにしておかなければならなかった。そうだ、美少女的じゃあねえ……

 おれはクールでかわいい美少女なんだ……

 だから頭をかきむしったりもしない。

 そんな具合でイライラしていて、しかも無理やり抑えているから、気が付くと眉間にしわが寄るし、指や頬がひくつくし、それがまた美少女っぽくなくて、もう最近はずっと、腰まで怒りに浸っている。

 

 

 おれは妄想甚だしいかんじの出来事を経た結果、美少女になった。

 もとはまあ、美少女ではない。だがいまのおれは中身以外美少女だ。

 せめて外面くらいは美少女っぽくありたい。

 もとのおれ風にいるのはイヤだ。嫌いだし、好きになりたくもないし、存在を消し去ってしまいたい。

 だから美少女っぽくあろうとしているわけなんだ。

 

(できねえけどよ)

 

 また石を蹴りかけて、抑えた。

 よくよく考えると、これもまた、美少女っぽくないからだ。

 ついため息を吐いて、途中ではっとして深呼吸に変えた。

 美少女……美少女とはいったい……

 おれはどうすればいいんだ?

 

 そんな具合でイライラしていると、周囲の視線を感じて、ぞっとした。

 おれは美少女なんだ……だから美少女として振舞わなければ。

 

 あたりを見わたすと、ツラのいい女ばかりが歩いている。

 モブ扱いされるような知らない女だろうが、ツラがいい美少女だ。

 おれもまたツラがいい。

 だから美少女だ。

 中身以外は。

 くそったれ。

 

 

 そんな具合で歩いていると、背中越しに声がかかった。

「XXちゃ~ん!」と、見知った声が脳に染み入る。

 表情を即座にかわいく固めて振り返ると、案の定見知った美少女だ。

 阿慈谷ヒフミ……

 こいつは一般人っぽいかんじの、ジェネリック美少女だ。

 

 ややふわりと弾力を持ちながらも滑らかな、淡い金髪。

 顔の出来は当然いいし、肌はつやつやで真っ白い。

 だが、なにより美少女的なのは仕草と性格だ。

 性格をアライメントで表すなら中庸・善って具合なんだが、ケチをつけるところが見当たら……

 

 いや、好きなキャラクター商品の収集に並々ならぬ熱意……というか狂気……をもっていることはちとアレだが……

 

 まあそれも魅力と言い切れるくらい、いわゆるいい子ちゃんなのだ。

 皮肉じゃないぞ、マジにだ。

 

 

 とにかくそんな美少女と並んで歩くわけだから、おれも当然美少女のガワを崩すわけにはいかない。

 にこりと柔く微笑んで、「おはよう、ヒフミちゃん」とかいってみたりする。

 もちろん振り向くときの勢いは、スカートと髪がふわりと動く程度に抑える。

 うん、我ながら完璧な所作だった。

 

 

 おれはヒフミをみたまま、眼の焦点をぼかした。視線をふらつかせると察されるからな。

 髪や制服の具合をみるかぎり、今日は余裕をもって起きれたらしい。

 だが、ちと顔色が(健康的だが普段と比べ比較的)悪く、さっきかけられたことばのアクセントにも違和感があった。

 そこまで理解したおれの脳は瞬時に関連する出来事と予定を見つけ出し、美少女ナイズした会話を組み立てる。

 

 

「ふふ、あててあげましょう。試験対策でしょ!」

 そう手振りも加えて問いかけると、ヒフミは「えへへ」なんていいながら頭に片手をあてておどけてみせた。

 これを素で行うなんて、なんという美少女力だろう……

 戦慄しながらも、おれは「だめだよお、もう」と美少女的に発声した。

 

 

 ヒフミはモモフレンズというシリーズに属するキャラクターが大好きだ。

 放課後には頻繁に、それの関連グッズを漁りに街へ出かけたりする。

 昨日もそうだったことは把握済み……

 そして今日は定期試験の実施日であり……

 ははは、我ながら完璧な推理だった!

 

 

 おれは思わず吊り上がりかける頬を努めて抑えながら、美少女的会話を続ける。

 えへへ、とか、あはは、とか、そういう笑い声を交えながら。

 昨日の戦利品だという貴重なぬいぐるみを取り出してみせてくるヒフミは素晴らしく美少女だ。

 そしておれもまた美少女……こころが満たされる……

 

 そんなときだった。

 おれの側頭部に衝撃が走った。

 

 

 思わず立ち止まって、そちらに視線を向けた。道脇のキッチンカー前でクレープを頬張りながら口論する女子の手に銃が構えられている。

 流れ弾か……

 笑顔を保ちながらヒフミのほうへ向き直った。

 

 涙目があった。

 

 

 みるとヒフミのぬいぐるみが無残に損傷していた。

 おれはその瞬間、「カスが」と吐き捨てて女どもに襲い掛かった。

 

 

 

 

 しばらくして、正義実現委員会とかいう風紀委員会の亜種に取っ捕まり、おれは意気消沈した。

 ヒフミはおれの美少女的ではないふるまいを幾度もみていて、しかもなにもいわないでくれるが、しかし……

 いや、それよりもつらいのは、ヒフミが「ごめんね、わたしのせいで」なんてことを悲し気にいうことだ。

 許せねえ……

 

 おれは世界に怒りを向けた。

 なぜ美少女をこのような具合にしてしまうのか。

 怒り……にくし……

 いや、憎しみを抱くのは美少女的ではない……

 思わず、ため息を吐いてしまう。

 

 

 空は夕焼けに染まり、おれはヒフミと別れ、帰路を歩き出す。

「じゃあまた明日!」と手を振り去るヒフミはとても美少女だった。

 翻っておれはどうだろう。

 

(ああ、美少女でありたい……)

 

 そう強く思ったそのとき、ふと思いつく。

 もし、美少女であるにはどうすればいいか、導いてくれるひとがいれば……

 ここ最近、頻繁に聞く噂があった。

 

 曰く、この美少女だらけの世界に突如、聞くところによると非常に頼れる大人が現れたと……

 曰く、連邦捜査部シャーレなるところの先生は、生徒の助けになってくれると……

 

 

 おれはしばし悩み、決めた。

 その大人に頼ってみよう……と。




続きはいま書いてる
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