「そして、おれは言ったんです。
結局、おれといっしょにいたくないのかって!」
「なるほど。」
「そしたらビーチェも……
いえ、そういうわけでは……
っていって!」
「なるほど。」
「そしたら先生が、じゃあ帰ろうか、って言って。
それで帰って、この件は落着したわけです。」
「なるほど。
……なるほど。」
「……浦和さん、大丈夫ですか?
なんだか、顔色が……」
「……いえ、XXさん。
大丈夫ですよ……ええ、本当に。」
そうはいうけれど、浦和さんの顔色はやはり悪い、気がする……
おれはすごく不安になってきた……
「つ、疲れてたり……脱水症状とか!?
喉乾いてます!?」
そう聞くと、浦和さんはなにやら少し考えた様子になった。
「いいえ、大丈夫です……
ただ、少し……ええ。
少し、疲れたかもしれませんね。」
そして、そういって、にこりと微笑んだ。
「そ、そうですか……?」
そうおれがいうと、浦和さんはまた、すこし顔色が悪くなった。
ちょっと表情も硬くなる。
「……すみません、私から話を聞いたのに。
ただ、ちょっと……
自己け……いえ、自己啓発してまして。」
「じ、自己啓発、ですか?」
「そうです。ですから、XXさんが気にするようなことは、ありませんよ。
……それで、少しお願いがあります。
ちょっと、お金を出すので、飲み物をお願いします……甘いものを。」
「わかりました!」
そういって小銭を取り出そうとしている彼女を後ろ背に、おれは駆けだした!
自動販売機に向けて、急ぐ!
急いだ!
たくさん甘いやつ買った!
おれの財布は軽くなったが、必要経費だ!
そして駆け戻ると、浦和さんはものすごくつらそうな表情でこちらを見て……
すぐにそれは笑顔に戻ったが、あきらかに体調不良……!
「う、浦和さん、保健室いきましょう!」
「いえ、そこまでは……
きゃ!?」
おれはお姫様だっこをして、駆けだした。
「すぐ運びますよ!
大丈夫です、最近力強いので、ほとんど揺らしません!」
浦和さんは、こちらをみて……
なんだか疲れたような笑顔で、いった。
「……はあ。
そうですか。
では、お言葉に、甘えて。
……
ああ。」
おれは浦和さんを、揺らさないよう心掛けつつ、急いで保健室へ運んだ。
救護騎士団のひとに一声かけて、ベッドに横たわらせる。
「飲み物おいてきたので、とってきますね。」
そう小声でいって、おれは来た道を戻ることにする。
静かに早歩き!
少しして、人が少なくなったあたりで、ビーチェの声が脳内に響いた。
(XX、あなたは気づいていないのですか?)
(気づいてないって、なにが?)
(それは当然、浦和ハナコが……
ふむ……
そうですね、悩んでいることについてです。)
(悩んでるって……
ええと、さっき話してたことから?)
おれは思い返す。
さきほど、浦和さんと仲良くなるためのコミュニケーション第n回目をしていたわけだが、その最中に出た話題といえば……
まさか!
(浦和さん目線で、おれがこの間したことの話って……
ああ、めちゃくちゃ主観的だった!
ほとんど自慢だった!?)
(そういう……いえ、そうですね……そうかもしれませんね……)
(話の後半、おれ熱が入ってたな……もっと冷静に、客観的に話さないと。)
(そういう問題では……いえ、それもある、かもしれませんが……
ふむ……)
(ど、どういうこと?)
(浦和ハナコも、あなたも、自省に走りすぎているというだけです。
もっと外へ視線を向けるべきです、間違いなく。)
(そ、そうなんだ……)
おれは置いてあった缶とかペットボトルをまとめるため、リュックサックから袋を取り出した。
ひとつ、ふたつ……たくさん買いすぎたな。
でも、どれが好みなのか、いまいちはっきりしないし……
(ビーチェ、浦和さんの好みの飲み物ってわかる?
おれ、いまいちわからなくて……)
(……そもそも、味の好みは特にない気がします。
彼女はシチュエーションにあった飲み物を好むでしょう。)
(玉虫色の答えすぎる……!
じゃあ、どうすればよかったんだ……)
(……まあ、考えた末選んだ一本があったほうが大変だったでしょうから、すぐに手当たり次第に選んだのは、悪くない選択だったと思いますよ。)
(そ、そうなの?)
(ええ、きっと。)
おれは飲み物がたくさん入った袋を抱えて、保健室についた。
静かな声で「失礼しま~す……」といって、扉を開けた。
なにやら救護騎士団のひとと話していたらしい、浦和さんはベッドのうえで、こちらをみて……
にこり、と微笑んだ。
やや硬くて、顔色は悪かったけど。
「これ、好きなの選んで飲んでくださいね。」
おれが袋を差し出すと、浦和さんは少し視線を迷わせて、その中からリンゴジュースを取り出した。
そして、伸ばされる手。
おれが手をだすと、小銭が握らされた。
……おれはその手のひらを握って、ひっくり返した。
「……
この手、なんですか?」
「浦和さんはおれの話に付き合って、それで体調崩しちゃったわけですから、払う必要はないです。
余ったやつは置いておくので、いらない分は救護騎士団のひとにあげちゃってください。」
「……はあ。
でしたら、せめてこのお金は受け取ってください。」
そういって、浦和さんはおれの手のひらを上から掴んで、ひっくり返した。
小銭は当然おれの手のひらに落ちる。
「ええと、ですから……」
(大人しく受け取るべきです。)
「うう……はい。」
おれが小銭を受け取って、手を外すと、浦和さんはなんだかほっとしたような表情になった。
ビーチェはやはり、こういうとき頼れる……!
「じゃ、じゃあ、先に帰りますね。
お体に気をつけてくださいね。」
「ええ……もちろんです。」
浦和さんは、やはり硬い笑顔でいった。
保健室を出ると、ビーチェは軽くうねる。
(今日、あらためて……
XX、あなたを見ていて思ったことがあります。)
(なに?)
(帰らなくてよかったです。)
(……なんか、皮肉っぽくない!?)
(本心です。)
(本心からの皮肉!?)
(……ふふ。)
おれはまた、歩き出した。
後書きはhttps://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=314648&uid=76548に貼りました。
これどういう設計思想なの?などと感じたなら、こちらをば。
なぜシリアスや残酷etcを徹底的にはぶいたかという理由は、だいたい纏めました。